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第1章 なんで私が追放なのよ!

第15話 勇者ざまぁ⑦脆くも崩れ去る勇者パーティー

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side 勇者ライエル

「来たぞ!防げ!」
「はい、ライエル様!……うわ~」
 何度目かわからないアイアントレントの襲撃を、これまでと同じようにロヴェニエルに防がせてから攻撃しようとした僕たちだったが、ロヴェニエルが叩きつけられた枝を防げず、後方に飛ばされてしまった。
 そして、そのままの勢いで襲ってきた枝を……


 スパ~~~~ン!!!

 ゴロゴロゴロゴロ

 ディルクが斬った。

「ロヴェニエル!ヒール!」
 レーテが後方に飛ばされたロヴェニエルを即座に回復させる。

「全員構えろ!でかいぞ!」
 そして警戒を促す。


 僕たちを襲ってきたのはこれまでより大きなアイアントレント……上位種か?

「メタルトレントです!特性はアイアントレントと同じく打撃防御がありますが、さらに魔法防御(小)をもっています。弱点属性は同じで雷、地です!」
 足を止めて鑑定していたスーメリアが敵の特徴を言い放つ。
 なるほど、今回の上位種はほぼ大きいだけだな。

 僕はディルクと顔を見合わせ、雷属性の魔力を剣にまとわせて斬りかかる。

「くらえ!雷光剣!!!」

「雷光斬!!!」

 そして僕とディルクはメタルトレントに斬撃をお見舞いした。


 僕らの攻撃は見事にメタルトレントを切り裂き、メタルトレントは崩れ落ちた。
 やったぞ。

 やはりこのパーティーなら進んで行ける。
 エメリアなど不要だ。
 
 どうせ嘘で固めたお前には……剣士とやらに頼っているお前にはここは超えられまい。
 せいぜい苦戦しろ!
 そして僕の誘いを断ったことを後悔しろ!
 今さら泣いて謝っても入れてはやらないがな。


「ライエル様!さすがですわ!」
 スーメリアが駆け寄ってきてくれる。

 僕が最初に攻撃を受けたロヴェニエルの方をみると、レーテが回復させたのか、2人ともこちらに向かってきていた。


「すみません、ライエル様。初撃で飛ばされてしまい」
 そしてロヴェニエルが神妙な顔つきで謝ってくる。

「怪我は残っていないか?問題ない。初見の敵だ。慎重に行こう」
 僕はそう言うとパーティーを促し、探索を続けた。
 ロヴェニエルの顔が少し赤いようだが、何も言ってこないしあっさり飛ばされたことを恥じているのかもしれない。

「前回のダイヤウルフたちのことを考えると、ここも上位のトレントたちが出てくるのでしょうか?メタルトレント以上となると、陣形を考えた方が……?」
 スーメリアが歩きながら少し不安げに聞いてくる。
 確かにそうだ。
 僕もそう思っていた。
 ロヴェニエルが防げない一撃を放ってくる敵が来た場合、劣勢の状態から始めることになってしまう。

「ここからは大盾を構えて進むようにします。防御魔法もかけておけば先ほどの魔物以上の攻撃でも耐えられますので」
 ロヴェニエルは大剣を鞘に仕舞うと、大盾を掲げて進んで行く。
 あれほどの攻撃に耐えているのだから特に責める気持ちはないが、彼女は何かを気負っているのだろうか?
 まぁ、有効に思えるので異論はない。

 僕が了承すると、ロヴェニエルにレーテが防御呪文をかける。
 レーテは僕を観察していたようだったが……。


 そこから少し進んだころに見つけた広場に足を踏み入れると急に視界が明るくなった。
 上を見上げると太陽があった。
 そこは森の木々が生い茂る中で不自然に上空が開いた場所だった。

 周囲がトレントたちの群れで襲ってくるということもない。
 僕たちは久しぶりの太陽の姿を捕らえながら、少し休息をとろうとした。


 しかし……

「王子様!ここはダメだ!離れろ!」
 ディルクが焦った様子で警告を発してくる。

 周りに動くものはない。なのになぜそんなに焦るのかわからなかったので、対応が遅れた。

 キィイイィィイイイイイイインンンンン!!!

 なんだ?何の音だ?

「王子様、早く!伏せろ!!!」
 なお、焦っているディルク……


 ばしぃいいぃぃいいいいんんん!!!!!

 ぐはっ……

 上から何かが降ってきて、僕はそれを食らってしまった。



「なっ、ライエル様!!!」
 スーメリアが口をおさえて驚いている。

「来たぞ!デカいぞ!ロヴェニエル、守れ!!!」
 ディルクが叫んでいる。

「もうやってます!レーテ様は森へ!!!ライエル様大丈夫ですか?ヒール!!!」
 大盾を上に向けて構えたロヴェニエルが僕のもとにやってきて、僕を上空からその盾で隠し、回復魔法をかけてくれる。

「これはなんだ?なにが襲ってきた?」
 僕は飛び起きてスーメリアを見る。

「ライエル様!これはミスリルトレントです!メタルトレントたちの上位種で、かなり大きいようです!弱点はメタルトレントと同じ。特性として魔法防御(中)がついています。急いで森の中へ逃げてください!」
 スーメリアも僕を森の中へ戻るよう促してくる。


 僕とロヴェニエルと一緒に彼女の盾に隠れながら広場から森の方へ移動しようとした。

「あっ、あぶ……」

 ドゴーーーーーン!!!!!!!!

「ぐぅ……」

 レーテが何かを言おうとしていたが、その言葉が終わる前にひときわ強力な衝撃がロヴェニエルの大盾を襲う。
 僕もロヴェニエルと一緒に盾を支えるが、その衝撃に腕がしびれている。

「なっ……なんだ!?」
 

 ドゴーーーーーン!!!!!!!!

「ぐぅ……」

 あと10歩ほどで森に入るというところで再び衝撃が来る。


 くそっ、ミスリルトレントめ。連続で固い枝を振り下ろしてきているのか?

 僕とロヴェニエルはなんとか歩くが……。

 
 ドゴーーーーーン!!!!!!!!

「ぐぁ……」

 しかし、ついに衝撃でロヴェニエルが倒れてしまう。

 なにやってるんだ!
 ここで見捨てたら前回と同じだ。
 見捨てたなんて評価は許せない。
 なにも知らないやつらがエメリアの罠にはまって言いたい放題言いやがって……。

 僕はロヴェニエルを抱いて支え、反対の手で大盾を支え、足を踏み出したが……


「ライエル様!!!」
 掲げた大盾の下から見えたのはスーメリアの悲壮な顔……。

 ドゴーーーーーン!!!!!!!!

「うわぁ……」

 その枝は横から飛んできた。



 これまでの大盾への衝撃は囮だったらしい……。


 僕とロヴェニエルは殴り飛ばされた。
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