36 / 46
第36話 俺は素直に謝れる大人だから謝ってちゃんと説明したら嬉し泣きされた件
しおりを挟む
「もう、なにがあったのかと思ってビックリしてしまいました」
「ごめんなさい。ヴェルト教授もアルスくんもごめんなさいでした」
ショックでちょっと人格が壊れたかもしれないが、まずは謝る。
こういう時にちゃんと謝れる大人のままでいようと誓っているのだ。
「で? お兄様は何をしていらっしゃったのですか?」
エフィはちょっと怒った顔で問い詰めてくるが、相変わらず可愛いので迫力はまったくないどころか可愛い。
でもここでにやけたりしたらマジで怒られそうだから神妙な顔を作って魔力で固定してぼろが出ないようにしておく。
「エフィにも話した通り、俺は今、国王の子供を探している」
「「はっ?」」
やはり驚く教授とアルスくん。
きっと予想通り情報の行き違いがあるんだろうな。
「ちなみに2人は何だと思ってたんだ?」
「僕はクラム様が教授の秘密でも掴んで脅してその……婦女暴行的な感じかと思ってました」
正直だね君は!!!
お兄さん、びっくりだよ。そもそも普段のヴェルト教授の様子を見てたらそんなことする必要は全くなくて『抱かせろ。愛人にはしてやるから』の二言で完了の簡単なお仕事だろそれ!?!?
「アルス……」
「アルスさん……」
「アルスくん……」
当然ながら俺もエフィも、彼が守ろうとした対象であるヴェルト教授すらも『うわ~』って目でアルスくんを見つめる。
「えっと、ごめんなさい」
さっきの俺と同じように素直に謝るアルスくん。
偉いぞ。一緒に謝れる大人を目指そうな。
どこかの国王とかクソ王子みたいにならないようにな!
「で? 教授は?」
「私は、ずっとエマが何かを怖がっていたから、きっとマズいことがあるんだと思ってたんだ。それで、クラム殿が血相を変えてやってきて、エマのことを聞くから、ヤバいと思って……」
「なるほど……」
聞けばもっともなことだった。
確かに市井の中で国王の子なんかいたら危ないだろう。
何が近づいて来るかわからない。
金を持ってると思われるかもしれないし、国王への何かしらのカードにされるかもしれない。
国王に呪いをかけるための触媒とか言って囚われて血や臓器を使われるかもしれない。
なにせ危険だ。
だからエマは隠したんだ。
そしてアルスくんを守ろうとしたんだな。
あんな国王に手を出されなかったらもっとまともな人生を歩めただろうに。
重ね重ね王家はクソだな。
「お兄様は国王様の子供を探すと仰っていましたが、アルスくん……いや、アルス様がそうなのですか?」
「そうだ。今、ヴェルト教授に"人物史"を使って調べさせてもらおうと魔法を発動したところにアルスくんが飛び込んできたからそのまま見えてしまった」
驚く3人。
そりゃあそうだよな。
ただの教授の甥っ子で、庶民だと思っていたんだから。
俺は"人物史"が見せた情報を読み上げた。
<アルスは国王ハロルド11世とエマ・ヴェルトとの間に産まれる。既にエマ・ヴェルトはハロルド11世に王城から退去させられており彼は父親のことを知らない>
<エマ・ヴェルトはハロルド11世の追っ手、および王家に恨みを持つ者たちからアルスを守るため、天才研究者である妹に助けを求め、匿ってもらった>
<エマ・ヴェルトは病気を患って亡くなったが、心配していた追っ手や暗殺などはなく、家族と楽しい日々を過ごして逝った>
<アルスは大きくなり、エマの言いつけを守って叔母であるサラ・ヴェルトの助手となった>
以上だ。教授に"人物史"をかけるときに、エマ・ヴェルトに絞って調べようとしたからそれに沿った情報が見れた。
病気は残念だったし、ずっと怯えていたのかもしれないけど、教授やアルスくんとは仲良く過ごせたのが不幸中の幸いだな。
本当は国王が秘密裏に護衛でもつけて守るべきなのにな。
「そうだったんだな……」
「お母さんが楽しいと思ってくれていたなら、僕は嬉しいです」
2人は泣いていた。
"人物史"は本人たちすら知らないこともたまに教えてくれる。
エマ・ヴェルトに絞ったおかげで彼女の感情までが表示された記録に感動したのだろう。
ここはしばらく……感情が落ち着くまでは待った方がいいな。
幸い、彼らにとって国王はエマ・ヴェルトを捨てたクズだが、直接的な害は及ぼしていないようだ。
しかし退去とはどういうことだ?
追放とか放逐とかではなく、ただ出しただけか?
あのクズのことだから不要になったとか、最初から遊びだっただけということもありうるが、それなら追放とかになりそうなんだけどな……?
まぁ、結果は変わらないがな。
「クラム殿。知らなかったこととはいえ、誤解から非難するような行動を取って申し訳なかった」
考え込んでいると教授から謝られた。
その表情からは何か気負っていたものがなくなり、憑き物が落ちたような様子になっていた。
ずっと甥のことを背負ってたんだろうな。
優しい人だと思う。
良い人を見つけてくれればいいなと思うが、それもアルス殿が国王になったらヤバいかもしれない。
きっと政略結婚の申し込みが殺到してしまうな……。
喜ぶかもしれないが。
「ごめんなさい。ヴェルト教授もアルスくんもごめんなさいでした」
ショックでちょっと人格が壊れたかもしれないが、まずは謝る。
こういう時にちゃんと謝れる大人のままでいようと誓っているのだ。
「で? お兄様は何をしていらっしゃったのですか?」
エフィはちょっと怒った顔で問い詰めてくるが、相変わらず可愛いので迫力はまったくないどころか可愛い。
でもここでにやけたりしたらマジで怒られそうだから神妙な顔を作って魔力で固定してぼろが出ないようにしておく。
「エフィにも話した通り、俺は今、国王の子供を探している」
「「はっ?」」
やはり驚く教授とアルスくん。
きっと予想通り情報の行き違いがあるんだろうな。
「ちなみに2人は何だと思ってたんだ?」
「僕はクラム様が教授の秘密でも掴んで脅してその……婦女暴行的な感じかと思ってました」
正直だね君は!!!
お兄さん、びっくりだよ。そもそも普段のヴェルト教授の様子を見てたらそんなことする必要は全くなくて『抱かせろ。愛人にはしてやるから』の二言で完了の簡単なお仕事だろそれ!?!?
「アルス……」
「アルスさん……」
「アルスくん……」
当然ながら俺もエフィも、彼が守ろうとした対象であるヴェルト教授すらも『うわ~』って目でアルスくんを見つめる。
「えっと、ごめんなさい」
さっきの俺と同じように素直に謝るアルスくん。
偉いぞ。一緒に謝れる大人を目指そうな。
どこかの国王とかクソ王子みたいにならないようにな!
「で? 教授は?」
「私は、ずっとエマが何かを怖がっていたから、きっとマズいことがあるんだと思ってたんだ。それで、クラム殿が血相を変えてやってきて、エマのことを聞くから、ヤバいと思って……」
「なるほど……」
聞けばもっともなことだった。
確かに市井の中で国王の子なんかいたら危ないだろう。
何が近づいて来るかわからない。
金を持ってると思われるかもしれないし、国王への何かしらのカードにされるかもしれない。
国王に呪いをかけるための触媒とか言って囚われて血や臓器を使われるかもしれない。
なにせ危険だ。
だからエマは隠したんだ。
そしてアルスくんを守ろうとしたんだな。
あんな国王に手を出されなかったらもっとまともな人生を歩めただろうに。
重ね重ね王家はクソだな。
「お兄様は国王様の子供を探すと仰っていましたが、アルスくん……いや、アルス様がそうなのですか?」
「そうだ。今、ヴェルト教授に"人物史"を使って調べさせてもらおうと魔法を発動したところにアルスくんが飛び込んできたからそのまま見えてしまった」
驚く3人。
そりゃあそうだよな。
ただの教授の甥っ子で、庶民だと思っていたんだから。
俺は"人物史"が見せた情報を読み上げた。
<アルスは国王ハロルド11世とエマ・ヴェルトとの間に産まれる。既にエマ・ヴェルトはハロルド11世に王城から退去させられており彼は父親のことを知らない>
<エマ・ヴェルトはハロルド11世の追っ手、および王家に恨みを持つ者たちからアルスを守るため、天才研究者である妹に助けを求め、匿ってもらった>
<エマ・ヴェルトは病気を患って亡くなったが、心配していた追っ手や暗殺などはなく、家族と楽しい日々を過ごして逝った>
<アルスは大きくなり、エマの言いつけを守って叔母であるサラ・ヴェルトの助手となった>
以上だ。教授に"人物史"をかけるときに、エマ・ヴェルトに絞って調べようとしたからそれに沿った情報が見れた。
病気は残念だったし、ずっと怯えていたのかもしれないけど、教授やアルスくんとは仲良く過ごせたのが不幸中の幸いだな。
本当は国王が秘密裏に護衛でもつけて守るべきなのにな。
「そうだったんだな……」
「お母さんが楽しいと思ってくれていたなら、僕は嬉しいです」
2人は泣いていた。
"人物史"は本人たちすら知らないこともたまに教えてくれる。
エマ・ヴェルトに絞ったおかげで彼女の感情までが表示された記録に感動したのだろう。
ここはしばらく……感情が落ち着くまでは待った方がいいな。
幸い、彼らにとって国王はエマ・ヴェルトを捨てたクズだが、直接的な害は及ぼしていないようだ。
しかし退去とはどういうことだ?
追放とか放逐とかではなく、ただ出しただけか?
あのクズのことだから不要になったとか、最初から遊びだっただけということもありうるが、それなら追放とかになりそうなんだけどな……?
まぁ、結果は変わらないがな。
「クラム殿。知らなかったこととはいえ、誤解から非難するような行動を取って申し訳なかった」
考え込んでいると教授から謝られた。
その表情からは何か気負っていたものがなくなり、憑き物が落ちたような様子になっていた。
ずっと甥のことを背負ってたんだろうな。
優しい人だと思う。
良い人を見つけてくれればいいなと思うが、それもアルス殿が国王になったらヤバいかもしれない。
きっと政略結婚の申し込みが殺到してしまうな……。
喜ぶかもしれないが。
112
お気に入りに追加
440
あなたにおすすめの小説
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる