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六十七話 訓練2
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訓練といっても、俺以外の回復魔法士は
全員女なので、さほどきつい訓練では
ない。
軽い運動と、回復魔法士が覚えている
スキル練習、そして回復職についての
勉強だ。
もちろん、サッちゃんさんは
隊長なので、ずっと俺を追い回している
というわけではない。
訓練中はしっかりと皆に指導をしている。
こうやって追い回されるのは
訓練が終わって俺が帰ろうとする
時だけである。
最初のほうは、彼女は気弱で
あ、あの......と何か言いたげな
顔をするだけだったが、
だんだん慣れてきたのか、
今ではこんなに立派に俺を追い回
している。
ていうか、日に日に追いかけてくる
速度も増していないか!?
これが一番効果的な訓練だろ!
「あ! そういえばテイルが
さっき、サッちゃんさんの
大事にしていた杖、壊してましたよ!」
「え!? ま、またそんな嘘を......」
「別に信じなくてもいいですけど。
今ごろはテイルが証拠隠滅のために、
その杖を燃やしているんだろうなーー」
サッちゃんさんの顔を確認すると
明らかに不安な顔をしていた。
「......あ、明日は必ずギルドカードを
持ってきてくださいね!」
そう言って悔しそうに彼女は
俺を追いかけるのを止めて、
テイルを探しに行ってしまった。
こうやってテイルでサッちゃんさんから
の追尾を回避するのが俺の最近のブーム
である。
「許せ......テイル......」
俺はそう呟いた。
賑やかさが無くなり、店の人達が
店を閉める時刻になった頃、俺は
宿屋につき、紙にペンを走らせた。
『メグへ』
書いたのはメグ宛の手紙だった。
おもえば港で見送られて
から、一度もなんの報告もしていな
かった。
手紙の内容は試験に合格したことと、
今は訓練を受けているということ。
そして、一週間後、魔王討伐軍が
出航するということだ。
サッちゃんさんから
聞いたとこによると、俺が下の大陸に
着いたあの港から出向し、そのまま
魔族の幹部がいる島を
奪還しながら、上の大陸、そして
魔王を討伐するらしい。
だから、もうメグのいる
島には戻らないだろう。
そうなると約束であるペルーを
連れていってやれないので、
出航日にペルーを港まで
連れてきてほしいとお願いした。
俺がユニコーンに乗って行ければ
よかったのだが、後から確認した
ところ、どうやらあのユニコーンは
下の大陸から外に決して出ないという
習性があるとのことなので、それは
無理だった。
『ヤナハ国から下の大陸までの
費用は俺が出す。迷惑をかけるが
お願いできないだろうか。
返事待ってる。
隼人より』
「よし......」
少し傲慢なお願いだが、
こうでもしてもらわないと
ペルーを連れてやって
やることができなくなる。
それとあとは、メグと最後に
もう一度会いたいという俺の小さな
願いからだった。
全員女なので、さほどきつい訓練では
ない。
軽い運動と、回復魔法士が覚えている
スキル練習、そして回復職についての
勉強だ。
もちろん、サッちゃんさんは
隊長なので、ずっと俺を追い回している
というわけではない。
訓練中はしっかりと皆に指導をしている。
こうやって追い回されるのは
訓練が終わって俺が帰ろうとする
時だけである。
最初のほうは、彼女は気弱で
あ、あの......と何か言いたげな
顔をするだけだったが、
だんだん慣れてきたのか、
今ではこんなに立派に俺を追い回
している。
ていうか、日に日に追いかけてくる
速度も増していないか!?
これが一番効果的な訓練だろ!
「あ! そういえばテイルが
さっき、サッちゃんさんの
大事にしていた杖、壊してましたよ!」
「え!? ま、またそんな嘘を......」
「別に信じなくてもいいですけど。
今ごろはテイルが証拠隠滅のために、
その杖を燃やしているんだろうなーー」
サッちゃんさんの顔を確認すると
明らかに不安な顔をしていた。
「......あ、明日は必ずギルドカードを
持ってきてくださいね!」
そう言って悔しそうに彼女は
俺を追いかけるのを止めて、
テイルを探しに行ってしまった。
こうやってテイルでサッちゃんさんから
の追尾を回避するのが俺の最近のブーム
である。
「許せ......テイル......」
俺はそう呟いた。
賑やかさが無くなり、店の人達が
店を閉める時刻になった頃、俺は
宿屋につき、紙にペンを走らせた。
『メグへ』
書いたのはメグ宛の手紙だった。
おもえば港で見送られて
から、一度もなんの報告もしていな
かった。
手紙の内容は試験に合格したことと、
今は訓練を受けているということ。
そして、一週間後、魔王討伐軍が
出航するということだ。
サッちゃんさんから
聞いたとこによると、俺が下の大陸に
着いたあの港から出向し、そのまま
魔族の幹部がいる島を
奪還しながら、上の大陸、そして
魔王を討伐するらしい。
だから、もうメグのいる
島には戻らないだろう。
そうなると約束であるペルーを
連れていってやれないので、
出航日にペルーを港まで
連れてきてほしいとお願いした。
俺がユニコーンに乗って行ければ
よかったのだが、後から確認した
ところ、どうやらあのユニコーンは
下の大陸から外に決して出ないという
習性があるとのことなので、それは
無理だった。
『ヤナハ国から下の大陸までの
費用は俺が出す。迷惑をかけるが
お願いできないだろうか。
返事待ってる。
隼人より』
「よし......」
少し傲慢なお願いだが、
こうでもしてもらわないと
ペルーを連れてやって
やることができなくなる。
それとあとは、メグと最後に
もう一度会いたいという俺の小さな
願いからだった。
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