義妹が婚約破棄された。その方が幸せになることを知っているので流したが、それ以上はさせないぜ!?

蒼井星空

文字の大きさ
上 下
4 / 46

第4話 万全の体制でエフィを送り出す……というか一緒に登校する件

しおりを挟む
そろそろ朝が来る……のんびりとエフィの寝顔を見守った俺は、彼女が寝返りをうったタイミングで部屋を後にした。
さすがに年頃の女の子だし、一晩中、兄とは言え異性に見られていたと知ったら驚くだろう。
気付かれる前に退散する。
 
なんて優しいんだ俺は……。

それに朝食前なのにお腹いっぱいになるくらいエフィの可愛らしい寝顔を堪能したから満足だ。


っと、いけないいけない。
まだ気を抜いちゃダメだ。

これからエフィにちゃんと朝食を食べさせてから学院のヴェルト教授の研究室に登校させなくてはならない。
思い詰めて行かないって言いだしたり、途中で逃亡させるわけにはいかない。
ここで失敗するわけにはいかないんだ。

「あっ……おはようございます、クラム兄さま」
一睡もしなかった俺が魔法で脳を休めながら朝食を待っていると、目覚めて着替えを済ませたエフィがやってきた。
さっきぶりだけど今日も可愛いな。
少しだけ髪の毛に癖がついているのがまた可愛らしい。
 
「あぁおはよう。よく眠れたかい?」
よく寝ていたことは知っているけど体調が悪いとか、頭が痛いとか、気分が重いとか、なにがあるかわからないから注意深くエフィの様子を観察しながら聞いた。

「はい。すみません、昨日ここで眠ってしまって」
ん?
あぁそうだったな。ここで抱きしめてあげているうちに眠ったんだったな。
お姫様抱っこをした至福の時間が遠い昔のようだ。
 
「あぁ、問題ない。そもそも軽すぎるぞエフィ。もっとちゃんとご飯を食べなさい」
「……」
ん?黙ってしまった。もしかして体重の話だと思ったのだろうか? 心配してるだけだぞ?

俺たちは2人で食事を採った。
予想通りエフィは半分も食べずに残そうとしていたから注意して食べさせた。

「肉を嫌がるなエフィ。そもそもミルクだけで終わらせようとするな。お前の身体をちゃんと成長させるために食べないとダメだぞ? 魔法を使うのにも必要なことだ」
「むぅ……はい」
押さえつけてあーんするぞ?って言ったらしぶしぶ完食した。


 
「呑気なものだなまったく……王太子様に婚約破棄されたというのに」
俺が幸せな時間を過ごしていたらバカがやってきた。
邪魔をするな。せっかく良い気分だったのに……。

「ん?いたのか?」
「……そんな余裕でいられるのは今のうちだけだぞクラム!お父さ……」
やかましいからとりあえず魔法で口を封じた。

「!?!?」
そのまま体を操って部屋を出て行かせる。

 
「おぉ……ふごぉ……もごぉ……くっ、くら……ごぼぉ……」
侍従たちがロイドの食事も用意していたみたいだから、全部魔法で浮かせてロイドの口に放り込み、無理やり飲み込ませた。
いっさい咀嚼していないからしばらくお腹とかお尻が痛いかもしれないけどどうでもいいよな?

その日、俺はエフィの登校に付き添った。
ないとは思うが行き場を失った悪霊がエフィに襲い掛かってきたらまずい。

"人物史"は消費魔力が多いから、悪霊を警戒している今、安易には使えない。
ヴェルト教授の研究室までエフィをきっちり送り届けた。ばっちりだ。

それから俺は、教授の世話をしている甥っ子に教授に話があると伝える。
研究室には生徒達……と言っても今はエフィだけだが……が研究を行うスペースと、教授の自室と会議室と給湯室がある。

会議室に通された俺は教授に状況を伝える。
「……という感じで婚約は腐れて少し落ち込んでいるから、気にかけてもらえると嬉しい」
「そんなことよりあの特殊魔法……」

が、全く気にされていなかった。
この魔法バカめ!!!

「いいじゃないか、減るもんじゃないだろ? あの素晴らしい魔法をさらに改良したなんて、魔法陣を見せてくれ! さぁ!」
煩いし距離が近い。
教授とは思えない若さで、教授とは思えない卑猥な体つきで、教授とは思えないラフな格好で近寄るな。
胸を当てるな!

エフィへの当てつけか!?
いいんだ。程よいサイズになればな。それに大事なのは感度だ。

「まったく、ほれぼれする美しい魔法陣だな」
俺にはよくわからないが、研究者から見ると俺が生み出す魔法陣はとても綺麗らしい。

普通の攻撃魔法でも、支援や回復魔法でも、家庭魔法でも、特殊魔法でもだ。
どんな魔法を使っても綺麗だとうっとり言われる。

そのせいで『子種だけでもぉおおぉぉおおおお!!!』とか言いながら迫られたのは可能なら忘却したい黒い記憶だ。


俺がヴェルト教授に出会ったのは本当に偶然だった。
なにせ彼女は学院に籍を置いているのに授業をしない。

普通研究室には最終学年の生徒が数名は所属しているのにそれもない。
ただ一人、黙々と研究し続ける変態教授だった。

俺も普通に学院に通っていたら気付かずに卒業していただろう。
しかしエフィの未来を知り、努力をすることを決めた俺は教授に接近した。

なにせ"人物史"なんて特殊魔法は聞いたことがない。
通っていた頃に聞いた魔法狂いという噂からするときっと興味を持つだろうと思ったらまさにその通りだった。

勢い余って求婚してくるのは勘弁してほしいが、エフィのためには必要な人物だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...