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第23話 とある元騎士見習いくんの再就職先が魔狼によって襲撃されそうな件
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□学院の前の広場にて (とある元騎士見習い)
俺、あの職場辞めてて正解だったわ。
再就職して学院の門の警備員になった俺は、学院の門の前の広場から王城を見つめて呆然としていた。
凄まじい音とともに王城が崩落して行ったのが見えた。
間違いない。あの災厄の魔物が復活したんだ。
そりゃそうだよな。
入れることが定められてる魔石を、俺は一回も入れたことがない。
もしかしたら別の人が入れてたのかもしれないなんて思ったけど、わざわざそんなことするかな?
だったら俺に入れさせればいいだろ?
聞いた中で信ぴょう性が高かったのは、王妃がお小遣いにするためにいくつかパクってて、それを周りにバレないようにするために騎士団長が手を回してたって話だ。
それなら俺に知られたくないのは理解できる。
そして一応、数は少なくなってるのかもしれないけど魔石の投入が行われてたのかもしれないという期待も持てる。
まぁ、そうだとしても恐怖しか感じないからあの職場はやめたがな。
それが俺の人生史上最大の正解だったと思う。
だって、あんなに派手に崩れて行ったんだぜ?
中に残ってたら間違いなく埋まってる。
そして普段から鎧を着たり、盾を持ったりと、重いものを身に着けている状況で無事に這い出してこれるなんて思えない。
確実に死んでただろう。
「なんだよあれ!?」
「あれは……きっと災厄の魔物だ!」
「なんでだ? 王城の地下で厳重に封印してたって話だろ!?」
「知らねぇよ! どうせ管理が甘かったんだろ? 王族なんか信じれるかよ」
「そうよ。どうせサボってたのよ。予算がないとか言ってるんでしょ、きっと」
「魔石の流通だって減ってたらしいしな」
「どうせ庶民は魔石なんて使わないから関係ないわ? 慌ててたのはお偉いお貴族様や王族だけでしょ?」
「それでサボってあれが復活して王城が崩れたんじゃ、元も子もないぜ?」
みんなちゃんと理解してるんだな、王侯貴族のことをさ。
「城で働いていたやつは可哀そうにな」
「俺の従姉が……」
「無理だよ。諦めな。今は自分の命の心配をし!」
「城は給金も良かったはずだが、こういう危険もあるってことさ。仕方ないさね」
そこまで割り切るのは難しいだろう。
俺だって結局レーネちゃんに声をかけれてない。
後悔してる。まさかこんなに早く守護結界が破られるなんてさ。
「おい、行くぞ!」
「あぁ。あれがこっちに来たらヤバい」
「逃げろ。あんなのが追いかけられたらいっかんの終わりだ!」
「その昔、王都は灰塵と化しかけたって話だろ? ここにいたらやばいぜ!」
堰を切ったように逃げ惑う人々。
当然だろう。俺だってさらに逃げるぜ?
あれを倒せる人間なんている気がしない。
どうせ学院の生徒や教師も時期に逃げ出すだろう。
さっき魔法を使った案内で緊急避難とか言われてたしな。
「校長、あれを!!!」
「なっ、なっ、なっ、なっ、なっ」
「校長、ご指示を! 生徒たちを逃がさなければなりません!」
「生徒もそうだが、職員もだ! 全員退避だ!!!」
「全員? 研究室の教授方はどうするのです!?」
「そんなものより命が大事だろう! 馬鹿なことを言ってないで、すぐに全校放送して、逃げるのだ!」
「はい」
「私は先に行くからな!」
「えっ、ちょっ……校長!」
「そこのお前! 門番だろう! 私の避難に付き添うのだ! 馬車を回してこい!!!」
「えっ、俺!? わかりました」
どこの組織でも偉い人は自分勝手だ。
しかしそれでも他の先生方はきちんと生徒に案内をしているようだ。
まだ魔物は大きくは動いていない……。
いや、飛んで……ひらりと降りたな。
なんなんだ?
よくわからないが、何か狙われたやつでもいたのだろう。
気にしている余裕はない。
馬車はすぐに用意でき、校長と呼ばれていた先生を乗せて出発する。
徐々に生徒達も出て来て、みんなで移動を始めるようだ。
それに交じって先生と思われる人たちもいる。
魔法が使える子たちは魔法も使いながら行くようだ。
さすが学院の先生と生徒達だ。
めちゃくちゃ安心感があるな。
これは幸運かもしれない。
これで俺は助かる。
ん?
全員で避難を開始しているのに、なぜか男の人とすれ違う。
完全武装で、高そうなローブを纏っていた。
魔法使いの人だろうか?
もしかして魔物に挑む気なのか?
それともさっき先生の誰かが言っていた教授って人なのかな?
わからないけど、俺が絡まないなら自由にやってくれ。
そして可能ならあの魔物を追い払ってくれ。
ここは俺の故郷でもある。
いくら王侯貴族がクズだからって、滅んでしまえなんて思っていない。
できれば街にはあまり被害を出さずになんとか治まってくれるなら嬉しい。
あんなに恐ろしい魔物に対して、楽観的すぎるかもしれないがな。
そうやって走って逃げていると、魔物が王城のあった場所から降りてくるのが見えた。
その行き先は、間違いなく俺たちがさっきまでいた学院だ。
マジかよ……。
2回も幸運が続くとは……。
いや、むしろ運が悪いのかもしれない。
俺の職場、2つ連続で消し飛んだ……
なんてことはなかった。
俺は馬車から見えた景色に目を疑った。
えっ?
魔物が……消えた?
俺、あの職場辞めてて正解だったわ。
再就職して学院の門の警備員になった俺は、学院の門の前の広場から王城を見つめて呆然としていた。
凄まじい音とともに王城が崩落して行ったのが見えた。
間違いない。あの災厄の魔物が復活したんだ。
そりゃそうだよな。
入れることが定められてる魔石を、俺は一回も入れたことがない。
もしかしたら別の人が入れてたのかもしれないなんて思ったけど、わざわざそんなことするかな?
だったら俺に入れさせればいいだろ?
聞いた中で信ぴょう性が高かったのは、王妃がお小遣いにするためにいくつかパクってて、それを周りにバレないようにするために騎士団長が手を回してたって話だ。
それなら俺に知られたくないのは理解できる。
そして一応、数は少なくなってるのかもしれないけど魔石の投入が行われてたのかもしれないという期待も持てる。
まぁ、そうだとしても恐怖しか感じないからあの職場はやめたがな。
それが俺の人生史上最大の正解だったと思う。
だって、あんなに派手に崩れて行ったんだぜ?
中に残ってたら間違いなく埋まってる。
そして普段から鎧を着たり、盾を持ったりと、重いものを身に着けている状況で無事に這い出してこれるなんて思えない。
確実に死んでただろう。
「なんだよあれ!?」
「あれは……きっと災厄の魔物だ!」
「なんでだ? 王城の地下で厳重に封印してたって話だろ!?」
「知らねぇよ! どうせ管理が甘かったんだろ? 王族なんか信じれるかよ」
「そうよ。どうせサボってたのよ。予算がないとか言ってるんでしょ、きっと」
「魔石の流通だって減ってたらしいしな」
「どうせ庶民は魔石なんて使わないから関係ないわ? 慌ててたのはお偉いお貴族様や王族だけでしょ?」
「それでサボってあれが復活して王城が崩れたんじゃ、元も子もないぜ?」
みんなちゃんと理解してるんだな、王侯貴族のことをさ。
「城で働いていたやつは可哀そうにな」
「俺の従姉が……」
「無理だよ。諦めな。今は自分の命の心配をし!」
「城は給金も良かったはずだが、こういう危険もあるってことさ。仕方ないさね」
そこまで割り切るのは難しいだろう。
俺だって結局レーネちゃんに声をかけれてない。
後悔してる。まさかこんなに早く守護結界が破られるなんてさ。
「おい、行くぞ!」
「あぁ。あれがこっちに来たらヤバい」
「逃げろ。あんなのが追いかけられたらいっかんの終わりだ!」
「その昔、王都は灰塵と化しかけたって話だろ? ここにいたらやばいぜ!」
堰を切ったように逃げ惑う人々。
当然だろう。俺だってさらに逃げるぜ?
あれを倒せる人間なんている気がしない。
どうせ学院の生徒や教師も時期に逃げ出すだろう。
さっき魔法を使った案内で緊急避難とか言われてたしな。
「校長、あれを!!!」
「なっ、なっ、なっ、なっ、なっ」
「校長、ご指示を! 生徒たちを逃がさなければなりません!」
「生徒もそうだが、職員もだ! 全員退避だ!!!」
「全員? 研究室の教授方はどうするのです!?」
「そんなものより命が大事だろう! 馬鹿なことを言ってないで、すぐに全校放送して、逃げるのだ!」
「はい」
「私は先に行くからな!」
「えっ、ちょっ……校長!」
「そこのお前! 門番だろう! 私の避難に付き添うのだ! 馬車を回してこい!!!」
「えっ、俺!? わかりました」
どこの組織でも偉い人は自分勝手だ。
しかしそれでも他の先生方はきちんと生徒に案内をしているようだ。
まだ魔物は大きくは動いていない……。
いや、飛んで……ひらりと降りたな。
なんなんだ?
よくわからないが、何か狙われたやつでもいたのだろう。
気にしている余裕はない。
馬車はすぐに用意でき、校長と呼ばれていた先生を乗せて出発する。
徐々に生徒達も出て来て、みんなで移動を始めるようだ。
それに交じって先生と思われる人たちもいる。
魔法が使える子たちは魔法も使いながら行くようだ。
さすが学院の先生と生徒達だ。
めちゃくちゃ安心感があるな。
これは幸運かもしれない。
これで俺は助かる。
ん?
全員で避難を開始しているのに、なぜか男の人とすれ違う。
完全武装で、高そうなローブを纏っていた。
魔法使いの人だろうか?
もしかして魔物に挑む気なのか?
それともさっき先生の誰かが言っていた教授って人なのかな?
わからないけど、俺が絡まないなら自由にやってくれ。
そして可能ならあの魔物を追い払ってくれ。
ここは俺の故郷でもある。
いくら王侯貴族がクズだからって、滅んでしまえなんて思っていない。
できれば街にはあまり被害を出さずになんとか治まってくれるなら嬉しい。
あんなに恐ろしい魔物に対して、楽観的すぎるかもしれないがな。
そうやって走って逃げていると、魔物が王城のあった場所から降りてくるのが見えた。
その行き先は、間違いなく俺たちがさっきまでいた学院だ。
マジかよ……。
2回も幸運が続くとは……。
いや、むしろ運が悪いのかもしれない。
俺の職場、2つ連続で消し飛んだ……
なんてことはなかった。
俺は馬車から見えた景色に目を疑った。
えっ?
魔物が……消えた?
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