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第一章
第28話 裸の付き合い
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そしてゆっくり温泉街に戻った俺達。
遠目でも俺がフロストウッドガーディアンを倒すのはよく見えていたようで、街の門をくぐるときに大歓迎を受けたし、あのギルド長のお婆さんにもめちゃくちゃ感謝された。
これから実地検証や、なぜフロストウッドガーディアンが外部に出てきたのかの調査が行われるらしい。というか既に開始されている。
ギルドで話を聞かれている間にもう調査を始めてるのか、と驚いたらお前のおかげだと言われた。
街に実害がなかったし、人的損傷もなかったからだって。
褒められて悪い気はしない。
ビュラスの街のギルドとも協力して調査しているらしい。
どうも、ビュラスの森林ダンジョンの入り口のあたりで雪に埋まって死にかけていた冒険者が2人いたらしいから、そいつらが犯人の可能性大なんだとさ。
ダンジョン内でフロストウッドガーディアンを怒らせて逃走し、ダンジョンを出たところで油断したんじゃないかってことだ。
調べもせずに入って刺激して解き放ったってことなんだろうか?アホすぎるし、迷惑だ。
生きているらしいが強制労働や奴隷落ち確定らしい。ご愁傷様。
というか仕事早いな。
とりあえず今日は温泉宿に泊まって、明日またギルドに来てほしいと言われた。
案内されたのはこの街で一番良い宿らしい。ラッキー!
旅に出て初めて良い思いをさせてもらえるんじゃないかな?
温泉と料理に期待感で一杯だ。
そしてお腹も減ったけどせっかく温泉街に来たんだからと、まずは温泉に入る俺たち……。
入口でミルティアと別れて服を脱ぎ……なんか書いてあるけどまぁいっか……入った先には……
「おい……」
「ん?どうしたのアナト?気持ちいいよね~」
見覚えのあるオレンジ色の頭がお湯の上に浮いていた。
「あぁ、気持ちいいよね~……じゃないんだよ。なんでいるんだよ!」
「え?」
「え?」
どういうこと?なんでミルティアがいるんだよ!?
気持ちよさそうにしてるし……。
もしかして見えるのかと思って目をこれまでの人生で最も真面目にこらしてみたけど……水着かよ。
しかも、なんの凹凸もないぺったんこだし……。
「え~ともしかして……ここは混浴だよ?アナト?」
ミルティアは首をコクンと傾けて俺に告げてくる。
「なっなっなっ……」
「あはははは。ほら、ちゃんと水着を着てるしアナトも入りなよ」
ミルティアは俺の腕を引っ張ってくる。
あ~うん。その、なんだ。
おいっ、タオルを引っ張るな。それはまずい、あっ……。
「……ってアホアナト~~~なんで裸なのさ!」
「きゃ~~~」
とっさに手で目を隠すミルティア。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……
俺は走って温泉を出た。
そして水着を着て戻った。
いや、恥ずかしいけど入らないのはもったいないだろ?
「まったくもう。注意事項くらいちゃんと読もうよ。水着用意されてたでしょう?」
呆れた顔で放たれた言葉に俺はなんも言えねぇ……。
ここは室内の温泉で、周囲は神殿と同じつくりだから、なんか荘厳な雰囲気だ。
そんな中で裸を女神に見られるとは……
「くそっ、酷い目にあった」
「それはボクのセリフだよ。見たくもないもの見せられてさ」
お前が言うな、みたいな目をするな。
「本当に見たくないのか?」
「アホ~~~~~!」
いてぇ~。くそ、ポカポカ殴りやがって。
殴られながらもなんとか目を見開いてミルティアを見たが、やっぱりなんの凹凸もないぺったんこだ……。
いたっ。なんか今のパンチだけ強くなかったか?
「はははははは。面白いのう」
「「えっ?」」
誰だ?
「あぁ、すまんすまん。驚かせたかのぅ?」
あたり一面湯気で見えづらいから俺もミルティアも全く気付いていなかった。
「賑やかだのぅ」
そこにいたのはお爺さんだった。
「あっ、すみません、失礼を」
俺は騒いだことを謝ったが……
「ほらアナト。謝って」
「えっ?俺?」
俺の後ろに回って背中を押してくるミルティア。
「キミ以外誰がいるのさ」
「あの、その、バカなミルティアがすみません」
「お前はボクの母親かーーー!」
背中を叩かれた。
「話が進まんから少し黙ってもらえるかなミルティア?」
「ぎりぃ」
ノリは楽しいがほどほどにお願いしたいものだ。
「まさかこんなところで神格に出会おうとはのぅ。しかも不思議な気配を持っているとはいえ人とこんなに仲良くしておるとは。長生きするものじゃ」
「「!?!?」」
俺もミルティアも突然のお爺さんの言葉に身構える。
「あいすまぬ。警戒させるつもりはないのじゃ。ワシはこの通り……いや、今は水着じゃのぅ。神官の1人でシディロムというのじゃ」
立ち上がったお爺さんは水着であることに気付いてお湯に入りなおす。
「神官?」
「なるほど。巡礼中かな?それにしては高齢なようだけど」
ミルティアは何か知っているような顔をしている。
「巡礼と言えば巡礼かのぅ?」
「……その手のごつい感じは職人のように見えるけども?」
チラッと見えた掌の硬そうな様子に筋肉ムキムキな体とあいまって、槌とか持ってそうな雰囲気だ。
「!?」
「ほう。さすがは神に連れられた者じゃのぅ」
あってるっぽい。とりあえずミルティアにどや顔しといた。
「いかにも。ワシは神殿所属の魔道具師ですじゃ」
「「おぉ!!!!」」
思わずミルティアと一緒に身を乗り出してしまった。
「どうしたのじゃ?」
事情がわからず驚くのは当然だろうな。
「いやまさかこんなところで出会えるとは」
「温泉街に来てよかったでしょ?」
「どういうことじゃ?」
「実は……」
俺はこれまでのことを温泉に入ったままシディロムさんに話す。
「あっはっはっはっはっはっはっは」
「むぅ……」
「シディロムさん、正直だよね」
なんで神官は必ず笑うんだよ。神獣様を少しは見習えよ!
「すまぬすまぬ。まさか神とそんな関わり方をしている人間がいようとは。神殿の連中が聞いたら腰を抜かすのぅ。いや、愉快愉快」
「むぅ」
俺の方を見ながら笑い続けるお爺さん……。
まぁ神様の"おしり"に挟まれて不調に陥った人間なんて、世界……いや、歴史上で俺だけじゃないか?
「まさかと思ったがワシの見間違いではなかったか。あっはっはっはっはっはっはっは」
やっぱり神官には見えてるようだ。
大丈夫なのかな?戯神様。"おしり"見られ放題ですよ???
うぉ……なんか急に悪寒が……。
「しかし、"次元の鍵"とはまた難しい要望だのぅ」
「無理か?」
「いや、無理ではない。作り方は教えてもらえるんじゃろう?であれば、温泉からあがったら集めた素材のアイテムを見せてほしい」
シディロムさんは言葉とは裏腹に自信あり気だ。
これは期待できる反応じゃないか?
これまでも期待したものは何ひとつとして手に入らず、期待せずに出会ったものは手に入れてきた……。
自分で言ってて悲しくなるな。
「それが……」
そこでミルティアが言い淀みながら説明する。
「ん?3つだけじゃと?どれがあるのじゃ?」
「今のところ"神獣の爪"と"時の砂"と"境界の羅針盤"だけだな」
隠してもしょうがないから、訝し気な表情をしているシディロムさんに正直に話した。
「なんじゃ……」
やっぱり無理か?だそうだよな。5つのうち、3つだけなんだもんな……。
「入手が難しい3つを揃えておるのに何が問題なんじゃ?」
「「は?」」
遠目でも俺がフロストウッドガーディアンを倒すのはよく見えていたようで、街の門をくぐるときに大歓迎を受けたし、あのギルド長のお婆さんにもめちゃくちゃ感謝された。
これから実地検証や、なぜフロストウッドガーディアンが外部に出てきたのかの調査が行われるらしい。というか既に開始されている。
ギルドで話を聞かれている間にもう調査を始めてるのか、と驚いたらお前のおかげだと言われた。
街に実害がなかったし、人的損傷もなかったからだって。
褒められて悪い気はしない。
ビュラスの街のギルドとも協力して調査しているらしい。
どうも、ビュラスの森林ダンジョンの入り口のあたりで雪に埋まって死にかけていた冒険者が2人いたらしいから、そいつらが犯人の可能性大なんだとさ。
ダンジョン内でフロストウッドガーディアンを怒らせて逃走し、ダンジョンを出たところで油断したんじゃないかってことだ。
調べもせずに入って刺激して解き放ったってことなんだろうか?アホすぎるし、迷惑だ。
生きているらしいが強制労働や奴隷落ち確定らしい。ご愁傷様。
というか仕事早いな。
とりあえず今日は温泉宿に泊まって、明日またギルドに来てほしいと言われた。
案内されたのはこの街で一番良い宿らしい。ラッキー!
旅に出て初めて良い思いをさせてもらえるんじゃないかな?
温泉と料理に期待感で一杯だ。
そしてお腹も減ったけどせっかく温泉街に来たんだからと、まずは温泉に入る俺たち……。
入口でミルティアと別れて服を脱ぎ……なんか書いてあるけどまぁいっか……入った先には……
「おい……」
「ん?どうしたのアナト?気持ちいいよね~」
見覚えのあるオレンジ色の頭がお湯の上に浮いていた。
「あぁ、気持ちいいよね~……じゃないんだよ。なんでいるんだよ!」
「え?」
「え?」
どういうこと?なんでミルティアがいるんだよ!?
気持ちよさそうにしてるし……。
もしかして見えるのかと思って目をこれまでの人生で最も真面目にこらしてみたけど……水着かよ。
しかも、なんの凹凸もないぺったんこだし……。
「え~ともしかして……ここは混浴だよ?アナト?」
ミルティアは首をコクンと傾けて俺に告げてくる。
「なっなっなっ……」
「あはははは。ほら、ちゃんと水着を着てるしアナトも入りなよ」
ミルティアは俺の腕を引っ張ってくる。
あ~うん。その、なんだ。
おいっ、タオルを引っ張るな。それはまずい、あっ……。
「……ってアホアナト~~~なんで裸なのさ!」
「きゃ~~~」
とっさに手で目を隠すミルティア。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……
俺は走って温泉を出た。
そして水着を着て戻った。
いや、恥ずかしいけど入らないのはもったいないだろ?
「まったくもう。注意事項くらいちゃんと読もうよ。水着用意されてたでしょう?」
呆れた顔で放たれた言葉に俺はなんも言えねぇ……。
ここは室内の温泉で、周囲は神殿と同じつくりだから、なんか荘厳な雰囲気だ。
そんな中で裸を女神に見られるとは……
「くそっ、酷い目にあった」
「それはボクのセリフだよ。見たくもないもの見せられてさ」
お前が言うな、みたいな目をするな。
「本当に見たくないのか?」
「アホ~~~~~!」
いてぇ~。くそ、ポカポカ殴りやがって。
殴られながらもなんとか目を見開いてミルティアを見たが、やっぱりなんの凹凸もないぺったんこだ……。
いたっ。なんか今のパンチだけ強くなかったか?
「はははははは。面白いのう」
「「えっ?」」
誰だ?
「あぁ、すまんすまん。驚かせたかのぅ?」
あたり一面湯気で見えづらいから俺もミルティアも全く気付いていなかった。
「賑やかだのぅ」
そこにいたのはお爺さんだった。
「あっ、すみません、失礼を」
俺は騒いだことを謝ったが……
「ほらアナト。謝って」
「えっ?俺?」
俺の後ろに回って背中を押してくるミルティア。
「キミ以外誰がいるのさ」
「あの、その、バカなミルティアがすみません」
「お前はボクの母親かーーー!」
背中を叩かれた。
「話が進まんから少し黙ってもらえるかなミルティア?」
「ぎりぃ」
ノリは楽しいがほどほどにお願いしたいものだ。
「まさかこんなところで神格に出会おうとはのぅ。しかも不思議な気配を持っているとはいえ人とこんなに仲良くしておるとは。長生きするものじゃ」
「「!?!?」」
俺もミルティアも突然のお爺さんの言葉に身構える。
「あいすまぬ。警戒させるつもりはないのじゃ。ワシはこの通り……いや、今は水着じゃのぅ。神官の1人でシディロムというのじゃ」
立ち上がったお爺さんは水着であることに気付いてお湯に入りなおす。
「神官?」
「なるほど。巡礼中かな?それにしては高齢なようだけど」
ミルティアは何か知っているような顔をしている。
「巡礼と言えば巡礼かのぅ?」
「……その手のごつい感じは職人のように見えるけども?」
チラッと見えた掌の硬そうな様子に筋肉ムキムキな体とあいまって、槌とか持ってそうな雰囲気だ。
「!?」
「ほう。さすがは神に連れられた者じゃのぅ」
あってるっぽい。とりあえずミルティアにどや顔しといた。
「いかにも。ワシは神殿所属の魔道具師ですじゃ」
「「おぉ!!!!」」
思わずミルティアと一緒に身を乗り出してしまった。
「どうしたのじゃ?」
事情がわからず驚くのは当然だろうな。
「いやまさかこんなところで出会えるとは」
「温泉街に来てよかったでしょ?」
「どういうことじゃ?」
「実は……」
俺はこれまでのことを温泉に入ったままシディロムさんに話す。
「あっはっはっはっはっはっはっは」
「むぅ……」
「シディロムさん、正直だよね」
なんで神官は必ず笑うんだよ。神獣様を少しは見習えよ!
「すまぬすまぬ。まさか神とそんな関わり方をしている人間がいようとは。神殿の連中が聞いたら腰を抜かすのぅ。いや、愉快愉快」
「むぅ」
俺の方を見ながら笑い続けるお爺さん……。
まぁ神様の"おしり"に挟まれて不調に陥った人間なんて、世界……いや、歴史上で俺だけじゃないか?
「まさかと思ったがワシの見間違いではなかったか。あっはっはっはっはっはっはっは」
やっぱり神官には見えてるようだ。
大丈夫なのかな?戯神様。"おしり"見られ放題ですよ???
うぉ……なんか急に悪寒が……。
「しかし、"次元の鍵"とはまた難しい要望だのぅ」
「無理か?」
「いや、無理ではない。作り方は教えてもらえるんじゃろう?であれば、温泉からあがったら集めた素材のアイテムを見せてほしい」
シディロムさんは言葉とは裏腹に自信あり気だ。
これは期待できる反応じゃないか?
これまでも期待したものは何ひとつとして手に入らず、期待せずに出会ったものは手に入れてきた……。
自分で言ってて悲しくなるな。
「それが……」
そこでミルティアが言い淀みながら説明する。
「ん?3つだけじゃと?どれがあるのじゃ?」
「今のところ"神獣の爪"と"時の砂"と"境界の羅針盤"だけだな」
隠してもしょうがないから、訝し気な表情をしているシディロムさんに正直に話した。
「なんじゃ……」
やっぱり無理か?だそうだよな。5つのうち、3つだけなんだもんな……。
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