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第4話 万全の体制でエフィを送り出す……というか一緒に登校する件
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そろそろ朝が来る……のんびりとエフィの寝顔を見守った俺は、彼女が寝返りをうったタイミングで部屋を後にした。
さすがに年頃の女の子だし、一晩中、兄とは言え異性に見られていたと知ったら驚くだろう。
気付かれる前に退散する。
なんて優しいんだ俺は……。
それに朝食前なのにお腹いっぱいになるくらいエフィの可愛らしい寝顔を堪能したから満足だ。
っと、いけないいけない。
まだ気を抜いちゃダメだ。
これからエフィにちゃんと朝食を食べさせてから学院のヴェルト教授の研究室に登校させなくてはならない。
思い詰めて行かないって言いだしたり、途中で逃亡させるわけにはいかない。
ここで失敗するわけにはいかないんだ。
「あっ……おはようございます、クラム兄さま」
一睡もしなかった俺が魔法で脳を休めながら朝食を待っていると、目覚めて着替えを済ませたエフィがやってきた。
さっきぶりだけど今日も可愛いな。
少しだけ髪の毛に癖がついているのがまた可愛らしい。
「あぁおはよう。よく眠れたかい?」
よく寝ていたことは知っているけど体調が悪いとか、頭が痛いとか、気分が重いとか、なにがあるかわからないから注意深くエフィの様子を観察しながら聞いた。
「はい。すみません、昨日ここで眠ってしまって」
ん?
あぁそうだったな。ここで抱きしめてあげているうちに眠ったんだったな。
お姫様抱っこをした至福の時間が遠い昔のようだ。
「あぁ、問題ない。そもそも軽すぎるぞエフィ。もっとちゃんとご飯を食べなさい」
「……」
ん?黙ってしまった。もしかして体重の話だと思ったのだろうか? 心配してるだけだぞ?
俺たちは2人で食事を採った。
予想通りエフィは半分も食べずに残そうとしていたから注意して食べさせた。
「肉を嫌がるなエフィ。そもそもミルクだけで終わらせようとするな。お前の身体をちゃんと成長させるために食べないとダメだぞ? 魔法を使うのにも必要なことだ」
「むぅ……はい」
押さえつけてあーんするぞ?って言ったらしぶしぶ完食した。
「呑気なものだなまったく……王太子様に婚約破棄されたというのに」
俺が幸せな時間を過ごしていたらバカがやってきた。
邪魔をするな。せっかく良い気分だったのに……。
「ん?いたのか?」
「……そんな余裕でいられるのは今のうちだけだぞクラム!お父さ……」
やかましいからとりあえず魔法で口を封じた。
「!?!?」
そのまま体を操って部屋を出て行かせる。
「おぉ……ふごぉ……もごぉ……くっ、くら……ごぼぉ……」
侍従たちがロイドの食事も用意していたみたいだから、全部魔法で浮かせてロイドの口に放り込み、無理やり飲み込ませた。
いっさい咀嚼していないからしばらくお腹とかお尻が痛いかもしれないけどどうでもいいよな?
その日、俺はエフィの登校に付き添った。
ないとは思うが行き場を失った悪霊がエフィに襲い掛かってきたらまずい。
"人物史"は消費魔力が多いから、悪霊を警戒している今、安易には使えない。
ヴェルト教授の研究室までエフィをきっちり送り届けた。ばっちりだ。
それから俺は、教授の世話をしている甥っ子に教授に話があると伝える。
研究室には生徒達……と言っても今はエフィだけだが……が研究を行うスペースと、教授の自室と会議室と給湯室がある。
会議室に通された俺は教授に状況を伝える。
「……という感じで婚約は腐れて少し落ち込んでいるから、気にかけてもらえると嬉しい」
「そんなことよりあの特殊魔法……」
が、全く気にされていなかった。
この魔法バカめ!!!
「いいじゃないか、減るもんじゃないだろ? あの素晴らしい魔法をさらに改良したなんて、魔法陣を見せてくれ! さぁ!」
煩いし距離が近い。
教授とは思えない若さで、教授とは思えない卑猥な体つきで、教授とは思えないラフな格好で近寄るな。
胸を当てるな!
エフィへの当てつけか!?
いいんだ。程よいサイズになればな。それに大事なのは感度だ。
「まったく、ほれぼれする美しい魔法陣だな」
俺にはよくわからないが、研究者から見ると俺が生み出す魔法陣はとても綺麗らしい。
普通の攻撃魔法でも、支援や回復魔法でも、家庭魔法でも、特殊魔法でもだ。
どんな魔法を使っても綺麗だとうっとり言われる。
そのせいで『子種だけでもぉおおぉぉおおおお!!!』とか言いながら迫られたのは可能なら忘却したい黒い記憶だ。
俺がヴェルト教授に出会ったのは本当に偶然だった。
なにせ彼女は学院に籍を置いているのに授業をしない。
普通研究室には最終学年の生徒が数名は所属しているのにそれもない。
ただ一人、黙々と研究し続ける変態教授だった。
俺も普通に学院に通っていたら気付かずに卒業していただろう。
しかしエフィの未来を知り、努力をすることを決めた俺は教授に接近した。
なにせ"人物史"なんて特殊魔法は聞いたことがない。
通っていた頃に聞いた魔法狂いという噂からするときっと興味を持つだろうと思ったらまさにその通りだった。
勢い余って求婚してくるのは勘弁してほしいが、エフィのためには必要な人物だった。
さすがに年頃の女の子だし、一晩中、兄とは言え異性に見られていたと知ったら驚くだろう。
気付かれる前に退散する。
なんて優しいんだ俺は……。
それに朝食前なのにお腹いっぱいになるくらいエフィの可愛らしい寝顔を堪能したから満足だ。
っと、いけないいけない。
まだ気を抜いちゃダメだ。
これからエフィにちゃんと朝食を食べさせてから学院のヴェルト教授の研究室に登校させなくてはならない。
思い詰めて行かないって言いだしたり、途中で逃亡させるわけにはいかない。
ここで失敗するわけにはいかないんだ。
「あっ……おはようございます、クラム兄さま」
一睡もしなかった俺が魔法で脳を休めながら朝食を待っていると、目覚めて着替えを済ませたエフィがやってきた。
さっきぶりだけど今日も可愛いな。
少しだけ髪の毛に癖がついているのがまた可愛らしい。
「あぁおはよう。よく眠れたかい?」
よく寝ていたことは知っているけど体調が悪いとか、頭が痛いとか、気分が重いとか、なにがあるかわからないから注意深くエフィの様子を観察しながら聞いた。
「はい。すみません、昨日ここで眠ってしまって」
ん?
あぁそうだったな。ここで抱きしめてあげているうちに眠ったんだったな。
お姫様抱っこをした至福の時間が遠い昔のようだ。
「あぁ、問題ない。そもそも軽すぎるぞエフィ。もっとちゃんとご飯を食べなさい」
「……」
ん?黙ってしまった。もしかして体重の話だと思ったのだろうか? 心配してるだけだぞ?
俺たちは2人で食事を採った。
予想通りエフィは半分も食べずに残そうとしていたから注意して食べさせた。
「肉を嫌がるなエフィ。そもそもミルクだけで終わらせようとするな。お前の身体をちゃんと成長させるために食べないとダメだぞ? 魔法を使うのにも必要なことだ」
「むぅ……はい」
押さえつけてあーんするぞ?って言ったらしぶしぶ完食した。
「呑気なものだなまったく……王太子様に婚約破棄されたというのに」
俺が幸せな時間を過ごしていたらバカがやってきた。
邪魔をするな。せっかく良い気分だったのに……。
「ん?いたのか?」
「……そんな余裕でいられるのは今のうちだけだぞクラム!お父さ……」
やかましいからとりあえず魔法で口を封じた。
「!?!?」
そのまま体を操って部屋を出て行かせる。
「おぉ……ふごぉ……もごぉ……くっ、くら……ごぼぉ……」
侍従たちがロイドの食事も用意していたみたいだから、全部魔法で浮かせてロイドの口に放り込み、無理やり飲み込ませた。
いっさい咀嚼していないからしばらくお腹とかお尻が痛いかもしれないけどどうでもいいよな?
その日、俺はエフィの登校に付き添った。
ないとは思うが行き場を失った悪霊がエフィに襲い掛かってきたらまずい。
"人物史"は消費魔力が多いから、悪霊を警戒している今、安易には使えない。
ヴェルト教授の研究室までエフィをきっちり送り届けた。ばっちりだ。
それから俺は、教授の世話をしている甥っ子に教授に話があると伝える。
研究室には生徒達……と言っても今はエフィだけだが……が研究を行うスペースと、教授の自室と会議室と給湯室がある。
会議室に通された俺は教授に状況を伝える。
「……という感じで婚約は腐れて少し落ち込んでいるから、気にかけてもらえると嬉しい」
「そんなことよりあの特殊魔法……」
が、全く気にされていなかった。
この魔法バカめ!!!
「いいじゃないか、減るもんじゃないだろ? あの素晴らしい魔法をさらに改良したなんて、魔法陣を見せてくれ! さぁ!」
煩いし距離が近い。
教授とは思えない若さで、教授とは思えない卑猥な体つきで、教授とは思えないラフな格好で近寄るな。
胸を当てるな!
エフィへの当てつけか!?
いいんだ。程よいサイズになればな。それに大事なのは感度だ。
「まったく、ほれぼれする美しい魔法陣だな」
俺にはよくわからないが、研究者から見ると俺が生み出す魔法陣はとても綺麗らしい。
普通の攻撃魔法でも、支援や回復魔法でも、家庭魔法でも、特殊魔法でもだ。
どんな魔法を使っても綺麗だとうっとり言われる。
そのせいで『子種だけでもぉおおぉぉおおおお!!!』とか言いながら迫られたのは可能なら忘却したい黒い記憶だ。
俺がヴェルト教授に出会ったのは本当に偶然だった。
なにせ彼女は学院に籍を置いているのに授業をしない。
普通研究室には最終学年の生徒が数名は所属しているのにそれもない。
ただ一人、黙々と研究し続ける変態教授だった。
俺も普通に学院に通っていたら気付かずに卒業していただろう。
しかしエフィの未来を知り、努力をすることを決めた俺は教授に接近した。
なにせ"人物史"なんて特殊魔法は聞いたことがない。
通っていた頃に聞いた魔法狂いという噂からするときっと興味を持つだろうと思ったらまさにその通りだった。
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