なんで私が追放なのよ!はぁもういいわ。私は助けを求めてきた剣士様と、私を守ってくれる精霊たちと一緒に行くから、勇者様 あなたはどうぞご自由に

蒼井星空

文字の大きさ
上 下
33 / 48
第2章 魔王の魔力の残滓を追って

第33話 終戦

しおりを挟む
 清らかな空に高らかに鳴り響く美しい狂騒曲。
 
 再興したラオベルグラッド王国が王都として設定し、整備した街の中心に新たにお城を建てました。
 そのお城で、純白のドレスに身を包んだ私は、落ち着きのあるフォーマルなタキシードに身を包んだレオメルドと並んでこの国の貴族、そして国民の前に立っています。
 もちろん全員は入れないので、代表者たちです。

 さらにそれらを囲うようにして様々な精霊が集まっています。


 今日はレオメルドと私の結婚式です。

 ロデリグ大陸を闇の魔力から解放し、さらに世界中で魔族の四天王を倒して帰還した私を、レオもこの国のみんなも歓迎してくれました。
 まさかパレードをさせられるとは思ってもいませんでしたが、多くの方々に祝福されながら新たな王都を眺めることができたのは幸せな時間でした。

 沿道では口々に私を褒め称えてくれました。

「あれが魔族を一網打尽にした凄まじい精霊術師様よ!」
「なんとお美しい」
「銀髪が光り輝いていらっしゃるわ」
「レオメルド国王陛下は偶然お声がけして協力してもらったんだろ?すげぇ運命だな」
「巡り合わせこそが運命だ。素晴らしい運命に乾杯!」
 
 もう必要以上に魔族を怖がることはないのです。

 幼き頃に無くした弟のお墓には、ここに来る前に立ち寄って報告してきました。
 晴天の中、爽やかな風が立ち込め、花に囲まれた墓地は、まるで弟が微笑んでいるかのような錯覚を覚え、不覚にも泣いてしまいました。

 私がここまでこれたのは精霊様達のおかげです。
 いつも寄り添って、力を貸してくれました。
 私は感謝のために、この場に集まってくれた全ての精霊に向けて魔力を流します。

『ちょっ……ちょっとエメリア。多すぎるよ。今からそんなに満腹にされたら最後まで見れないよ』

 仲良しのモルドゥカ様の大袈裟な声が聞こえた気がしましたが、私は嬉しいのです。


 そうして辿り着いた王城……これはラオベルグラッドの守り神である銀の若木の精霊様が私に縁ある精霊様達に協力を呼びかけ、凄まじい速度で完成させたそうです。
 その威容は荘厳の一言です。
 ここまで美しいお城は見たことがありません。

 そんなお城で、レオは待っていてくれました。
 パレードの馬車から降りた私を見下ろす位置で。
 きっとずっと見ていてくれたのですね。

 私は走り出したい気持ちをぐっと抑え、シルフィード様に風で運んでもらいました。
「リっ、リア!?」
 
 えっ?走るよりも早く飛び込んでるって?
 恥ずかしながら我慢できなかったのです。

「レオ……ただいま戻りました」
「……あぁ、リア。お帰り。ずっと待っていた」

 そして私たちは盛大なキスを披露しました。
 そして神官に肩をトントンされて、『もう少しお待ちください」と窘められた私たちは真っ赤です。


 
 その後の結婚式と披露宴は人生史上最大の素晴らしいものでした。





 そして次の日。
 私はレオメルドたちに旅の出来事を報告し、この国で魔族の犠牲となった方々を追悼する式典に出席しました。
 
 改めて犠牲になった方々の多さに驚くとともに、私の目が黒いうちは二度とそのようなことを起こさないと誓います。

 ふと感じる戸惑い。
 これは何でしょうか?
 よくわかりませんが、死者の眠る場所ですから複雑な感情も渦巻いているのでしょう。
 私が皆様に安らぎを差し上げましょう。
 
 
 そう思いながら薄い魔力を放っていると、私の手に久しぶりに触れる剣の感覚が現れました。
 これは……聖剣?
 でもなぜ?

 なぜ剣の精霊様が宿っているのでしょうか。
 もしかしてあなたが聖剣だったのですか?えぇ?

『久しいな、精霊術師よ』
「はい、剣の精霊様。つかぬことをお尋ねしますが、もしかして聖剣様でいらっしゃいますでしょうか?」
『人は力を発揮している状態の私のことを聖剣と呼ぶな』
「以前お会いした時と、その……ライエル様が持っていた時ではお姿も違いますね?変えていらっしゃったのですか?」
『あぁ、あのものが好きな外見になっていたし、聖剣なら聖属性の魔力を放っているものだと言いはるのでな』
「そうだったのですね。ということは私の頼みを聞いてくださったのですね。ありがとうございます」
『残念ながらあまりにひどい行動をとるのでやめてしまったがな……』
「そうでしたか。それは重ね重ねすみませんでした」
『なぜ謝る?そなたのせいではあるまい』
「今思い直していたのです。なぜ彼はこうなってしまったのかと。きっと誰も止めなかったからですね。幼い子供のまま」
『ふむ……そうかもしれんな』
「いずれにしても、王妃教育のためにあがった王宮であなた様に出会い、私は舞い上がっていたのでしょう。話しかけられたときに、『王宮にいるのならライエル様をお願いします』と言ってしまいました。あの時すでにライエル王子は勇者と言われていたのですから頼む必要などなかったのですね」
『それは違う。人間のしきたりは知らぬが、あの時には今だ我は持ち手を選んでなどいなかった』
「えっ?」

 私は聞いてはいけないことを聞いたような気がしました……。

 今となっては考えても仕方のないことかもしれませんね。



 こうして私の冒険……私の物語は終わりを迎えました。
 ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...