3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

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二百六十六話 フリーズランド26

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「ピィ! ピィ!」


吹雪姫の姿も遠くなり、そろそろ
タチアナを引いていた手を離そうかと
考えていた頃、後ろからペルーが
追いかけてくる。

俺はペルーが何を言っているのか
直ぐにわかった。


「駄目だ。お前は連れてけない。」


「ピィ!!!」


だが、ペルーは自分も強いんだと
主張するかのように、羽を広げて
自分の体を大きく見せてくる。


「ペルー。我々の行く先は
とても危険な場所だ。
君がついてくるような場所ではない。」


「......」


「それに君にはもう居場所が
あるだろ?」


すると、後ろから何十羽もの
鳥たちがペルーを追いかけて飛ん
できてしまった。
彼らはペルーを心配して何度も
鳴いている。


「ピィ......」


ペルーは申し訳なさそうな顔をして
俺に目を向ける。
そこで、俺はちょいちょいと
ペルーを手招きした。

直ぐに俺の元に飛んできたペルーを
俺は抱き抱えて、俺は自分の額を
ペルーの額に当てる。


「ペルー、覚えてるか? メグが港で
俺らに言ってたこと。
戻ってきてって言ってたよな?
でもな、俺はたぶん無理だ。
あと何時間かしたらこの世界から
いなくなってるかもしれない。
けど、お前は違う。
お前ならその羽根でメグの
ところまで飛んで行ける。」


「......」


「......頼むよ。
お前が一緒に来て、もしものことが
あったら、俺はメグに何て詫びれば
いいんだ。
きっとメグはお前が無事に帰ってくる
のを待ってるんだぞ?
だから、お前は何年か経って
下の大陸に行く機会があったら
メグに会ってくれ。
お前の家族と一緒にな。
そしたら、メグはきっと喜ぶ。」


タチアナの兄ちゃんに言われた。
俺が探しているメグの家族は
もういないだろうと。
俺もそんなことはわかっていた。
けど、俺は屑だから、結局
その場しのぎの言葉をメグに
浴びせることでしか、あの子を
笑顔にさせてあげられなかった。


でも、お前なら......
ペルーならきっと、メグを
笑顔にしてくれる。

気休めの言葉などかけずとも、
お前とメグには会うだけで
お互いが幸せになれるほどの
強い絆がある。

俺はもうそれしか、守れない。


「......ピィ......」


「......もしかして、俺達のこと
心配してんのか?
大丈夫だ。俺達は強いってこと
お前が一番知ってるだろ?
必ず魔王を倒してみせるよ。
だから、お前はもう仲間のところに
帰れ。心配してるぞ。」


やや不満げな顔だが、ペルーは
仲間達の自分を心配する鳴き声を
聞いて、おとなしく俺の腕から
離れる。


「......あとさ、ペルー。
メグに謝っててくれないか?
約束破ってごめんって。」


俺が最後にそう言うと、
ペルーは悲しそうな顔をしながらも


「ピィ!!!」


と、元気な鳴き声で返事をして
フリーズランドへと仲間と一緒に
帰っていった。


「きっとペルーは
隼人と別れるのが嫌だったの
だろうな......だから、あんなに
駄々をこねて......」


「......そうかな......そうだとしたら、
ここでちゃんとした別れのあいさつ
ができてよかったよ。」


「......隼人......」


「行くぞ、タチアナ。
時間がない。」


「......」


俺はタチアナの何か言いたげな
表情に気づかないふりをして
先に進むのだった。













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