3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

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二百四十七話 フリーズランド7

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 皆の視線がバーン翁に注がれる。

 翁は視線を受け、ニヤリと笑みを浮かべた。

 ガッソが咎めるように言う。

「おやっさんが言ったんですぜ。知り合いが異世界人だって。本当はおやっさん自身だったくせに」

 翁は鼻でせせら笑った。

「お前信じていなかったろう。だから知り合いの話ってことにしたんじゃ」

「いや、そりゃ安易に信じられる話じゃないですよ」

「だろうな。だから途中で面倒くさくなったってのもあるな」

「面倒くさいって……参ったな、もう」
 
 そこでアルフレッドがはたと気づいた。

「親父たちは知っているのか?」

 バーン翁はうなずいた。

「お前の親父にだけは言っておいた。他の連中には言っていない」

「親父にだけ?おじさんたちには言ってないのは何故だ?」

「必要なかろう。だがバーン商会の当主となる者にだけは言っておこうと思ってな。ヘルムートが当主となった晩に、打ち明けておいた」

 アルフレッドは複雑な表情となった。

「親父は……どんな反応だった?」

「お前たち同様、大層驚いておった。だがその後はお前たちとは違い、すぐに立ち直っておったがな」

 するとアルフレッドが鼻を鳴らした。

「そうかい。俺はいつまでも驚いていて悪かったな」

 バーン翁は呵々と笑う。

「構わん。ヘルムートはわしと同じSランクじゃ。他の者たちとは違い、或る時から突然レベルがどんどん上がっていく状況にとまどっておった。だからじゃろう、わしが異世界人であり、こちらの世界に来た途端レベルが急激に上がっていったことを告げると、納得してうんうんうなずいておったわい」

「腑に落ちたってところか」

「そうじゃろうな」

 ちょっと待て。

 翁の言葉の中に、初めて聞いた事柄があった。

 俺はそれを翁にぶつけた。

「アルフレッドの父親は、或る時から突然レベルが上がったのか?」

 バーン翁はそれがどうしたといわんばかりに言った。

「そうじゃ」

「それまでは他の者と同じくらいのペースだった?」

「そうじゃな」

「それが、或る時突然、急激にレベルが上がっていったってことか?」

「だからそうじゃよ。それがどうかしたか?」

「いや、なんかおかしくないか?」

「おかしいとは?」

「俺たちはこちらの世界に来た途端、レベルという概念が現れ、しかも急激に上がっていった」

「そうじゃな」

 俺は眉根をギュッと寄せ、考え込みながらゆっくりと言った。

「だけど、ヘルムート・バーンは、或る時突然レベルが急激に上がり始めたという。その、或る時って、一体どんなきっかけだったんだ?」
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