旦那様が自由奔放で浮気ばっかりするのでざまぁし続けたらなんか可愛くなってきました

蒼井星空

文字の大きさ
上 下
8 / 8

第8話 はぁ?旦那様が帰還される?もうあの方のお部屋はありませんが大丈夫でしょうか?

しおりを挟む
「ユフィ、戻ったぞ!」
「えっ???」
ある日突然戻ってきました。

え?誰がですかって?旦那様です。
絵にかいたようなこどおじの旦那様が私の予想に反して戻ってきました。

魔王を倒すと言って出かけて行って30年が経ち、私は旦那様との間に生まれた唯一の子であるアーリヴェルトに爵位を譲って別荘でのんびりしていたら突然現れたのです。
なんども言いますが、あなたは魔王を追って魔道具を使って旅だったのに、別荘にいる私の前に現れたらまるで私が魔王のようではありませんか。

まぁいいです。
彼もだいぶ年を取ったようですが、凛々しいまま。
豚には戻っていないのでよしとしましょう。

私はイスから立ち上がって彼を迎えてあげました。

「ユフィ……老けたな……うぐぅっ」
そして思いっきり鳩尾に拳を叩きつけました。

女性になんていう言葉を放つのでしょう、このバカは。
しばらく彼が蹲っている間、私は再びイスに座りなおして紅茶を頂きました。


そしてダメージから復活したようだったので、イスを勧め、紅茶を出して差し上げました。

「ありがとう」
彼はまだ鳩尾をさすりながらも座りました。

「もう魔王は倒したのですか?」
私は聞きます。それ以外に話題はないですしね。

「あぁ。合計で200人ほどは倒したな。でも、これ以上は少々年齢的に辛くなってきてな。後進に譲って引退したのだ」
彼はどのような修羅の道を生きてきたのでしょうか……。
魔王討伐200体とか、常人の領域ではありませんね。

「そうでしたか。私の方も無事、息子に伯爵位を譲りましたので、お互い引退した身ということですわね」
「子供?子供ができたのか。おめでとう……というか、すまない。私はここを放り出して行ってしまったから。それで誰と再婚したのだ?兄上か?」
まさか私が公爵様に憧れを持っていたことに気付いていたのでしょうか……彼は自由奔放で癇癪持ちで勝手な人でしたが、なぜかそういうところは鋭いのですね。
笑ってしまいます。

「どうしたのだ。まさか本当に?」
なにか焦り始めました。どうしたのでしょうか?よくわからないので私は本当のことを告げます。

「公爵様ではありませんわ。子供はあなたとの子供です」
「はっ?」
なぜか固まりました。どうしたのでしょうか。目の前で手を振っても固まったまま。ちょっとした悪戯で髭を引っ張ってみても固まっています。

「俺に子供だと?」
動揺のせいか、また一人称が揺れていますね。

「そうです。神殿長になると言い出されたときか、勇者になって一度戻ってこられたときか、どちらかだと思うのですが……」
あの2度以外だと計算が合わないのですが、思い当たる節がない……よりもよっぽどいいですわね。
生まれてきた子供は旦那様にそっくりな男の子でしたから。

「それ以降、もしかして再婚などはしていないのか?」
「えぇ、しておりませんわ」
なぜか額に手を置いた彼の呟きにしっかり答えてあげました。

「もしかして離婚もしていない?」
「えぇ、しておりませんわ」
また返します。なんか可笑しくなってきましたわ。

「なぜ?」
「あなたが私の旦那様だからですわ」
「キミはなにか被虐的な嗜好でもあるのか?」
「あはははは。失礼なことを仰いますね」
本当に面白い人です。私が旦那様を好きだなんてこれっぽっちも思っていないのでしょうね。

「ではなぜ?」
「あなたが好きだからですわ」
「は?」
また止まってしまいました。
私はなにか特別な魔法でも突然覚えたのでしょうか?フリーズ!……みたいな。

「あの、その……俺は……」
「落ち着いてください。焦らなくてもいいじゃないですか。お互い引退した身であれば、時間はたっぷりありますもの」
「そうか……そうだな……そうなのか?」
なぜそこで疑問なのでしょうか。

私はとりあえず旦那様をお風呂に押し込めて執事たちに料理を用意させ、旦那様と久しぶりの晩餐をしました。

彼が語ってくれる話は私にとっては文字通り異世界の出来事で、とても面白おかしいものでした。
あなたは何人の魔王(女)を抱いてきたのですか。

そこまでいくと人外の領域に思えますが、目の前で子供のように語る旦那様を見ると不思議とほんわりとした気分になりました。


「キミが……いや、本当に申し訳ない。俺は嫌われていると思っていたのだ……その、ずっと」
「えぇ、嫌いでしたわ。豚でしたもの」
「ぐぅっ……」
もう隠し立てすることは何もありませんし、隠す意味もありませんから全てを語りますわ。

「でも、どこか憎めなかったのですわ。それどころかやり取りは楽しかったのです。あなたが誰を抱こうがこれっぽっちも嫉妬の気持ちは浮かばないのに、魔王を倒すと言って出て行ってからはずっと心配しておりました。無事であればいいと、そう思っていたのです」
「ユフィ……」
こうして伝えられるのですから、良かったのですわ。

「私の気分はきっとずっと子供の頃のままだったのです。一緒に別荘の庭を駆けまわった子供のね。だから、夫婦というか、異性としてはあまり見ておりませんでした。でも、ずっと友達だと、親友だという感覚でした」
「そうだったのか。だから思い返せば酷いことばかりしていた僕を追い出さなかったのか……」
ようやく一人称が昔に戻りましたね。
顔からもなにかつきものが落ちたかのように自然な表情になりました。

「また、一緒にいてもいいだろうか?」
「もちろんですわ」
そう言い合って、私たちは一緒に寝ました。





出してしまった小説や、許可した劇についてどう言い訳しようかと考えながら……。

まぁ、驚く彼の姿が目に浮かんで楽しくなってしまったのですが。



これからは一緒の部屋ですわね。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

王子、私を好きになってはいけません

たおたお
恋愛
❤️第18回恋愛小説大賞 応募作❤️ エガートン領の領主権授与式に出席した第二王子のラルフ。今度の領主はお世辞にも領主の器ではない人物。しかし、その授与式に現れたもう一人の人物は、赤い鎧を身につけた『赤い死神』と呼ばれる騎士でした。その場にいた誰もが、鎧の中は男性だと思っていましたが、王の命により兜を取った中の人物は、鮮烈な存在感を放つ美しい女性、イヴリン。その力強い赤い瞳にラルフは一瞬で魅了されてしまいます。 伯爵となった主人公イヴリンに恋心を寄せるラルフ第二王子。しかし、イヴリンが領主となった領地で起こった事件を通して、彼女の常人ではない能力が次々に明らかとなり、ラルフは恐怖すら感じる様になるのでした。それと同時にどんどん彼女に惹かれていく自分にも気がつくラルフ。兄のジェイミーには『お前にはまだ早い』と言われつつも、葛藤しながらもイヴリンに関わっていきます。 年上の未亡人、普段は目を隠した髪型で地味な格好ながらミステリアスな女伯爵イヴリンと、そんな彼女に想いを寄せる年下第二王子ラルフ。二人の恋の行方は……

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

聖女として召喚された社畜ですが、役立たずと追い出されたので念願のギフトショップを開店したら思わぬスキルに目覚めました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【え? 私を追い出したのは、あなたたちの方でしたよね?】 短大を卒業したばかりの私――東リサはブラック企業でこき使われる社畜だった。連日連夜の激務だったが仕事を辞めずに続けていたのは、将来自分の店を持つ夢をかなえる為。この日も最終列車に乗り込んで、転寝をしていると突然まばゆい光に包まれて気付けば世界を救う聖女として異世界に召喚されていた。けれど、聖女の力を何一つ発動出来なかった私は役立たずとして追い出されてしまう。そこで私はこの世界で生き抜く為、念願のギフトショップを開店させた。すると思わぬスキルが発動し―― ※スピンオフ作品(単独で読めます) ※他サイトでも投稿中

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

処理中です...