25 / 46
第25話 省力化した"人物史"によって王城の闇が暴かれすぎてもうお腹いっぱいな件
しおりを挟む
魔狼を迎え撃ったということでヴェルト教授は英雄になった。
俺たちはその偉業を讃え、王都が壊滅しなかったことを感謝し、破壊された王城の跡地に巨大で美しいヴェルト教授像を建て、未来永劫に渡って崇め奉ることを決め……。
「おい、クラムくん。なぜ逃げようとしている?」
るなんてことはなかった。
失敗した。
魔狼が消え去ったことで、多くのものが学院に集まってきている。
整然と並んで退避して行った学院の教師や生徒達も帰ってきている。
皆が驚きの表情を浮かべていた。『どうやってアレを倒したんだ? まさかヴェルト教授って変人だって聞いてたけど、凄い人だったのか?』と、誰もが思っていた。
俺も空気を呼んで変人というか変態だな、とか言わないように気を付けていた。
そんな中、集合したものたちは、次に王城に向かい救出作業を始めた。
合わせて王城のがれきの撤去作業も開始した。
手際が良いのは、魔狼を倒したヴェルト教授が率先して活動しており、その姿を見せ続けていたというのはあるだろう。
決して煽情的すぎる外見のせいではないと思いたい。
そうして俺は全ての功績をヴェルト教授に集めてしめしめと思っていた。
これであとは俺とエフィに注目が集まらないように気を付けて立ち回り、一定の期間が経ったらゴールイン。
2人で幸せな生活を始めるつもりだ。むふふ。
だというのに、あろうことかヴェルト教授に邪魔をされた。
「現在、王家の方が見つかっていない状況下で、私……ハミル・エルダーウィズが代理政府の立ち上げを宣言する。これ以降、代理政府は2年に渡り、この国を代行統治し、次の国王に継承することを約す。どうか神の祝福と、皆の者の協力があらんことを願う」
王都にようやく帰って来た父上が、王城があった場所で宣言する。
本当なら凛々しく、とか力強く、とか描写してあげたいが、残念ながら緊張しまくりでお世辞にも見た目がいい雰囲気ではないから淡々と記録しておく。
この代理政府の立ち上げには特に苦労しなかった。
なにせ国王不在となれば必ず立ち上がるものだし、立ち上げは公爵以上が実施することになっているが、現在王都にいる公爵は父上のみだった。
みんな魔狼……というか、王妃様が魔石を使い込んでいるという噂と、地下で守護結界の魔道具が不思議な声や地震を引き起こしているという話を聞いて領地に戻ってしまっていた。
お気楽に旅行していたのなんて、父上だけですよ? もう……反省して諦めて大人しく代理政府を建ててくださいと言ったら、こめかみをピクピクさせながら実行してくれた。
そのまず最初の仕事が、王城以外はすべて残っているこの国の各種機関に業務継続を命じることだった。
そして2つ目が今回の事件の検証。
つまり、なぜ魔狼が復活したのかを整理することだった。
ちなみに、国外のことを父上は忘れていそうだったから、父上の名前で周辺国には天災が起きたが既に対処済みなので手出し無用と送っておいた。俺ってしごできだよね。もちろんタイミングを見て全部報告済みだ。
そして出てくる不正の嵐。
というか隠す気なくない?
案の定、王妃様は守護結界の魔道具に投入するはずだった魔石のうち半分を私利私欲のために使っていた。
今回の魔狼復活はどう考えてもこのせいだった。
なにせ魔道具の動力源がないのだから、当然封印は解ける。
直接実行していたのは騎士団だ。
騎士団長は王妃の愛人であり、国王陛下だけは知らなかったようだが、あとは大臣から一般の騎士までみんな知っていたとのこと。
だから魔石を回していたんだと。
それを大臣が知っていて国王に伝えなかった理由は、大臣も王妃の愛人だったからだ。
騙されておかわいそうな国王陛下……とはならない。
なぜなら彼は彼で方々に手を出しまくっていた。
そもそも王妃に側室もいるのにお盛んですこと。
女中だけではなく、魔法師団の美人副長さんとか、文官のお姉さんとか、大臣の奥さんとか。
しかし一番気持ち悪かったのは、オルフェ……そう、息子であるギード王子の婚約者に既に手を出していた。
バカじゃね~の??
しかし恐ろしい。
そしてムカつく。
エフィには手を出そうともしてなかったことがムカつく。出していたら地獄を見せてやるところではあるが。
なんでこんな情報がしかも次々に上がってくるかというと、当然、"人物史"があるからだな。
初めは高位貴族や、王城の事情に詳しそうな人にだけ使うはずが、ついつい面白くなって手当たり次第に使ってしまった。
だって面白いんだもん。こいつら不正や非道のビックリ箱だよな。
えっ? そんなに使って大丈夫なのかって? 魔法消費が激しいから使うの控えてたんじゃないのかって?
その問題は解決してしまったんだ。
エフィとヴェルト教授の手によって。
教授が魔狼を倒した魔法が、先日デートで訪れた魔道具屋で買ったものだという話は知ってると思うが、エフィはなんとそこから"人物史"の省力化に成功してくれた。
そのおかげで使いたい放題使った結果、ヤバい情報がいっぱいになったわけだ。
ちなみに裏取りが必要な情報もあるから、その確認は悪霊カーシャを使った。
なにせあいつは便利だ。
やろうと思えば半透明になって壁をすり抜けて行けるからな。
探りたい放題だ。
もうほぼすべての貴族が俺には逆らえないんじゃないかな???
これで俺とエフィの未来は安泰だ。
俺たちはその偉業を讃え、王都が壊滅しなかったことを感謝し、破壊された王城の跡地に巨大で美しいヴェルト教授像を建て、未来永劫に渡って崇め奉ることを決め……。
「おい、クラムくん。なぜ逃げようとしている?」
るなんてことはなかった。
失敗した。
魔狼が消え去ったことで、多くのものが学院に集まってきている。
整然と並んで退避して行った学院の教師や生徒達も帰ってきている。
皆が驚きの表情を浮かべていた。『どうやってアレを倒したんだ? まさかヴェルト教授って変人だって聞いてたけど、凄い人だったのか?』と、誰もが思っていた。
俺も空気を呼んで変人というか変態だな、とか言わないように気を付けていた。
そんな中、集合したものたちは、次に王城に向かい救出作業を始めた。
合わせて王城のがれきの撤去作業も開始した。
手際が良いのは、魔狼を倒したヴェルト教授が率先して活動しており、その姿を見せ続けていたというのはあるだろう。
決して煽情的すぎる外見のせいではないと思いたい。
そうして俺は全ての功績をヴェルト教授に集めてしめしめと思っていた。
これであとは俺とエフィに注目が集まらないように気を付けて立ち回り、一定の期間が経ったらゴールイン。
2人で幸せな生活を始めるつもりだ。むふふ。
だというのに、あろうことかヴェルト教授に邪魔をされた。
「現在、王家の方が見つかっていない状況下で、私……ハミル・エルダーウィズが代理政府の立ち上げを宣言する。これ以降、代理政府は2年に渡り、この国を代行統治し、次の国王に継承することを約す。どうか神の祝福と、皆の者の協力があらんことを願う」
王都にようやく帰って来た父上が、王城があった場所で宣言する。
本当なら凛々しく、とか力強く、とか描写してあげたいが、残念ながら緊張しまくりでお世辞にも見た目がいい雰囲気ではないから淡々と記録しておく。
この代理政府の立ち上げには特に苦労しなかった。
なにせ国王不在となれば必ず立ち上がるものだし、立ち上げは公爵以上が実施することになっているが、現在王都にいる公爵は父上のみだった。
みんな魔狼……というか、王妃様が魔石を使い込んでいるという噂と、地下で守護結界の魔道具が不思議な声や地震を引き起こしているという話を聞いて領地に戻ってしまっていた。
お気楽に旅行していたのなんて、父上だけですよ? もう……反省して諦めて大人しく代理政府を建ててくださいと言ったら、こめかみをピクピクさせながら実行してくれた。
そのまず最初の仕事が、王城以外はすべて残っているこの国の各種機関に業務継続を命じることだった。
そして2つ目が今回の事件の検証。
つまり、なぜ魔狼が復活したのかを整理することだった。
ちなみに、国外のことを父上は忘れていそうだったから、父上の名前で周辺国には天災が起きたが既に対処済みなので手出し無用と送っておいた。俺ってしごできだよね。もちろんタイミングを見て全部報告済みだ。
そして出てくる不正の嵐。
というか隠す気なくない?
案の定、王妃様は守護結界の魔道具に投入するはずだった魔石のうち半分を私利私欲のために使っていた。
今回の魔狼復活はどう考えてもこのせいだった。
なにせ魔道具の動力源がないのだから、当然封印は解ける。
直接実行していたのは騎士団だ。
騎士団長は王妃の愛人であり、国王陛下だけは知らなかったようだが、あとは大臣から一般の騎士までみんな知っていたとのこと。
だから魔石を回していたんだと。
それを大臣が知っていて国王に伝えなかった理由は、大臣も王妃の愛人だったからだ。
騙されておかわいそうな国王陛下……とはならない。
なぜなら彼は彼で方々に手を出しまくっていた。
そもそも王妃に側室もいるのにお盛んですこと。
女中だけではなく、魔法師団の美人副長さんとか、文官のお姉さんとか、大臣の奥さんとか。
しかし一番気持ち悪かったのは、オルフェ……そう、息子であるギード王子の婚約者に既に手を出していた。
バカじゃね~の??
しかし恐ろしい。
そしてムカつく。
エフィには手を出そうともしてなかったことがムカつく。出していたら地獄を見せてやるところではあるが。
なんでこんな情報がしかも次々に上がってくるかというと、当然、"人物史"があるからだな。
初めは高位貴族や、王城の事情に詳しそうな人にだけ使うはずが、ついつい面白くなって手当たり次第に使ってしまった。
だって面白いんだもん。こいつら不正や非道のビックリ箱だよな。
えっ? そんなに使って大丈夫なのかって? 魔法消費が激しいから使うの控えてたんじゃないのかって?
その問題は解決してしまったんだ。
エフィとヴェルト教授の手によって。
教授が魔狼を倒した魔法が、先日デートで訪れた魔道具屋で買ったものだという話は知ってると思うが、エフィはなんとそこから"人物史"の省力化に成功してくれた。
そのおかげで使いたい放題使った結果、ヤバい情報がいっぱいになったわけだ。
ちなみに裏取りが必要な情報もあるから、その確認は悪霊カーシャを使った。
なにせあいつは便利だ。
やろうと思えば半透明になって壁をすり抜けて行けるからな。
探りたい放題だ。
もうほぼすべての貴族が俺には逆らえないんじゃないかな???
これで俺とエフィの未来は安泰だ。
160
お気に入りに追加
440
あなたにおすすめの小説
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」
結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。
「……ああ、お前の好きにしろ」
婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。
ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。
いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。
そのはず、だったのだが……?
離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる