3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

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二十話 機転

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隼人はこの世界に転生してから
ずっと着ていたマントを脱ぎ、
地面におく。
身軽になった体を上に伸ばしながら
軽く肩を回す。


「まさか……回復魔法士のあなたが戦う
のですか? この私と。」


「そうだな。」


「ふふっ、ご冗談を。あなたが
私に――」


隼人はだらだら喋っているラーバの
前に恐ろしい程のスピードで移動し、
殴りかかろうとする。


「ぶぅあーー!」


しかし、ラーバは一瞬冷や汗をかき
つつも、先程の煙を吐いて身を隠した。


「あなたとの戦いはまた今度にしてお
きますよ。」


ラーバは煙の中からひょこっと顔を出す。


「逃げるのか?」


「えぇ、私にはまだやらなければ
ならないことがあるので、この
続きはまた今度に。それでは。」


そう言うとラーバは壁の中へと
姿を消していった。


物質を通り抜ける能力、
それをラーバが有していた、
と隼人もそう一瞬考えていたが、
ラーバの不自然な消え方に
少し疑問を抱く。


「ヒール!」


そして隼人は思いたったように
周りにヒールをかけた。

先程自分が傷つけた仲間に
かけるよう、周囲三十メートル
の範囲にいる生命体全てに。


倒れた仲間を青い光が包み込む。
これがこの世界でヒール状態にかかった
時に現れる現象のようだった。


しかし、その青い光が何もいない
ところで照らされた。
そこはちょうど隼人の真後ろだったが、
隼人はそれがわかっていたかのように
振り向く。


そしてその青い光をぶん殴った。


「グハッ!!!」


腹の溝を思いきり殴られ、
口から血を吐きながら何かが
壁にぶつかる。


「なぜ……です……なぜ……私があそこに
いると思ったのですか……?」


殴られよろよろになりながらも、
ラーバは必死に立ち上がろうとする。


「消え方だよ。お前の。」


「消え方……ですか?」


「あぁ、お前、自分が壁の中に消えたかの
ようにと思わせたかったんだろうが、
壁に入る前にお前の姿が消えたのが
見えたんだよ。
お前は壁の中に入れたり、物質を通り
抜けれるんじゃ無くて、姿を消せる
だけなんだろ?」


ラーバは隼人の言葉に苦い顔を浮かべる。


「どうせ、ここからいなくなったと
油断させて、姿を消し、俺の背後を
取ろうとしてたんだろうが、詰めが甘
かったな。」


隼人は瀕死のラーバに冷たい言葉を
なげる。
それがラーバの幹部としての心を
傷つけたのか、うぅぅと何かが
吹っ切れたかのように、猛獣の声を
あげる。


「だぁまぁれ! 私はお前のような
人間に、やられるわけが!」


隼人は追い詰められた獣が
一番危ないということをこれまでの
異世界生活で知っている。

だから

決して手を抜かず

突進してくるラーバを

渾身の力を込めて

もう一度

殴り飛ばした。


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