なんで私が追放なのよ!はぁもういいわ。私は助けを求めてきた剣士様と、私を守ってくれる精霊たちと一緒に行くから、勇者様 あなたはどうぞご自由に

蒼井星空

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第1章 なんで私が追放なのよ!

第10話 勇者ざまぁ④今さらパーティーに戻れって……頭は大丈夫ですか?勇者様

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side 精霊術師エメリア

 アークウルフをレオが倒した後、レオと一緒に洞窟を探検し、潜んでいたボスであるロードウルフという魔物を倒しました。

 ロードウルフはアークウルフよりも強力でしたが、セリフの途中で押し返したことに怒り心頭のルクシオン様が瞬殺しました。
 私はありがとうございますとお礼を伝え、普段より多くの魔力を捧げてルクシオン様にはお戻りいただきました。てへっ♡

 そして、ロードウルフが潜んでいた洞窟の底には転移の魔道具が落ちていました。探すとこれの片方はこの洞窟の入り口に設置してありましたので、見つけたものを村に設置しておけばいつでもここまで飛べます。

 大陸を結ぶような大きなものではなかったので設置場所が聖域になったりはしませんが、今後の攻略のためにとても便利なものでしたので、私たちはひとまずこれを持って村に帰還しました。


「エメリア様。ありがとうございました。おかげで少し暖かくなったように感じます」
 村で私を泊めてくれたお家の娘・ミーナが可愛らしくつい抱きしめてしまいます。

 彼女は天真爛漫な女の子で、レオの姪……つまりラオベルグラッド王国の元王族ですが、とても純朴でその笑顔に癒されます。
 
「おはようございます、エメリア様。ミーナの言う通りです。きっと洞窟のボスをエメリア様が倒してくださったお陰です」
 明るい声で朝の挨拶をしてくれるのがミーナの母であるリューナさんです。
 レオの従姉弟の美人さんです。

 たしかに、森で野営していた時に比べて朝の光が強いように思います。
 ルーディア大陸では感じたことがない状況ですが。

 恐らくロデリグ大陸は完全に魔族の支配下に落ちていたので、闇の魔力が充満し、日の光さえも遮っていたのでしょう。
 それがあの洞窟のボスを倒したことで晴れたということは、このまま各地のボスを倒していけばいずれロデリグ大陸全体が闇の魔力から解放されることでしょう。

 もしかしたらこの村のように魔族の手を逃れた人々が残っているかもしれません。
 私は攻略を進める決意を新たにしました。


「おはよう、リア……いい朝だな」
 そしてなぜか少し照れながらレオが挨拶してきます。
 私を略称で呼ぶのが恥ずかしいのでしょうか?

「おはよう、レオ。よく眠れましたか?」
「……あぁ」
 恥ずかしがるレオも可愛いですね。
 このまま一緒に攻略を進めていけば、仲も深まるでしょうし、ラオベルグラッド王国の復興を実現してレオを玉座に据えるのも楽しそうです。


「リアは一度戻るんだったか?」
 リューナが用意してくれた食事を共にとっていると、レオが聞いて来ます。

「そうですね。攻略の様子を伝えに来るようにギルドカードを通じて父から連絡があったので一度戻ります。なんでも勇者様が攻略に失敗して戻ったようでして、状況を心配したようです」
 私の攻略のやる気とは裏腹に、父の命であれば従わざるを得ません。
 あのアホ勇者はこんなときでも邪魔してきます。
 
「そうだったのか。それなら一度戻ってお父様を安心させるべきだな」
「そうですね。心配いりません。レオの強さと、私の精霊術が十分役に立ったことと、洞窟のボスを倒して一部だと思いますが闇の魔力を払ったことを伝えてきます」
 私は必ず戻ってくることを誓います。

「次の探索に向けて準備をしながら待ってるよ。キミは俺より強いし心配はいらないと思うんだけど、気をつけてな」
 レオが私のことを心配してくれるのは嬉しいのですが、そんなふうにおずおずと言う彼が可愛くて……

「ありがとう、レオ……」

 ちゅっ♡


 
「!?!?」
 ほっぺにキスしてさしあげました。

「あらまぁ」
 リューナさんは仕方ないわねといった様子で笑っています。
 
「レオまっかっか!」
「こっ……こら!」
 ミーナはレオをからかっていますね。
 2人とも可愛いです。


 そして私は神殿から転移の魔道具を使ってルーディア大陸に戻りました。
 
 
 レオの村は帰還したレオを労い、初めて訪れた私を歓迎してくれました。
 昨晩村に辿り着いた時には闇の魔力が薄れたと大騒ぎになっており、レオが洞窟のボスを倒したと告げたときには涙を流すものもいました。
 あのロードウルフという魔物はこれまでに何度かこの村の周辺までやってきたことがあるようです。

 その威圧はすさまじく、村の防衛をする戦士たちを蹴散らし、食らっていったこともあるようです。
 なんと、リューナの夫……ミーナの父もその一人でした。
 その方は元王族として村を守るために必死で戦ったそうです。

 ラオベルグラッドの王族は高潔ですね。
 私の印象はレオですでにかなりの高得点でしたが、話を聞けば聞くほど天井を突き抜けていきます。
 あの王子でもあるアホ勇者のせいで王族というものに対して抱いていた疑問が払しょくされて行きました。

 いえ、国王陛下は威厳もあって、立派に国を治めていらっしゃる方なので、評価が地面を突き破って行っているのは王子でもあるアホ勇者だけでした。


 
 そんなアホ勇者がなんと私の目の前にいます……。

「は?」
 なぜ私がこのアホ勇者と会話しなければならないのでしょうか。
 もうパーティーも抜けましたし婚約も解消できたのでせいせいしているというのに。

「だから、何度も言うが、僕のパーティーに戻らせてやると言っているのだ!」
 ちょっとこのアホの頭を割って中を覗いてみてもいいでしょうか?
 なにをどう考えたらこんなアホな結論を導き出せるのでしょうか?

「いえ、結構です」
「ぐっ……お前、僕がこんなに下手に言っているというのに……」
 下手とは、ソファーにふんぞり返って偉そうに上から目線で『戻らせてやる』なんて言うことを意味する言葉でしたでしょうか?
 いまさら両手を地面について戻ってきてくれとか涙ながらに言われても困りますが、まぁそれならそれでレオメルド様とも相談して共同戦線を張ることくらいは考えてもいいですが……。

「追放されたときに確認した通りです。私には戻る気はありませんし、あなたはあなたの望む仲間と一緒に行けばいいのではないですか?」
 ついこのアホ勇者を前にすると言葉が辛らつになってしまいそうになるのを押さえて冷静にお伝えしました。偉いですね、私。

「お前!王子でもあり勇者でもある僕が戻ってきても良いと言っているんだぞ!そうか……婚約破棄になったことをひがんでいるのか?だとしたら、それも戻してやる。それならいいだろう?」
 えーと、このアホ勇者の頭をカチ割ってもよろしいでしょうか?
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