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第8話 冒険者の覚悟①
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「まさかまたスタンピードとは。状況はどうなっている」
元より高齢ではあるが、年齢以上に老け込んだように見える父が嘆く。
スタンピードの知らせを聞いた父が老体に鞭打ってギルドにやって来たのだ。
「はい。既に数十体のモンスターが出てきましたが、いずれも上層のモンスターだったため、現場に居合わせた冒険者がすべて倒しております」
答えるのはギルド長のガンドス。
顔色は当然ながら悪い。
スタンピードはダンジョンからモンスターが出てくる現象で、発端は下層だ。
下層から中層、中層から上層、上層から外へとモンスターが上がってくる。
そのため最初に出てくるのは上層の弱めのモンスターたちだ。
スタンピードが起きているということは間違いなくこの後は中層のモンスターが、そして下層のモンスターが上がってくる。
冒険者は総力戦で戦わざるを得なくなる。
これはまさしく街とダンジョンの生存競争だ。
ギルドの呼びかけによって、冒険者が集まってきている。
なにせスタンピードを放置したら待っているのは街の崩壊だ。
そしてその街にいたにもかかわらずスタンピード対策に出向かなかった冒険者は後ろ指を指されることになる。
冒険者として信用を失う。
あいつは逃げた冒険者だと。
「冒険者のあつまりはどうなの?」
領主代行でもある姉も焦っているようだ。
「ほぼ集まってきてるようだな。100人くらいいる。これからオレとクレアが率いて上層でモンスターを迎え撃つ」
「ジキル……」
そしてクズと姉の会話。
クズであるジキルに中層や下層のモンスターを相手取って戦えると思えないんだけど、なぜか彼は自信ありげな顔をしている。
そんなジキルに熱い視線を向ける姉。
そもそもジキルやクレアが下層のモンスターと戦えるなんて話は聞いたことがない。
戦えるならもっと早く探索に行っていればスタンピードなんて起きていないと思うんだけど。
「大丈夫なのか?ラクスなしで」
当然ながらお父様も同じ疑問を持ったようだ。
しかしまるで準備していたように姉とジキルが答える。
「ジキルにはラクスから受け継いだ武器やアイテムを渡してあります」
「見てくださいこの剣を。他にも強力なアイテムを引き継いだ。オレはそれを使ってモンスターなんか蹴散らしてやるぜ」
本当に大丈夫だろうか?
アイテムだけでなんとかなるものなの?
疑問は感じるが、冒険者ではない私が言っても聞かないだろう。
「なら良いが……ラクスがいないままの今、頼れるのはお前たちだ。頼むぞ」
私はあれ?っと思った。もしかしてお父様はラクスさんのことを知らない?
しかしそれを指摘する間もなく、お父様は疲れたのか座り込んでしまったために衛兵たちが領主館に連れ戻して行った。
元より高齢ではあるが、年齢以上に老け込んだように見える父が嘆く。
スタンピードの知らせを聞いた父が老体に鞭打ってギルドにやって来たのだ。
「はい。既に数十体のモンスターが出てきましたが、いずれも上層のモンスターだったため、現場に居合わせた冒険者がすべて倒しております」
答えるのはギルド長のガンドス。
顔色は当然ながら悪い。
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下層から中層、中層から上層、上層から外へとモンスターが上がってくる。
そのため最初に出てくるのは上層の弱めのモンスターたちだ。
スタンピードが起きているということは間違いなくこの後は中層のモンスターが、そして下層のモンスターが上がってくる。
冒険者は総力戦で戦わざるを得なくなる。
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なにせスタンピードを放置したら待っているのは街の崩壊だ。
そしてその街にいたにもかかわらずスタンピード対策に出向かなかった冒険者は後ろ指を指されることになる。
冒険者として信用を失う。
あいつは逃げた冒険者だと。
「冒険者のあつまりはどうなの?」
領主代行でもある姉も焦っているようだ。
「ほぼ集まってきてるようだな。100人くらいいる。これからオレとクレアが率いて上層でモンスターを迎え撃つ」
「ジキル……」
そしてクズと姉の会話。
クズであるジキルに中層や下層のモンスターを相手取って戦えると思えないんだけど、なぜか彼は自信ありげな顔をしている。
そんなジキルに熱い視線を向ける姉。
そもそもジキルやクレアが下層のモンスターと戦えるなんて話は聞いたことがない。
戦えるならもっと早く探索に行っていればスタンピードなんて起きていないと思うんだけど。
「大丈夫なのか?ラクスなしで」
当然ながらお父様も同じ疑問を持ったようだ。
しかしまるで準備していたように姉とジキルが答える。
「ジキルにはラクスから受け継いだ武器やアイテムを渡してあります」
「見てくださいこの剣を。他にも強力なアイテムを引き継いだ。オレはそれを使ってモンスターなんか蹴散らしてやるぜ」
本当に大丈夫だろうか?
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疑問は感じるが、冒険者ではない私が言っても聞かないだろう。
「なら良いが……ラクスがいないままの今、頼れるのはお前たちだ。頼むぞ」
私はあれ?っと思った。もしかしてお父様はラクスさんのことを知らない?
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