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第15話 エフィを害する脅威である悪霊を倒しに来たはずがしもべができた件②
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ということで、俺はしもべとやらを手に入れた。
大丈夫かな? こんな気持ち悪いの飼っててエフィにひかれないだろうか?
しもべになった瞬間、こっちに色目を使いながら隙あらばまとわりついて来る悪霊カーシャさんを振り払っていると、そんな切実な想いが湧いて来た。
『あぁ、想い人がいらっしゃるのですね。そうですか、わかりました。カーシャは決して変態さんに使えるわけではないのですね。わかりました』
なんで残念そうなんだよ。そういう趣向の人?
泣くなバカ!
『違います。断じて違います。カーシャは憎きエルダーウィズのラザムだけは許さないけど、それ以外は普通です。せっかく出会えたマスターに振り向いて、優しくしてもらって、甘酸っぱいことを体験してみたい。生きている間にはできなかったようなハードなことでも大丈夫だからとか思ってないです』
はて……。ラザム? 先先々代の当主がラザムという名前で、女癖の悪い嫌な奴だったと聞いているが……。
『ひ孫???』
……ん? もしかして……。
あ~その、なんだ。すまん。
『ぐぬぬぬぬ。そうでしたか。あのクソ公爵のひ孫……ということは、あの恐ろしい"魔女"の血縁。あぁぁぁぁ、脳が溶ける……あのクソ公爵のひ孫をマスターと呼ばなければならぬ理不尽んんんんんnnnnnnn』
ごめん。もしかして遊んだ上に捨てたとかそっち系の話だっただろうか? すまない。なんで俺が謝らないといけないのか分からないが、先祖の不始末だったら申し訳ない。
『突然襲われて散々好きにされた挙句、殺された……』
えっと……。まじ?
『嘘です、すみません、ひ孫がちょろいんでびっくりしすぎて罪悪感が……』
あぁ???
『あぁ、光~。痛いけど救いかもしれない光ぃぃいいぃぃいいいいいい~~~~ってなんで止めるの、もうやだよ、イかせてよぉおおぉぉおおお~~~~~』
なにを再現してんだよ!?
さっきやっただろこのくだり!
ふざけんな、クソ悪霊!!!!!
どうやらこのカーシャという女はひい爺ちゃんの部下だったらしい。
情報部に所属していた魔法使いで、割と黒い仕事も請け負っていた。
"魔女"ももちろん健在で、結構ハードな仕事につき合わされていたそうだ。いわゆるブラックとかなんとか。
それである時、仕事でミスして魔獣を解き放ってしまったラザムを守って死んだんだと。
ラザムを敬愛していたからそこに不満はないけど、死んだあとでも想いが消えなくて困りつつもはぁはぁしながらラザムを見守っていたら"魔女"に気付かれて成仏させられかけて拗らせたっぽい。
完全に消える前にここに逃げて来て隠れてたら、匂いがして出て来たみたいだな。匂いっていうのはエルダーウィズ公爵家の者の匂いらしい。
そんなものがわかるようになるくらいにはラザムへの恋心を捨てられなかったと聞いて哀れには思った。
が……。
『だから襲われてもいいかなと……』
ないないないないないないないない。
『そんなに否定しなくても。カーシャは悲しいです』
決して見た目は悪くないし、悪霊と言われても疑うくらいには綺麗な見た目をしているけど、そんな重い人と遊ぶ気はない。
『カーシャは生きていた時は人気者だったのです。情報部のお爺ちゃんは優しくしてくれたし、執事のおじ様は激しかったし、ラザムさまはイジメるし、護衛の騎士様はよってたかった……あぁ、懐かしい♡』
ただのビッチじゃね~かクソが!!!
『でもお仕事は頑張っていたのです。"魅了"が使えたので王家にも潜入していましたし、"隠遁"でバレることはありませんでした。闇、水、木、影の属性魔法が使えたので単独で戦闘もこなせますし、回復魔法なんかもできます』
せっかくだし、便利だから使うことにした。
十二分に魔法を使いこなす悪霊で、テイムしちゃってるしな。
『カーシャは悪霊なのでどこへでも行けます。マスターのためなら王城で王家ぶっ殺してもいいし、隣国に単独で乗り込んで暴れてもいいし、ベッドの中でも、トイレの中でも、何なら今ここででも。どこででも何でもします』
全部特に需要ないから。
いや……匂いでわかるって言ったな。
……ごにょごにょごにょごにょ……
『わかりました。行って参ります!』
これでまだ時間稼げるだろう。
両親が帰ってくるのはもう少し先延ばししたい。
ここまでくれば、災厄の魔物のことを調べて対処した後が良いな。
なんか王城の方から不穏な空気を感じるし、魔石供給止めているから、あのクソ王子やロイドはいろいろやらかしてくれそうだしな。
『案外近くにいらっしゃいました。さすがに街道を破壊して足止めをするのはまずいと思って、とりあえず馬車の車輪を壊したのと、偶然出会った困っている旅人を装って助けてもらって、お礼に温泉地の宿泊券をプレゼントしたので、あと1週間は帰ってこないはずです』
翌日、嬉しそうに昨日買った魔法陣を脇に抱えて学院に向かうエフィを送り出し、エルダーウィズ公爵邸で仕事をしていたらそんな言葉が聞こえて来た。
遠隔で会話もできるのか……。
それに両親や末の妹に危害を加えたり、周囲に迷惑をかけたりしたいわけではないという、こちらの意図をばっちり汲んだ対応をしてくれたらしい。
有能すぎて怖いわ!
大丈夫かな? こんな気持ち悪いの飼っててエフィにひかれないだろうか?
しもべになった瞬間、こっちに色目を使いながら隙あらばまとわりついて来る悪霊カーシャさんを振り払っていると、そんな切実な想いが湧いて来た。
『あぁ、想い人がいらっしゃるのですね。そうですか、わかりました。カーシャは決して変態さんに使えるわけではないのですね。わかりました』
なんで残念そうなんだよ。そういう趣向の人?
泣くなバカ!
『違います。断じて違います。カーシャは憎きエルダーウィズのラザムだけは許さないけど、それ以外は普通です。せっかく出会えたマスターに振り向いて、優しくしてもらって、甘酸っぱいことを体験してみたい。生きている間にはできなかったようなハードなことでも大丈夫だからとか思ってないです』
はて……。ラザム? 先先々代の当主がラザムという名前で、女癖の悪い嫌な奴だったと聞いているが……。
『ひ孫???』
……ん? もしかして……。
あ~その、なんだ。すまん。
『ぐぬぬぬぬ。そうでしたか。あのクソ公爵のひ孫……ということは、あの恐ろしい"魔女"の血縁。あぁぁぁぁ、脳が溶ける……あのクソ公爵のひ孫をマスターと呼ばなければならぬ理不尽んんんんんnnnnnnn』
ごめん。もしかして遊んだ上に捨てたとかそっち系の話だっただろうか? すまない。なんで俺が謝らないといけないのか分からないが、先祖の不始末だったら申し訳ない。
『突然襲われて散々好きにされた挙句、殺された……』
えっと……。まじ?
『嘘です、すみません、ひ孫がちょろいんでびっくりしすぎて罪悪感が……』
あぁ???
『あぁ、光~。痛いけど救いかもしれない光ぃぃいいぃぃいいいいいい~~~~ってなんで止めるの、もうやだよ、イかせてよぉおおぉぉおおお~~~~~』
なにを再現してんだよ!?
さっきやっただろこのくだり!
ふざけんな、クソ悪霊!!!!!
どうやらこのカーシャという女はひい爺ちゃんの部下だったらしい。
情報部に所属していた魔法使いで、割と黒い仕事も請け負っていた。
"魔女"ももちろん健在で、結構ハードな仕事につき合わされていたそうだ。いわゆるブラックとかなんとか。
それである時、仕事でミスして魔獣を解き放ってしまったラザムを守って死んだんだと。
ラザムを敬愛していたからそこに不満はないけど、死んだあとでも想いが消えなくて困りつつもはぁはぁしながらラザムを見守っていたら"魔女"に気付かれて成仏させられかけて拗らせたっぽい。
完全に消える前にここに逃げて来て隠れてたら、匂いがして出て来たみたいだな。匂いっていうのはエルダーウィズ公爵家の者の匂いらしい。
そんなものがわかるようになるくらいにはラザムへの恋心を捨てられなかったと聞いて哀れには思った。
が……。
『だから襲われてもいいかなと……』
ないないないないないないないない。
『そんなに否定しなくても。カーシャは悲しいです』
決して見た目は悪くないし、悪霊と言われても疑うくらいには綺麗な見た目をしているけど、そんな重い人と遊ぶ気はない。
『カーシャは生きていた時は人気者だったのです。情報部のお爺ちゃんは優しくしてくれたし、執事のおじ様は激しかったし、ラザムさまはイジメるし、護衛の騎士様はよってたかった……あぁ、懐かしい♡』
ただのビッチじゃね~かクソが!!!
『でもお仕事は頑張っていたのです。"魅了"が使えたので王家にも潜入していましたし、"隠遁"でバレることはありませんでした。闇、水、木、影の属性魔法が使えたので単独で戦闘もこなせますし、回復魔法なんかもできます』
せっかくだし、便利だから使うことにした。
十二分に魔法を使いこなす悪霊で、テイムしちゃってるしな。
『カーシャは悪霊なのでどこへでも行けます。マスターのためなら王城で王家ぶっ殺してもいいし、隣国に単独で乗り込んで暴れてもいいし、ベッドの中でも、トイレの中でも、何なら今ここででも。どこででも何でもします』
全部特に需要ないから。
いや……匂いでわかるって言ったな。
……ごにょごにょごにょごにょ……
『わかりました。行って参ります!』
これでまだ時間稼げるだろう。
両親が帰ってくるのはもう少し先延ばししたい。
ここまでくれば、災厄の魔物のことを調べて対処した後が良いな。
なんか王城の方から不穏な空気を感じるし、魔石供給止めているから、あのクソ王子やロイドはいろいろやらかしてくれそうだしな。
『案外近くにいらっしゃいました。さすがに街道を破壊して足止めをするのはまずいと思って、とりあえず馬車の車輪を壊したのと、偶然出会った困っている旅人を装って助けてもらって、お礼に温泉地の宿泊券をプレゼントしたので、あと1週間は帰ってこないはずです』
翌日、嬉しそうに昨日買った魔法陣を脇に抱えて学院に向かうエフィを送り出し、エルダーウィズ公爵邸で仕事をしていたらそんな言葉が聞こえて来た。
遠隔で会話もできるのか……。
それに両親や末の妹に危害を加えたり、周囲に迷惑をかけたりしたいわけではないという、こちらの意図をばっちり汲んだ対応をしてくれたらしい。
有能すぎて怖いわ!
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