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八十九話 ジュラ島15
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「......っ! ......?」
晩飯を食べ終わり隼人とペルーが
寄り添って木にもたれかかりながら
眠りこけていた頃。
タチアナは首もとにちくっとした
痛みを感じた。
「蚊にでも刺されたか。」
痛みを感じた部分を手でこすり、
何てことない、とタチアナも
眠りに落ちた。
「ピピ。」
「......? ペルー痛い、つつくな。」
ぼんやりとした意識の中、
ペルーに頭をつつかれ、痛みで目が
覚めた。
「起きたか? 隼人。では、出発するぞ。」
「出発? 一体どこへ?」
「船から降りた場所だ。もしかしたら、
他の者からのメッセージが残されて
いるかもしれない。」
そう言って彼女は、まだ寝起きの俺を
尻目に今度は間違いのない方位磁石を
見て、先へと進んだ。
しかし、異常事態は直ぐに起きた。
森を進み、まだそんなに経過して
いない頃。
「あの、タチアナさん。大丈夫ですか?
顔色が悪いような。」
「大丈夫だ。心配はいらない。」
そう返事をしてくるが、
明らかに顔色が悪い。
歩き方もふらふらしだしている。
「いや、でも......一度休憩しましょう。」
「大丈夫だと言っている。」
怒鳴り声では無かったが、苛立ちを
含んだ言葉が返ってくる。
「わかりました。」
だが、それから約二十分後。
「タチアナさん!?」
先行していた彼女はその場に
ばたりと倒れてしまった。
「ピピ!」
ペルーもそれを見て慌て出す。
「すごい汗......明らかに熱があるな......
タチアナさん、聞こえますか?」
倒れた彼女に駆け寄り状態を
確認する。
返答は無い。
だらだらと体から汗が
出ている。
「すみません、一度鎧を外します。」
熱の原因が何か分からなければ
それに対処できる回復魔法も
わからない。
重い鉄の鎧を腕、胸、腰、と順々に
外していく。
「水飲めますか?」
薄着になった彼女に、脱水症状の
可能性もあるので体を支えて無理矢理に
でも水を飲ませる。
「ゴホッゴホ。」
何とか水は飲んでくれたものの、
苦しそうに少し吐き出してしまった。
体のどこを見ても、傷を受けた
形跡は無い。
「メディシン。」
俺は単なる疲れから熱が出た
と考え、それに対する魔法をかえる。
「とりあえずこれでいいか。」
そう思って俺は地面に俺のマントを
敷いて、寝かせてやる。
「ピピ!」
するとペルーは俺に何かを
知らせようと鳴き始めた。
「どうした? ペルー。......これは──」
ペルーが凝視する彼女の
首もとには何かに刺された跡があった。
「ナイスだ、ペルー。」
「ピッ!」
ペルーが発見した跡から
推測するに、おそらく彼女は
何かの毒を持った生き物にでも
咬まれて、毒状態に陥っているのだろう。
ならば、状態異常回復の
リカバリーをかける必要がある。
ペルーがいなければ、危うくこの
まま彼女を死なせてしまうところだった。
「リカバ──」
ガシャガシャと、森の奥から
あの音が近づいてくる。
そして、俺が彼女にリカバリーを
かけようとしたところで、
あれが姿を現した。
晩飯を食べ終わり隼人とペルーが
寄り添って木にもたれかかりながら
眠りこけていた頃。
タチアナは首もとにちくっとした
痛みを感じた。
「蚊にでも刺されたか。」
痛みを感じた部分を手でこすり、
何てことない、とタチアナも
眠りに落ちた。
「ピピ。」
「......? ペルー痛い、つつくな。」
ぼんやりとした意識の中、
ペルーに頭をつつかれ、痛みで目が
覚めた。
「起きたか? 隼人。では、出発するぞ。」
「出発? 一体どこへ?」
「船から降りた場所だ。もしかしたら、
他の者からのメッセージが残されて
いるかもしれない。」
そう言って彼女は、まだ寝起きの俺を
尻目に今度は間違いのない方位磁石を
見て、先へと進んだ。
しかし、異常事態は直ぐに起きた。
森を進み、まだそんなに経過して
いない頃。
「あの、タチアナさん。大丈夫ですか?
顔色が悪いような。」
「大丈夫だ。心配はいらない。」
そう返事をしてくるが、
明らかに顔色が悪い。
歩き方もふらふらしだしている。
「いや、でも......一度休憩しましょう。」
「大丈夫だと言っている。」
怒鳴り声では無かったが、苛立ちを
含んだ言葉が返ってくる。
「わかりました。」
だが、それから約二十分後。
「タチアナさん!?」
先行していた彼女はその場に
ばたりと倒れてしまった。
「ピピ!」
ペルーもそれを見て慌て出す。
「すごい汗......明らかに熱があるな......
タチアナさん、聞こえますか?」
倒れた彼女に駆け寄り状態を
確認する。
返答は無い。
だらだらと体から汗が
出ている。
「すみません、一度鎧を外します。」
熱の原因が何か分からなければ
それに対処できる回復魔法も
わからない。
重い鉄の鎧を腕、胸、腰、と順々に
外していく。
「水飲めますか?」
薄着になった彼女に、脱水症状の
可能性もあるので体を支えて無理矢理に
でも水を飲ませる。
「ゴホッゴホ。」
何とか水は飲んでくれたものの、
苦しそうに少し吐き出してしまった。
体のどこを見ても、傷を受けた
形跡は無い。
「メディシン。」
俺は単なる疲れから熱が出た
と考え、それに対する魔法をかえる。
「とりあえずこれでいいか。」
そう思って俺は地面に俺のマントを
敷いて、寝かせてやる。
「ピピ!」
するとペルーは俺に何かを
知らせようと鳴き始めた。
「どうした? ペルー。......これは──」
ペルーが凝視する彼女の
首もとには何かに刺された跡があった。
「ナイスだ、ペルー。」
「ピッ!」
ペルーが発見した跡から
推測するに、おそらく彼女は
何かの毒を持った生き物にでも
咬まれて、毒状態に陥っているのだろう。
ならば、状態異常回復の
リカバリーをかける必要がある。
ペルーがいなければ、危うくこの
まま彼女を死なせてしまうところだった。
「リカバ──」
ガシャガシャと、森の奥から
あの音が近づいてくる。
そして、俺が彼女にリカバリーを
かけようとしたところで、
あれが姿を現した。
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