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第1章 なんで私が追放なのよ!
第9話 勇者ざまぁ③国王から叱責される王子(勇者)
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side 王子(勇者)ライエル
「で?言い訳を聞こう」
なんとかルーディア大陸に帰還した僕を呼びつけた父上は怒りの表情を浮かべて僕に聞いてきた。
言い訳なんかない。
今回は上手くいかなかったが、それはラーヴェとスーメリアが予想以上に使えなかったこと、持ち込んだ魔力回復薬の不足からだ。
「言い訳などありません。次は攻略を進めて見せます」
僕は言い切った。
僕は王子であり勇者だ。
この国の希望となるべき僕が後に引くことなどあってはならない。
「バカものが!!!」
「!?」
しかし、父上の怒りを一欠片も隠すことなく、玉座から立ち上がって叫んできた。
バカとはなんだよ。
僕は命をかけて魔族と戦っているんだぞ?それをバカとは。
いくら父上でも……
「余が何に怒っているのか分かっておらぬのか?」
再び玉座に腰を下ろした父上が問うてくるが、なににだって?
そんなことわかるもんか。
「わかっておらぬのだな……」
そして呆れたような目を向けてくる。
なんだよ。
「余の怒りは、せっかく公爵に婚約を申し出て、その見返りにお前のパーティーへ引き込んだエメリアをあろうことか追放したこと。それから余の許しなくエルフの王族をロデリグ大陸に勝手に連れて行って、しかも殺してしまったことだ!」
「なっ……」
なにを言い出すんだ父上は。
婚約の見返りに僕のパーティーに入れただと?
あんな役立たずを?
耄碌してしまったようだな……父上は。
「お言葉ですが父上。エメリアはロデリグ大陸では役に立ちません。あそこは精霊のいない魔の森に覆われた大地なのです」
僕たちが戦っていた場所について知りもせずによくそんなことが言えたな。
僕たちがどれほどの脅威に立ち向かっていたのかを。
そんな怒りを抱えながら、僕は説明する。
「そしてラーヴェは僕が殺したわけではありません。彼女は残念ながら強力な魔物の餌食となってしまった。これは悲しいことですが、僕が必ず敵を討って見せます」
明日死ぬのはスーメリアかもしれないし、僕かもしれないんだぞ?
命を懸けて戦うメンバーしか……戦えるメンバーしか連れていけないんだ。
「たわけ!!!」
「!?」
父上の怒声が響く。
父上は僕の怒りに気を留めていないようだが……いくら温厚な僕でもそろそろ怒るぞ?
あなたは僕のおかげで魔族から解放されたこの大陸で安全なイスに座って好きなことを言っているのだぞ?
「エメリア殿も貴様と同じタイミングで再びロデリグ大陸に赴き、貴様らのパーティーを壊滅させたアークウルフを倒したようだぞ?」
「なっ……」
なんだと?
アークウルフを倒しただと?エメリアが?
そんなはずはない。
あいつはロデリグ大陸で精霊術を使えないんだ。
「そして、ノーザント公爵からは政略結婚の見返りにパーティーに参加させたのに、一方的に追放されたことに関する抗議と、婚約解消と、慰謝料の請求がきておるわ!」
「くっ……」
あいつ……ふざけるなよ?
僕に捨てられたことを逆恨みして仕返しのつもりなのか。
仕返し……そうか嘘か。アークウルフを倒したなんて言う嘘までついて、僕を貶めようというのか。
「エメリアにアークウルフを倒せるわけがない!あいつはロデリグ大陸では精霊術を使えないんだ。どうやって倒したというのですか!?そもそもなぜロデリグ大陸にエメリアが渡っているのですか??父上は騙されているのです」
「たわけ!!!!!」
僕が真実を伝えようとしているにもかかわらず、それを一喝する父上。
なぜ僕の話を聞かない。
「エメリア殿はこのルーディア大陸からロデリグ大陸についてきてくれる精霊を探して連れて行ったそうだ」
「なっ……」
そんなこと、できるはずがない。
ラーヴェが言ったんだ。
人間の精霊術師ではいくら優秀なものでも精霊を大陸を越えて移動させることはできないと。
「しかも、貴様に追放される時にはすでに同行してもらう精霊は決まっていたそうだ。その話を聞かずに一方的に追放するとはどういうことだ!!!」
「くっ……」
あいつはそんなこと一度も言わなかった。
もしかして黙っていたのか?
僕へのあてつけのために……。
「そのエメリア殿は、貴様らとは逆にロデリグ大陸からこちらに渡ってきたラオべルグラッド王国の王族の要請を受け、私とノーザント公爵に了解を得た上でロデリグ大陸に渡り、攻略を開始してくれている」
「!?!?父上はそんなことを許されるのですか!!?」
「当たり前だバカ者!!我がバルグート王国とはもともと深いつながりを持つラオべルグラッド王国の復興支援にもなるのだからな!」
「くっ……」
ふざけるなよ?
魔族から大陸を解放した後は、全て僕の王国になるべきなんだぞ?
なのになぜ他の王国の支援なんかしなきゃならないんだ!
王女でも差し出したというのならまだしも……。
「それに貴様はエルフに何というつもりなのだ!」
「??」
エルフに?僕がなぜエルフに何か言わないといけないんだ?
「まさかそれもわからぬのか?」
父上がバカにしたような目で僕を見てくる。
やめろ。
僕は勇者だぞ?命を懸けて戦い、このルーディア大陸を解放した勇者なんだぞ?
「あのラーヴェというエルフはお前の言う通りエルフの王族だ。それをみすみす殺しておめおめと帰ってきたのだぞ?いまエルフたちはお前がラーヴェを囮にして逃げ帰ってきたと抗議してきておるわ!」
「!?!?」
なんだって!?僕がそんなことをするわけがないだろう!
悔しいけど僕たちにはあの狼の群れを倒す力があの時にはなくてラーヴェを喰われてしまった。
その悔しい気持ち、悲しい気持ちを押し隠してなんとか帰ってきたのに、そんなことを言うのか!
許せん。許せないぞ。
僕をばかにしやがって。
「お前はエメリアに謝罪してもう一度パーティーに戻るように頼め!ダメもとだがな。そして他にもメンバーを集め、体制を整えて再び攻略に赴け。くれぐれも愛人ばかりで固めるようなバカなことはするなよ。今回のことを反省しているのならな!」
「くっ……わかりました」
話が終わったとばかりに玉座を後にする父上。
僕は怒りを胸に抱えて次の攻略の準備に取り掛かった。
***
お読みいただきありがとうございます!
勇者様ざまぁ回開始です(笑)
もし面白いと思っていただけたらフォローや☆評価(☆☆☆→★★★)を頂けると作者が舞い上がります。よろしくお願いします!
なお、この物語は全24話で書き上げたものだったのですが、実は最後少し強引に終了させております。今回カクヨム様に投稿して、予想以上にフォローや評価をいただきまして、終盤を書き直すかどうか悩んでおります。
「で?言い訳を聞こう」
なんとかルーディア大陸に帰還した僕を呼びつけた父上は怒りの表情を浮かべて僕に聞いてきた。
言い訳なんかない。
今回は上手くいかなかったが、それはラーヴェとスーメリアが予想以上に使えなかったこと、持ち込んだ魔力回復薬の不足からだ。
「言い訳などありません。次は攻略を進めて見せます」
僕は言い切った。
僕は王子であり勇者だ。
この国の希望となるべき僕が後に引くことなどあってはならない。
「バカものが!!!」
「!?」
しかし、父上の怒りを一欠片も隠すことなく、玉座から立ち上がって叫んできた。
バカとはなんだよ。
僕は命をかけて魔族と戦っているんだぞ?それをバカとは。
いくら父上でも……
「余が何に怒っているのか分かっておらぬのか?」
再び玉座に腰を下ろした父上が問うてくるが、なににだって?
そんなことわかるもんか。
「わかっておらぬのだな……」
そして呆れたような目を向けてくる。
なんだよ。
「余の怒りは、せっかく公爵に婚約を申し出て、その見返りにお前のパーティーへ引き込んだエメリアをあろうことか追放したこと。それから余の許しなくエルフの王族をロデリグ大陸に勝手に連れて行って、しかも殺してしまったことだ!」
「なっ……」
なにを言い出すんだ父上は。
婚約の見返りに僕のパーティーに入れただと?
あんな役立たずを?
耄碌してしまったようだな……父上は。
「お言葉ですが父上。エメリアはロデリグ大陸では役に立ちません。あそこは精霊のいない魔の森に覆われた大地なのです」
僕たちが戦っていた場所について知りもせずによくそんなことが言えたな。
僕たちがどれほどの脅威に立ち向かっていたのかを。
そんな怒りを抱えながら、僕は説明する。
「そしてラーヴェは僕が殺したわけではありません。彼女は残念ながら強力な魔物の餌食となってしまった。これは悲しいことですが、僕が必ず敵を討って見せます」
明日死ぬのはスーメリアかもしれないし、僕かもしれないんだぞ?
命を懸けて戦うメンバーしか……戦えるメンバーしか連れていけないんだ。
「たわけ!!!」
「!?」
父上の怒声が響く。
父上は僕の怒りに気を留めていないようだが……いくら温厚な僕でもそろそろ怒るぞ?
あなたは僕のおかげで魔族から解放されたこの大陸で安全なイスに座って好きなことを言っているのだぞ?
「エメリア殿も貴様と同じタイミングで再びロデリグ大陸に赴き、貴様らのパーティーを壊滅させたアークウルフを倒したようだぞ?」
「なっ……」
なんだと?
アークウルフを倒しただと?エメリアが?
そんなはずはない。
あいつはロデリグ大陸で精霊術を使えないんだ。
「そして、ノーザント公爵からは政略結婚の見返りにパーティーに参加させたのに、一方的に追放されたことに関する抗議と、婚約解消と、慰謝料の請求がきておるわ!」
「くっ……」
あいつ……ふざけるなよ?
僕に捨てられたことを逆恨みして仕返しのつもりなのか。
仕返し……そうか嘘か。アークウルフを倒したなんて言う嘘までついて、僕を貶めようというのか。
「エメリアにアークウルフを倒せるわけがない!あいつはロデリグ大陸では精霊術を使えないんだ。どうやって倒したというのですか!?そもそもなぜロデリグ大陸にエメリアが渡っているのですか??父上は騙されているのです」
「たわけ!!!!!」
僕が真実を伝えようとしているにもかかわらず、それを一喝する父上。
なぜ僕の話を聞かない。
「エメリア殿はこのルーディア大陸からロデリグ大陸についてきてくれる精霊を探して連れて行ったそうだ」
「なっ……」
そんなこと、できるはずがない。
ラーヴェが言ったんだ。
人間の精霊術師ではいくら優秀なものでも精霊を大陸を越えて移動させることはできないと。
「しかも、貴様に追放される時にはすでに同行してもらう精霊は決まっていたそうだ。その話を聞かずに一方的に追放するとはどういうことだ!!!」
「くっ……」
あいつはそんなこと一度も言わなかった。
もしかして黙っていたのか?
僕へのあてつけのために……。
「そのエメリア殿は、貴様らとは逆にロデリグ大陸からこちらに渡ってきたラオべルグラッド王国の王族の要請を受け、私とノーザント公爵に了解を得た上でロデリグ大陸に渡り、攻略を開始してくれている」
「!?!?父上はそんなことを許されるのですか!!?」
「当たり前だバカ者!!我がバルグート王国とはもともと深いつながりを持つラオべルグラッド王国の復興支援にもなるのだからな!」
「くっ……」
ふざけるなよ?
魔族から大陸を解放した後は、全て僕の王国になるべきなんだぞ?
なのになぜ他の王国の支援なんかしなきゃならないんだ!
王女でも差し出したというのならまだしも……。
「それに貴様はエルフに何というつもりなのだ!」
「??」
エルフに?僕がなぜエルフに何か言わないといけないんだ?
「まさかそれもわからぬのか?」
父上がバカにしたような目で僕を見てくる。
やめろ。
僕は勇者だぞ?命を懸けて戦い、このルーディア大陸を解放した勇者なんだぞ?
「あのラーヴェというエルフはお前の言う通りエルフの王族だ。それをみすみす殺しておめおめと帰ってきたのだぞ?いまエルフたちはお前がラーヴェを囮にして逃げ帰ってきたと抗議してきておるわ!」
「!?!?」
なんだって!?僕がそんなことをするわけがないだろう!
悔しいけど僕たちにはあの狼の群れを倒す力があの時にはなくてラーヴェを喰われてしまった。
その悔しい気持ち、悲しい気持ちを押し隠してなんとか帰ってきたのに、そんなことを言うのか!
許せん。許せないぞ。
僕をばかにしやがって。
「お前はエメリアに謝罪してもう一度パーティーに戻るように頼め!ダメもとだがな。そして他にもメンバーを集め、体制を整えて再び攻略に赴け。くれぐれも愛人ばかりで固めるようなバカなことはするなよ。今回のことを反省しているのならな!」
「くっ……わかりました」
話が終わったとばかりに玉座を後にする父上。
僕は怒りを胸に抱えて次の攻略の準備に取り掛かった。
***
お読みいただきありがとうございます!
勇者様ざまぁ回開始です(笑)
もし面白いと思っていただけたらフォローや☆評価(☆☆☆→★★★)を頂けると作者が舞い上がります。よろしくお願いします!
なお、この物語は全24話で書き上げたものだったのですが、実は最後少し強引に終了させております。今回カクヨム様に投稿して、予想以上にフォローや評価をいただきまして、終盤を書き直すかどうか悩んでおります。
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