転生したので好きに生きよう！

第二章ドラゴニア帝国編

報復

　とても良い夢を見ていたような気がするけれど覚醒してくると覚えていないのが夢だ。ただ心臓だけは嬉しそうに鼓動を打つ。困惑気味に小首を傾げるている私の背後ではノアさんとスヴェンさんとが対峙していた。

「目が覚めたか」

「ああ、覚めたとも！目を開けた瞬間何が起こったのか分からなかったよ！！何で俺はこんな乙女趣味な場所で寝てたんだよ！！！」

「この屋敷の執事が案内したのがここだった」

「だからってここに寝かせる事無いだろうが！他の客室は無いのかと尋ねなかったのかよ！」

「まあ、良いかなと」

「男がこんな場所で寝てたら正気を疑えよ！！」

「む？私は寝られれば何処でも良いのだが」

「それはあんただからだろ！俺は違うからな！確かに何処でも寝れるけどこんな場所で目覚めたくなかったよ！！」

　スッゴい言い争いしているけどヒートアップしてるのはスヴェンさんだけだ。ノアさんはいつもの通りのマイペースさ。

「許可を出したのは姫だがな」

「ニア！！！！」

「！」

　おっと、こっちにお鉢が回ってきた！え～、そこまで怒らなくても良くね？

「あい」

「ここに寝かせて良いと許可を出したのはニアか」

　振り向いたらスヴェンさんのお怒り顔だった。

「恥ずかちい？」

「当たり前だろ！」

「ふかふかのべっちょにねりぇるのは良いこちょよ？床で寝りゅのは、かちゃいし、ちゅめちゃいよ？」

「……」

「ねりゃりぇりぇば何処でも良いっちぇゆうノアしゃんは正ちいちょ思うよ？」

　お金に困っていたりする人とかはこんなふかふかなベッドで、寝られないだろう。場合によっては一生縁がない事だってある。

　ベッドがあったとしても硬い事だってある。なのにスヴェンさんは恥ずかしいと言う理由だけでこのベッドが嫌だと言う。それはこの客室を整えてくれ、案内してくれた人に失礼だと思う。

「そうだよな…俺も言い過ぎた」

「あい」

　自分の非を認め、怒りを納めるスヴェンさんにホッと溜め息を漏らす。ノアさんは早々に本へと視線を落としていた。

　長い足を組み、その上に本を乗せている様は一枚の絵のようだと日頃から思っていた。それに意識を持っていかれていた為なのか、

「で？本音は？」

「面白そうだったから」

　ポロッと本音が転げ出た。しまったと思った時には後の祭りでスヴェンさんにアイアンクローを喰らっていた。

　これが痛いのなんのって！痛いの！全力で抵抗するけど幼児と大人の腕力差があり、到底太刀打ち出来なかった。

「ジュールそっくりだな」

　組んだ足の上に頬杖をついてぽそっとノアさんが溢した呟きは私の泣き叫ぶ声で誰にも届かなかった。