義妹が婚約破棄された。その方が幸せになることを知っているので流したが、それ以上はさせないぜ!?

蒼井星空

文字の大きさ
上 下
28 / 46

第28話 復興の中でヴェルト教授と功績を押し付け合った件

しおりを挟む
そんな感じで日々が過ぎて行った。
どんな感じだよ!?

いや、遊んでるばっかりじゃないからな?
公爵家のことは父さんが戻って来たから任せた。

王城の方は、酷い被害だったが、無事に魔狼が討伐されたこともあってなんとか復旧が進んでいた。

まず大量のがれきだが、これは俺がサービスで引き取った。
魔法で異空間に収納しただけだから特に手間もかかってなくてせいぜい多少の魔力を消費した程度だが、とても感謝された。
人の手で片付けようとしたら途方に暮れるだろうから、素直に官舎を受け取っておいた。

その過程で大量の死体は収納せず、王城跡に並べて各々の親族による確認を行った。
中には泣き崩れるやつもいたが、必要な過程だろうと割り切った。

悲しみの再会というのは泣ける。
ずっと見守ったが、いてもたってもいられず、大規模な浄化の魔法を展開したらなぜか泣きながら感謝しながら帰って行く人が続出した。どうしてこうなった?

その後は王国軍の建築兵や魔法師団が新しい王城を建てた。
やるじゃん、優秀じゃん、と思った。わずか1週間で城が建つなんて。

その城において、父ハミルが暫定政権をたてたんだ。

案外かっこよかった。
これであとは次の王位はクラム、とか言わないように立ち回れれば完璧だ。

完璧なんだが、今言った通り問題があった。2つ。

1つは俺には王位継承権があること。
これは仕方ないんだけどな。
この国の公爵はいずれも王家と血のつながりを持っていて、普通は順位は低いけど王位継承権を持っている。
しかも、たいていは爵位を継承するときに放棄するせいで父ハミルは持っていない。

魔狼を倒すのに直接手を出してなくて助かった。
出していたらその功績があるクラム様が王位を! なんて風潮が作られていた可能性がある。
それを警戒して魔狼を倒したヴェルト教授を持ち上げまくって銅像を作ろうとしたわけだが、本人に断られたし。

本人と言えば、英雄になり持ち上げられすぎて怖くなったのか、『魔狼は一緒に倒したことにして欲しい。なんならクラム殿が倒したと……』なんて寝ぼけたことを言い出していたから優しくなでてやってから『怖がることはない。君の功績だ。むしろ誇ってほしい』と言ったら『なら結婚してくれ』とか言い出して焦った。

エフィの目の前で危険なことを言わないで欲しい。

当然断りつつ、裏に連れ込んだら濡れた目をしていたから体にわからせておいた。

「わかったな?」
「はい♡」

本当に分かっただろうか???
そんなに甘そうな吐息を漏らすんじゃない!
エフィに変な影響を与えたらぶん殴るからな!

まぁいい。本人が恥ずかしがっているから巨大な銅像はやめたが、王城の庭園にヴェルト教授像を作るくらいは問題ないだろう。バレることはない。
そう思って、父にねじ込んでおいた。

これで世間は俺のことは時間経過とともに忘れてくれるだろう。
忘れてくれるよな?
いや、忘れろ。

俺は何もしていない。ただ焦って王城ではなく学院に向かってしまった、ただのシスコンだ。
今はそれでいい。
もうちょっとの間、影に隠れ、エフィとの結婚を目指すんだ。

致してしまえば、もう怖いものはない。あとは自分たちの棲み処を守るために全力で戦うから、もう少し待ってくれ。
そして誰か、国王になってくれ。

そう、2つ目の問題は、ギード王子がやっぱり死んでいて、正式な王位継承者である王太子が不在になっていることだ。
ギード王子は自らが国王になるためにライバルを蹴落としてしまっていたから、王子が他にいないという残念な状況だった。
勘弁してくれ……。

「なんでそんなに嫌がるんだ? "人物史"を使ってこの国を救ったのはクラム殿なのは間違いない。素直に称賛を受け、そして即位したらいいじゃないか」
何もわかっていなかったらしい。

そんなことをして、エフィと結婚できなくなったら俺は王城なんか軽く破壊してやるがいいか?

「えっと……」
「2度とそんなことが言えないようにしてやる……」
「(お仕置きしてくれるの?♡)」
「(何を期待した目をしてるんだ、このド変態!)」
「あん♡」
あんじゃねぇんだよ!

お前の甥の視線が痛いだろうが!?
勘弁してくれ。
俺はこれから国王と血のつながりがあって、王位継承権を主張出来て、傀儡にできそうな素直で無知な男の子を探さないといけないんだ!!!


ん? 現実逃避するなって?
それが違うんだよ。現実逃避じゃないんだ。

なにせあの国王だ。
息子の婚約者にまで手を出すお猿さんだぜ?
いるに決まってるだろう。愛人の一人や二人や三人や百人くらい。
それならきっと子供だっているはずだ。

その子を探せばいい。
どうやって探すんだって?
簡単だ。

手当たり次第に"人物史"をかけて探すんだ。
過去に国王と交わって子供をなしたという記述があればビンゴ。その子供にはきっと国王の遺児、とか書いてあるだろう。

酷い王様だったから隠している奴が多そうだが、迫害のためではなく即位のためだ。金と力と俺の微笑みをまき散らして探してやるから待ってろよ!!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

前世のことも好きな人を想うことも諦めて、母を恋しがる王女の世話係となって、彼女を救いたかっただけなのに運命は皮肉ですね

珠宮さくら
恋愛
新しい試みで創られた世界で、何度も生まれているとは知らず、双子の片割れとして生まれた女性がいた。 自分だけが幸せになろうとした片割れによって、殺されそうになったが、それで死ぬことはなかったが、それによって記憶があやふやになってしまい、記憶が戻ることなく人生を終えたと思ったら、別の世界に転生していた。 伯爵家の長女に生まれ変わったファティマ・ルルーシュは、前世のことを覚えていて、毎年のように弟妹が増えていく中で、あてにできない両親の代わりをしていたが、それで上手くいっていたのも、1つ下の弟のおかげが大きかった。 子供たちの世話すらしないくせにある日、ファティマを養子に出すことに決めたと両親に言われてしまい……。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

処理中です...