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第3章 ラオベルグラッド王国の復興
第37話 黒き影との戦い
しおりを挟む「あとちょっとだ!逃げろ!」
俺たちは逃げる。黒い影のモンスターから。
あんな大きさでどうやってるのか知らないが、影のモンスターは追ってくる。
特段攻撃をしてこないのが救いだが、もし追い付かれたらどうなるかわからない。
逃げながら光属性の魔法を使って効果的に相手を錯乱させながらひたすら逃げた。
しかし、あのモンスターはなんなんだ?
あんな大きな黒い影のモンスターなんて聞いたことがない。
走りながら俺は考える。
もしかして本当にモンスターなのか?と疑問に思い、見つけたゴブリンの頭を掴んで影に投げつけて見たが、大きな牙によって切り裂かれ、開いた口に飲み込まれてしまった。
すまない、ゴブリンよ。とんだ恐怖体験だったな。
「おい!あれを見ろ!日の光だ!」
そうして逃げていると、ついに待ち望んだ朝日が出てきた。
朝日を待ちわびたのなど、どれくらいぶりだろうか。
「あいつを見ろ!薄れて、消えていくぞ!」
その声に黒い影のモンスターを振り返ると、もう後ろにあるギーフェンドの街が透けて見えるほどだった。
そして追いかけても来ない。
助かった。犠牲も出さずにすんでよかった。
『エヴェディアァアアァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
???
すると、黒い影のモンスターが天に向けて大きな口を開け広げ、なにかを叫んだ。
「なっ、なんだ?」
「なんて言ったのかわからんけど、俺たち助かったよな?」
「あぁ、助かった。よかった」
口々に生還を喜ぶ騎士団員たちに囲まれて、俺はただ一人、今のモンスターがなぜ"エメリア"の名前を呼んだのか、ずっと考えていた。
その後、黒い影のモンスターは完全に消えたので、俺たちは手分けして街の調査と、逃げた魔馬の回収に努めた。
しかしいくら廃墟の街を見ても、手掛かりになるようなものは何もなく、魔力の残滓のようなものすら発見することはできなかった。
「あれはなんだったんでしょうか?」
若き騎士が聞いてくるが、俺にもわからない。
「そろそろ暗くなってきますね。戻りましょう」
別の騎士が言う。
確かに当たりの日が落ちて来た。
このままここにいてはまた昨日のモンスターに襲われてしまう。
そろそろ撤退かとレオメルドが思ったその時……
「陛下!あそこに影が!?」
「なに?」
もうアレが出てきたのか?
まだ太陽は輝いている。
「いや、あそこ。小さい影が……あっ、引っ込んだ」
「確かに見えた。行ってみよう」
「あっ、陛下!お待ちを!」
騎士の言う通り、間違いなく黒い影が動く様子が見えた。
昨日のやつよりもかなり小さい。
それが廃墟となったものの屋根を残した建物……あれは神殿だろうか?……に入っていった。
レオメルドと2人の騎士はその影を追って神殿に入る。
そこにいたのは、赤く染まった大きな目と、青黒い牙。
昨日あらわれたモンスターと全く同じ外見のモンスターたちの群れだった。
俺はまさに今神殿に入って来ようとした騎士たちを叩き出し、逃がした。
「陛下!なにを?」
「行け!すぐに逃げろ!」
「陛下は!?」
「シャイニングフォース!!!!!!」
そして最大出力で光魔法をぶっ放して自分も逃げた。
side 王妃エメリア
一方その頃エメリアは王城で精霊たちと語り合っていた……。
「レオが調査に向かった黒い影について、なにかご存じの方はいらっしゃいますか?」
周囲に多くの精霊がいるため、私はふと気になって尋ねてみました。
精霊たちは世界の一部を除いて至る所に存在しており、かつ空間を超えて語り合えるため、その知識は膨大なものなのです。
しかし誰も知らないようです。
私の肌に冷たい汗が流れていきます……。
「これは奇妙じゃの。誰も知らぬというのは奇妙なことじゃ」
そうなのです。
精霊たちが誰も知らないモンスター……通常、そんなものは存在し得ないのです。
あのハルガラヴェスという隠れた魔族の四天王ですら、数は少ないですが知っている精霊はいました。
しかし今回の黒い影のようなモンスターに関してはそれが0。皆無です。
ヴェルディア様の仰る通り、とても奇妙なことです。
あるとしたら、完全に新種のモンスターであること、もしくは全ての精霊が生まれるより以前に存在したモンスター、このどちらかです。
これはとても危険です。
私たちは失敗したかもしれません。
そんな場所に国王であるレオを派遣してしまいました。
私はすぐにレオの叔父のバラック大臣と、従姉で王城を取り仕切るリューナさんに報告しました。
「レオが調査に向かったギーフェンドに出ているモンスターは完全に新種の可能性があります。すぐに応援を」
「それは本当ですか、エメリア様?」
「わかりました。すぐに騎士団を手配いたしましょう」
バラック大臣はすぐに騎士団長に命じて部隊を整えさせますが……
「大変です!陛下と騎士団が帰還いたしましたが……」
すでに帰ってきました。
『が……』、その後に続く言葉はなんですか?
私はいてもたってもいられず、レオの元に急ぎました。
そして王城の正門を入ったあたりに騎士たちが集まっていて、その中心でレオが倒れていました。
背中に大きな傷を負って……。
俺たちは逃げる。黒い影のモンスターから。
あんな大きさでどうやってるのか知らないが、影のモンスターは追ってくる。
特段攻撃をしてこないのが救いだが、もし追い付かれたらどうなるかわからない。
逃げながら光属性の魔法を使って効果的に相手を錯乱させながらひたすら逃げた。
しかし、あのモンスターはなんなんだ?
あんな大きな黒い影のモンスターなんて聞いたことがない。
走りながら俺は考える。
もしかして本当にモンスターなのか?と疑問に思い、見つけたゴブリンの頭を掴んで影に投げつけて見たが、大きな牙によって切り裂かれ、開いた口に飲み込まれてしまった。
すまない、ゴブリンよ。とんだ恐怖体験だったな。
「おい!あれを見ろ!日の光だ!」
そうして逃げていると、ついに待ち望んだ朝日が出てきた。
朝日を待ちわびたのなど、どれくらいぶりだろうか。
「あいつを見ろ!薄れて、消えていくぞ!」
その声に黒い影のモンスターを振り返ると、もう後ろにあるギーフェンドの街が透けて見えるほどだった。
そして追いかけても来ない。
助かった。犠牲も出さずにすんでよかった。
『エヴェディアァアアァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
???
すると、黒い影のモンスターが天に向けて大きな口を開け広げ、なにかを叫んだ。
「なっ、なんだ?」
「なんて言ったのかわからんけど、俺たち助かったよな?」
「あぁ、助かった。よかった」
口々に生還を喜ぶ騎士団員たちに囲まれて、俺はただ一人、今のモンスターがなぜ"エメリア"の名前を呼んだのか、ずっと考えていた。
その後、黒い影のモンスターは完全に消えたので、俺たちは手分けして街の調査と、逃げた魔馬の回収に努めた。
しかしいくら廃墟の街を見ても、手掛かりになるようなものは何もなく、魔力の残滓のようなものすら発見することはできなかった。
「あれはなんだったんでしょうか?」
若き騎士が聞いてくるが、俺にもわからない。
「そろそろ暗くなってきますね。戻りましょう」
別の騎士が言う。
確かに当たりの日が落ちて来た。
このままここにいてはまた昨日のモンスターに襲われてしまう。
そろそろ撤退かとレオメルドが思ったその時……
「陛下!あそこに影が!?」
「なに?」
もうアレが出てきたのか?
まだ太陽は輝いている。
「いや、あそこ。小さい影が……あっ、引っ込んだ」
「確かに見えた。行ってみよう」
「あっ、陛下!お待ちを!」
騎士の言う通り、間違いなく黒い影が動く様子が見えた。
昨日のやつよりもかなり小さい。
それが廃墟となったものの屋根を残した建物……あれは神殿だろうか?……に入っていった。
レオメルドと2人の騎士はその影を追って神殿に入る。
そこにいたのは、赤く染まった大きな目と、青黒い牙。
昨日あらわれたモンスターと全く同じ外見のモンスターたちの群れだった。
俺はまさに今神殿に入って来ようとした騎士たちを叩き出し、逃がした。
「陛下!なにを?」
「行け!すぐに逃げろ!」
「陛下は!?」
「シャイニングフォース!!!!!!」
そして最大出力で光魔法をぶっ放して自分も逃げた。
side 王妃エメリア
一方その頃エメリアは王城で精霊たちと語り合っていた……。
「レオが調査に向かった黒い影について、なにかご存じの方はいらっしゃいますか?」
周囲に多くの精霊がいるため、私はふと気になって尋ねてみました。
精霊たちは世界の一部を除いて至る所に存在しており、かつ空間を超えて語り合えるため、その知識は膨大なものなのです。
しかし誰も知らないようです。
私の肌に冷たい汗が流れていきます……。
「これは奇妙じゃの。誰も知らぬというのは奇妙なことじゃ」
そうなのです。
精霊たちが誰も知らないモンスター……通常、そんなものは存在し得ないのです。
あのハルガラヴェスという隠れた魔族の四天王ですら、数は少ないですが知っている精霊はいました。
しかし今回の黒い影のようなモンスターに関してはそれが0。皆無です。
ヴェルディア様の仰る通り、とても奇妙なことです。
あるとしたら、完全に新種のモンスターであること、もしくは全ての精霊が生まれるより以前に存在したモンスター、このどちらかです。
これはとても危険です。
私たちは失敗したかもしれません。
そんな場所に国王であるレオを派遣してしまいました。
私はすぐにレオの叔父のバラック大臣と、従姉で王城を取り仕切るリューナさんに報告しました。
「レオが調査に向かったギーフェンドに出ているモンスターは完全に新種の可能性があります。すぐに応援を」
「それは本当ですか、エメリア様?」
「わかりました。すぐに騎士団を手配いたしましょう」
バラック大臣はすぐに騎士団長に命じて部隊を整えさせますが……
「大変です!陛下と騎士団が帰還いたしましたが……」
すでに帰ってきました。
『が……』、その後に続く言葉はなんですか?
私はいてもたってもいられず、レオの元に急ぎました。
そして王城の正門を入ったあたりに騎士たちが集まっていて、その中心でレオが倒れていました。
背中に大きな傷を負って……。
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