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第11話 デートに誘った義妹が可愛すぎて幸せな気分で婚約破棄してくれたクソ王子に心の中で感謝した件
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先日、エフィに相談された魔石をきっちりヴェルト教授の研究室に届けておいた。
突然の訪問だったにもかかわらず、いつも通りきっちりとした格好……ちょっとエロいけど……をしたヴェルト教授に笑顔で迎え入れられ、今の研究の状況について教えてもらった。
どうやらエフィには渡した魔法陣が俺のものだとはちゃんと黙ってくれているらしい。
良い仕事だヴェルト教授。
もし話していたら俺が未来を知っているかもと疑心暗鬼になっていたかもしれない。
いつかは話すが、それはもう少し落ち着いてからにしたい。
そして無事に魔石を供給できたから、これでしばらく研究室のことは心配ないだろう。
エフィもだいぶ婚約破棄のことを忘れて来たみたいだし、このまま卒業まで魔法研究に集中すると良いな。
ただまだ婚約破棄から数日しか経っていない。
気になるのは悪霊のことだ。
"人物史"が示したあの悪霊はどうなったんだろう。
街の噂でも、そんなものが出たとは聞こえてこない。
一応気にして情報部に調べさせてはいるが、全く痕跡もない。
そうなると悪霊の出現にエフィが関わっていたのか?ということになるが、どうなんだろう。
自らを襲い殺しに来るようなのとあの天使のように可愛らしいエフィが関わっているなんてことがあるだろうか?
もしそうならどこで……いや、もしかするとありうるのか。
ただ、その場合エフィ自身の問題じゃないな。
きっと"魔女"だ。
"魔女"に恨みでもあるやつがエフィにその匂いを感じて出て来たとかだったらありうるかもしれない。
あの婆さん、豪快だったからな……。
恨みを買うことだってあっただろう。
そもそもヴェルト教授を弟子にした時だって、王城内でごたごたがあって、その関係者を弟子にするのかって大問題になりかけたと聞いたことがある。
どんな問題だったのかは知らないが、確か甥っ子くんのことも関係していたはずだ。
一応調べさせておくとして……そうだな。次の休みの日にエフィを誘って家出したエフィが行きそうなところに行ってみるか。
そうすればつられて出てくるかもしれないしな。
せっかく悪霊を倒すために身に着けた力はきっちり使っておきたい。後顧の憂いも払っておきたいしな。
決まりだ。
となると行き先だけど……エフィってそもそもあんまり外出したことないよな?
王城と学院とエルダーウィズ公爵邸以外に行ったことがある場所ってどこだろう。
そして家出した場合に行きそうな場所って?
全く思い当たらない。
ちょっとショックだ。
可愛い可愛いと言いながら俺はもしかしたらエフィを拘束していたのかもしれない。
本当は行きたい場所だってあるのかもしれないけど、聞いて来なかった。
ちょっと自己嫌悪だ。
ちゃんと話してみよう。
王都で悪霊が出てくるぐらいだから、墓地公園かその近くなのかなとか、昔大量の犯罪者を沈めたという噂のある王立公園のデートスポットになってる池とかか?
なんでそんな池がデートスポットなんだとは思うけど、昔の事件だからな。今では周囲も整備されていて景色もいいし、夜は照明も当たって綺麗なんだ。
ありそうだな。
じゃあ、この2つを組み込んでと……完全にデートじゃないか??
うん、デートだな。気合入れて行こう。
「エフィ、デートしよう」
「えぇ???」
年頃の妹を誘う方法10選、お兄ちゃん嫌いなんてもう言わせない、兄妹仲を深めるために気を付けること……そんな本を速読で20冊くらい読み込んだ俺は、書いてあった通り気楽に誘ってみた。
こういうのは勢いと、緊張させない雰囲気が大事らしい。そして断っても問題ないような誘い方。
うん、完璧だろ?
「えっ、おっ、お兄様? どうされたのですか?」
うん、完全に失敗してそうだ。
めっちゃ焦ってる。そんな姿も可愛いよエフィ。
でも驚かせるのは本意じゃないんだ。
ちょっと……どうしようこれ……。
「その……なんだ? ちょっと気分転換でもどうかなと思ってな。毎日研究に励んでるのは知ってるけど、たまには……」
そんなの不要ですわお兄様。私には魔法があればいいので邪魔しないでくださいまし……とか言われたらどうしよう。
そんな恐怖を一生懸命心のどこかに押し込んでから俺は拙いながらも説明した。
するとエフィは少し穏やかな表情になって
「ありがとうございます、お兄様。突然でビックリしましたけど、嬉しいです。気にかけて頂いて。お兄様と一緒ならどこでも良いですわ」
なんて言ってきた。
可愛すぎるかよ。
抱きしめそうになる俺の心と頭と腕を理性で抑え込みつつ、どうしようか悩む。
これ何も解決してない。
そもそも行き先を丸投げしようとしたことが失敗だったな。ここは男らしくリードしなければ。
「じゃあ、行き先は任せてくれ。評判のレストランと、公園には行ってみたいんだけども」
「わかりました。ありがとうございます。楽しみです♪」
誘ってよかった。
めちゃくちゃ良い笑顔で見てるこっちも幸せな気分になる。
クソ王子が今頃どうしてるかなんか知らないけど、婚約破棄してくれてありがとう。
突然の訪問だったにもかかわらず、いつも通りきっちりとした格好……ちょっとエロいけど……をしたヴェルト教授に笑顔で迎え入れられ、今の研究の状況について教えてもらった。
どうやらエフィには渡した魔法陣が俺のものだとはちゃんと黙ってくれているらしい。
良い仕事だヴェルト教授。
もし話していたら俺が未来を知っているかもと疑心暗鬼になっていたかもしれない。
いつかは話すが、それはもう少し落ち着いてからにしたい。
そして無事に魔石を供給できたから、これでしばらく研究室のことは心配ないだろう。
エフィもだいぶ婚約破棄のことを忘れて来たみたいだし、このまま卒業まで魔法研究に集中すると良いな。
ただまだ婚約破棄から数日しか経っていない。
気になるのは悪霊のことだ。
"人物史"が示したあの悪霊はどうなったんだろう。
街の噂でも、そんなものが出たとは聞こえてこない。
一応気にして情報部に調べさせてはいるが、全く痕跡もない。
そうなると悪霊の出現にエフィが関わっていたのか?ということになるが、どうなんだろう。
自らを襲い殺しに来るようなのとあの天使のように可愛らしいエフィが関わっているなんてことがあるだろうか?
もしそうならどこで……いや、もしかするとありうるのか。
ただ、その場合エフィ自身の問題じゃないな。
きっと"魔女"だ。
"魔女"に恨みでもあるやつがエフィにその匂いを感じて出て来たとかだったらありうるかもしれない。
あの婆さん、豪快だったからな……。
恨みを買うことだってあっただろう。
そもそもヴェルト教授を弟子にした時だって、王城内でごたごたがあって、その関係者を弟子にするのかって大問題になりかけたと聞いたことがある。
どんな問題だったのかは知らないが、確か甥っ子くんのことも関係していたはずだ。
一応調べさせておくとして……そうだな。次の休みの日にエフィを誘って家出したエフィが行きそうなところに行ってみるか。
そうすればつられて出てくるかもしれないしな。
せっかく悪霊を倒すために身に着けた力はきっちり使っておきたい。後顧の憂いも払っておきたいしな。
決まりだ。
となると行き先だけど……エフィってそもそもあんまり外出したことないよな?
王城と学院とエルダーウィズ公爵邸以外に行ったことがある場所ってどこだろう。
そして家出した場合に行きそうな場所って?
全く思い当たらない。
ちょっとショックだ。
可愛い可愛いと言いながら俺はもしかしたらエフィを拘束していたのかもしれない。
本当は行きたい場所だってあるのかもしれないけど、聞いて来なかった。
ちょっと自己嫌悪だ。
ちゃんと話してみよう。
王都で悪霊が出てくるぐらいだから、墓地公園かその近くなのかなとか、昔大量の犯罪者を沈めたという噂のある王立公園のデートスポットになってる池とかか?
なんでそんな池がデートスポットなんだとは思うけど、昔の事件だからな。今では周囲も整備されていて景色もいいし、夜は照明も当たって綺麗なんだ。
ありそうだな。
じゃあ、この2つを組み込んでと……完全にデートじゃないか??
うん、デートだな。気合入れて行こう。
「エフィ、デートしよう」
「えぇ???」
年頃の妹を誘う方法10選、お兄ちゃん嫌いなんてもう言わせない、兄妹仲を深めるために気を付けること……そんな本を速読で20冊くらい読み込んだ俺は、書いてあった通り気楽に誘ってみた。
こういうのは勢いと、緊張させない雰囲気が大事らしい。そして断っても問題ないような誘い方。
うん、完璧だろ?
「えっ、おっ、お兄様? どうされたのですか?」
うん、完全に失敗してそうだ。
めっちゃ焦ってる。そんな姿も可愛いよエフィ。
でも驚かせるのは本意じゃないんだ。
ちょっと……どうしようこれ……。
「その……なんだ? ちょっと気分転換でもどうかなと思ってな。毎日研究に励んでるのは知ってるけど、たまには……」
そんなの不要ですわお兄様。私には魔法があればいいので邪魔しないでくださいまし……とか言われたらどうしよう。
そんな恐怖を一生懸命心のどこかに押し込んでから俺は拙いながらも説明した。
するとエフィは少し穏やかな表情になって
「ありがとうございます、お兄様。突然でビックリしましたけど、嬉しいです。気にかけて頂いて。お兄様と一緒ならどこでも良いですわ」
なんて言ってきた。
可愛すぎるかよ。
抱きしめそうになる俺の心と頭と腕を理性で抑え込みつつ、どうしようか悩む。
これ何も解決してない。
そもそも行き先を丸投げしようとしたことが失敗だったな。ここは男らしくリードしなければ。
「じゃあ、行き先は任せてくれ。評判のレストランと、公園には行ってみたいんだけども」
「わかりました。ありがとうございます。楽しみです♪」
誘ってよかった。
めちゃくちゃ良い笑顔で見てるこっちも幸せな気分になる。
クソ王子が今頃どうしてるかなんか知らないけど、婚約破棄してくれてありがとう。
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