義妹が婚約破棄された。その方が幸せになることを知っているので流したが、それ以上はさせないぜ!?

蒼井星空

文字の大きさ
上 下
32 / 46

第32話 しっかりはっきりと自分の想いをエフィに伝えた件②

しおりを挟む
いかんいかん。血なんか関係なく家族だからっていうのを伝えようと思ったら熱くなりすぎた。
思いっきりエフィを泣かせてしまった。
でもこれで家族の仲で1人寂しい思いをするようなことはないだろう。
さっき過去形で感謝を表明したエフィの言葉を聞いてドキッとしたんだ。
これでまた家出とかしたらどうしようって……。

でも、そんなことにはならなそうだ。

アリアとミトラ様がエフィを気遣いながら宥めてくれている。
エフィもありがとうって言ってる。

しかし失敗した。
プロポーズしようとしたのに、その前段階で熱くなりすぎたんだ……。

ここからどう話を持っていくか、悩ましい……。

とか思っていたら、アリアがこっちを見ている。
なんだ?
お腹でも減ったのか?


「(バカ。宥めておいたから、そのまま言い切りなさいよ!)」
「(おぉ? お前……気付いてたのか?)」
「(当たり前じゃない、バカ。お兄のエフィ好きが行き過ぎててキモイってずっと思ってたけど、エフィが実の妹じゃないってことなら理解できるわよ。ムカつくけど。でも好きなんでしょ? だったらちゃんと言いなさいよバカ!)」
これは本当にあのアリアなのだろうか……また心の声がとか言ってボケたらマジで俺が空気読めないやつになるからやらないけど、あとでお菓子でも買ってやろう。

「エフィ……」
「お兄……クラム様?」
「言い直さなくていいから。いや、名前で呼ばれるのも新鮮でいいけどさ。今はまだお兄様って呼んでほしいな」
これは正直本音だ。もしプロポーズが成功しても失敗しても大人になれば兄とは呼ばれない可能性がある。

「今は、ですか?」
しかし勘の良いエフィは俺の様子が変なことに気付いてる。
でも許してほしい。俺だって緊張するんだ。


「あぁ。大人になったら……というか、う~ん。なんか格好つかないけどさ」
「……?」
「俺はずっと君が義理の妹だってことを知ってたわけだ」
「はい」
「でな……ずっと君が好きだったわけだ」
「……はい……えっ?」
突然言ったら、そりゃあ咀嚼するのに時間かかるよね。うん。驚いた表情が可愛くて仕方がない。

「だから、ずっと俺と一緒にいて欲しい。結婚して欲しいんだ」
「えぇ……?」
言った。言ってしまった。
緊張しながら放った言葉は、間違いなくエフィに届いたはずだ。

そしてエフィは思いっきり目を見開き、開いてしまった口を両手で抑える。
今の表情は一生脳に焼き付けておきたい。

もちろん返事はまだどっちかわからない。色んなことがありすぎて保留もあるだろう。
 
でも、表情を覚えておくくらいいいだろ?
もう何年も……いや、10年以上もずっと想い続けてきた。

我ながら乙女チックであれだけどさ。
人生の記念ってやつだろ?

と自分の想いに浸っていたらアリアに蹴られた。わかったよ、真面目にやるよ。
と言っても、これ以上何を言えばいい?
そう思っていたらエフィがぽつりぽつりと話し始めた。

「私……びっくりして……」
「うん」
「嬉しいです」
「うん」
どっちだ……。嬉しいです、妻になります。嬉しいです、でもお兄様とはごめんなさい。どっちだ!?

「でも……」

そっか……。
思わず天井を見上げる。
 
うん、仕方ない。諦めるよ。
エフィの想いを尊重する。
ちょっと前が見えない。
でも耳は仕事してるから……。

「私なんかでその……良いんですか? 私、魔法以外なにもできないし、魔法だってお兄様みたいに凄くないし」
と思ったけど、謙遜していたらしい……。

「卑下はして欲しくない」
「あっ」
「俺は君が凄いことを知ってる。魔法が大好きなことも知ってる。それを応援したい。王妃教育だって受けてただろ? それを頑張っていたのも知ってる。私なんか、なんて言ってほしくない。俺は君が……エフィがいいんだ」
「本当に? 本当にいいんですか?」
「いいも何も、ずっとそのつもりだった。だから領地経営なんか居眠りしながらでもできるようになったし、魔法もできるようになった。王家や他の貴族に対しても優位を取れるように動いてきたし、仮に隣国と戦争になったって必ず君を守り抜くよ。美味しい店だって調べたし、服は気に入ったのが見つからないから商会を立ち上げたし、魔石鉱山はまだ300年は安泰なことを突き止めたからお金の心配もないよ」
「お兄様……」
また泣かせたらしい。

「えっと、泣かせるばっかですまん」
慌ててエフィに謝ったら、またアリアに脛を蹴られた。

「(いつまで喋ってんのよ!)」
「(えぇ? ダメだった?)」
「(とっとと抱きしめてキスでもしなさいよ!)」
「(えぇ? 押し過ぎで気持ち悪がられないか?)」
「(早くしろバカ―!!!)」

俺は顔を覆って泣き始めてしまったエフィを抱き寄せた。

「お兄様……」
エフィは驚きながら身を任せてくれる。
そしてちょうどよく顔を上げてくれた。
 
その表情の裏にあるエフィの感情は、申し訳ないけど俺にはわからない。
でも、拒絶されているようには思わなかった。
だからそのまま行くことに決めた。

兄の暴走を許してほしい。
これで拒否されたら諦めて父さんに八つ当たりしながら秘蔵の酒を全部飲み干してやろう。
 

俺はそのままの勢いでエフィの頭に手を回す。

エフィは一瞬びくっとしたが目を閉じながら俺に顔を向けてくれる。



そしてその愛おしく柔らかい唇にキスをした。
エフィは大人しく受け入れてくれ、俺には柔らかな暖かさが広がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

初恋の相手と結ばれて幸せですか?

豆狸
恋愛
その日、学園に現れた転校生は私の婚約者の幼馴染で──初恋の相手でした。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

処理中です...