16 / 46
第16話 バカな弟が王家に丸め込まれてるみたいだけど助けてもロクなことにならないのがわかっている件
しおりを挟む
翌日、嬉しそうに昨日買った魔法陣を脇に抱えて学院に向かうエフィを送り出した。
いつも使っているカバンから昨日プレゼントした杖が入りきらずに出ているのがまた可愛い。
もうすでに肌身離さず持ってくれているんだな。
なんなら指輪でも贈りたかったが、まだ重いというか、『お兄様なぜ?』となってしまいかねないからやめておいた。
それでも薄っすらとだけど化粧してるエフィは可愛すぎてやばかったな、
兄の理性をあっさりと消し飛ばすとは、エフィ恐ろしい娘!
しかしなんか心境の変化でもあったんだろうか。
あんなに飾り気がなかったのに、ちょっとおしゃれさんになってて、控えめに言って最高だ。
それとなくエフィにつけているメイドに聞いてみたが、『婚約破棄のことを気にせず明るくなってくださって嬉しいです。クラム様のおかげですわ。私が言うことではないかもしれませんが、感謝しています。エフィ様のあんなに可愛らしくていじらしいご様子が見られて幸せです』とか鼻息荒く言われてちょっと戸惑ったのは内緒だ。
まあ、元気になったのは良いことだな。
最近、ロイドも帰ってこないし、家の中が平和だ。
エフィもミルクだけで朝食を終えることはやめてくれたようで、それも安心している。
少しだけ丸みを帯びてきたような気もする。
言葉に出して『お兄様最低!』なんて言われたら立ち直れないから言わないけど、良い変化に思うんだ。
後は変な虫がつかないように気を付けるだけ……と思ってたらロイドが帰ってきやがった。
胸糞悪い。俺の目の前に顔を出すなと言いたいが、一応これでも嫌なことに残念ながら弟だから仕方ないか。
しかも俺は側室の子。ロイドは正妻の子。
なお、俺と正妻の関係は良好だ。
そもそも母は亡くなったが、それは正妻であるローザ様を守ってのことだ。
もともと護衛の魔法騎士だった母に手を出した父さんに思うところはあるが、本人たちは幸せそうだったし、ローザ様もユリアならば不満はありませんと言って受け入れていた。
妻同士が争い、その余波を受けて子供同士が憎み合ってるどこかの家よりよっぽど良い状況だった。
どう見てもボンクラなのにそんな感じで何ごとも上手く回している父さんは実は凄いんじゃないかと考えたことがあったな……。
結論としては運がいいだけの人だと思うが"強運"なんて持ってるんだから羨ましい。
「聞いているのか、クラム!」
そんな両親たちからなんでこんなバカが産まれたんだろうか?
なに? 呪われてたりするのかな、君は?
「おい! どうして魔石の供給が止まったのかと聞いているだろ? 王家が守護結界の魔道具に魔石を投入できなくなって困ってるんだぞ?」
俺がそんなことを考えてるなんて露とも知らず、どうせクソ王子から怒られたか頼まれたかしたであろうことで文句を言ってくる。
それ、俺たち関係ないけど?
どうせ勝手に魔石を横領していたやつがいて、仮に魔石を供給していたとしても真っ当には使ってなかったってこと、理解してないんだろうな。
ローザ様がいれば大人しいのに、いないとこうして俺やエフィのことを小ばかにしてくるように成長したのはなんでだろうな。
まぁ、きっとクソ王子にコロッと言いくるめられて良いように使われているんだろうが、もともと持った考えや特性がないとここまで酷いことにはならないだろう。
過去に何度かこいつに"人物史"を使ったことがあるが、どんな未来でもこいつは俺やエフィに敵対する。
特に両親が死んだ後にこいつが生きていた場合が酷い。
<ロイドは当主になれなかったことを逆恨みして襲撃してきたが結局負けて死亡>
<ロイドは冒険者ギルドで雇った怪しい冒険者にエフィーを襲わせるが、その事件がバレて処刑>
<ロイドは憤死>
<ロイドはエルダーウィズ公爵家の秘密を王家やライバル家に売る>
<ロイドは怒りながら商館で酒を飲んで暴れて逮捕。俺はエルダーウィズ公爵家だぞ?がネタにされる>
<ロイドは腹いせにエルダーウィズ公爵家のつけと称して飲み歩き、勝手に破産する>
こんなのばっかりだ。
なんだろう、お話の中のバカな敵役が出て来たみたいなバカだ。
どんな未来でも邪魔になるこいつを助ける気はない。
ローザ様には死んだ後に詫びることにしてる。
そもそもエフィに辛く当たるこいつは俺の中では既に死んだ人だ。
「ふざけるなクラム! お前覚えてろよ!? 俺が当主になったらお前なんか!」
あまりに放置した挙句、魔石は全部使ったからもうないこと、それでも王家との契約量は流通させているから問題ないと説明したのに怒り出した。
さすがに公爵家の部下がいる場所で怒りに任せて魔法を撃つのはなしだぞ、ロイド。
そんな君には教育が必要だ。
エフィの真似をして初級魔法だけでぶちのめした。
どうだ? 上級魔法を頑張って使ったのに、初級魔法で相殺されるのって楽しい? ねえ、楽しいの? 嬉しい?
男の嬉しょんなんて興味ないから、蹴り出しておいた。
そう言えばお前、エフィに『恥さらし』とか言いやがったらしいな。
「いくら公爵家の中だからと言っても、闘技場で漏らして侍従の世話になる方が恥ずかしくないか?」
「クラム様、その辺で……」
あまりの怒りに気絶したらしい。ふん。俺の教育が理解できることを祈るばかりだ。
そして世話をさせる者たちに申し訳ないから、心づけを渡しておいた。
いつも使っているカバンから昨日プレゼントした杖が入りきらずに出ているのがまた可愛い。
もうすでに肌身離さず持ってくれているんだな。
なんなら指輪でも贈りたかったが、まだ重いというか、『お兄様なぜ?』となってしまいかねないからやめておいた。
それでも薄っすらとだけど化粧してるエフィは可愛すぎてやばかったな、
兄の理性をあっさりと消し飛ばすとは、エフィ恐ろしい娘!
しかしなんか心境の変化でもあったんだろうか。
あんなに飾り気がなかったのに、ちょっとおしゃれさんになってて、控えめに言って最高だ。
それとなくエフィにつけているメイドに聞いてみたが、『婚約破棄のことを気にせず明るくなってくださって嬉しいです。クラム様のおかげですわ。私が言うことではないかもしれませんが、感謝しています。エフィ様のあんなに可愛らしくていじらしいご様子が見られて幸せです』とか鼻息荒く言われてちょっと戸惑ったのは内緒だ。
まあ、元気になったのは良いことだな。
最近、ロイドも帰ってこないし、家の中が平和だ。
エフィもミルクだけで朝食を終えることはやめてくれたようで、それも安心している。
少しだけ丸みを帯びてきたような気もする。
言葉に出して『お兄様最低!』なんて言われたら立ち直れないから言わないけど、良い変化に思うんだ。
後は変な虫がつかないように気を付けるだけ……と思ってたらロイドが帰ってきやがった。
胸糞悪い。俺の目の前に顔を出すなと言いたいが、一応これでも嫌なことに残念ながら弟だから仕方ないか。
しかも俺は側室の子。ロイドは正妻の子。
なお、俺と正妻の関係は良好だ。
そもそも母は亡くなったが、それは正妻であるローザ様を守ってのことだ。
もともと護衛の魔法騎士だった母に手を出した父さんに思うところはあるが、本人たちは幸せそうだったし、ローザ様もユリアならば不満はありませんと言って受け入れていた。
妻同士が争い、その余波を受けて子供同士が憎み合ってるどこかの家よりよっぽど良い状況だった。
どう見てもボンクラなのにそんな感じで何ごとも上手く回している父さんは実は凄いんじゃないかと考えたことがあったな……。
結論としては運がいいだけの人だと思うが"強運"なんて持ってるんだから羨ましい。
「聞いているのか、クラム!」
そんな両親たちからなんでこんなバカが産まれたんだろうか?
なに? 呪われてたりするのかな、君は?
「おい! どうして魔石の供給が止まったのかと聞いているだろ? 王家が守護結界の魔道具に魔石を投入できなくなって困ってるんだぞ?」
俺がそんなことを考えてるなんて露とも知らず、どうせクソ王子から怒られたか頼まれたかしたであろうことで文句を言ってくる。
それ、俺たち関係ないけど?
どうせ勝手に魔石を横領していたやつがいて、仮に魔石を供給していたとしても真っ当には使ってなかったってこと、理解してないんだろうな。
ローザ様がいれば大人しいのに、いないとこうして俺やエフィのことを小ばかにしてくるように成長したのはなんでだろうな。
まぁ、きっとクソ王子にコロッと言いくるめられて良いように使われているんだろうが、もともと持った考えや特性がないとここまで酷いことにはならないだろう。
過去に何度かこいつに"人物史"を使ったことがあるが、どんな未来でもこいつは俺やエフィに敵対する。
特に両親が死んだ後にこいつが生きていた場合が酷い。
<ロイドは当主になれなかったことを逆恨みして襲撃してきたが結局負けて死亡>
<ロイドは冒険者ギルドで雇った怪しい冒険者にエフィーを襲わせるが、その事件がバレて処刑>
<ロイドは憤死>
<ロイドはエルダーウィズ公爵家の秘密を王家やライバル家に売る>
<ロイドは怒りながら商館で酒を飲んで暴れて逮捕。俺はエルダーウィズ公爵家だぞ?がネタにされる>
<ロイドは腹いせにエルダーウィズ公爵家のつけと称して飲み歩き、勝手に破産する>
こんなのばっかりだ。
なんだろう、お話の中のバカな敵役が出て来たみたいなバカだ。
どんな未来でも邪魔になるこいつを助ける気はない。
ローザ様には死んだ後に詫びることにしてる。
そもそもエフィに辛く当たるこいつは俺の中では既に死んだ人だ。
「ふざけるなクラム! お前覚えてろよ!? 俺が当主になったらお前なんか!」
あまりに放置した挙句、魔石は全部使ったからもうないこと、それでも王家との契約量は流通させているから問題ないと説明したのに怒り出した。
さすがに公爵家の部下がいる場所で怒りに任せて魔法を撃つのはなしだぞ、ロイド。
そんな君には教育が必要だ。
エフィの真似をして初級魔法だけでぶちのめした。
どうだ? 上級魔法を頑張って使ったのに、初級魔法で相殺されるのって楽しい? ねえ、楽しいの? 嬉しい?
男の嬉しょんなんて興味ないから、蹴り出しておいた。
そう言えばお前、エフィに『恥さらし』とか言いやがったらしいな。
「いくら公爵家の中だからと言っても、闘技場で漏らして侍従の世話になる方が恥ずかしくないか?」
「クラム様、その辺で……」
あまりの怒りに気絶したらしい。ふん。俺の教育が理解できることを祈るばかりだ。
そして世話をさせる者たちに申し訳ないから、心づけを渡しておいた。
174
お気に入りに追加
440
あなたにおすすめの小説
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる