17 / 100
第一章ヒューマニ王国編
王様はいたって普通①
しおりを挟む
マイルズさんの部屋から出るとまた長い回廊を通り、大きな回廊へと出た。そこには長い毛足の高級そうな青い絨毯が敷かれ、それを踏み締めて三人で王族が住む王城の奥へと移動する。
物珍しい物が並ぶ回廊に光を反射するシャンデリアや国王や王妃達を描かれているだろう絵画、古い年代物の香炉など置かれているのをぼんやりと見ていた。
長い毛足の絨毯を歩く度にクリフさんのトストスという足音が鳴るのに合わせて私も声を出す。
「う、う、う」
音に乗るように手足もぐっぱ、ぐっぱしながらバタバタ。それをカイルさんは蕩けるような微笑みを湛えて見守ってくれている。
長い長い主回廊の先には大きな両開きの扉があり、近付くことで異様な大きさに若干引く。こんな大きくする意味があったのか謎な位の大きさなんだよ。開けるのも大変じゃない?大きさは大体十メートル位で見上げる大きさ。
その大きな扉の前には衛兵が右に二人、左に二人警備している。その衛兵にクリフさんは話し掛ける。
「第四騎士団団長クリフ、以下第四騎士団副団長カイル、同じく副団長スヴェン。国王陛下に大至急謁見願いたい」
高らかに言い放った言葉に警備していた衛兵の一人がその場を離れた。
暫くその場で待つ事になるだろうと思い、キョロキョロしていると衛兵の一人と目が合った。その人はとっても普通だった。体は鍛えていて屈強そうだけど顔が良く言えば普通、悪く言うと地味な男性だった。
カイルさんやらスヴェンさんやらマイルズさんの美形に囲まれていた私の目は肥えてしまったのかこの男性の普通さにホッとする。
顰めっ面をしているので私はニコッと愛想笑いを振り撒き、他の場所を物珍しげに眺める。
まさか私の笑顔を見た男性が頬を赤らめて口角を緩めたのを見たカイルさんが射殺さんばかりに殺気を放っていたとは気付かなかった。スヴェンさんとクリフさんがやれやれと言う呆れた表情でそっぽを向いていた。
あちこち見回すのに飽きた私はうとうとと微睡みし始めた。それに気付いたカイルさんが緩く揺らし出した事でちょうど良い刺激に目蓋がくっつきそうになった瞬間、
「お待たせいたしました。陛下が御会いに…ひっ」
離れていた衛兵さんが帰ってきたのでその声で目が覚めた。
「カイル…」
「お前、どんだけ…」
「せっかく寝そうだったのにそれを妨害するとは死にたいのですか?」
どしたどした、カイルさん?何をそんなにお怒りでいらっしゃるの?ほ~ら、落ち着いて。
手を伸ばして落ち着くようにとカイルさんの頬をペタペタしてみる。美形って凄いね。お肌までスベスベなの。羨ましい限りです。
「ニア」
私のぷくぷくした手を握るとおでこに一つキスをした。カイルさん、将来きっと良いお父さんになるね。
ニパッと笑うとカイルさんも落ち着いたのかまたあの腰砕けになりそうな蕩けるような微笑みを浮かべた。
「『絶対零度の女神』が笑った」
「美しい」
「俺、もう彼女と別れる」
「俺も」
「女神と結婚したらあの赤ん坊を養子にして家族になるぞ」
「良いな…」
なんか、不穏な事を言ってるけど?それをまるっと無視するカイルさん。
物珍しい物が並ぶ回廊に光を反射するシャンデリアや国王や王妃達を描かれているだろう絵画、古い年代物の香炉など置かれているのをぼんやりと見ていた。
長い毛足の絨毯を歩く度にクリフさんのトストスという足音が鳴るのに合わせて私も声を出す。
「う、う、う」
音に乗るように手足もぐっぱ、ぐっぱしながらバタバタ。それをカイルさんは蕩けるような微笑みを湛えて見守ってくれている。
長い長い主回廊の先には大きな両開きの扉があり、近付くことで異様な大きさに若干引く。こんな大きくする意味があったのか謎な位の大きさなんだよ。開けるのも大変じゃない?大きさは大体十メートル位で見上げる大きさ。
その大きな扉の前には衛兵が右に二人、左に二人警備している。その衛兵にクリフさんは話し掛ける。
「第四騎士団団長クリフ、以下第四騎士団副団長カイル、同じく副団長スヴェン。国王陛下に大至急謁見願いたい」
高らかに言い放った言葉に警備していた衛兵の一人がその場を離れた。
暫くその場で待つ事になるだろうと思い、キョロキョロしていると衛兵の一人と目が合った。その人はとっても普通だった。体は鍛えていて屈強そうだけど顔が良く言えば普通、悪く言うと地味な男性だった。
カイルさんやらスヴェンさんやらマイルズさんの美形に囲まれていた私の目は肥えてしまったのかこの男性の普通さにホッとする。
顰めっ面をしているので私はニコッと愛想笑いを振り撒き、他の場所を物珍しげに眺める。
まさか私の笑顔を見た男性が頬を赤らめて口角を緩めたのを見たカイルさんが射殺さんばかりに殺気を放っていたとは気付かなかった。スヴェンさんとクリフさんがやれやれと言う呆れた表情でそっぽを向いていた。
あちこち見回すのに飽きた私はうとうとと微睡みし始めた。それに気付いたカイルさんが緩く揺らし出した事でちょうど良い刺激に目蓋がくっつきそうになった瞬間、
「お待たせいたしました。陛下が御会いに…ひっ」
離れていた衛兵さんが帰ってきたのでその声で目が覚めた。
「カイル…」
「お前、どんだけ…」
「せっかく寝そうだったのにそれを妨害するとは死にたいのですか?」
どしたどした、カイルさん?何をそんなにお怒りでいらっしゃるの?ほ~ら、落ち着いて。
手を伸ばして落ち着くようにとカイルさんの頬をペタペタしてみる。美形って凄いね。お肌までスベスベなの。羨ましい限りです。
「ニア」
私のぷくぷくした手を握るとおでこに一つキスをした。カイルさん、将来きっと良いお父さんになるね。
ニパッと笑うとカイルさんも落ち着いたのかまたあの腰砕けになりそうな蕩けるような微笑みを浮かべた。
「『絶対零度の女神』が笑った」
「美しい」
「俺、もう彼女と別れる」
「俺も」
「女神と結婚したらあの赤ん坊を養子にして家族になるぞ」
「良いな…」
なんか、不穏な事を言ってるけど?それをまるっと無視するカイルさん。
100
お気に入りに追加
532
あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

離婚したので冒険者に復帰しようと思います。
黒蜜きな粉
ファンタジー
元冒険者のアラサー女のライラが、離婚をして冒険者に復帰する話。
ライラはかつてはそれなりに高い評価を受けていた冒険者。
というのも、この世界ではレアな能力である精霊術を扱える精霊術師なのだ。
そんなものだから復職なんて余裕だと自信満々に思っていたら、休職期間が長すぎて冒険者登録試験を受けなおし。
周囲から過去の人、BBA扱いの前途多難なライラの新生活が始まる。
2022/10/31
第15回ファンタジー小説大賞、奨励賞をいただきました。
応援ありがとうございました!

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜
青空ばらみ
ファンタジー
一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。
小説家になろう様でも投稿をしております。

モブっと異世界転生
月夜の庭
ファンタジー
会社の経理課に所属する地味系OL鳳来寺 桜姫(ほうらいじ さくらこ)は、ゲーム片手に宅飲みしながら、家猫のカメリア(黒猫)と戯れることが生き甲斐だった。
ところが台風の夜に強風に飛ばされたプレハブが窓に直撃してカメリアを庇いながら息を引き取った………筈だった。
目が覚めると小さな籠の中で、おそらく兄弟らしき子猫達と一緒に丸くなって寝ていました。
サクラと名付けられた私は、黒猫の獣人だと知って驚愕する。
死ぬ寸前に遊んでた乙女ゲームじゃね?!
しかもヒロイン(茶虎猫)の義理の妹…………ってモブかよ!
*誤字脱字は発見次第、修正しますので長い目でお願い致します。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる