転生したので好きに生きよう!

ゆっけ

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第二章ドラゴニア帝国編

竜帝は休みを所望する

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 ジュールさんが下敷きにしている書類に今もトクトクとインク壺から黒いインクが流れ出て、書類を黒く染めていく。

 よく見ると倒れたジュールさんの手の外側には黒いインクが擦れた後がある。長い間書類仕事をした後なのだろう。学生時代にシャーペンや鉛筆で文字を書いては自分で擦ってしまって手が汚れる事が日常茶飯事だったのを思い出した。

「う?」

 生きているのかな?死んでるのかな?心配した方が良いのだろうけどもノアさんが特に反応していないので多分生きてる筈。

 床に降りたくて私はノアさんの服を引っ張ると私の思考を読んだのか降ろしてくれた。

 ぽてぽてと歩いてジュールさんに近付くとガバッとジュールさんが飛び起きて私を抱き締めた。

 ビックリして固まっているとノアさんの長い腕が伸びてきてジュールさんの頭を掴んだ。所謂アイアンクローをかますノアさん。

「いたたたたたっ!ノア痛い!痛い、痛い」

「では放せ」

 ジュールさんが悲痛な叫びをあげるがノアさんは不機嫌そうな低い声で言い放ち、頭を掴む力を緩めないのかジュールさんの頭がギシギシと締め付ける音が聞こえる。

 暫く私を挟んでの攻防が続いた。先に折れたのはジュールさんだった。

「ノアは最近私に対して遠慮がないよね」

「遠慮していると先に進まないと言う事に最近気が付いた」

 涙目になっているジュールさんがノアさんを見上げるけど今だに私はジュールさんの腕の中。

「ジュールしゃん、ご用は何?」

「うん、話が早いね。私はここの所、休みがない。切実に今!休みが欲しい!休息!必要なのはバケーション!!」

 ジュールさん、大分御疲れですね。テンションがおかしな事になってるよ。

「王しゃまは皆の模範になりゃないといけないの」

「うん、分かってるよ?それは十分に分かってるんだけどね。ちょっと息抜きがしたいんだ」

「今できる事をしないで後悔しない?」

「そこまで緊急を要する案件は上がってきていないんだよ。だからこその休暇を申請したい」

「王しゃまは国民の奴隷でしゅ」

「今から末恐ろしい事言ってるんだけど?何処で覚えたの、そんな言葉」

「利発だろう?」

「利発とかって言うレベルじゃないよ!」

 ジュールさんが頭を抱えて蹲った。その場に大きなお饅頭ができあがった。

「国をしゃしゃえていりゅのは国民でしゅ。その国民をしゃしゃえるのが王しゃまの役割でしゅ」

「逆三角形の話でしょ!!それ耳タコ!!」

「つまり…」

 ノアさんがジュールさんへと追い討ちをかけようとしている。とんだドSっぷりだねノアさん。

「働け」

 あ、ジュールさんが撃沈した。可哀想に。まあ、壁際に追い込むような事したのは私なんだけどね。まさかトドメを刺すとは思ってなかったよ。

 チラリとノアさんを見るとなんか楽しそうな顔で笑ってた。


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