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第24話 俺が倒してもいいけど教授にいい格好をさせた方がいいと思って譲った件
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□学院にて (クラム)
久々にやって来た学院はがらんとした雰囲気だった。
それはそうだろう。
なにせ来る途中にすれ違った通り、みんな避難して行ったんだから。
学院の先生たちは優秀だな。
魔狼の恐怖の中で、整然と生徒たちを並べて行進するように退避させていったんだから。
できればその優秀さを生徒たちの人間関係への関与にも使ってほしいと思うのはおこがましいだろうか?
まぁ、もしそんなことをされていたらエフィが婚約破棄されず、俺がエフィと結婚できないから今後でいいよ?
課題として考えるように、この事件を終結させたら進言しよう。
「で、ここに真っすぐやって来たという訳か。さすがだね、クラムくん」
これは褒められているということで良いよな?
俺はヴェルト教授とエフィと合流した。
2人は校庭に出ていた。
なにやら大きな魔法陣を校庭に描いているようだ。
これはもしや俺は不要だっただろうか?
そんなことを考えてしまうが、もし彼女たちの計画が上手くいかなかった場合の後詰めということで自分を納得させる。
もちろん、ここでカッコよく魔法をぶっ放してエフィに『お兄様、ステキすぎて最高で素晴らしいですわ♡』って言ってもらいたいという欲求もある。
あるが、せっかく準備をしていたようだし、ヴェルト教授にもエロカッコいい活躍をさせないと拗ねそうで怖いから先行は譲るよ。
もう知ってると思うけど、俺の目の前にいる、わがままボディを白衣で包み込んだエロい女の人がヴェルト教授だ。
そして我が愛すべき義妹エフィ。
その表情は決意に満ちている。
あぁ、あともう一人いるな。
隅っこに隠れてしまっているけど、ヴェルト教授の甥っ子くんだ。
もしかしてエフィの活躍を見守るために、貧弱なのに健気にも外に出てきたのだろうか?
むむ……やるじゃないか、我がライバルよ。
でも決して俺は俺のエフィを貴様になど渡さないからな?
とまあ、それは置いておこう。今は。
ヴェルト教授は豊満な胸を張って、魔狼を見ている。
だんだんと近付いて来る魔狼を……。
だがその表情に焦りはない。
当然だな。
なにせ魔狼が復活することがわかってすぐにヴェルト教授に連絡をしてあった。
彼女は"人物史"を知っているんだから、何も隠す必要がない。
そもそも彼女はエフィの実母である魔法ばばあの弟子の一人だ。
身内と言ってもいいくらいの仲間。
ちなみに父の姉弟子だ。
「来たぞ」
ヴェルト教授がそう呟くのと同時に、巨大な魔狼が飛び上がってこっちに突っ込んできた。
なかなかの迫力だ。
しかし、その突進が空中で止まる。
魔狼を中心にまるで雷のような閃光がバチバチと発生する。
初めて見る魔法だな……。
それは魔狼を包み込み、定期的に魔狼の身体の周りを走り回る。
その光が走り回った部分は焦げているようだ。
しかもどんどん光が大きくなっていく。
すげぇなこれ……。
あの魔狼を完封しそうな勢いだ。
もう魔狼には何もできないだろう。
完全に捉えられている。
俺は学院の入り口の方に歩み寄る。
興味深い魔法だったから。
そしてふと横を見るとエフィも同じように……いや、涎をたらしながら魔法だけを見つめてトボトボと近寄って行っている。
あっ、エフィも俺に気付いたな。
今さら気付いて涎をぬぐっても可愛いだけだよ?
つまり可愛すぎるってことさ。
そして魔狼を包み込んだ光が空に昇っていく。
どこまでも、どこまでも。
えっ、あれどこまで行くの?
突然光に包まれて遥か上空に飛ばされて行った魔狼はさらにさらに天高く登って行く。
そして見えなくなり……
一瞬だけ明るく煌めいた。
そんな感じで凶悪な魔狼がお星さまになった様子を見つめていた。
え~っと。
「さすが先生です。あっさりでしたね」
冷静さを取り戻したらしいエフィがヴェルト教授に声をかける。
「当然だな。魔狼を捕らえたのだって、我々の何代も前の先生だ。そして我々はずっと研鑽を続けて来た。魔力さえあれば後れを取ることはない」
頼もしすぎて涙が出そうだ。
さすが、"魔女"が見込んだだけの腕のある魔法使いだな。
「でも、あんな魔法、見たことも聞いたこともないのですが、先生が生み出したのですか?」
エフィが首を傾げながら質問をする。
確かに、俺も聞いたことがない。
"魔女"から受け継いだ魔導書でも見たことがないから、ヴェルト教授が生み出した新魔法なのかもしれないな。
素晴らしい。
エフィを預けて良かったと、ちょびっと思わないでもないな。
「今の魔法か? これは君が持ってきた魔法陣を使っただけだぞ?」
「えっ?」
「はっ?」
さっきのなし。俺の感動を返せ!
なにが新魔法だ。
ただ偶然、凄い魔法陣が手に入っただけじゃね~か!
「あれを解読されたんですね。先生はやっぱり凄い……」
俺からすると、どんなことでもまず褒めることができる君が凄いよ。さすがは俺のエフィだな。
そして間違いなく魔狼を消し去った。
お星さまになった後、あのプレッシャーは完全に消えたし、魔狼の生命反応も消えた。
これで全ての障壁はなくなった。
久々にやって来た学院はがらんとした雰囲気だった。
それはそうだろう。
なにせ来る途中にすれ違った通り、みんな避難して行ったんだから。
学院の先生たちは優秀だな。
魔狼の恐怖の中で、整然と生徒たちを並べて行進するように退避させていったんだから。
できればその優秀さを生徒たちの人間関係への関与にも使ってほしいと思うのはおこがましいだろうか?
まぁ、もしそんなことをされていたらエフィが婚約破棄されず、俺がエフィと結婚できないから今後でいいよ?
課題として考えるように、この事件を終結させたら進言しよう。
「で、ここに真っすぐやって来たという訳か。さすがだね、クラムくん」
これは褒められているということで良いよな?
俺はヴェルト教授とエフィと合流した。
2人は校庭に出ていた。
なにやら大きな魔法陣を校庭に描いているようだ。
これはもしや俺は不要だっただろうか?
そんなことを考えてしまうが、もし彼女たちの計画が上手くいかなかった場合の後詰めということで自分を納得させる。
もちろん、ここでカッコよく魔法をぶっ放してエフィに『お兄様、ステキすぎて最高で素晴らしいですわ♡』って言ってもらいたいという欲求もある。
あるが、せっかく準備をしていたようだし、ヴェルト教授にもエロカッコいい活躍をさせないと拗ねそうで怖いから先行は譲るよ。
もう知ってると思うけど、俺の目の前にいる、わがままボディを白衣で包み込んだエロい女の人がヴェルト教授だ。
そして我が愛すべき義妹エフィ。
その表情は決意に満ちている。
あぁ、あともう一人いるな。
隅っこに隠れてしまっているけど、ヴェルト教授の甥っ子くんだ。
もしかしてエフィの活躍を見守るために、貧弱なのに健気にも外に出てきたのだろうか?
むむ……やるじゃないか、我がライバルよ。
でも決して俺は俺のエフィを貴様になど渡さないからな?
とまあ、それは置いておこう。今は。
ヴェルト教授は豊満な胸を張って、魔狼を見ている。
だんだんと近付いて来る魔狼を……。
だがその表情に焦りはない。
当然だな。
なにせ魔狼が復活することがわかってすぐにヴェルト教授に連絡をしてあった。
彼女は"人物史"を知っているんだから、何も隠す必要がない。
そもそも彼女はエフィの実母である魔法ばばあの弟子の一人だ。
身内と言ってもいいくらいの仲間。
ちなみに父の姉弟子だ。
「来たぞ」
ヴェルト教授がそう呟くのと同時に、巨大な魔狼が飛び上がってこっちに突っ込んできた。
なかなかの迫力だ。
しかし、その突進が空中で止まる。
魔狼を中心にまるで雷のような閃光がバチバチと発生する。
初めて見る魔法だな……。
それは魔狼を包み込み、定期的に魔狼の身体の周りを走り回る。
その光が走り回った部分は焦げているようだ。
しかもどんどん光が大きくなっていく。
すげぇなこれ……。
あの魔狼を完封しそうな勢いだ。
もう魔狼には何もできないだろう。
完全に捉えられている。
俺は学院の入り口の方に歩み寄る。
興味深い魔法だったから。
そしてふと横を見るとエフィも同じように……いや、涎をたらしながら魔法だけを見つめてトボトボと近寄って行っている。
あっ、エフィも俺に気付いたな。
今さら気付いて涎をぬぐっても可愛いだけだよ?
つまり可愛すぎるってことさ。
そして魔狼を包み込んだ光が空に昇っていく。
どこまでも、どこまでも。
えっ、あれどこまで行くの?
突然光に包まれて遥か上空に飛ばされて行った魔狼はさらにさらに天高く登って行く。
そして見えなくなり……
一瞬だけ明るく煌めいた。
そんな感じで凶悪な魔狼がお星さまになった様子を見つめていた。
え~っと。
「さすが先生です。あっさりでしたね」
冷静さを取り戻したらしいエフィがヴェルト教授に声をかける。
「当然だな。魔狼を捕らえたのだって、我々の何代も前の先生だ。そして我々はずっと研鑽を続けて来た。魔力さえあれば後れを取ることはない」
頼もしすぎて涙が出そうだ。
さすが、"魔女"が見込んだだけの腕のある魔法使いだな。
「でも、あんな魔法、見たことも聞いたこともないのですが、先生が生み出したのですか?」
エフィが首を傾げながら質問をする。
確かに、俺も聞いたことがない。
"魔女"から受け継いだ魔導書でも見たことがないから、ヴェルト教授が生み出した新魔法なのかもしれないな。
素晴らしい。
エフィを預けて良かったと、ちょびっと思わないでもないな。
「今の魔法か? これは君が持ってきた魔法陣を使っただけだぞ?」
「えっ?」
「はっ?」
さっきのなし。俺の感動を返せ!
なにが新魔法だ。
ただ偶然、凄い魔法陣が手に入っただけじゃね~か!
「あれを解読されたんですね。先生はやっぱり凄い……」
俺からすると、どんなことでもまず褒めることができる君が凄いよ。さすがは俺のエフィだな。
そして間違いなく魔狼を消し去った。
お星さまになった後、あのプレッシャーは完全に消えたし、魔狼の生命反応も消えた。
これで全ての障壁はなくなった。
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