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11.ご奉仕★

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 前のメイド服よりも丈が長くなったとはいえ、股間の辺りがスースーするので、落ち着かない。オレは言葉少なく、紅茶のカップに口をつけているだけだった。
 そんなオレとは正反対に、ルカはいつもより饒舌だ。

「俺の初恋は、エヴァンズ家の屋敷に来ていたメイドだったんだよ。黒くて清楚なワンピースと、白いエプロンがとても似合っていて、いつかは彼女と付き合いたいって思った。まだ十五歳くらいだったから、彼女とは付き合えなかったけど」
「もしかして、初恋の人を思い出したくてオレにこの服を着させたとかじゃないよね?」

 疑るような視線を向けると、ルカはとんでもないと頭を振った。

「初恋の話は、メイド姿の君を見て思い出したんだ」
「本当かな?」
「本当だよ。それに、私服姿の彼女を見て、あまりの雰囲気の変わりように恋が冷めたっていうおまけ付きだしね」
「そのメイドはどうしたの?」
「結構長く勤めてくれたけど、結婚してエヴァンズ家のメイドは辞めたよ。彼女の後に来た人が、俺の初めての人」
「なんだ。結局、メイドに手を出してるんじゃん」

 冷ややかな顔で突っ込みを入れる。女性を抱いたことがないオレは、ルカに嫉妬心を覚えていた。しかし、ルカが自分のことを話してくれるのは珍しいので、嬉しくもあった。

「あはは。そうだったね。でも、俺との関係が義父にばれて、その人は辞めさせられてしまった。そういえば、そのあとも何人かメイドと付き合ったな」
「手近で済ませすぎじゃない?」
「でも、みんな魅力的だったんだよ。まあ、彼女たちはみんなベータだったから、義父に邪魔されたけど」

 ルカは忌まわしげな表情で言った。養子先と上手くいっていなかったのは、恋路を邪魔され続けたことも原因の一つのようだった。

「彼女たちは、真摯的にエヴァンズ家に仕えてくれた。今思えば、彼女たちに母性を求めていたのかもね。だから、あんな風にちゃらちゃらした恰好が「メイド」っていうのは、許せないんだ」
「ルカのメイドに対する思い入れはよく分かったよ。清楚なメイドが好きなルカは、この後、オレをどうするの?」
「どうして欲しい?」
「それをオレから言わせるわけ?」
「ごめん。なんだか、その恰好をしている君が別人みたいで恥ずかしくて。――ベッドに誘いたいんだけど、いいかい?」
「しょうがないな。ベッドの中で沢山ご奉仕してあげる」

 オレは立ち上がり、ルカの手を引いてベッドに誘導した。



「ん、んふ……ぅ」

 最初は口の中に全て収まっていたペニスも、硬くなり角度を持ち始めると、口の中に収まりきらなくなってくる。一旦口を離して、舌先で根元から先端に向かって舐め上げた。
 上目遣いでルカの顔を覗うと、彼はうっとりと気持ち良さそうな顔でオレのことを見下ろしていた。
 自分の口淫でルカが気持ち良くなってくれていることが嬉しかった。
 口でするのは風俗だけだと思っていたので、ルカにはあまりフェラチオをしなかった。しかし、実はルカはオレに口でされることが好きなようだ。口ですると硬さが増すのも早い。
 亀頭部分を口に含み、少々強めに啜る。

「……ッ、ウィル、もういいよ……」

 頭を撫でられて口を離したけれど、溢れた先走りが勿体なく感じて、舌先で転がすように鈴口の窪みを舐め上げる。

「ほら、横になって」

 素直に従ってベッドに仰向けに寝そべったオレの上に、ルカが覆い被さる。唇に軽く啄むようなキスを落とす。

「ん……」

 触れるだけのキスに焦れて舌を差し出すと、すかさず絡み取られ、強く吸われた。

「むん……ぅ……、ん、ん……」

 オレも自分から舌を絡ませ、負けじとルカの口腔を犯す。互いの唾液があふれ出し、飲み込みきれなかったものが口端を伝って、口元を汚した。

「ん……、ふ……っ」
「はは……、久々に、キスに夢中になってしまった」

 唇を離たルカは恥ずかしそうに笑うと、汚れてしまったオレの口元を指先で拭った。名残惜しそうに、唇をぷにぷにと突っついてくるルカの指を、カプリと咥える。

「こら、噛むんじゃない」

 ルカが慌てて指を引っ込む。

「ねえ、服は脱がなくていいの?」

 潤んだ瞳でルカを見上げた。オレは服を着たままだし、ルカもズボンと下着を腰の下まで下げただけの状態だった。

「うん。まだ脱がなくていいよ。その代わり、スカートめくって見せて」
「げ。変態。嫌だよ。恥ずかしい」
「いいじゃないか。スカートの中、どうなってるのか知りたい」

 ルカの熱の籠もった視線にから顔を背け、小さく溜息をついた。ゆっくりとスカートの裾を掴むと、そのまま腹の辺りまで持ち上げた。想像以上に恥ずかしく、耳の先まで熱くなった。

「凄いな。ショーツからはみ出してる。しかも、こんなに濡らして……」

 先走りで濡れたショーツは、透けて張り付き、勃起したペニスの形をくっきりと浮き立たせていた。亀頭や陰嚢はショーツからはみ出し、何とも言えない卑猥さだ。
 ルカは思わずゴクリと喉を鳴らした。
オレの陰嚢を揉みながら、ショーツから顔を出した亀頭は指先で弄くる。

「や……、やだっ」

 ショーツを穿いたまま弄られることが恥ずかしくて、頭を横に振った。
 嫌がるオレを無視して、ルカはショーツごとオレの陰嚢を口に含み、転がすように舐め回した。

「あ、あぁ……、あ……ッ」

 陰茎の根元を扱きながら、両方の玉を丹念にしゃぶる。
 腰が勝手に揺れてしまう。

「ウィル、気持ち良い?」
「ん……、いい……」
「良かった。ウィル、腰上げて」

 素直に腰を浮かせると、ショーツを膝の辺りまで脱がされた。そして、両膝が胸に付くくらいまで押し上げられる。

「ストッキングは素足よりも艶かしいね。良い眺め」
「や……っ、変態……っ」

 罵倒しながらも、晒された後孔は物欲しげにひくついてしまう。

「こんな恰好で俺に抱かれてる君も君だけど?」

 ルカはサイドボードに用意しておいたローションを手早く取り出すと、誘うようにひくつかせる蕾にゆっくりと垂らしていく。

「冷たい……っ」

 オレの抗議を無視して、ルカは中指の腹を蕾に押し当てて、揉むようにして撫でた。そのままゆっくりと中指を挿入していき、ぐるりと掻き回すように指を動かす。
 内側のしこりを指が掠める度に、躰が大きく跳ねた。そのまま解していきながら、指の数を三本まで増やされる。後孔をかき混ぜられる度に聞こえる、ぐちゅ、ぐちゅという粘着質な水音が、さらに興奮を掻立てた。

「あ、ああ……っ、ルカ……、もう……」

 指で前立腺を執拗に嬲られ、強い快感に泣きたくなる。

「違うだろう。坊ちゃん、だよ」
「まだ、続ける気?」

 メイドごっこをしていることをすっかり忘れていた。

「いいじゃないか。君がメイドの格好をしている間は、堪能させてくれよ」
「……ぼっちゃん、もう、挿れて、下さい……」
「いやらしいメイドさんだ」

 指が引き抜かれ、体がぶるりと震えた。朱色の肉壁を晒している淫孔に、ルカのペニスがゆっくりと入り込む。

「ぁ……、あんッ、……んぅ……」

 浅い、ゆっくりとした抽挿に、腰が揺れてしまう。

「ぼっちゃん……もっと……」
「たまになら、こういうのも楽しいかも」

 楽しそうに笑ったルカが、ベッドの上に投げ出したオレの手に、そっと指を絡ませた。オレも彼の指をぎゅっと握り返す。すると、ルカはオレの耳元に唇を寄せた。

「たとえ、どんなことがあっても、俺はずっと君と一緒にいる」

 甘い囁きに、体がびくんと跳ねる。
 それは、ルカが読み聞かせをしてくれた、メイドと貴族のラブストーリーの台詞。
 ルカはいらずらっぽく笑った。

「メイドさんごっこ、だろ?」
「だけど……っ」

 今此処で、その台詞を持ってきた意図は何だろう。しかし、考える余裕を与えられる間もなく、激しい抽挿に変わった。

「ア……ッ、はげし……っ」

 深く腰が押し込まれる。

「あ、ああァッ、ルカ……っ」
「ん……、ふぅ……、ウィル、いきそう?」
「ん、イク……ッ、いきたい……っ」
「じゃあ、一緒にいこうね」

 ルカは、後孔を突く度に腹と服の上にを先走りと飛ばしながら揺らしているオレのペニスに手を伸ばすと、少し強めに扱いた。

「あ、ああぁ、――ア……ッ」

 オレは、めくれて腹の辺りでしわくちゃになっている黒いスカートの上に、白い精液を吐き出した。

「くっ、ウィル……ッ」

 大きく腰を打ち付けてから動きを止めたルカは、ビクンビクンと何度か腰を震わせながら、オレの中に熱い迸りを注ぎ込んだ。



「……なんか、凄く悔しい」

 つい、不満げな声が出てしまう。

「なにが?」
「ルカに良いようにされた……」

 快楽に負けて、ルカの言いなりになってしまったことが悔しかった。しかも、ショーツを下ろしただけで、服は全て着込んだままだ。

「酷い言い方だな。ウィルだって気持ち良かっただろう?」
「それはそうだけど……」
「じゃあ、もう一回しようか」
 もう一回。それは、いつもはオレの台詞だった。
 ルカから求められたことが嬉しくて、彼の胸に抱きついた。いつもなら、ここでもったいぶるところだが、今日は不思議と素直に嬉しさを表現することができた。

「――次は裸がいい。ルカの体温が欲しい……」
「ふふ。可愛いことを言ってくれるね」
「可愛いって言うな」

 オレの抗議に、ルカは小さく笑った。可愛いと言ってもらえなくて散々怒っていたことは、この際棚上げしておく。

「ごめん。次は、裸で愛し合おうか」
 ルカはオレの唇にキスを落としながら、背中のファスナーを下ろしていった。
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