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第6話 一方その頃ギード王子たちは②
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□学院にて(ギード王子)
「あぁ、ギード王子♡」
「うむ……むぅ……」
朝、登校する馬車の中で美しいオルフェを可愛がってから気分良く登校した。
ようやく婚約破棄をしたのだ。最高だ。
あの地味でつまらない女が自分の婚約者だと思うだけで暗い気分になった。
なぜ友人のラームの婚約者であるシェリアや、ザックスの婚約者であるミレーヌのように愛らしく、我が儘な体でかつ男に尽くす女ではないのだと。
なぜ王子であるにもかかわらず、全く惹かれぬ女を妃とせねばならぬのかと。
しかしあの女の地位は高い。
なにせ公爵令嬢だ。
しかも王国にとってなくてはならぬ魔石を算出する鉱山を保有する国内最大の公爵家。
だからこそ女に磨きをかける必要を感じなかったんだと思うが、さすがにあれは酷い。
もちろん初めて見たときは可愛い顔をしてるから、いつかひぃひぃ言わせてやると思った。
性格さえ良ければ隣に飾っておくには悪くはないとは思った。化粧を塗りたくる必要はあるがな。
しかし性格は最悪だった。
なにせ俺に傅かない。俺の言うことを素直に聞かないし、挙句の果てに言い返してくるとはなんてやつだ。
俺の魔法の効率が悪いだと?
よく言ったな、満足に魔法を使えないくせに。
効率なんか、魔力が低い奴が考えることなんだよ。
王族である俺クラスになればそんなことを考える必要はない。高威力の魔法で圧倒すればいいだけだ。
なのに魔法戦で初級魔法しか使えないくせに俺を打ち負かす始末。
貴様には男を立てるという真摯な気持ちがないのか?
黙って負ければいいんだよ。お前が勝つ努力なんて誰が期待してるんだよ。
気に入らない。
「おはようございます、ギード王子」
学院に着くと待っていたのかロイドがよってきた。
こいつはあの元婚約者エフィの弟だ。
しかし俺の生徒会のメンバーでもある。
文句も言わずに面倒な仕事をこなすから使い勝手がいい。
このままいけば俺の力でこいつをエルダーウィズ公爵家の当主にしてやるつもりだ。
そうすればエフィとの婚約破棄など何の問題にもならない。こいつらには兄がいるらしいが、王宮のパーティーで迷って地下で震えているような軟弱者だ。
国王となった俺が一言いえば譲るだろう。
その後は子爵にでもしてやると言って僻地に飛ばせば問題ない。
どうせエフィなんかを娶る奴は出てこないから飼ってやってもいいな。
ロイドによるとこいつらの兄はエフィを可愛がってるらしいから、一発やってるのを見せつけてから飛ばしてやろう。
なんて優しいんだ俺は。
「婚約破棄で何か問題が起きたか?」
「いえ、もちろん何もありません。エフィのことは兄が慰めたようですが、特段文句なども言っておりません。そもそも言わせませんが」
「うむ」
予想通りの軟弱さだな。
普通、娘が婚約破棄されれば仮に自分に非があろうとも賠償金を求めたり、何らかの対価くらいは要求してみるのが貴族だ。
それを何も言わないなどと……やはりオルフェに嫌がらせをしたのはエフィだったんだな。
だから何も言わないのだ。
報告に満足した俺はオルフェを連れて教室に入った。
「おはようございます、ギード王子」
「おはようございます」
「おはよう」
俺に気付くと口々に挨拶してくる級友たち。
俺はオルフェを抱き寄せたまま挨拶を返す。
優しいオルフェには気を抜くとすぐに虫がつくからな。
こうやって牽制しておく必要がある。
これは俺の女だ。
子爵令嬢だからと言ってお前らごときが手を出せるような相手ではないんだ。
「それにしても昨日は良い夜でしたね」
「堂々と悪女エフィに婚約破棄を突き付けるギード王子。ステキでした」
「悪女の不躾な視線にも負けず、ギード王子を信じて隣に立つオルフェ様の美しさと言ったら……」
「これでもうオルフェ様に対する嫌がらせはなくなりますね」
「おい、これでなくなったらそれこそエフィがやらせてたってことだぜ?」
「そんなことにも気づかない低能だから婚約破棄されるんだよ」
「あんな女どうでもいいよな。それにしてもギード王子とオルフェさんって美男美女で絵になりますね」
口々に俺たちを讃える級友たち。
さすがに俺の杞憂だったか?
エフィと婚約破棄をしてオルフェと結婚すると宣言したからか。
俺の覚悟は前から決まっていた。
だが行動によって皆思い知ったんだろう。
なんて良い朝だ。
「オルフェ。また嫌がらせされるようなことがあったら言え」
「ありがとうございます、王子」
それでも念には念を入れておくべきだろう。
なにせ自分は授業に出ても来ないのに嫌がらせを指示するような女だ。
どんな手を使ってくるかわからないからな。
そう言えばメリア・アザレンカにも一言言っておくべきことがあったが、姿が見当たらなかった。
「メリアはどうしたんだ?」
「それが、今日はお休みのようでした。体調でも崩されたのでしょうか?」
そうか。それなら仕方ないか。
貸しを作ったつもりだろうが、あまり調子に乗るなよと注意するつもりだったんだがな。
魔法でもちらつかせながらこの人数で取り囲めばさすがに言うことを聞くだろうと思ったが。
「あぁ、ギード王子♡」
「うむ……むぅ……」
朝、登校する馬車の中で美しいオルフェを可愛がってから気分良く登校した。
ようやく婚約破棄をしたのだ。最高だ。
あの地味でつまらない女が自分の婚約者だと思うだけで暗い気分になった。
なぜ友人のラームの婚約者であるシェリアや、ザックスの婚約者であるミレーヌのように愛らしく、我が儘な体でかつ男に尽くす女ではないのだと。
なぜ王子であるにもかかわらず、全く惹かれぬ女を妃とせねばならぬのかと。
しかしあの女の地位は高い。
なにせ公爵令嬢だ。
しかも王国にとってなくてはならぬ魔石を算出する鉱山を保有する国内最大の公爵家。
だからこそ女に磨きをかける必要を感じなかったんだと思うが、さすがにあれは酷い。
もちろん初めて見たときは可愛い顔をしてるから、いつかひぃひぃ言わせてやると思った。
性格さえ良ければ隣に飾っておくには悪くはないとは思った。化粧を塗りたくる必要はあるがな。
しかし性格は最悪だった。
なにせ俺に傅かない。俺の言うことを素直に聞かないし、挙句の果てに言い返してくるとはなんてやつだ。
俺の魔法の効率が悪いだと?
よく言ったな、満足に魔法を使えないくせに。
効率なんか、魔力が低い奴が考えることなんだよ。
王族である俺クラスになればそんなことを考える必要はない。高威力の魔法で圧倒すればいいだけだ。
なのに魔法戦で初級魔法しか使えないくせに俺を打ち負かす始末。
貴様には男を立てるという真摯な気持ちがないのか?
黙って負ければいいんだよ。お前が勝つ努力なんて誰が期待してるんだよ。
気に入らない。
「おはようございます、ギード王子」
学院に着くと待っていたのかロイドがよってきた。
こいつはあの元婚約者エフィの弟だ。
しかし俺の生徒会のメンバーでもある。
文句も言わずに面倒な仕事をこなすから使い勝手がいい。
このままいけば俺の力でこいつをエルダーウィズ公爵家の当主にしてやるつもりだ。
そうすればエフィとの婚約破棄など何の問題にもならない。こいつらには兄がいるらしいが、王宮のパーティーで迷って地下で震えているような軟弱者だ。
国王となった俺が一言いえば譲るだろう。
その後は子爵にでもしてやると言って僻地に飛ばせば問題ない。
どうせエフィなんかを娶る奴は出てこないから飼ってやってもいいな。
ロイドによるとこいつらの兄はエフィを可愛がってるらしいから、一発やってるのを見せつけてから飛ばしてやろう。
なんて優しいんだ俺は。
「婚約破棄で何か問題が起きたか?」
「いえ、もちろん何もありません。エフィのことは兄が慰めたようですが、特段文句なども言っておりません。そもそも言わせませんが」
「うむ」
予想通りの軟弱さだな。
普通、娘が婚約破棄されれば仮に自分に非があろうとも賠償金を求めたり、何らかの対価くらいは要求してみるのが貴族だ。
それを何も言わないなどと……やはりオルフェに嫌がらせをしたのはエフィだったんだな。
だから何も言わないのだ。
報告に満足した俺はオルフェを連れて教室に入った。
「おはようございます、ギード王子」
「おはようございます」
「おはよう」
俺に気付くと口々に挨拶してくる級友たち。
俺はオルフェを抱き寄せたまま挨拶を返す。
優しいオルフェには気を抜くとすぐに虫がつくからな。
こうやって牽制しておく必要がある。
これは俺の女だ。
子爵令嬢だからと言ってお前らごときが手を出せるような相手ではないんだ。
「それにしても昨日は良い夜でしたね」
「堂々と悪女エフィに婚約破棄を突き付けるギード王子。ステキでした」
「悪女の不躾な視線にも負けず、ギード王子を信じて隣に立つオルフェ様の美しさと言ったら……」
「これでもうオルフェ様に対する嫌がらせはなくなりますね」
「おい、これでなくなったらそれこそエフィがやらせてたってことだぜ?」
「そんなことにも気づかない低能だから婚約破棄されるんだよ」
「あんな女どうでもいいよな。それにしてもギード王子とオルフェさんって美男美女で絵になりますね」
口々に俺たちを讃える級友たち。
さすがに俺の杞憂だったか?
エフィと婚約破棄をしてオルフェと結婚すると宣言したからか。
俺の覚悟は前から決まっていた。
だが行動によって皆思い知ったんだろう。
なんて良い朝だ。
「オルフェ。また嫌がらせされるようなことがあったら言え」
「ありがとうございます、王子」
それでも念には念を入れておくべきだろう。
なにせ自分は授業に出ても来ないのに嫌がらせを指示するような女だ。
どんな手を使ってくるかわからないからな。
そう言えばメリア・アザレンカにも一言言っておくべきことがあったが、姿が見当たらなかった。
「メリアはどうしたんだ?」
「それが、今日はお休みのようでした。体調でも崩されたのでしょうか?」
そうか。それなら仕方ないか。
貸しを作ったつもりだろうが、あまり調子に乗るなよと注意するつもりだったんだがな。
魔法でもちらつかせながらこの人数で取り囲めばさすがに言うことを聞くだろうと思ったが。
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