19 / 48
羊になる呪い
婚約破棄と旅立ち
しおりを挟む
「キミとの婚約は破棄させてもらう!いずれ羊になるような女を王妃にするわけにはいかないからな!」
魔王の最後っ屁みたいな呪いで3年後には羊になってしまう私に対して嫌そうな表情じ言い放ったこの男がこの国の王太子で勇者のバカ……すみません、ついつい辛らつな表現をしてしまいました。
バルカン……略してバカです。
魔王の呪いからお前を庇ってやったのに、なんという言い草なのでしょうか。
そもそも、魔王の攻撃からも、手下の攻撃からも、魔王城の罠からも、もっと言えば、その辺のモンスターからも庇ってやっていたというのに。
あれ?なんでこの人が勇者なんでしたっけ?
まぁ、魔王亡き今、そんなことはどうでもいいことですね。
魔王を討伐して帰国したのちに全ての事象を報告していた国王陛下も、なんならお前が娶りたい魔導士すらも申し訳なさそうな顔をしてこちらを見つめています。
いまは魔王討伐を讃えるパーティーの真っただ中で、パーティーの中心たる勇者バルカンが、聖女である私、ラムに婚約破棄を言いだしたのですから、当然ながら場は騒然としています。
空気を読まない鈍感力を盛大に発揮しているのは勇者のバカだけです。
あぁ、もう一人気にしていない人がいました。
私です。
私も気にしていませんので、国王陛下と魔導士のエレナに手を振って気にしないでと伝えます。
私にはやるべきことがあるので、さっさとこのパーティーを追えて旅に出たいのです。
えっ?なにをするかですって?
それを話すには私の呪いのことを話さないといけないですね。
この呪いは死にゆく魔王が最後の力を振り絞って放ったもので、それを受けた私は3年後には羊になってしまいます。
だから……えっ?それだけかって?
それだけとはなんですか!
うら若き美しい私が羊になってしまうのですよ?
世界の損失です。
だからなんとしても止めようと、国王陛下は伝手を使って方々の魔導士に尋ねてくださったのですが、誰も解呪はできないとのこと。
であれば、それはもう確定事項としてどうしていくかを考えなければならないのです。
だから、私はこれから旅をして、世界で最も居心地が良い牧場を探さないといけないのです!
きっと羊になるのですから、羊に対して恋もできると思うので、それはもういいのです。
居心地の良い牧場であれば、きっとハンサムで優しくて力強いステキな雄の羊がいるはずです。
なので、そこは置いておいて……って、なんですか?
人間に戻る方法を探さないのか?ですか?
あぁ、え~と、牧場を探すついでくらいには探すつもりですが、可能性が低そうなんですよね。
「行ってしまうのですか……?」
パーティーを終え、出待ちしていたゴシップ記事を扱う3流新聞紙の記者に私が魔王の呪いから勇者を救ったこと、その勇者から呪いのせいで婚約破棄を言い渡されたことについて記録した宝珠を渡した私に声をかけてきたのは仲間の武闘家のカイルです。
目に涙を貯めてくれています。可愛いですね……。
私たちは勇者バルカン、聖女ラム、魔導士エレナ、武闘家カイル、騎士フィリアの5人のパーティーだったのです。
役目を果たしたフィリアはさっさと神殿に帰ってしまいましたが、あれはどうやらバカに色目でも使われたので気持ち悪さに鳥肌を浮かべて逃げたのでしょうね。
エレナは大丈夫でしょうか?
きっとバカの首にひもでも巻き付けた上で、掌で転がして自分は楽しく生きていくつもりなのでしょう。
バカのことは記憶から削除完了です。
「この国の西方、エガルド山脈のさらに西に力ある魔女が住んでいるらしい。高齢のため出てこないが、辿り着ければ呪いを解いてもらえるかもしれない」
カイルは真面目で優しい10歳の男の子なので、彼が幸せになるといいなと思いながら、私は無言でこの場を後にしました。
西の魔女……ご存命であることを祈りながらまずはそこを目指しましょうか。
旅に出ると言っても、魔王を倒すために世界を旅していた私でも居心地の良い牧場のありかなど探したことがないので見当もつきませんから。
魔王の最後っ屁みたいな呪いで3年後には羊になってしまう私に対して嫌そうな表情じ言い放ったこの男がこの国の王太子で勇者のバカ……すみません、ついつい辛らつな表現をしてしまいました。
バルカン……略してバカです。
魔王の呪いからお前を庇ってやったのに、なんという言い草なのでしょうか。
そもそも、魔王の攻撃からも、手下の攻撃からも、魔王城の罠からも、もっと言えば、その辺のモンスターからも庇ってやっていたというのに。
あれ?なんでこの人が勇者なんでしたっけ?
まぁ、魔王亡き今、そんなことはどうでもいいことですね。
魔王を討伐して帰国したのちに全ての事象を報告していた国王陛下も、なんならお前が娶りたい魔導士すらも申し訳なさそうな顔をしてこちらを見つめています。
いまは魔王討伐を讃えるパーティーの真っただ中で、パーティーの中心たる勇者バルカンが、聖女である私、ラムに婚約破棄を言いだしたのですから、当然ながら場は騒然としています。
空気を読まない鈍感力を盛大に発揮しているのは勇者のバカだけです。
あぁ、もう一人気にしていない人がいました。
私です。
私も気にしていませんので、国王陛下と魔導士のエレナに手を振って気にしないでと伝えます。
私にはやるべきことがあるので、さっさとこのパーティーを追えて旅に出たいのです。
えっ?なにをするかですって?
それを話すには私の呪いのことを話さないといけないですね。
この呪いは死にゆく魔王が最後の力を振り絞って放ったもので、それを受けた私は3年後には羊になってしまいます。
だから……えっ?それだけかって?
それだけとはなんですか!
うら若き美しい私が羊になってしまうのですよ?
世界の損失です。
だからなんとしても止めようと、国王陛下は伝手を使って方々の魔導士に尋ねてくださったのですが、誰も解呪はできないとのこと。
であれば、それはもう確定事項としてどうしていくかを考えなければならないのです。
だから、私はこれから旅をして、世界で最も居心地が良い牧場を探さないといけないのです!
きっと羊になるのですから、羊に対して恋もできると思うので、それはもういいのです。
居心地の良い牧場であれば、きっとハンサムで優しくて力強いステキな雄の羊がいるはずです。
なので、そこは置いておいて……って、なんですか?
人間に戻る方法を探さないのか?ですか?
あぁ、え~と、牧場を探すついでくらいには探すつもりですが、可能性が低そうなんですよね。
「行ってしまうのですか……?」
パーティーを終え、出待ちしていたゴシップ記事を扱う3流新聞紙の記者に私が魔王の呪いから勇者を救ったこと、その勇者から呪いのせいで婚約破棄を言い渡されたことについて記録した宝珠を渡した私に声をかけてきたのは仲間の武闘家のカイルです。
目に涙を貯めてくれています。可愛いですね……。
私たちは勇者バルカン、聖女ラム、魔導士エレナ、武闘家カイル、騎士フィリアの5人のパーティーだったのです。
役目を果たしたフィリアはさっさと神殿に帰ってしまいましたが、あれはどうやらバカに色目でも使われたので気持ち悪さに鳥肌を浮かべて逃げたのでしょうね。
エレナは大丈夫でしょうか?
きっとバカの首にひもでも巻き付けた上で、掌で転がして自分は楽しく生きていくつもりなのでしょう。
バカのことは記憶から削除完了です。
「この国の西方、エガルド山脈のさらに西に力ある魔女が住んでいるらしい。高齢のため出てこないが、辿り着ければ呪いを解いてもらえるかもしれない」
カイルは真面目で優しい10歳の男の子なので、彼が幸せになるといいなと思いながら、私は無言でこの場を後にしました。
西の魔女……ご存命であることを祈りながらまずはそこを目指しましょうか。
旅に出ると言っても、魔王を倒すために世界を旅していた私でも居心地の良い牧場のありかなど探したことがないので見当もつきませんから。
23
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる