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第4章 ウィルフレッドSide
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「わお……。これ、ウィルが作ったの?」
クロワッサンで作ったサンドウィッチとスクランブルエッグが乗ったトレイを差し出すと、ルカは感嘆の声を漏らした。
「君って、本当はやれば出来る子なんじゃない?」
なんだかとても失礼なことを言われているような気がする。
「ただ単に、パンに挟んだだけだよ。スクランブルエッグだって、誰だって作れるでしょ」
「そんなことないよ。スクランブルエッグって案外難しいんだよ」
「そうなんだ。はい。ハーブティ」
ハーブティをトレイの上に乗せると、ルカが体を強張らせた。
ハーブティがトラウマになっているみたいだ。
「大丈夫だって。なにも入れてないよ」
「あ、いや。別に、美味しそうだなって思っただけだよ」
小さく咳払いをして、取り繕う。そして、ハーブティの入ったカップに口を付けた。
「なーんて。残っていたのを一滴垂らしてみたんだけど」
「ぶーっ!!」
ルカが口に含んだハーブティを豪快に吹きだした。
「うわっ、汚いなぁ!」
「き、君が変なことを言うからだろう? まさか、本当に入れたんじゃないだろうな!」
ルカにしては珍しく声を荒げる。顔が真っ青だ。
冗談でも言うべきではなかったと反省する。
「冗談だよ。オレだってもう懲りたよ」
「なら良いけどね」
ルカはサイドテーブルからティッシュを引き抜いて、汚れてしまった布団と自分の口許を拭いた。
「ねえ。もし借りにウィルがあの催淫剤を飲んだとして、俺とキスしたら、効果は出ると思う?」
思いつきのような質問に、オレは眉間に皺を寄せる。
ルカはオレになんて答えて欲しいんだろう。
探るようにルカを見るが、いつものような爽やかな笑顔でその真意が読めない。
「さぁ。どうだろうね。実際にしてみないと分からない」
「ウィルフレッドはどう思ってるの?」
「知らないってば」
「少しは考えてくれてもいいじゃないか」
「うるさいな。サンドウィッチ食べないならオレが食べるよ」
皿の中からサンドウィッチを取ろうとすると、ルカは慌てて皿を庇った。
「せっかくウィルが作ってくれたんだから、食べるよ」
「だったら、早く食べなよ。今日は一日中ゴロゴロするんでしょ?」
「ウィルは?」
「仕方がないから、ゴロゴロに付き合ってあげるよ」
ぶっきらぼうにそう言って、大きな口を開けてサンドイッチを頬張った。
「暇つぶしに本を読んであげようか」
サンドイッチを食べ終わり、片付けをしているとルカがそう言った。
「官能小説?」
「違うよ。ユリシーズオススメの冒険もの」
ユーリちゃんのオススメと聞いて興味が惹かれた。
だからといって、オレから読んで欲しい、とは言えないのだけど。
「だったら、聞いてあげないこともない」
オレの物言いに、ルカは苦笑した。
サイドテーブルの上に置きっぱなしにしてあった本を取ると、最初のページをめくる。
ユーリちゃんが冒険ものが好きだとは以外だった。
幼い頃から病弱で、殆どベッドの中で生活していたそうだから、冒険して活躍する話しに憧れていたのかも知れない。
ルカの読み方も上手いから、話の展開にワクワクする。
しかし、途中から段々とねむ榎法が勝ってきた。
「ウィル? 眠い?」
「ん。平気」
「今日はここまでにしておこうか」
「ん」
「ウィル、あのさ、ぎゅってして良い?」
「え? 嫌だよ」
「えー……」
断ると、ルカはショックを受けたようにしょんぼりとしてしまう。
本当は、ずっとしたかったのかな。
「仕方がないから、ちょっとだけだよ」
そう言って、ルカの胸にもたれ掛かった。
「じゃあ、ちょっとだけ」
ルカは読んでいた本をサイドテーブルに置き、オレの躰を抱きしめた。
なんだかとても新鮮で照れくさい。
「今は性欲が湧き起こらないなぁ」
照れを誤魔化すように冗談を言う。
「湧き起こられても困るけどね」
「でも、オレ、回復力には自信が……」
言いかけて、あくびが出た。
今にも瞼がくっつきそうなくらいに眠い。
流石に、三日もろくに寝ていなければ、眠くなって当たり前だろう。
「ちょっと寝る」
ベッドに横たわると、直ぐさま意識が遠のいていった。
「……おやすみ」
瞼に優しいキスの感触を感じた。
オレがセックスもせずに、ルカの腕の中で眠りに落ちたのは、初めてのことだった。
クロワッサンで作ったサンドウィッチとスクランブルエッグが乗ったトレイを差し出すと、ルカは感嘆の声を漏らした。
「君って、本当はやれば出来る子なんじゃない?」
なんだかとても失礼なことを言われているような気がする。
「ただ単に、パンに挟んだだけだよ。スクランブルエッグだって、誰だって作れるでしょ」
「そんなことないよ。スクランブルエッグって案外難しいんだよ」
「そうなんだ。はい。ハーブティ」
ハーブティをトレイの上に乗せると、ルカが体を強張らせた。
ハーブティがトラウマになっているみたいだ。
「大丈夫だって。なにも入れてないよ」
「あ、いや。別に、美味しそうだなって思っただけだよ」
小さく咳払いをして、取り繕う。そして、ハーブティの入ったカップに口を付けた。
「なーんて。残っていたのを一滴垂らしてみたんだけど」
「ぶーっ!!」
ルカが口に含んだハーブティを豪快に吹きだした。
「うわっ、汚いなぁ!」
「き、君が変なことを言うからだろう? まさか、本当に入れたんじゃないだろうな!」
ルカにしては珍しく声を荒げる。顔が真っ青だ。
冗談でも言うべきではなかったと反省する。
「冗談だよ。オレだってもう懲りたよ」
「なら良いけどね」
ルカはサイドテーブルからティッシュを引き抜いて、汚れてしまった布団と自分の口許を拭いた。
「ねえ。もし借りにウィルがあの催淫剤を飲んだとして、俺とキスしたら、効果は出ると思う?」
思いつきのような質問に、オレは眉間に皺を寄せる。
ルカはオレになんて答えて欲しいんだろう。
探るようにルカを見るが、いつものような爽やかな笑顔でその真意が読めない。
「さぁ。どうだろうね。実際にしてみないと分からない」
「ウィルフレッドはどう思ってるの?」
「知らないってば」
「少しは考えてくれてもいいじゃないか」
「うるさいな。サンドウィッチ食べないならオレが食べるよ」
皿の中からサンドウィッチを取ろうとすると、ルカは慌てて皿を庇った。
「せっかくウィルが作ってくれたんだから、食べるよ」
「だったら、早く食べなよ。今日は一日中ゴロゴロするんでしょ?」
「ウィルは?」
「仕方がないから、ゴロゴロに付き合ってあげるよ」
ぶっきらぼうにそう言って、大きな口を開けてサンドイッチを頬張った。
「暇つぶしに本を読んであげようか」
サンドイッチを食べ終わり、片付けをしているとルカがそう言った。
「官能小説?」
「違うよ。ユリシーズオススメの冒険もの」
ユーリちゃんのオススメと聞いて興味が惹かれた。
だからといって、オレから読んで欲しい、とは言えないのだけど。
「だったら、聞いてあげないこともない」
オレの物言いに、ルカは苦笑した。
サイドテーブルの上に置きっぱなしにしてあった本を取ると、最初のページをめくる。
ユーリちゃんが冒険ものが好きだとは以外だった。
幼い頃から病弱で、殆どベッドの中で生活していたそうだから、冒険して活躍する話しに憧れていたのかも知れない。
ルカの読み方も上手いから、話の展開にワクワクする。
しかし、途中から段々とねむ榎法が勝ってきた。
「ウィル? 眠い?」
「ん。平気」
「今日はここまでにしておこうか」
「ん」
「ウィル、あのさ、ぎゅってして良い?」
「え? 嫌だよ」
「えー……」
断ると、ルカはショックを受けたようにしょんぼりとしてしまう。
本当は、ずっとしたかったのかな。
「仕方がないから、ちょっとだけだよ」
そう言って、ルカの胸にもたれ掛かった。
「じゃあ、ちょっとだけ」
ルカは読んでいた本をサイドテーブルに置き、オレの躰を抱きしめた。
なんだかとても新鮮で照れくさい。
「今は性欲が湧き起こらないなぁ」
照れを誤魔化すように冗談を言う。
「湧き起こられても困るけどね」
「でも、オレ、回復力には自信が……」
言いかけて、あくびが出た。
今にも瞼がくっつきそうなくらいに眠い。
流石に、三日もろくに寝ていなければ、眠くなって当たり前だろう。
「ちょっと寝る」
ベッドに横たわると、直ぐさま意識が遠のいていった。
「……おやすみ」
瞼に優しいキスの感触を感じた。
オレがセックスもせずに、ルカの腕の中で眠りに落ちたのは、初めてのことだった。
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