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第46話 幸せな朝(エフィ視点)
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私は窓から差し込む優しい光を浴びながらベッドから立ち上がり、水の魔法で顔を洗い、風の魔法の優しい風で乾かし、さっぱりした気持ちで窓を開けた。
とても清々しい澄んだ空気が一気に流れ込んでくる。
あぁ、気持ち良い。
私は和やかな気分で起きて来たベッドを振り返ると、そこにはまだ愛しいお寝坊さんが気持ちよさそうに眠っている。
私はベッドまで戻り、彼を眺める。
起きる気配はない。
ついつい悪戯心が芽生え、彼の頭を撫で、頬をつついたが、可愛らしく吐息を吐くくらいでやはり起きる気配はなかった。
愛しい人。優しい人。素直な人。私を愛し、守り、支えてくれる人。
昔から彼はそうだった。
私が何をするにしてもまずは話を聞き、応援してくれた。
ずっと兄妹だと思っていた。とても優しくて頼りがいがある素敵なお兄様だと思っていたが、もし結婚するならこんな人がいいと思ったことは何度もあった。
それは婚約者だったギード王子が全く私のことを視界に納めておらず、会っても冷たいことしか言われなかったということもあるかもしれない。
ずっと傍にいてくれて、暗い世界から私を助け出してくれた人。
今はこうして一緒に暮らしていることが嬉しい。
まだちょっと恥ずかしいけど、一緒に寝て起きて、朝ご飯を食べる。
彼も私も仕事をして、また帰ってきて夕飯を食べ、語り合い、一緒に寝る。
忙しいだろうに休日を作ってはいろんなものを見せてくれた。
この前行った古代遺跡は面白かった。
たくさんのゴーレムがいたが襲い掛かってくることはなく、1体ずつ出会うたびに謎解きをさせられた。
すべて魔法や魔道具に関するもので、古代の知識や考え方に触れられた。
そして、見たこともない魔道具や魔法陣をたくさん手に入れたの。
今はその研究に大忙しだ。
私はずっと変な子だと思っていた。私自身を。
なにせ公爵家の娘なのに、自分を飾ることや、社交の場に出ることに興味を持てなかった。
私の興味の対象はずっと魔法、そして魔道具だった。
だからこそ、お父様から私がギード王子と婚約することになったと聞いてびっくりした。
私が? 無理です。そう思った。
しかし、この話は国王陛下も乗り気で、歓迎してくれているとか。
断れる雰囲気ではなかった。
私は貴族の娘として、当然頷いた。
その様子を見て驚いているお兄様の顔はきっと永遠に忘れない。
なぜかっていうと、その後いろいろとあって、私はお兄様と結婚したから。
お兄様は実のお兄様ではなく、義理のお兄様だった。
それを知った時、私は驚いた。
まさかなんのつながりもなくて、捨てられてしまうのかと思ったけど、お兄様の反応はむしろ正反対で、私のことがずっと好きだったなんて。
そんな風に伝えられて、嬉しくないわけがない。
むしろ、信じられないくらい嬉しかったわ。
幸せすぎて、くらくらしてしまう。
こんなに幸せで良いのかなとも思うけど、みんなが褒めてくれる。
私の研究も役に立っているらしい。
優しい世界。
「んん? エフィ……あむ……」
私がもう一度彼の隣に潜り込むと、寝ぼけた彼が抱き着いてきて、そして……くすぐったい。
変な態勢で寝たら体が痛くなるのになぁ……。
かといって押し返して起こすのも可哀そう。
彼に抱きかかえられた状態では壁の方を向くしかなく、そこには不思議な絵がかかっている。
"魔女"が描いた絵らしいが、はっきり言って何が描かれているのかはよくわからない。
なんと、私の母らしい"魔女"。
噂や記録でしかしらないけど、凄い人だったのは間違いない。
その魔女さんが、義理の父であるハミル・エルダーウィズ様に預けたらしい遺産の数々。
その中にあったこの絵が不思議と気に入って、同じようにこの絵に興味を持った彼が寝室にかけてくれた。
心が安らぎ、暖かい気分になる絵。きっと魔法的な機構が備わっていると思うけど、今の私では解明できない。
いつかきっと、引き継いだ魔法陣や魔道具も解明したい。
だから、見守っていてね。
お母さん。
私が誓うと、その絵が少し明るくなったように感じた。
もう少し待っていてね。
とても清々しい澄んだ空気が一気に流れ込んでくる。
あぁ、気持ち良い。
私は和やかな気分で起きて来たベッドを振り返ると、そこにはまだ愛しいお寝坊さんが気持ちよさそうに眠っている。
私はベッドまで戻り、彼を眺める。
起きる気配はない。
ついつい悪戯心が芽生え、彼の頭を撫で、頬をつついたが、可愛らしく吐息を吐くくらいでやはり起きる気配はなかった。
愛しい人。優しい人。素直な人。私を愛し、守り、支えてくれる人。
昔から彼はそうだった。
私が何をするにしてもまずは話を聞き、応援してくれた。
ずっと兄妹だと思っていた。とても優しくて頼りがいがある素敵なお兄様だと思っていたが、もし結婚するならこんな人がいいと思ったことは何度もあった。
それは婚約者だったギード王子が全く私のことを視界に納めておらず、会っても冷たいことしか言われなかったということもあるかもしれない。
ずっと傍にいてくれて、暗い世界から私を助け出してくれた人。
今はこうして一緒に暮らしていることが嬉しい。
まだちょっと恥ずかしいけど、一緒に寝て起きて、朝ご飯を食べる。
彼も私も仕事をして、また帰ってきて夕飯を食べ、語り合い、一緒に寝る。
忙しいだろうに休日を作ってはいろんなものを見せてくれた。
この前行った古代遺跡は面白かった。
たくさんのゴーレムがいたが襲い掛かってくることはなく、1体ずつ出会うたびに謎解きをさせられた。
すべて魔法や魔道具に関するもので、古代の知識や考え方に触れられた。
そして、見たこともない魔道具や魔法陣をたくさん手に入れたの。
今はその研究に大忙しだ。
私はずっと変な子だと思っていた。私自身を。
なにせ公爵家の娘なのに、自分を飾ることや、社交の場に出ることに興味を持てなかった。
私の興味の対象はずっと魔法、そして魔道具だった。
だからこそ、お父様から私がギード王子と婚約することになったと聞いてびっくりした。
私が? 無理です。そう思った。
しかし、この話は国王陛下も乗り気で、歓迎してくれているとか。
断れる雰囲気ではなかった。
私は貴族の娘として、当然頷いた。
その様子を見て驚いているお兄様の顔はきっと永遠に忘れない。
なぜかっていうと、その後いろいろとあって、私はお兄様と結婚したから。
お兄様は実のお兄様ではなく、義理のお兄様だった。
それを知った時、私は驚いた。
まさかなんのつながりもなくて、捨てられてしまうのかと思ったけど、お兄様の反応はむしろ正反対で、私のことがずっと好きだったなんて。
そんな風に伝えられて、嬉しくないわけがない。
むしろ、信じられないくらい嬉しかったわ。
幸せすぎて、くらくらしてしまう。
こんなに幸せで良いのかなとも思うけど、みんなが褒めてくれる。
私の研究も役に立っているらしい。
優しい世界。
「んん? エフィ……あむ……」
私がもう一度彼の隣に潜り込むと、寝ぼけた彼が抱き着いてきて、そして……くすぐったい。
変な態勢で寝たら体が痛くなるのになぁ……。
かといって押し返して起こすのも可哀そう。
彼に抱きかかえられた状態では壁の方を向くしかなく、そこには不思議な絵がかかっている。
"魔女"が描いた絵らしいが、はっきり言って何が描かれているのかはよくわからない。
なんと、私の母らしい"魔女"。
噂や記録でしかしらないけど、凄い人だったのは間違いない。
その魔女さんが、義理の父であるハミル・エルダーウィズ様に預けたらしい遺産の数々。
その中にあったこの絵が不思議と気に入って、同じようにこの絵に興味を持った彼が寝室にかけてくれた。
心が安らぎ、暖かい気分になる絵。きっと魔法的な機構が備わっていると思うけど、今の私では解明できない。
いつかきっと、引き継いだ魔法陣や魔道具も解明したい。
だから、見守っていてね。
お母さん。
私が誓うと、その絵が少し明るくなったように感じた。
もう少し待っていてね。
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