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皆さん、私こそがザ•悪役令嬢です。聖女から王子を奪ったのですから!早くざまぁして……なぜ?なぜ誰もざまぁしにこないのですか?

もう私には"ざまぁ"は回ってはきません

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そして舞踏会が始まりました。
私は案の定みすぼらしい格好をした聖女フィーナを見つけ、恥ずかしい、よく顔を見せられましたわね、そんな古臭いドレスを着て、あなたの世話を命じられた貴族は正気ですか、などとヘイトを撒き散らしておきました。

なぜかフィーナの近くで震えている女性がいましたが気にしてもしょうがないでしょうか。
まぁいいです。これで踊るときにはきっと性格ブスな私には王子の相手は相応しくないと私からレオン王子を奪う方が出てくるでしょう。

もしくはとばっちりですがレオン王子をすら"ざまぁ"するような強力なザ•主役が出てくるでしょう……ドキドキワクワク。

「さぁメルテナ。私とともに踊ってくれ。今宵の君はより美しいな。その崇高な愛を受ける栄誉を私に」
そのような歯の浮きそうなセリフを吐きながら私の手を優雅に取っていただき、優しくリードしながら踊ってくださいました。
あぁ、なんて美しい王子。
思わず我を見失い、幸せな時に浸ってしまいました。
王子の胸に顔を埋めながら……。

そして気づけば周りの貴族たちもレオン王子と私に見入っています。

って、あれ?
大丈夫でしょうか?
1曲終わってしまいました。
もしもーし、"ざまぁ"実行者さん。何をしているのですか?

あっ、そういうことですね。わかりました。
今は私達を上げるタイミングなのですね。そこから劇的に落として"ざまぁ"するために。
ですよね~ゾクゾクします。
こんなにいい気分から、まるで豚の餌かのように粗末に乱暴にぶちまけて貰えるのですね……うっとり。


それにしても聖女フィーナはどうしたのでしょうか?
舞踏会の前に散々罵っておいたのに、どこに行ったのでしょうか?
そして、何をおとなしくしているのでしょうか?

私は不満を感じながらもこの場を見渡しました。
あっ、いました……って、えぇ?
聖女フィーナは筋肉ゴリラと踊っていますね。
はは~ん。なるほどです。そういうことですね。

聖女を捨てて私のような悪女を選んだレオン王子はきっと罰を受けて廃嫡となり、新たに聖女を選んだ筋肉ゴリラが王となるのですね。
そしてレオン王子と私は田舎に送り飛ばされる"ざまぁ"を受けると……。

わかりました。心の準備も万端です。
ほら、筋肉ゴリラと聖女が前に出てきます。
ファイトよ!

「兄上、婚約おめでとうございます。そして私とフィーナのことを支援いただきありがとうございます」
なぜかレオン王子にお礼を言う筋肉ゴリラさん。
なにか雲行きが怪しいですね……。

「いいのだ。似合ってるではないか」
「ありがとうございます」
その筋肉ゴリラを褒めるレオン王子と素直に礼を言う筋肉ゴリラ……あれぇ?

「レオン王子、私からもお礼を。お互い様ではあるのでしょうが、私の意見も尊重してくださってありがとうございます。おかげでルドルフ様と話し合い、理解を得ることができました」
そしてフィーナ聖女までもがレオン王子に丁寧にお礼を述べ、頭を下げています……なんで?

「メルテナ様も。私が婚約破棄で不利な噂を流されたりせぬよう悪者のように振る舞ってくださって……」
なっ、何を言い出すのでしょうか、このアホ聖女は。違います。皆さん違うのです。

私はれっきとした悪女で"ざまぁ"されるべき人間なのです……ってもう誰も聞いてくれなさそうですね……。

私はどこで間違えたのでしょうか。聖女フィーナが何か言っていますが頭に入ってきません。

「今日もフィーナが嫌がらせのように押し付けられて着ていたドレスを罵ることで私が用意したものを手渡すきっかけをいただきありがとうございます」
筋肉ゴリラも私にまで頭を下げながら何か言っていますが頭に入ってきません。

「そうだったのかメルテナ。流石だな。婚約破棄のときは何か考えがあってやっているのだろうとは思いつつ、ルドルフの発言が許せず邪魔してしまってすまないと思っていたのだ。しかし、さすがに今日も罵るのはなんでだろうと思っていたが、そうか、聖女フィーナに嫌がらせをしている勢力があることを読んで、さり気なく着替える……しかもルドルフが用意したものに変える機会を作っていたのか。見事だな。それでこそ私が選んだ妃だ」
もう泣きそうです。
きっともう私には"ざまぁ"は回ってはきません。

理解してしまいました。

レオン王子はとてもいい笑顔で弟である筋肉ゴリラのルドルフ王子や聖女フィーナ、他にもこの場にいる様々な貴族たちから祝福の言葉を受けています。

しかし、私は皆から罵られ、"ざまぁ"されるという妄想に別れを告げなくてはならず、祝福の言葉が耳に入ってきません。


そんな失意の私をよそに、聖女フィーナと筋肉ゴリラが愛し合っているということもまた衆目の知るところとなり、そちらも祝福されています。


どうしてこうなったのでしょうか。



私はどこで間違えたのでしょうか?



鳴り響く拍手はいつまでもいつまでも止むことはありませんでした。



これはこれで幸せなので悪くはないでしょうか……。
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