3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

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二百七十七話 魔王城10

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「消え失せよ。滅絶!」


魔王は右手のひらを長老に向け
生暖かい黒い風のようなものを
放った。


「......いかん!!」


長老はその風を見て、素早く避けよう
とする。だが、その風は予想以上に速く
長老へと迫って来た。


「ぅヴっ!!!」


「ほう......」


サーーッ


まるで砂が溢れているような音がする。
何かと思ってカクバが長老を
見ると......



「!? ちょ、長老!! う、腕が!!」


長老の左腕は無惨にも
無くなっていた。
その代わりに地面には
灰が散乱している。


「初見でこれを交わしたか......
流石だ。誉めてやろう。」


「何をしたんじゃ......」


「我はこの世に有るもの全てを
灰と化す力を持っておる。
その魔法を波動として貴様に
放ったまでだ。
しかし、よく交わしたな。
ああ、そうか。未来でも先読みしたか?」


「......」


「......ふふっ。まあよい。
せいぜいその占いとやらで、
我の動きでも先読みしてみよ。」


シュンッ!


すると、魔王は疾風の如く
長老に迫る。


魔王の言っていたことは正しかった。


長老は占いで、自分に降りかかる
未来を先読みしたのだ。
だが、それが魔王にバレたと
しても、相手の動きを一歩先に
知ることができる事実は変わらない。


長老は再び魔王の行動を先読みする。


右手でわしの頭を掴もうと
見せかけ、視線を上へと奪い、
右足でわしの腹部に蹴りを入れようと
しておるな。


そう占いで先読みした長老は、
腰を低くして魔王の右足の蹴りを
両手で抑えようとする。


しかし


「遅い。」


長老は信じられなかった。
一秒後の未来では、魔王はもう既に
自分の後ろに回っている。
先ほど自分が占った未来とは
まるで違う。



「グァ!!!」


長老は後ろに回った魔王から
容赦のない蹴りを入れられ前方へと
飛ばされる。


違う。占いは間違っていない。
ただ、魔王のスピードが速すぎるだけ。
魔王の動きが速すぎて、一歩先を
読んでも、まるで追い付けない。


現にカクバ達は今何が起こって
いるのかすら、全くわかっていな
かった。
まるで時が止まったかのように、
四人はじっとしている。


魔王の動きを目で捉えることが
出来ているのは、長老ただ一人だった。


しかし、目で捉えられても、
どんなに先読みしても、
体がついていけない。


それでも。


自分には再び会わなければならない
人がいる。
こんなところで死んではいけない。


蹴り飛ばされた長老は
壁にぶつかりそうに
なった直前で、ばっと
姿勢を立て直し魔王の
方を見る。


しかし、その時長老は悟った。



自分は負けたと。



一秒後の未来では灰となっていると。



前を向いた長老の視界には
もう魔王はいなかった。
魔王がいたのは、自分の真後ろだった。


「滅絶。」


それに気づいて後ろを振り向こうと
した長老の体はもう既に


サーーッ


と灰になっていく。



......人魚姫様......


遠退く意識の中で、あの人が
自分を呼んでいる。


一緒に泳ごうと。
またあの秘密の場所においでと。


隼人君......
君の言った通りじゃった。
君の言った通り、わしは
今......死ぬほど......後悔しておる。



何故あの時会いに行かなかったのだろう。
どうして、言っておかなかったのだろう。


自分は今でもあなたのことを
愛していると......


途絶える最後の瞬間で、
長老が頭の中で
見ていたものは、あの場所で
笑顔を振りまき楽しそうに
泳ぐ、人魚姫の姿だった。



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