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第25話 省力化した"人物史"によって王城の闇が暴かれすぎてもうお腹いっぱいな件
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魔狼を迎え撃ったということでヴェルト教授は英雄になった。
俺たちはその偉業を讃え、王都が壊滅しなかったことを感謝し、破壊された王城の跡地に巨大で美しいヴェルト教授像を建て、未来永劫に渡って崇め奉ることを決め……。
「おい、クラムくん。なぜ逃げようとしている?」
るなんてことはなかった。
失敗した。
魔狼が消え去ったことで、多くのものが学院に集まってきている。
整然と並んで退避して行った学院の教師や生徒達も帰ってきている。
皆が驚きの表情を浮かべていた。『どうやってアレを倒したんだ? まさかヴェルト教授って変人だって聞いてたけど、凄い人だったのか?』と、誰もが思っていた。
俺も空気を呼んで変人というか変態だな、とか言わないように気を付けていた。
そんな中、集合したものたちは、次に王城に向かい救出作業を始めた。
合わせて王城のがれきの撤去作業も開始した。
手際が良いのは、魔狼を倒したヴェルト教授が率先して活動しており、その姿を見せ続けていたというのはあるだろう。
決して煽情的すぎる外見のせいではないと思いたい。
そうして俺は全ての功績をヴェルト教授に集めてしめしめと思っていた。
これであとは俺とエフィに注目が集まらないように気を付けて立ち回り、一定の期間が経ったらゴールイン。
2人で幸せな生活を始めるつもりだ。むふふ。
だというのに、あろうことかヴェルト教授に邪魔をされた。
「現在、王家の方が見つかっていない状況下で、私……ハミル・エルダーウィズが代理政府の立ち上げを宣言する。これ以降、代理政府は2年に渡り、この国を代行統治し、次の国王に継承することを約す。どうか神の祝福と、皆の者の協力があらんことを願う」
王都にようやく帰って来た父上が、王城があった場所で宣言する。
本当なら凛々しく、とか力強く、とか描写してあげたいが、残念ながら緊張しまくりでお世辞にも見た目がいい雰囲気ではないから淡々と記録しておく。
この代理政府の立ち上げには特に苦労しなかった。
なにせ国王不在となれば必ず立ち上がるものだし、立ち上げは公爵以上が実施することになっているが、現在王都にいる公爵は父上のみだった。
みんな魔狼……というか、王妃様が魔石を使い込んでいるという噂と、地下で守護結界の魔道具が不思議な声や地震を引き起こしているという話を聞いて領地に戻ってしまっていた。
お気楽に旅行していたのなんて、父上だけですよ? もう……反省して諦めて大人しく代理政府を建ててくださいと言ったら、こめかみをピクピクさせながら実行してくれた。
そのまず最初の仕事が、王城以外はすべて残っているこの国の各種機関に業務継続を命じることだった。
そして2つ目が今回の事件の検証。
つまり、なぜ魔狼が復活したのかを整理することだった。
ちなみに、国外のことを父上は忘れていそうだったから、父上の名前で周辺国には天災が起きたが既に対処済みなので手出し無用と送っておいた。俺ってしごできだよね。もちろんタイミングを見て全部報告済みだ。
そして出てくる不正の嵐。
というか隠す気なくない?
案の定、王妃様は守護結界の魔道具に投入するはずだった魔石のうち半分を私利私欲のために使っていた。
今回の魔狼復活はどう考えてもこのせいだった。
なにせ魔道具の動力源がないのだから、当然封印は解ける。
直接実行していたのは騎士団だ。
騎士団長は王妃の愛人であり、国王陛下だけは知らなかったようだが、あとは大臣から一般の騎士までみんな知っていたとのこと。
だから魔石を回していたんだと。
それを大臣が知っていて国王に伝えなかった理由は、大臣も王妃の愛人だったからだ。
騙されておかわいそうな国王陛下……とはならない。
なぜなら彼は彼で方々に手を出しまくっていた。
そもそも王妃に側室もいるのにお盛んですこと。
女中だけではなく、魔法師団の美人副長さんとか、文官のお姉さんとか、大臣の奥さんとか。
しかし一番気持ち悪かったのは、オルフェ……そう、息子であるギード王子の婚約者に既に手を出していた。
バカじゃね~の??
しかし恐ろしい。
そしてムカつく。
エフィには手を出そうともしてなかったことがムカつく。出していたら地獄を見せてやるところではあるが。
なんでこんな情報がしかも次々に上がってくるかというと、当然、"人物史"があるからだな。
初めは高位貴族や、王城の事情に詳しそうな人にだけ使うはずが、ついつい面白くなって手当たり次第に使ってしまった。
だって面白いんだもん。こいつら不正や非道のビックリ箱だよな。
えっ? そんなに使って大丈夫なのかって? 魔法消費が激しいから使うの控えてたんじゃないのかって?
その問題は解決してしまったんだ。
エフィとヴェルト教授の手によって。
教授が魔狼を倒した魔法が、先日デートで訪れた魔道具屋で買ったものだという話は知ってると思うが、エフィはなんとそこから"人物史"の省力化に成功してくれた。
そのおかげで使いたい放題使った結果、ヤバい情報がいっぱいになったわけだ。
ちなみに裏取りが必要な情報もあるから、その確認は悪霊カーシャを使った。
なにせあいつは便利だ。
やろうと思えば半透明になって壁をすり抜けて行けるからな。
探りたい放題だ。
もうほぼすべての貴族が俺には逆らえないんじゃないかな???
これで俺とエフィの未来は安泰だ。
俺たちはその偉業を讃え、王都が壊滅しなかったことを感謝し、破壊された王城の跡地に巨大で美しいヴェルト教授像を建て、未来永劫に渡って崇め奉ることを決め……。
「おい、クラムくん。なぜ逃げようとしている?」
るなんてことはなかった。
失敗した。
魔狼が消え去ったことで、多くのものが学院に集まってきている。
整然と並んで退避して行った学院の教師や生徒達も帰ってきている。
皆が驚きの表情を浮かべていた。『どうやってアレを倒したんだ? まさかヴェルト教授って変人だって聞いてたけど、凄い人だったのか?』と、誰もが思っていた。
俺も空気を呼んで変人というか変態だな、とか言わないように気を付けていた。
そんな中、集合したものたちは、次に王城に向かい救出作業を始めた。
合わせて王城のがれきの撤去作業も開始した。
手際が良いのは、魔狼を倒したヴェルト教授が率先して活動しており、その姿を見せ続けていたというのはあるだろう。
決して煽情的すぎる外見のせいではないと思いたい。
そうして俺は全ての功績をヴェルト教授に集めてしめしめと思っていた。
これであとは俺とエフィに注目が集まらないように気を付けて立ち回り、一定の期間が経ったらゴールイン。
2人で幸せな生活を始めるつもりだ。むふふ。
だというのに、あろうことかヴェルト教授に邪魔をされた。
「現在、王家の方が見つかっていない状況下で、私……ハミル・エルダーウィズが代理政府の立ち上げを宣言する。これ以降、代理政府は2年に渡り、この国を代行統治し、次の国王に継承することを約す。どうか神の祝福と、皆の者の協力があらんことを願う」
王都にようやく帰って来た父上が、王城があった場所で宣言する。
本当なら凛々しく、とか力強く、とか描写してあげたいが、残念ながら緊張しまくりでお世辞にも見た目がいい雰囲気ではないから淡々と記録しておく。
この代理政府の立ち上げには特に苦労しなかった。
なにせ国王不在となれば必ず立ち上がるものだし、立ち上げは公爵以上が実施することになっているが、現在王都にいる公爵は父上のみだった。
みんな魔狼……というか、王妃様が魔石を使い込んでいるという噂と、地下で守護結界の魔道具が不思議な声や地震を引き起こしているという話を聞いて領地に戻ってしまっていた。
お気楽に旅行していたのなんて、父上だけですよ? もう……反省して諦めて大人しく代理政府を建ててくださいと言ったら、こめかみをピクピクさせながら実行してくれた。
そのまず最初の仕事が、王城以外はすべて残っているこの国の各種機関に業務継続を命じることだった。
そして2つ目が今回の事件の検証。
つまり、なぜ魔狼が復活したのかを整理することだった。
ちなみに、国外のことを父上は忘れていそうだったから、父上の名前で周辺国には天災が起きたが既に対処済みなので手出し無用と送っておいた。俺ってしごできだよね。もちろんタイミングを見て全部報告済みだ。
そして出てくる不正の嵐。
というか隠す気なくない?
案の定、王妃様は守護結界の魔道具に投入するはずだった魔石のうち半分を私利私欲のために使っていた。
今回の魔狼復活はどう考えてもこのせいだった。
なにせ魔道具の動力源がないのだから、当然封印は解ける。
直接実行していたのは騎士団だ。
騎士団長は王妃の愛人であり、国王陛下だけは知らなかったようだが、あとは大臣から一般の騎士までみんな知っていたとのこと。
だから魔石を回していたんだと。
それを大臣が知っていて国王に伝えなかった理由は、大臣も王妃の愛人だったからだ。
騙されておかわいそうな国王陛下……とはならない。
なぜなら彼は彼で方々に手を出しまくっていた。
そもそも王妃に側室もいるのにお盛んですこと。
女中だけではなく、魔法師団の美人副長さんとか、文官のお姉さんとか、大臣の奥さんとか。
しかし一番気持ち悪かったのは、オルフェ……そう、息子であるギード王子の婚約者に既に手を出していた。
バカじゃね~の??
しかし恐ろしい。
そしてムカつく。
エフィには手を出そうともしてなかったことがムカつく。出していたら地獄を見せてやるところではあるが。
なんでこんな情報がしかも次々に上がってくるかというと、当然、"人物史"があるからだな。
初めは高位貴族や、王城の事情に詳しそうな人にだけ使うはずが、ついつい面白くなって手当たり次第に使ってしまった。
だって面白いんだもん。こいつら不正や非道のビックリ箱だよな。
えっ? そんなに使って大丈夫なのかって? 魔法消費が激しいから使うの控えてたんじゃないのかって?
その問題は解決してしまったんだ。
エフィとヴェルト教授の手によって。
教授が魔狼を倒した魔法が、先日デートで訪れた魔道具屋で買ったものだという話は知ってると思うが、エフィはなんとそこから"人物史"の省力化に成功してくれた。
そのおかげで使いたい放題使った結果、ヤバい情報がいっぱいになったわけだ。
ちなみに裏取りが必要な情報もあるから、その確認は悪霊カーシャを使った。
なにせあいつは便利だ。
やろうと思えば半透明になって壁をすり抜けて行けるからな。
探りたい放題だ。
もうほぼすべての貴族が俺には逆らえないんじゃないかな???
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