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第30話 エフィが特殊魔法"人物史"を改良してくれたから試し打ちしたらヴェルト教授を撃ち抜いた件
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「わかるだろ? 俺は君の未来を覗き見ていた」
「はい……」
「つまり、婚約破棄が起こることは知っていた」
大きく頭を下げる。返答は帰ってこない。
怒ったかな……?
「お兄様はきっと多くの人の未来を集約されたのではないですか? その結果、最善のものを選んだとしてもここまでしか実現できなかったということなんだろうなと思います。実際、私たちは助かりました」
しかし、いざエフィの口から出てきたのはそんな言葉。最大限に俺のことを理解してくれた、優しい言葉だった。
泣きそうだよな。泣かないけど。
「ありがとう、エフィ。信じてくれて」
俺は素直に感謝を伝えた。やっぱりエフィは最高の義妹だ。誰にも渡さないからな。
「それに、ギード王子とのことは本性が知れてよかったと思いました。あのまま体制を整えて結婚しても、きっとそこにあるのは政略結婚のただただ冷たい関係だけです。もちろんそれを受け入れるつもりでしたが、破棄されてなくなった今、あの方に嫁がなくてよかったとしか思えません」
「そうか……」
それに公爵家のために冷たい結婚でも覚悟していたというエフィ。想像してしまったのか少し青い顔をしていたが、もうそんなことにはさせない。
仮に父さんがまた変な相手と婚約させようとしたら、ミトラ様が言うように引退させてやるから覚悟しろよ?
「良かったな、エフィ。そしてクラム殿。予想以上に魔力消費が抑えられた。あとはクラム殿が私と結婚してくれたら完璧だ」
「「それはない!」」
「えぇ……エフィまで……」
「あっ、すみません」
ヴェルト教授はいつものとおりバカなことを言い出したから否定したら、エフィと被った。
面白かったので、エフィを見ながら微笑んでいたら、ヴェルト教授が嘘泣きして出て行こうとしたから首根っこ掴んで座らせたら『あん♡』とかほざいててウザかった。
そしてエフィに改良した魔法陣について教えてもらった。
その効果はすさまじかった。
「えっ、魔力消費が20分の1になった? 本当に?」
「はい。どうやらもともとの魔法陣ではかなりの魔力を使って魔法で覗き見た記録を表示する部分の作り込みがされていました」
「確かに、仰々しくて雰囲気のある板が出現してそこに記録が書かれていたな」
「それをノートのようなものに変更しただけで10分の1以下になりました」
「はっ?」
なんじゃそりゃ。あの重たそうで実際重くて地面に降ろすしかない板がそんなに魔力を使っていたのか?
「さらに、結果を取得する際に神々しい声で読み上げてくれる機能があったと思うのですが、それは省きました」
うん、いらんもんね、あれ。むしろ対象者にバレそうになるからやめてほしかった。ありがとう。助かる。
「最後に、同じ人に使う場合、変化がないところは省略されるようにしました」
「マジで!? すごっ」
「そんなことは。ただ改造しただけで、もともとこんな魔法を持っているお兄様の方が凄いです」
いやいやいや。そんなことはなくないか?
変化がないか同じやつにかけることはあるから、めちゃくちゃありがたい。
「では、どうだろう。ここで使ってみて欲しいのだがな。エフィの課題の結果に対する評価を記載してほしいんだ」
「わかった。"人物史"」
「えっ、はやっ」
俺は教授に魔法をかけたが……バカじゃね~の!? こんなの公開できるかよ!
何回俺に迫ってくるつもりなんだ?
さっきのは冗談じゃなかったのか……。
「え~と、ヴェルト教授は……すまない、見せることができない。……」
「なぜだ!?」
「だが、使ってみた感じ確かに魔力消費が相当少ないな。手っ取り早く証明するなら今まで一日一回しか使えかったから、複数回やればエフィの改良効果は一目瞭然だ。だけど、エフィをみるなら父さんたちと一緒にやりたいし、ヴェルト教授の甥っ子くんは?」
「あの子はやめて欲しい。その……訳ありだから」
ではどうしよう。
そうは言っても、今選択肢がないから、ヴェルト教授しかないな。
「今後、何がどうあってもキミと結婚することはない」
「クラム殿……酷い……!?」
「"人物史"」
なんで変わらないんだよ。メンタル鬼強かよっ!!!
「お兄様……」
ヴェルト教授に結婚はないとか、卑猥すぎて嫌だとか文句を言いながら"人物史"を繰り返し使う実験は無事完了した。
さらに10回使っても魔力に余裕があるな。
しかしこの実験はある意味、俺たちの心に重いダメージを与えた。
主に精神面で。
ヴェルト教授はいつも会うたびに誘惑のようなことをしてくるから嫌われてはいないとは思っていたが、まさか求婚されるほど好かれているとは思わなかった。
それも、何回罵倒しても、何度拒絶しても諦めるつもりはないらしい。なんでだよ!?
今もついノリノリで10回罵倒したわけだが、ちょっと怖くなってきた。
罵倒されたヴェルト教授もさすがに凹んだ表情をしていて少し申し訳ない。
エフィからも少し非難するような視線を向けられている。
甥っ子くんには睨まれており……うん、申し訳ない。
でも、俺の本命はエフィで、俺のキャパはエフィでいっぱいだ。
それ以上欲しくない。
決して人間的に嫌いとかではないし、むしろ魔法使いとしては好感を持っている。
エフィのことも守ってくれているしな。
「すまない。あくまでも実験だからな? 決してヴェルト教授を嫌っているとかではないけど、結婚も考えていないから」
「実験ついでにフラれるとか!?!?」
残念ながら、あまりフォローにはならなかったらしい。
「はい……」
「つまり、婚約破棄が起こることは知っていた」
大きく頭を下げる。返答は帰ってこない。
怒ったかな……?
「お兄様はきっと多くの人の未来を集約されたのではないですか? その結果、最善のものを選んだとしてもここまでしか実現できなかったということなんだろうなと思います。実際、私たちは助かりました」
しかし、いざエフィの口から出てきたのはそんな言葉。最大限に俺のことを理解してくれた、優しい言葉だった。
泣きそうだよな。泣かないけど。
「ありがとう、エフィ。信じてくれて」
俺は素直に感謝を伝えた。やっぱりエフィは最高の義妹だ。誰にも渡さないからな。
「それに、ギード王子とのことは本性が知れてよかったと思いました。あのまま体制を整えて結婚しても、きっとそこにあるのは政略結婚のただただ冷たい関係だけです。もちろんそれを受け入れるつもりでしたが、破棄されてなくなった今、あの方に嫁がなくてよかったとしか思えません」
「そうか……」
それに公爵家のために冷たい結婚でも覚悟していたというエフィ。想像してしまったのか少し青い顔をしていたが、もうそんなことにはさせない。
仮に父さんがまた変な相手と婚約させようとしたら、ミトラ様が言うように引退させてやるから覚悟しろよ?
「良かったな、エフィ。そしてクラム殿。予想以上に魔力消費が抑えられた。あとはクラム殿が私と結婚してくれたら完璧だ」
「「それはない!」」
「えぇ……エフィまで……」
「あっ、すみません」
ヴェルト教授はいつものとおりバカなことを言い出したから否定したら、エフィと被った。
面白かったので、エフィを見ながら微笑んでいたら、ヴェルト教授が嘘泣きして出て行こうとしたから首根っこ掴んで座らせたら『あん♡』とかほざいててウザかった。
そしてエフィに改良した魔法陣について教えてもらった。
その効果はすさまじかった。
「えっ、魔力消費が20分の1になった? 本当に?」
「はい。どうやらもともとの魔法陣ではかなりの魔力を使って魔法で覗き見た記録を表示する部分の作り込みがされていました」
「確かに、仰々しくて雰囲気のある板が出現してそこに記録が書かれていたな」
「それをノートのようなものに変更しただけで10分の1以下になりました」
「はっ?」
なんじゃそりゃ。あの重たそうで実際重くて地面に降ろすしかない板がそんなに魔力を使っていたのか?
「さらに、結果を取得する際に神々しい声で読み上げてくれる機能があったと思うのですが、それは省きました」
うん、いらんもんね、あれ。むしろ対象者にバレそうになるからやめてほしかった。ありがとう。助かる。
「最後に、同じ人に使う場合、変化がないところは省略されるようにしました」
「マジで!? すごっ」
「そんなことは。ただ改造しただけで、もともとこんな魔法を持っているお兄様の方が凄いです」
いやいやいや。そんなことはなくないか?
変化がないか同じやつにかけることはあるから、めちゃくちゃありがたい。
「では、どうだろう。ここで使ってみて欲しいのだがな。エフィの課題の結果に対する評価を記載してほしいんだ」
「わかった。"人物史"」
「えっ、はやっ」
俺は教授に魔法をかけたが……バカじゃね~の!? こんなの公開できるかよ!
何回俺に迫ってくるつもりなんだ?
さっきのは冗談じゃなかったのか……。
「え~と、ヴェルト教授は……すまない、見せることができない。……」
「なぜだ!?」
「だが、使ってみた感じ確かに魔力消費が相当少ないな。手っ取り早く証明するなら今まで一日一回しか使えかったから、複数回やればエフィの改良効果は一目瞭然だ。だけど、エフィをみるなら父さんたちと一緒にやりたいし、ヴェルト教授の甥っ子くんは?」
「あの子はやめて欲しい。その……訳ありだから」
ではどうしよう。
そうは言っても、今選択肢がないから、ヴェルト教授しかないな。
「今後、何がどうあってもキミと結婚することはない」
「クラム殿……酷い……!?」
「"人物史"」
なんで変わらないんだよ。メンタル鬼強かよっ!!!
「お兄様……」
ヴェルト教授に結婚はないとか、卑猥すぎて嫌だとか文句を言いながら"人物史"を繰り返し使う実験は無事完了した。
さらに10回使っても魔力に余裕があるな。
しかしこの実験はある意味、俺たちの心に重いダメージを与えた。
主に精神面で。
ヴェルト教授はいつも会うたびに誘惑のようなことをしてくるから嫌われてはいないとは思っていたが、まさか求婚されるほど好かれているとは思わなかった。
それも、何回罵倒しても、何度拒絶しても諦めるつもりはないらしい。なんでだよ!?
今もついノリノリで10回罵倒したわけだが、ちょっと怖くなってきた。
罵倒されたヴェルト教授もさすがに凹んだ表情をしていて少し申し訳ない。
エフィからも少し非難するような視線を向けられている。
甥っ子くんには睨まれており……うん、申し訳ない。
でも、俺の本命はエフィで、俺のキャパはエフィでいっぱいだ。
それ以上欲しくない。
決して人間的に嫌いとかではないし、むしろ魔法使いとしては好感を持っている。
エフィのことも守ってくれているしな。
「すまない。あくまでも実験だからな? 決してヴェルト教授を嫌っているとかではないけど、結婚も考えていないから」
「実験ついでにフラれるとか!?!?」
残念ながら、あまりフォローにはならなかったらしい。
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