24 / 46
第24話 俺が倒してもいいけど教授にいい格好をさせた方がいいと思って譲った件
しおりを挟む
□学院にて (クラム)
久々にやって来た学院はがらんとした雰囲気だった。
それはそうだろう。
なにせ来る途中にすれ違った通り、みんな避難して行ったんだから。
学院の先生たちは優秀だな。
魔狼の恐怖の中で、整然と生徒たちを並べて行進するように退避させていったんだから。
できればその優秀さを生徒たちの人間関係への関与にも使ってほしいと思うのはおこがましいだろうか?
まぁ、もしそんなことをされていたらエフィが婚約破棄されず、俺がエフィと結婚できないから今後でいいよ?
課題として考えるように、この事件を終結させたら進言しよう。
「で、ここに真っすぐやって来たという訳か。さすがだね、クラムくん」
これは褒められているということで良いよな?
俺はヴェルト教授とエフィと合流した。
2人は校庭に出ていた。
なにやら大きな魔法陣を校庭に描いているようだ。
これはもしや俺は不要だっただろうか?
そんなことを考えてしまうが、もし彼女たちの計画が上手くいかなかった場合の後詰めということで自分を納得させる。
もちろん、ここでカッコよく魔法をぶっ放してエフィに『お兄様、ステキすぎて最高で素晴らしいですわ♡』って言ってもらいたいという欲求もある。
あるが、せっかく準備をしていたようだし、ヴェルト教授にもエロカッコいい活躍をさせないと拗ねそうで怖いから先行は譲るよ。
もう知ってると思うけど、俺の目の前にいる、わがままボディを白衣で包み込んだエロい女の人がヴェルト教授だ。
そして我が愛すべき義妹エフィ。
その表情は決意に満ちている。
あぁ、あともう一人いるな。
隅っこに隠れてしまっているけど、ヴェルト教授の甥っ子くんだ。
もしかしてエフィの活躍を見守るために、貧弱なのに健気にも外に出てきたのだろうか?
むむ……やるじゃないか、我がライバルよ。
でも決して俺は俺のエフィを貴様になど渡さないからな?
とまあ、それは置いておこう。今は。
ヴェルト教授は豊満な胸を張って、魔狼を見ている。
だんだんと近付いて来る魔狼を……。
だがその表情に焦りはない。
当然だな。
なにせ魔狼が復活することがわかってすぐにヴェルト教授に連絡をしてあった。
彼女は"人物史"を知っているんだから、何も隠す必要がない。
そもそも彼女はエフィの実母である魔法ばばあの弟子の一人だ。
身内と言ってもいいくらいの仲間。
ちなみに父の姉弟子だ。
「来たぞ」
ヴェルト教授がそう呟くのと同時に、巨大な魔狼が飛び上がってこっちに突っ込んできた。
なかなかの迫力だ。
しかし、その突進が空中で止まる。
魔狼を中心にまるで雷のような閃光がバチバチと発生する。
初めて見る魔法だな……。
それは魔狼を包み込み、定期的に魔狼の身体の周りを走り回る。
その光が走り回った部分は焦げているようだ。
しかもどんどん光が大きくなっていく。
すげぇなこれ……。
あの魔狼を完封しそうな勢いだ。
もう魔狼には何もできないだろう。
完全に捉えられている。
俺は学院の入り口の方に歩み寄る。
興味深い魔法だったから。
そしてふと横を見るとエフィも同じように……いや、涎をたらしながら魔法だけを見つめてトボトボと近寄って行っている。
あっ、エフィも俺に気付いたな。
今さら気付いて涎をぬぐっても可愛いだけだよ?
つまり可愛すぎるってことさ。
そして魔狼を包み込んだ光が空に昇っていく。
どこまでも、どこまでも。
えっ、あれどこまで行くの?
突然光に包まれて遥か上空に飛ばされて行った魔狼はさらにさらに天高く登って行く。
そして見えなくなり……
一瞬だけ明るく煌めいた。
そんな感じで凶悪な魔狼がお星さまになった様子を見つめていた。
え~っと。
「さすが先生です。あっさりでしたね」
冷静さを取り戻したらしいエフィがヴェルト教授に声をかける。
「当然だな。魔狼を捕らえたのだって、我々の何代も前の先生だ。そして我々はずっと研鑽を続けて来た。魔力さえあれば後れを取ることはない」
頼もしすぎて涙が出そうだ。
さすが、"魔女"が見込んだだけの腕のある魔法使いだな。
「でも、あんな魔法、見たことも聞いたこともないのですが、先生が生み出したのですか?」
エフィが首を傾げながら質問をする。
確かに、俺も聞いたことがない。
"魔女"から受け継いだ魔導書でも見たことがないから、ヴェルト教授が生み出した新魔法なのかもしれないな。
素晴らしい。
エフィを預けて良かったと、ちょびっと思わないでもないな。
「今の魔法か? これは君が持ってきた魔法陣を使っただけだぞ?」
「えっ?」
「はっ?」
さっきのなし。俺の感動を返せ!
なにが新魔法だ。
ただ偶然、凄い魔法陣が手に入っただけじゃね~か!
「あれを解読されたんですね。先生はやっぱり凄い……」
俺からすると、どんなことでもまず褒めることができる君が凄いよ。さすがは俺のエフィだな。
そして間違いなく魔狼を消し去った。
お星さまになった後、あのプレッシャーは完全に消えたし、魔狼の生命反応も消えた。
これで全ての障壁はなくなった。
久々にやって来た学院はがらんとした雰囲気だった。
それはそうだろう。
なにせ来る途中にすれ違った通り、みんな避難して行ったんだから。
学院の先生たちは優秀だな。
魔狼の恐怖の中で、整然と生徒たちを並べて行進するように退避させていったんだから。
できればその優秀さを生徒たちの人間関係への関与にも使ってほしいと思うのはおこがましいだろうか?
まぁ、もしそんなことをされていたらエフィが婚約破棄されず、俺がエフィと結婚できないから今後でいいよ?
課題として考えるように、この事件を終結させたら進言しよう。
「で、ここに真っすぐやって来たという訳か。さすがだね、クラムくん」
これは褒められているということで良いよな?
俺はヴェルト教授とエフィと合流した。
2人は校庭に出ていた。
なにやら大きな魔法陣を校庭に描いているようだ。
これはもしや俺は不要だっただろうか?
そんなことを考えてしまうが、もし彼女たちの計画が上手くいかなかった場合の後詰めということで自分を納得させる。
もちろん、ここでカッコよく魔法をぶっ放してエフィに『お兄様、ステキすぎて最高で素晴らしいですわ♡』って言ってもらいたいという欲求もある。
あるが、せっかく準備をしていたようだし、ヴェルト教授にもエロカッコいい活躍をさせないと拗ねそうで怖いから先行は譲るよ。
もう知ってると思うけど、俺の目の前にいる、わがままボディを白衣で包み込んだエロい女の人がヴェルト教授だ。
そして我が愛すべき義妹エフィ。
その表情は決意に満ちている。
あぁ、あともう一人いるな。
隅っこに隠れてしまっているけど、ヴェルト教授の甥っ子くんだ。
もしかしてエフィの活躍を見守るために、貧弱なのに健気にも外に出てきたのだろうか?
むむ……やるじゃないか、我がライバルよ。
でも決して俺は俺のエフィを貴様になど渡さないからな?
とまあ、それは置いておこう。今は。
ヴェルト教授は豊満な胸を張って、魔狼を見ている。
だんだんと近付いて来る魔狼を……。
だがその表情に焦りはない。
当然だな。
なにせ魔狼が復活することがわかってすぐにヴェルト教授に連絡をしてあった。
彼女は"人物史"を知っているんだから、何も隠す必要がない。
そもそも彼女はエフィの実母である魔法ばばあの弟子の一人だ。
身内と言ってもいいくらいの仲間。
ちなみに父の姉弟子だ。
「来たぞ」
ヴェルト教授がそう呟くのと同時に、巨大な魔狼が飛び上がってこっちに突っ込んできた。
なかなかの迫力だ。
しかし、その突進が空中で止まる。
魔狼を中心にまるで雷のような閃光がバチバチと発生する。
初めて見る魔法だな……。
それは魔狼を包み込み、定期的に魔狼の身体の周りを走り回る。
その光が走り回った部分は焦げているようだ。
しかもどんどん光が大きくなっていく。
すげぇなこれ……。
あの魔狼を完封しそうな勢いだ。
もう魔狼には何もできないだろう。
完全に捉えられている。
俺は学院の入り口の方に歩み寄る。
興味深い魔法だったから。
そしてふと横を見るとエフィも同じように……いや、涎をたらしながら魔法だけを見つめてトボトボと近寄って行っている。
あっ、エフィも俺に気付いたな。
今さら気付いて涎をぬぐっても可愛いだけだよ?
つまり可愛すぎるってことさ。
そして魔狼を包み込んだ光が空に昇っていく。
どこまでも、どこまでも。
えっ、あれどこまで行くの?
突然光に包まれて遥か上空に飛ばされて行った魔狼はさらにさらに天高く登って行く。
そして見えなくなり……
一瞬だけ明るく煌めいた。
そんな感じで凶悪な魔狼がお星さまになった様子を見つめていた。
え~っと。
「さすが先生です。あっさりでしたね」
冷静さを取り戻したらしいエフィがヴェルト教授に声をかける。
「当然だな。魔狼を捕らえたのだって、我々の何代も前の先生だ。そして我々はずっと研鑽を続けて来た。魔力さえあれば後れを取ることはない」
頼もしすぎて涙が出そうだ。
さすが、"魔女"が見込んだだけの腕のある魔法使いだな。
「でも、あんな魔法、見たことも聞いたこともないのですが、先生が生み出したのですか?」
エフィが首を傾げながら質問をする。
確かに、俺も聞いたことがない。
"魔女"から受け継いだ魔導書でも見たことがないから、ヴェルト教授が生み出した新魔法なのかもしれないな。
素晴らしい。
エフィを預けて良かったと、ちょびっと思わないでもないな。
「今の魔法か? これは君が持ってきた魔法陣を使っただけだぞ?」
「えっ?」
「はっ?」
さっきのなし。俺の感動を返せ!
なにが新魔法だ。
ただ偶然、凄い魔法陣が手に入っただけじゃね~か!
「あれを解読されたんですね。先生はやっぱり凄い……」
俺からすると、どんなことでもまず褒めることができる君が凄いよ。さすがは俺のエフィだな。
そして間違いなく魔狼を消し去った。
お星さまになった後、あのプレッシャーは完全に消えたし、魔狼の生命反応も消えた。
これで全ての障壁はなくなった。
150
お気に入りに追加
440
あなたにおすすめの小説
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい
麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。
しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。
しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。
第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる