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第1章 なんで私が追放なのよ!

第12話 勇者ざまぁ⑥この僕の誘いを断るとは、ふざけるなよクソ女!?

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side 王子(勇者)ライエル

「だから、何度も言うが、僕のパーティーに戻らせてやると言っているのだ!」
「いえ、結構です」
「ぐっ……お前、僕がこんなに下手に言っているというのに……」
 ふざけるなよクソ女!
 お前がパーティーに戻ろうとしたせいでこちらは酷い迷惑を被っているというのに。
 
「追放されたときに確認した通りです。私には戻る気はありませんし、あなたはあなたの望む仲間と一緒に行けばいいのではないですか?」
 ただ座ったまま淡々と断ってくるとはどういうことだ。

「お前!王子でもあり勇者でもある僕が戻ってきても良いと言っているんだぞ!そうか……婚約破棄になったことを僻んでいるのか?だとしたら、それも戻してやる。それならいいだろう?」
 まったく。どうして僕がこんな可愛げのない女と婚約しなければならないのだ。
 どうせ僕が国王になるときには破断するが、今そんなことを気にするのか?
 
「だが、お前はやりすぎだ。父上も公爵にも確認のしようがないからと言って、あのアークウルフを倒したなんて言う嘘をつくとは」
「は?」
 ほら見たことか。目を見開いているのは嘘がバレたからだろう。
 まったく、どうしようもないやつだな。
 
「それもこれも僕への当てつけなんだろ?アークウルフを倒すことができず、仲間を犠牲にして戻った僕への」
「は?」
 いつかこのことも明るみに出して糾弾してやるぞ。
 ぜったいにな。
 この僕をコケにしたことを忘れるなよ?

「そんなおまえにチャンスを与えてやろう。お前だって嘘がバレるのは避けたいはずだ。パーティーに戻って再びあのアークウルフと戦えば、今度こそ倒せるだろう。そうしたら僕もお前の嘘は黙っておいてやる」
「は?」
 だが、パーティーに戻るなら今だけは忘れてやろう。
 
 そもそもアークウルフのような強力な魔物をこいつが倒せるわけがないのだ。この僕でも苦戦したんだぞ?
 仮に1対1での戦いであればまだわからないが、あの群れは厄介だ。

「横で大人しく聞いていれば、あなたは何様のつもりなのですか?こんなにライエル様が言って下さっているのですから、感動の涙を流しながらパーティーに戻るべきです!」
「は?」
 僕が広い心で受け入れてやろうとしていたら、スーメリアの感情が爆発してしまった。
 このクソ女にムカつくのはわかるぞ。スーメリア。
 
 しかし今僕が怒るわけにはいかない。
 こんなやつでも勧誘して断られたとあっては、僕のことを笑うものが出てくるだろう。
 そんなことは許せないのだ。
 
「いいな!お前は僕のパーティーに戻れ。2日準備に使った後は、またロデリグ大陸に飛んで……」
「お断りします!」
 このクソ女が!王子であり、勇者でもある僕の話を遮って断るとはどういうことだ!
 
「あなた!本当に何様のつもりですか!?」
「話は終わったのでお帰り下さい」
 スーメリアが怒ってくれている。当然だ。ここまで僕をバカにしたのだから。
 エメリア……お前は踏んではいけないものを踏んでしまったようだ。許さん!

「お前!!!」
「そもそもライエル様。あなたは私を不要だと言ってパーティーを追放されました。婚約も解消したいと。私もあなたのパーティーにいる気はありませんし、浮気ばかりのあなたと結婚するなんて考えたくもありませんでしたので、すでに父を通じて陛下にお願いして婚約は解消済みです。パーティーからの離脱も承認を得ております。そして新たにレオメルド・ラオベルグラッド様とパーティーを組んでおりますので、戻ることなど考えられません。ですので、お引き取り下さい」
 なんだと?この期に及んで僕のせいだと言うのか?王子である僕に何たる不敬。しかし……

「ラオベルグラッドだと?」
「なら、ライエル様。そのレオメルド・ラオベルグラッド様もパーティーに誘えばよいのではないですか?そうすれば問題はありません」
「なるほど……」
 そうだったのか。この尻軽女は浮気していたということか……。
 それならそう言えばいいものを。
 僕だってお前との結婚なんて願い下げなんだからな。

「まさか僕の頼みを断ろうとしたことは噴飯ものだが、僕のパーティーにさらに強力な剣士が入るのはありだな。しかし、その男大丈夫か?もし僕のスーメリアに色目を使ったら温厚な僕でも許さないぞ?」
「まぁ、ライエル様ったら♡」
 その男が僕の女に手を出そうものなら即座に斬り捨ててやるが、そうではないのならありだな……。
 僕の手足として使ってやろう。
 滅んだ国の王族なのだからその程度の扱いで十分だろう。
 ついでに元王族なのだから娘の1人くらい差し出せ。

「誰が……」
「これは王子。いらしていたのですか?」
 エメリアが何かを言おうとしていたが、それを遮るようにノーザント公爵が入ってきた。
 まずいな……。
 さすがに王国の重鎮であるノーザント公爵に今怒りを向けるわけにはいかない。こいつを落とすのは10年後だ。
 
「……これはノーザント公爵閣下。突然失礼したが、このエメリアに用があってな」
 少し気まずい気分を感じたが、しかし僕は思い直した。こいつの失礼な娘をパーティーに戻してやるのだから気兼ねする必要なんかないのだ。

「そうでしたか。しかし、それはさすがにやめて頂きたい。エメリアは既に正式にあなたの婚約相手ではなくなったのです。今後はまず私に相談いただきたいものですな」
 したり顔で公爵はそうのたまった。

「僕が公爵にわざわざ許しを得ないといけないのか?」
 お前は貴族であって王族ではない。
 なぜ王子である僕がお前の機嫌を伺わなければならないのだ。
 機嫌を伺うべきはお前であり、エメリアだろう。ふざけるなよ!?
 
「そう申しておりますが?」
 しかし表情も変えずに肯定する公爵。これでは僕が間違っているみたいじゃないか。
 
「くっ……しかし、エメリアは僕のパーティーに戻り、ともに探索をする……」
「それはお断りしました。既に正式に国王陛下の名前のもとで婚約解消とパーティー離脱がなされ、私はすでに別のかたとパーティーを組んでいると言ったはずです。そして、私もレオメルド様もあなたのパーティーに加わることはありません。」
「くっ……」
 クソ女がここに至ってもまだ断ってくる。さきほどしてやった話すら断ってきやがった。
 
「断られたからと言って、ラオベルグラッドの王族の方も一緒にご自身のパーティーに加われと仰ったのですか?」
「ぐっ……なにが問題なのだ。あのロデリグ大陸を2人で攻略しようなどと、夢物語だぞ!それにアークウルフを倒したなんて言う嘘を黙っていてやるんだ。だったら……」
 お花畑な頭の中で妄想を膨らましてアークウルフを倒すのは構わんが、現実として強力な魔物がうようよといるのだぞ?
 
「嘘?嘘と仰ったのか?」
 そうだろ?エメリアにあれが倒せるわけがないんだから。

「そうだ!あのような強力な魔物をたった2人で倒せるものか!?」
 僕らが4人がかりで倒すことができなかった魔物だぞ?
 妄想の生き物ではないんだ!

「討伐履歴はギルドカードに記録されることをまさかご存じないはずがないですよね?」
「なっ……それを隠せば……」
「……」
 まさかギルドカードに記録があるのか?
 どういうことだ。僕やディルクが傷すらつけられなかった魔物だぞ?

「ちなみにエメリアのギルドカードの履歴にはダイアウルフ、エルダーウフル、アークウルフにくわえてロードウルフという魔物の名前もありましたが、これについてはどうお考えになられますかな?」
 なんだと?ロードウルフとはなんだ?

 想定していなかったところまで嘘で固めていたノーザント公爵に対して僕は不利を悟り、出直すことにした。
 ギルドカードの記録の詐称などと……ふざけるなよ!?



※※※※
ここまでお読みいただきありがとうございます!
次回からまた勇者ざまぁしていきます。
よろしくお願いします。

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