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第43話 真面目に考えている自分がアホらしくなるくらいあっさりと王妃候補が決まってしまった件
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□王城での新年祝賀パーティー (クラム)
新国王となったアルスはつつがなく即位の義をすませ、新年の儀式もすませた。
それに続いて今日から次々に開かれるのが、新年を祝うパーティーだ。
今日王城で開催されるものを皮切りに、各貴族が開く。
新国王は王城でのものと、あとは政治的、軍事的に関係性強化が必要な貴族との接触を試みることになる。
もちろん各貴族も同じだ。
そして派閥のトップやそれに近い貴族たちは、多くの人を集めようとする。
それがその派閥、ひいてはその貴族の権威につながるからだ。
だが、エルダーウィズ公爵家は今年は開かない。
貴族として細やかなものくらいは、とか状況を見ずにほざく父さんを殴り倒して非開催を決定した。
ちゃんと状況を見ているミトラ様も賛成してくれたが……。
「ミトラとエフィ、アリアにおめかしさせてあげたかったのに」
なんてことをボソっと恨めし気に言うから、父さんとミトラ様の出席数を昨年までの3倍にして差し上げたら、ミトラ様に怒られた。
だが、夫の発言には妻として責任を持ってもらおう。
父さんはたくさんドレスを送ると意気込んでいたが、ミトラ様にため息をつかれてようやくまずいことをしたと思ったらしい。
まぁ、出席する会は気を使う必要があまりないものを選んでおいたから、諦めて行ってきてくれ。
ただし、エフィは学院での仕事があるので全欠席。
俺もほぼ全欠席。アリアを連れて王城のパーティーに出るだけにしておいた。
なんとかアルス新国王がアリアを選ばないようにしなければならない。しかし、新国王の希望により会わせないわけにもいかない。何かあった時のためにあえて当主である父さんを欠席させたかったけど、さすがに大臣として王城のパーティーに出ないわけにはいかない。
はぁ……気が重い。なぜなら……。
「ちゃんと私が選ばれるようにしてよね、お兄様。変なこと言ったら殴り飛ばすから」
なんでこいつはこんなに乗り気なんだ?
もしかしてタイプだったとか?
尻にひいてる未来しか思い浮かばないけど、まぁ女から見たらいい状況ではあるよな。
そしてパーティーが始まる。
当然理由をつけて俺は離れる。
アリアが文句を言っているが、最初から連れて行けるわけがないだろ?
お前は後回しだ。
そう思って、アルス新国王がアイーシャという女の子と話をしているのを伺う。
上手く行ってくれ、頼む上手く行ってくれ、頼む……。
しかし会話は弾んでいなかった。
なにせ強面で厳格な父親がアイーシャの隣に陣取って、全部聞いている。
アルスが緊張して何も話せていないし、アイーシャでは王妃として分不相応と宣言してしまっている。
なぜ姿絵を送って来たし……。
しかし、気持ちはわかる。
彼の家は政争や貴族の社交とは無縁の堅実な家柄だ。
少し落ち込んだ様子を隠しながら去っていく新国王を隠れて見送った後に話を聞いてみて、俺は納得してしまった。
曰く、同じ年頃の娘がいるのに送らないのは不敬だと。
新国王がアイーシャを気にしてくれたことは嬉しいし、俺が下した『エルダーウィズ公爵家とは関係が強くないのがいい』という言葉にも納得してくれていた。
一方で純朴に育てた娘に王妃が務まるとは思えない。せめて側室ならばと思うと。
そのため、真っ先に新国王がアイーシャを訪ねたことで焦ったようだ。
王妃ということであれば、丁重にお断りしたいと。
う~ん……。どうしよう……。このままだとアリアになってしまう。
それも伝えてみたが、自分の娘が王妃になるくらいなら、きちんと理をわかっているエルダーウィズ公爵家の娘の方がよいとまで言われてしまった。
俺は悩みながらアリアのところに戻ったのだった。そして目にしてしまった。
「アルス様。アリア・エルダーウィズでございます。いつも愚兄と姉がお世話になっておりますわ」
俺が紹介してもないのにアルスに挨拶する妹の姿を。
そして何が愚兄だよ。きっちりエフィには"愚"をつけていないし。
お前、なにやってんだ!
「はじめまして、アリア様。姿絵を見て思ったことだが、本当にお美しい……」
だが、アルス新国王は気合を入れたアリアにさっそくノックアウトされていた。
チョロすぎるだろ!!!!!!
「ありがとうございます。アルス様も、良く似合っておられます。とてもカッコいいですわ」
少し顔を赤くしながら、アルスを直視できませんみたいな感じで視線を落としながら言うアリアは確かに可愛い。
周りで見ていた者たちも『ほぅ……』とか言ってる。
でも、全部演技だからな!
そいつ小悪魔で、メスガキで、しっかり裏があるタイプの美少女だからな!!!
と思ったけど、きっともう遅かった。
「君のような人にそう言われると嬉しい。ぜひ親しくして頂ければ」
「嬉しいですわ。ぜひよろしくお願いします」
アルスのチョロい発言に、満面の笑みを隠しながらお頭を下げるアリア。
見えたからな。その悪そうな笑い顔。
アルスから隠したつもりでも、お兄ちゃんには隠せてないからな!!!!
と思ったけど、もう遅かったんだよ。
アルスとアリアに気付いた父さんがよってきて、嬉しそうに何かを告げ、2人も少し顔を赤らめながら頷く。
翌日、婚約発表しやがったんだ、このクソが!!!
新国王となったアルスはつつがなく即位の義をすませ、新年の儀式もすませた。
それに続いて今日から次々に開かれるのが、新年を祝うパーティーだ。
今日王城で開催されるものを皮切りに、各貴族が開く。
新国王は王城でのものと、あとは政治的、軍事的に関係性強化が必要な貴族との接触を試みることになる。
もちろん各貴族も同じだ。
そして派閥のトップやそれに近い貴族たちは、多くの人を集めようとする。
それがその派閥、ひいてはその貴族の権威につながるからだ。
だが、エルダーウィズ公爵家は今年は開かない。
貴族として細やかなものくらいは、とか状況を見ずにほざく父さんを殴り倒して非開催を決定した。
ちゃんと状況を見ているミトラ様も賛成してくれたが……。
「ミトラとエフィ、アリアにおめかしさせてあげたかったのに」
なんてことをボソっと恨めし気に言うから、父さんとミトラ様の出席数を昨年までの3倍にして差し上げたら、ミトラ様に怒られた。
だが、夫の発言には妻として責任を持ってもらおう。
父さんはたくさんドレスを送ると意気込んでいたが、ミトラ様にため息をつかれてようやくまずいことをしたと思ったらしい。
まぁ、出席する会は気を使う必要があまりないものを選んでおいたから、諦めて行ってきてくれ。
ただし、エフィは学院での仕事があるので全欠席。
俺もほぼ全欠席。アリアを連れて王城のパーティーに出るだけにしておいた。
なんとかアルス新国王がアリアを選ばないようにしなければならない。しかし、新国王の希望により会わせないわけにもいかない。何かあった時のためにあえて当主である父さんを欠席させたかったけど、さすがに大臣として王城のパーティーに出ないわけにはいかない。
はぁ……気が重い。なぜなら……。
「ちゃんと私が選ばれるようにしてよね、お兄様。変なこと言ったら殴り飛ばすから」
なんでこいつはこんなに乗り気なんだ?
もしかしてタイプだったとか?
尻にひいてる未来しか思い浮かばないけど、まぁ女から見たらいい状況ではあるよな。
そしてパーティーが始まる。
当然理由をつけて俺は離れる。
アリアが文句を言っているが、最初から連れて行けるわけがないだろ?
お前は後回しだ。
そう思って、アルス新国王がアイーシャという女の子と話をしているのを伺う。
上手く行ってくれ、頼む上手く行ってくれ、頼む……。
しかし会話は弾んでいなかった。
なにせ強面で厳格な父親がアイーシャの隣に陣取って、全部聞いている。
アルスが緊張して何も話せていないし、アイーシャでは王妃として分不相応と宣言してしまっている。
なぜ姿絵を送って来たし……。
しかし、気持ちはわかる。
彼の家は政争や貴族の社交とは無縁の堅実な家柄だ。
少し落ち込んだ様子を隠しながら去っていく新国王を隠れて見送った後に話を聞いてみて、俺は納得してしまった。
曰く、同じ年頃の娘がいるのに送らないのは不敬だと。
新国王がアイーシャを気にしてくれたことは嬉しいし、俺が下した『エルダーウィズ公爵家とは関係が強くないのがいい』という言葉にも納得してくれていた。
一方で純朴に育てた娘に王妃が務まるとは思えない。せめて側室ならばと思うと。
そのため、真っ先に新国王がアイーシャを訪ねたことで焦ったようだ。
王妃ということであれば、丁重にお断りしたいと。
う~ん……。どうしよう……。このままだとアリアになってしまう。
それも伝えてみたが、自分の娘が王妃になるくらいなら、きちんと理をわかっているエルダーウィズ公爵家の娘の方がよいとまで言われてしまった。
俺は悩みながらアリアのところに戻ったのだった。そして目にしてしまった。
「アルス様。アリア・エルダーウィズでございます。いつも愚兄と姉がお世話になっておりますわ」
俺が紹介してもないのにアルスに挨拶する妹の姿を。
そして何が愚兄だよ。きっちりエフィには"愚"をつけていないし。
お前、なにやってんだ!
「はじめまして、アリア様。姿絵を見て思ったことだが、本当にお美しい……」
だが、アルス新国王は気合を入れたアリアにさっそくノックアウトされていた。
チョロすぎるだろ!!!!!!
「ありがとうございます。アルス様も、良く似合っておられます。とてもカッコいいですわ」
少し顔を赤くしながら、アルスを直視できませんみたいな感じで視線を落としながら言うアリアは確かに可愛い。
周りで見ていた者たちも『ほぅ……』とか言ってる。
でも、全部演技だからな!
そいつ小悪魔で、メスガキで、しっかり裏があるタイプの美少女だからな!!!
と思ったけど、きっともう遅かった。
「君のような人にそう言われると嬉しい。ぜひ親しくして頂ければ」
「嬉しいですわ。ぜひよろしくお願いします」
アルスのチョロい発言に、満面の笑みを隠しながらお頭を下げるアリア。
見えたからな。その悪そうな笑い顔。
アルスから隠したつもりでも、お兄ちゃんには隠せてないからな!!!!
と思ったけど、もう遅かったんだよ。
アルスとアリアに気付いた父さんがよってきて、嬉しそうに何かを告げ、2人も少し顔を赤らめながら頷く。
翌日、婚約発表しやがったんだ、このクソが!!!
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