39 / 48
第3章 ラオベルグラッド王国の復興
第39話 キャッキャウフフな旅
しおりを挟む
「もう!なんでせっかくのエメリア様との華やかでちょっと恥ずかしい、キャッキャウフフな旅にクソ野郎がくっついてくるんですの?」
メロディアレーゼ様……ツッコミどころしかないセリフを吐くのは辞めてほしいものです。
ほら、ルクシオン様も困っているではないですか。
「……」
ただ、あのやかましいルクシオン様を黙らせるなんて、さすがメロディアレーゼ様ですわね。
もう私の心は無の境地でカーバンクルを抱っこしてひたすら撫でています……。
さて、もうすぐギーフェンドに到着するころですわね。
とりあえずレオの怪我は木の精霊様が塞いでくださっているので、私たちは馬車でここまでやってきました。
メロディアレーゼ様が馬は嫌だと駄々をこねたからです。
「それにしても最初っから夜に突撃するとか、大丈夫でしょうか?」
そんな私の不安はこれです。
偵察もせずに?
「いいのですわ。そんな無骨なモンスターなんて、私の無属性魔法でイチコロなのですわ。ちゃっちゃと倒して、物陰でエメリア様と……うふふ♡」
もう帰っていいでしょうか?
この距離なら維持できるので、メロディアレーゼ様だけで行っていただくとか。
私は視線でルクシオン様に助けを求めますが、無視です。
もういいです。
「いたな。あれじゃないか?あの大きな黒い塊」
目を閉じて私の視線を無視していたくせに、きっと薄目を開けていたのでしょうね。もうっ。
「いたっ!?」
とりあえずルクシオン様の頭をはたきながら、私は馬車を降り、杖を構えます。
「あれですわね。間違いなく無属性のモンスターですわ。行け、"愛の結晶"!」
メロディアレーゼ様の腕のまわりから灰色の魔力が渦のように放たれてモンスターに向かいます。
教えてほしいのですが、どのあたりが"愛の結晶"なのでしょうか?
その愛の結晶とやらがモンスターに当たると、なんと影の一部が崩れました。
効いていますね。
ふざけた態度で、ふざけた名前の魔法攻撃ですが、さすがです……。
「効いてますわ!」
「当たり前ですわ、エメリア様。わたくしの魔法であれを蹴散らしてやります」
『エヴェディアァアアァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????』
えっ?
なぜか黒い影のモンスターが恐らく私のことであろう名前を叫びながら影を伸ばしてきました。
「相手が悪かったですわね。ルクシオン様だけなら攻撃できたでしょうが、わたくしの前でエメリア様を攻撃することなど不可能ですわ!」
「おいっ、今まったく私は関係ないだろう!!」
この方たちは真面目に戦うということができないのでしょうか?
しかも、なぜ黒い影のモンスターが私の名前っぽいものを叫んでいるのでしょうか?
疑問ばかりです。
私は飛んで影を避けながらモンスターを観察します。
騎士団員たちから聞いていたとおり赤く染まった大きな目と、青黒い牙を持つ、黒いモンスター。
メロディアレーゼ様の言う通り、無属性の魔力を纏っていて、恐らく通常の魔法攻撃はあまり効きません。
それがなぜ私の名を?
思い当たる節がなく、困惑してしまいます。
「わたくしのエメリア様を攻撃するなんて、許せないですわね。死になさい、"愛の吐息"!」
メロディアレーゼ様が唱えると、再び灰色の魔力が集まり、今度はそれが槍のような形を形成し、凄まじい勢いで魔物に向けて発射されました。それが20本ほど……。
もう一度言いますが、どのあたりが"愛の吐息"なのでしょうか?
『グギャオォオオォォォオオオオオオオオオ!!!!!』
モンスターはなんとか回避しようと身をひるがえすも、かわす余裕など与えない速度で発射されたそれはほぼすべてが命中して、モンスターを木っ端みじんにしてしまいました。
「ふぅ、見て頂けましたか、エメリア様?♡」
そして私はモンスターが消え去った後の様子を凝視しようとしていたのに、抱き着いて来るこの変態を誰か止めてください。
ちょっとそんなところを揉まないで!
「いたい!もうエメリア様の恥ずかしがり屋さん♡」
モンスターは本当に消えたようです。
再び何かが起き上がってきたりはしません。
だから、メロディアレーゼ様、そんなところを触らないで!?
はぁ、もういいでしょう。
「ねぇ~エメリア様♡」
「リターン」
「いや~~~~~~なんで~~~~~~~」
ふぅ、戻ってくださいました。
「くっ、なんで私まで!!!」
ふぅ、戻ってくださいました。
私はカーバンクルを肩に乗せて周辺調査を始めます。
しかし、何も見つかりません。
あのような威容のモンスターに見覚えはありませんし、ましてかかわったことはないと思うのですが、不思議ですね……。
もしかして魔王の率いていた魔族やモンスターの生き残りでしょうか?
う~ん。
もし無属性という珍しい属性の魔族やモンスターがいたらちゃんと覚えているのですが?
あっ……
アラグリア大陸にいた四天王ベッガスの手下とかだったら覚えていないかもしれません。
でも、あの場所でも無属性なんて聞いたことがないのですよね……。
謎は深まるばかりですが、とりあえず帰りましょう。
レオが治ってますように。
メロディアレーゼ様……ツッコミどころしかないセリフを吐くのは辞めてほしいものです。
ほら、ルクシオン様も困っているではないですか。
「……」
ただ、あのやかましいルクシオン様を黙らせるなんて、さすがメロディアレーゼ様ですわね。
もう私の心は無の境地でカーバンクルを抱っこしてひたすら撫でています……。
さて、もうすぐギーフェンドに到着するころですわね。
とりあえずレオの怪我は木の精霊様が塞いでくださっているので、私たちは馬車でここまでやってきました。
メロディアレーゼ様が馬は嫌だと駄々をこねたからです。
「それにしても最初っから夜に突撃するとか、大丈夫でしょうか?」
そんな私の不安はこれです。
偵察もせずに?
「いいのですわ。そんな無骨なモンスターなんて、私の無属性魔法でイチコロなのですわ。ちゃっちゃと倒して、物陰でエメリア様と……うふふ♡」
もう帰っていいでしょうか?
この距離なら維持できるので、メロディアレーゼ様だけで行っていただくとか。
私は視線でルクシオン様に助けを求めますが、無視です。
もういいです。
「いたな。あれじゃないか?あの大きな黒い塊」
目を閉じて私の視線を無視していたくせに、きっと薄目を開けていたのでしょうね。もうっ。
「いたっ!?」
とりあえずルクシオン様の頭をはたきながら、私は馬車を降り、杖を構えます。
「あれですわね。間違いなく無属性のモンスターですわ。行け、"愛の結晶"!」
メロディアレーゼ様の腕のまわりから灰色の魔力が渦のように放たれてモンスターに向かいます。
教えてほしいのですが、どのあたりが"愛の結晶"なのでしょうか?
その愛の結晶とやらがモンスターに当たると、なんと影の一部が崩れました。
効いていますね。
ふざけた態度で、ふざけた名前の魔法攻撃ですが、さすがです……。
「効いてますわ!」
「当たり前ですわ、エメリア様。わたくしの魔法であれを蹴散らしてやります」
『エヴェディアァアアァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????』
えっ?
なぜか黒い影のモンスターが恐らく私のことであろう名前を叫びながら影を伸ばしてきました。
「相手が悪かったですわね。ルクシオン様だけなら攻撃できたでしょうが、わたくしの前でエメリア様を攻撃することなど不可能ですわ!」
「おいっ、今まったく私は関係ないだろう!!」
この方たちは真面目に戦うということができないのでしょうか?
しかも、なぜ黒い影のモンスターが私の名前っぽいものを叫んでいるのでしょうか?
疑問ばかりです。
私は飛んで影を避けながらモンスターを観察します。
騎士団員たちから聞いていたとおり赤く染まった大きな目と、青黒い牙を持つ、黒いモンスター。
メロディアレーゼ様の言う通り、無属性の魔力を纏っていて、恐らく通常の魔法攻撃はあまり効きません。
それがなぜ私の名を?
思い当たる節がなく、困惑してしまいます。
「わたくしのエメリア様を攻撃するなんて、許せないですわね。死になさい、"愛の吐息"!」
メロディアレーゼ様が唱えると、再び灰色の魔力が集まり、今度はそれが槍のような形を形成し、凄まじい勢いで魔物に向けて発射されました。それが20本ほど……。
もう一度言いますが、どのあたりが"愛の吐息"なのでしょうか?
『グギャオォオオォォォオオオオオオオオオ!!!!!』
モンスターはなんとか回避しようと身をひるがえすも、かわす余裕など与えない速度で発射されたそれはほぼすべてが命中して、モンスターを木っ端みじんにしてしまいました。
「ふぅ、見て頂けましたか、エメリア様?♡」
そして私はモンスターが消え去った後の様子を凝視しようとしていたのに、抱き着いて来るこの変態を誰か止めてください。
ちょっとそんなところを揉まないで!
「いたい!もうエメリア様の恥ずかしがり屋さん♡」
モンスターは本当に消えたようです。
再び何かが起き上がってきたりはしません。
だから、メロディアレーゼ様、そんなところを触らないで!?
はぁ、もういいでしょう。
「ねぇ~エメリア様♡」
「リターン」
「いや~~~~~~なんで~~~~~~~」
ふぅ、戻ってくださいました。
「くっ、なんで私まで!!!」
ふぅ、戻ってくださいました。
私はカーバンクルを肩に乗せて周辺調査を始めます。
しかし、何も見つかりません。
あのような威容のモンスターに見覚えはありませんし、ましてかかわったことはないと思うのですが、不思議ですね……。
もしかして魔王の率いていた魔族やモンスターの生き残りでしょうか?
う~ん。
もし無属性という珍しい属性の魔族やモンスターがいたらちゃんと覚えているのですが?
あっ……
アラグリア大陸にいた四天王ベッガスの手下とかだったら覚えていないかもしれません。
でも、あの場所でも無属性なんて聞いたことがないのですよね……。
謎は深まるばかりですが、とりあえず帰りましょう。
レオが治ってますように。
163
お気に入りに追加
1,337
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄された令嬢の父親は最強?
岡暁舟
恋愛
婚約破棄された公爵令嬢マリアの父親であるフレンツェルは世界最強と謳われた兵士だった。そんな彼が、不義理である婚約破棄に激怒して元婚約者である第一王子スミスに復讐する物語。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!
しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」
***
ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。
しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。
――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。
今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。
それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。
これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。
そんな復讐と解放と恋の物語。
◇ ◆ ◇
※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。
さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。
カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。
※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。
選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。
※表紙絵はフリー素材を拝借しました。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる