1 / 6
第1章 かえで Side
プロローグ
しおりを挟む
私、小野寺かえでとさつきは一卵性の双子の姉妹だ。
18歳。高校三年生。
群馬県のとある小さな町で暮らしている。
私とさつきは県内の違う高校に通っているけれど、私に双子の妹がいることは校内の殆どが知っている。
私たちはなぜか、昔から色々と注目される事が多い。
周りの人たちはみんな、私たちのことを「可愛い」「美人だ」と言ってくれる。
ふたり一緒に街中を歩けば、老若男女が振り向く。
たしかに、さつきは可愛い。
町一番可愛いと思う。群馬一、いや、日本一可愛いと思う。
顔が小さくて白い肌。ピンク色の艶やかな頬。
大きな目に、鼻筋が通った鼻。唇は薄くもなく厚くもなく、形が整っている。
天使の輪ができるくらい、艶やかでサラサラの黒髪は、いつも頭の上でひとつに高く結ばれている。
うなじが色っぽくて、後ろ姿だけでも美人だとすぐ分かる。
振り返った顔を見てがっかりするどころか、期待通りの美しさだ。
東京からわざわざ芸能事務所がスカウトに来るくらい、華やかでオーラがある。
そんなさつきと双子の私も、きっと可愛いのだろう。
でも、私には華やかさもオーラもない。
唯一勝っているとしたら、胸の大きさくらいかも知れない。
誰とでも仲良くなれて明るいさつきと違って、私は人見知りだし、何事もマイナス思考だ。
それに、みんなが可愛いって言ってくれる割に、この18年間、彼氏ができたことがない。
まあ、女子校に通っているから仕方がないのかもしれない。
そういうことにしておく。
目立つことが苦手なので、大きな銀縁フレームの眼鏡をかけている。
長い髪も苦手なので、小学生の頃からずっとボブより長くしたことはない。
いつの間にか、気配を消すことも得意になっていた。
本を読むことが大好きでインドア派。
最近は、自分でも小説を書いている。しかも、ちょっとエッチなやつ。
今年から官能小説に興味を持ち始め、受験勉強が疎かになっている。
夏休みに入ったらほぼ毎日、塾の夏期講習に通わなければいけないので、今書いている小説を早く完結させないと。
「暑すぎる……」
シャツの襟を大きく開けて、手で仰ぎながら、さつきがぽつりと呟いた。
私たちは今、ホームのベンチに座り、電車を待っている。
塾の帰りで、周りはすっかり暗くなっていた。
ホームには私たちしか居なかった。
「誰も居ないからって、そんな格好はしたないよ」
「いいじゃん。本当なら脱ぎたいところだよ。もー、汗で張り付いて気持ちが悪い」
「脱いだところで涼しくなる暑さじゃないでしょ」
「分かってるけどさぁ、あー、もう! こんな時間まで蝉も頑張るんじゃないよ! 余計暑くなるじゃん!」
さつきは蝉に八つ当たりをしながら、スカートを仰ぎ始めた。
だれもが振り向く美人なのに、こういうがさつなところが評判らしい。
私と違って、さつきは男女共学の高校に通っているけれど、彼氏っているのかな。
さつきの口から、男子の話を聞いたことがない。
私が女子校に通っているから遠慮している、というわけではなさそうだ。
さつきが私に遠慮することなんかありえない。
エッチとか、したことあるのかな……。
「あ、電車来た」
さつきの声で我に返った。
私ったら、一体何を考えてるの!
双子の妹の性事情を想像するなんて!
体中が熱くなり、脇や背中から汗が噴き出てくる。
「ねえ、あの電車おかしくない?!」
立ち上がって一歩先に出ていたさつきが叫ぶ。
私も立ち上がって視線をホームに向ける。
「光が……!」
まるで、光の玉がこちらに向かってくるようだった。
眩しくて目が開けていられず、私は両手で顔を覆って俯いた。
ふと、周りの音が聞こえなくなった。
あんなに激しく鳴いていた蝉の声さえ聞こえない。
「さつき………!」
叫んだはずの私の声も、なにかにかき消されてしまったようだった。
18歳。高校三年生。
群馬県のとある小さな町で暮らしている。
私とさつきは県内の違う高校に通っているけれど、私に双子の妹がいることは校内の殆どが知っている。
私たちはなぜか、昔から色々と注目される事が多い。
周りの人たちはみんな、私たちのことを「可愛い」「美人だ」と言ってくれる。
ふたり一緒に街中を歩けば、老若男女が振り向く。
たしかに、さつきは可愛い。
町一番可愛いと思う。群馬一、いや、日本一可愛いと思う。
顔が小さくて白い肌。ピンク色の艶やかな頬。
大きな目に、鼻筋が通った鼻。唇は薄くもなく厚くもなく、形が整っている。
天使の輪ができるくらい、艶やかでサラサラの黒髪は、いつも頭の上でひとつに高く結ばれている。
うなじが色っぽくて、後ろ姿だけでも美人だとすぐ分かる。
振り返った顔を見てがっかりするどころか、期待通りの美しさだ。
東京からわざわざ芸能事務所がスカウトに来るくらい、華やかでオーラがある。
そんなさつきと双子の私も、きっと可愛いのだろう。
でも、私には華やかさもオーラもない。
唯一勝っているとしたら、胸の大きさくらいかも知れない。
誰とでも仲良くなれて明るいさつきと違って、私は人見知りだし、何事もマイナス思考だ。
それに、みんなが可愛いって言ってくれる割に、この18年間、彼氏ができたことがない。
まあ、女子校に通っているから仕方がないのかもしれない。
そういうことにしておく。
目立つことが苦手なので、大きな銀縁フレームの眼鏡をかけている。
長い髪も苦手なので、小学生の頃からずっとボブより長くしたことはない。
いつの間にか、気配を消すことも得意になっていた。
本を読むことが大好きでインドア派。
最近は、自分でも小説を書いている。しかも、ちょっとエッチなやつ。
今年から官能小説に興味を持ち始め、受験勉強が疎かになっている。
夏休みに入ったらほぼ毎日、塾の夏期講習に通わなければいけないので、今書いている小説を早く完結させないと。
「暑すぎる……」
シャツの襟を大きく開けて、手で仰ぎながら、さつきがぽつりと呟いた。
私たちは今、ホームのベンチに座り、電車を待っている。
塾の帰りで、周りはすっかり暗くなっていた。
ホームには私たちしか居なかった。
「誰も居ないからって、そんな格好はしたないよ」
「いいじゃん。本当なら脱ぎたいところだよ。もー、汗で張り付いて気持ちが悪い」
「脱いだところで涼しくなる暑さじゃないでしょ」
「分かってるけどさぁ、あー、もう! こんな時間まで蝉も頑張るんじゃないよ! 余計暑くなるじゃん!」
さつきは蝉に八つ当たりをしながら、スカートを仰ぎ始めた。
だれもが振り向く美人なのに、こういうがさつなところが評判らしい。
私と違って、さつきは男女共学の高校に通っているけれど、彼氏っているのかな。
さつきの口から、男子の話を聞いたことがない。
私が女子校に通っているから遠慮している、というわけではなさそうだ。
さつきが私に遠慮することなんかありえない。
エッチとか、したことあるのかな……。
「あ、電車来た」
さつきの声で我に返った。
私ったら、一体何を考えてるの!
双子の妹の性事情を想像するなんて!
体中が熱くなり、脇や背中から汗が噴き出てくる。
「ねえ、あの電車おかしくない?!」
立ち上がって一歩先に出ていたさつきが叫ぶ。
私も立ち上がって視線をホームに向ける。
「光が……!」
まるで、光の玉がこちらに向かってくるようだった。
眩しくて目が開けていられず、私は両手で顔を覆って俯いた。
ふと、周りの音が聞こえなくなった。
あんなに激しく鳴いていた蝉の声さえ聞こえない。
「さつき………!」
叫んだはずの私の声も、なにかにかき消されてしまったようだった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】
うすい
恋愛
【ストーリー】
幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。
そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。
3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。
さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。
【登場人物】
・ななか
広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。
・かつや
不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。
・よしひこ
飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。
・しんじ
工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。
【注意】
※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。
そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。
フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。
※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。
※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
前世変態学生が転生し美麗令嬢に~4人の王族兄弟に淫乱メス化させられる
KUMA
恋愛
変態学生の立花律は交通事故にあい気付くと幼女になっていた。
城からは逃げ出せず次々と自分の事が好きだと言う王太子と王子達の4人兄弟に襲われ続け次第に男だった律は女の子の快感にはまる。
セックスの価値
神崎
恋愛
愛のないセックスを繰り返し、仕事と割り切るAV男優。
セックスを諦めて現実から逃避するように文章に逃げ道を作った官能小説家。
不器用に進んでいく二人の関係だが、その間は急速に進んでいく。
かなり直接的な表現があります。抵抗ない方だけどうぞ。
ミユはお兄ちゃん専用のオナホール
屑星とあ
恋愛
高校2年生のミユは、母親が再婚した父親の息子で、義理の兄であるアツシに恋心を抱いている。
ある日、眠れないと言ったミユに睡眠薬をくれたアツシ。だが、その夜…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる