なんで私が追放なのよ!はぁもういいわ。私は助けを求めてきた剣士様と、私を守ってくれる精霊たちと一緒に行くから、勇者様 あなたはどうぞご自由に

蒼井星空

文字の大きさ
上 下
22 / 48
第1章 なんで私が追放なのよ!

第22話 大精霊たちとの契約

しおりを挟む
side 精霊術師エメリア
 
 アホ勇者は国王陛下による謹慎の命令を無視して副騎士団長とスーメリア、ロヴィニエルとレーテというメンバーと共に出て行ったそうです。
 そして音信不通になりました。
 まったくもってアホですわね……。

 私はギルドカードでレオに連絡をしておきました。
 レオの村の人やロデリグ大陸の神殿の方々が、イライラして爆発寸前のアホ勇者によって被害を受けるようなことがあってはいけません。

 レオからの連絡では、アホ勇者はラオベルグラッドの守り神であった木の精霊様の好意で設置された転移の魔道具によって木の精霊様がいた広場まで飛び、そこから無謀にも攻略を開始したそうです。その先は平原になっているとのことでしたが、その平原に足を踏み入れ、その後連絡が取れなくなったそうです。
 
 木の精霊様から、今は行くなと止められたレオは私に全て教えてくれました。
 どうやらヤバい相手が平原にいるようです。
 もし行くなら光の精霊ルクシオン様や、ワイトキングなど、強力な精霊たちを連れてくるようにと木の精霊様がおっしゃったとのこと。

 まだ、あの大陸はごくごく一部しか闇の魔力から解放していないのですが、それなのにそんなに強い魔族が出てくるのでしょうか?
 もちろん、人間と魔族の支配方法は違いますから、なにか重要なものがその平原にあるのかもしれませんが……。

 私は木の精霊様に答えるため、全力で行くことを決めました。
 夜ではありますが、自室ですし周囲を気にせず精霊様を呼びます。

 
「大精霊モルドゥカ様。お手伝いいただけますでしょうか?」

 そう、全力です。

『もちろんである、我が可愛い娘よ』

 そして大きな猫のような精霊にまとわりつかれています。もふもふです。心地よい毛皮です。暖かいです。
 モルドゥカ様は子供のような可愛いお声で、お茶目な性格なのですが、なぜか言葉遣いだけが偉そうでギャップが可愛い精霊様です。テンションが上がるとそのまま幼児化なさいますが……。

 実はモルドゥカ様はいつでも移動可能です。移動すると周囲の精霊たちが困ってしまうのであまりお願いしませんが、本人はお願いしたら大抵ノリノリでついてきてくれます。周囲の精霊たちには謝罪し、光の精霊ルクシオン様を置いてくることで納得してもらいました。

『エメリア! こら! なぜ私を置いていくのだ!? おいっ!?』
 ルクシオン様はなにかを叫ばれていましたが、モルドゥカ様の周囲の精霊に連れていかれました。

 そして……


「モルドゥカ様、もし可能なら強力かつ私がお願いできる精霊様はいらっしゃいますでしょうか? どうやら相当に強い敵がいるようなのですが」

『ふむ。エメリアは相変わらずいい匂いだし、撫でがいがある柔らかさだね~』

「モルドゥカ様?」

 あまり真面目に動かないモルドゥカ様は、なぜか私の手触り? 肌ざわり? を気に入っているので、好きなように触ってもらっています。たまにくすぐったいのですが、もしかしたらレオは嫉妬してしまうでしょうか?


『ロデリグ大陸だったよね? そう言えば昨晩強い力を感じたが……そうじゃの。連れて行くなら、あれがいいの。ちょっと待っておれ。お茶でも用意しておいて』

 そう言うとモルドゥカ様は私から離れてどこかへ行ってしまいました。
 私は言われた通りに紅茶を用意します。
 お菓子もあったほうがいいでしょうか?

 控えていた執事に頼んで紅茶とお茶菓子を用意してもらいました。量を聞かれたので、50人分ほどお願いしておきました。

 レオにはルクシオン様よりもさらに強力な精霊様をお願いするつもりですとメッセージを送っておきました。
 わざわざメッセージに『!?』なんて入れてきたレオが可愛いすぎてつい我慢できずに通話していたらモルドゥカ様が戻っていらっしゃいました。


『戻ったのだ~お茶ある?』
「準備できておりますわ」
 私は名残惜しいですがレオとの通信をきって、執事にお茶を用意してもらいます。モルドゥカ様はご機嫌な様子です。

『ふむ……よい香りであるな』
 すると見たこともない、眩しい精霊様がお茶を飲まれています。

『あっ、お菓子もあるよ?ねぇねぇ、食べていい???』
 その隣には幼児のような見た目で明るい表情の精霊様が現れます。モルドゥカ様のお友達でしょうか?

「もちろんです。皆様に準備したものですから」
 どのような精霊様なのかはわかりませんが、好意には好意を返すのが基本です。精霊様とは仲良くならなくてはならないのですから。
 
『やった~!お姉ちゃん大好き』
 案の定喜んでくれた精霊様は万歳しながらお菓子を召し上がられます。

 私の魔力を気に入ってもらう必要があるはずなので、周囲に放ちます。

『ふむ……なかなかに魅力的な魔力だ』

 その声と共にまた新しい精霊様が現れ、私の魔力を食べています。


『みんな気に入ったようだの。よかったの、エメリア』

 そしてモルドゥカ様がまとわりついて……いえ、これは私を抱き枕にするつもりですね。もちろん抵抗はしません。むしろ気持ちいい。


『自己紹介くらいしたほうがよいのではないかの?』
 モルドゥカ様はひとしきり私を堪能された後で、連れて来られた精霊様達にそう促してくれました。

『ふむ。旨いお茶だった。礼を言おう。我はヴェルディアだ』
『お姉ちゃん、お菓子をたくさんありがとう。僕はファムトだよ』
『質の良い魔力だった。今後も食わせてくれるなら力になろう。私はグラニテだ』

 予想以上でしたわ。
 びっくりした表情をしないようにするのが大変です。
 でも、ありがたいのです。

「えぇと、火と地の大精霊であるモルドゥカ様が連れて来てくださったのは、光と木の大精霊ヴェルディア様と、闇と風の大精霊ファムト様と、地と冥の大精霊グラニテ様ということでしょうか?」
 世界でこの部屋以上に強力な精霊様が集結している場所はないと断言できますわね。

 私はここに来てくださった精霊様方に感謝を示すために跪きました。

『エメリア!? 大丈夫だよ』
『そうだとも。そのようなことをする必要はない』
『そうだよ。お姉ちゃん。立って』
『いや、むしろその椅子に座ろうではないか』
 口々に言い募る大精霊様達。

 執事は……なんと4つの椅子を引いていますね。この場でも忠実な仕事っぷり……さすがですわ。


「皆さまありがとうございます。ここに来てくださったということは、私と契約いただけるということでしょうか?」
 私は念のため確認します。魔力保有量にはまだまだ余裕があるので、あとは皆様の条件次第でしょうか。

『問題ないよね?』
『すでに契約をしたが問題ない』
『僕も僕も~』
『魔力を頂いたので私も契約済みだな』
「えっ?」
 なんとすでに契約済みでした……。なんとお優しい精霊様方でしょうか。

『というかエメリア、魔力増えたよね? 前より良い匂いだし』
 モルドゥカ様が私の頭をクンクンしていますが、さすがにそれは恥ずかしいのですが……。

「ロデリグ大陸で活動している間にレベルは上がっていると思いますが……そのせいでしょうか?」
 あまり全力で戦う必要がなかったので意識していませんでしたが、ロデリグ大陸では大量の魔物が襲ってきますし、ロードウルフやプラチナトレントのような強力な魔物も倒しているので、レベルは相当上がったはずです。見てみたら、ルーディア大陸解放時に76だった私のレベルはなんと148……。魔力は倍以上になっています。

 おかげで皆様と契約できて、私は嬉しいです。
 レオ、待っていてくださいね♡
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...