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いざ安住の地へ
<フィン> 作戦決行!
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「どういうことだ?来ないではないか!」
公開処刑場として用意した広場の前で起こるのはロドフェルド将軍だ。
彼は待っていた。
軍に準備をさせた上で。
「あやつ……まさか嘘を伝えてきたわけではあるまい……」
「何かあったのでしょうか?」
将軍の呟きに答えるのは参謀長だ。
彼らはクロード王国内の一部の勢力と内通していた。
当然ながらベオルバッハ公爵と第2妃イザベラの派閥とだ。
魔導騎士団が先陣を切って急襲してくることも聞いていたし、そもそも開戦についても内部情報を得た上で進めてきた。
そんな彼らの元、昨晩遅くにフィン・クロードが魔導騎士団の奪還に部隊を率いて向かうと報告が届いたのだ。
それに基づき、公開処刑の準備をしつつ、迎撃のための軍を後ろに展開していた。
しかしフィン王子は来ない。
何か手違いでもあったのだろうか。
「来なければ来ないで粛々と処刑を進めるのみです、将軍」
参謀長の言葉にそれはそうだと考え直すロドフェルド将軍。
「では、予定通り正午に処刑を行う。最初はあのハゲ……ブレイディ団長だ。連れてこい!」
「はっ」
控えていた部下は命令に従ってブレイディ団長を連れてくるべく、捕虜となった魔導騎士団を詰め込んでいる急ごしらえの建物に入る。
「くっくっく、来ても地獄、来なくても地獄。来ない方が防御を固めて王国軍本隊と合流できるから合理的ではあるが、そちらに残った魔導騎士団はどう思うかな?くっくっくっく」
「いかに掟といっても年若い、しかも太子ではない王子を将軍に据えるとは、バカげた考えですな、将軍」
あきらかに戦い慣れしているとは思えない掟の数々をロドフェルド将軍と参謀長は嗤う。
すべてが自分たちにとって都合がいいためだ。
そうして処刑場にブレイディ団長が連行され、彼は処刑台に上がらされ、拘束される。
「手負いの騎士、それをさらに拘束しなければ相対できぬとは、勇敢だなロドフェルド将軍」
「貴様ぁ」
「落ち着いてください将軍」
簡単な挑発ですぐに沸騰する将軍。
対してブレイディ団長は冷静だった。
冷静に状況を俯瞰して、なんとか部下を逃がす策はないかと考え続けていた。
「そろそろ時間だな」
「「「おーーー」」」
観客となっているラザクリフ軍の面々が声を上げる。
自らが打倒し、捉えた敵の団長を処刑するのだ。
その熱気はすでに相当高まっている。
「では、はじめよ」
そんな中でロドフェルド将軍は合図を出す。
それを見て処刑執行人が処刑台に向かう。
その足取りはゆっくりとしたものだ。
処刑されるものの恐怖を少しでも高めるための演出。
そうして処刑台に上った執行人。
手に持った大剣を構える。
そして、振り上げたその時。
「サンダー!!!」
「なっ」
処刑人が掲げた剣に落ちる雷。
フィンが持つ雷魔法が炸裂したのだった。
しかも雷なのでどこから放たれたのかわからない。
騒然としつつあたりを見渡す者で溢れる観客席。
そしてロドフェルド将軍。
その隙をついてフィンは処刑台に上り、処刑人を蹴り飛ばす。
素早くブレイディ団長の拘束を叩き斬り、団長に回復魔法をかける。
「無事ですね。よかった」
「かっ……まさか」
今閣下と言いそうになったね、この人。
よく呑み込んでくれた。
公開処刑場として用意した広場の前で起こるのはロドフェルド将軍だ。
彼は待っていた。
軍に準備をさせた上で。
「あやつ……まさか嘘を伝えてきたわけではあるまい……」
「何かあったのでしょうか?」
将軍の呟きに答えるのは参謀長だ。
彼らはクロード王国内の一部の勢力と内通していた。
当然ながらベオルバッハ公爵と第2妃イザベラの派閥とだ。
魔導騎士団が先陣を切って急襲してくることも聞いていたし、そもそも開戦についても内部情報を得た上で進めてきた。
そんな彼らの元、昨晩遅くにフィン・クロードが魔導騎士団の奪還に部隊を率いて向かうと報告が届いたのだ。
それに基づき、公開処刑の準備をしつつ、迎撃のための軍を後ろに展開していた。
しかしフィン王子は来ない。
何か手違いでもあったのだろうか。
「来なければ来ないで粛々と処刑を進めるのみです、将軍」
参謀長の言葉にそれはそうだと考え直すロドフェルド将軍。
「では、予定通り正午に処刑を行う。最初はあのハゲ……ブレイディ団長だ。連れてこい!」
「はっ」
控えていた部下は命令に従ってブレイディ団長を連れてくるべく、捕虜となった魔導騎士団を詰め込んでいる急ごしらえの建物に入る。
「くっくっく、来ても地獄、来なくても地獄。来ない方が防御を固めて王国軍本隊と合流できるから合理的ではあるが、そちらに残った魔導騎士団はどう思うかな?くっくっくっく」
「いかに掟といっても年若い、しかも太子ではない王子を将軍に据えるとは、バカげた考えですな、将軍」
あきらかに戦い慣れしているとは思えない掟の数々をロドフェルド将軍と参謀長は嗤う。
すべてが自分たちにとって都合がいいためだ。
そうして処刑場にブレイディ団長が連行され、彼は処刑台に上がらされ、拘束される。
「手負いの騎士、それをさらに拘束しなければ相対できぬとは、勇敢だなロドフェルド将軍」
「貴様ぁ」
「落ち着いてください将軍」
簡単な挑発ですぐに沸騰する将軍。
対してブレイディ団長は冷静だった。
冷静に状況を俯瞰して、なんとか部下を逃がす策はないかと考え続けていた。
「そろそろ時間だな」
「「「おーーー」」」
観客となっているラザクリフ軍の面々が声を上げる。
自らが打倒し、捉えた敵の団長を処刑するのだ。
その熱気はすでに相当高まっている。
「では、はじめよ」
そんな中でロドフェルド将軍は合図を出す。
それを見て処刑執行人が処刑台に向かう。
その足取りはゆっくりとしたものだ。
処刑されるものの恐怖を少しでも高めるための演出。
そうして処刑台に上った執行人。
手に持った大剣を構える。
そして、振り上げたその時。
「サンダー!!!」
「なっ」
処刑人が掲げた剣に落ちる雷。
フィンが持つ雷魔法が炸裂したのだった。
しかも雷なのでどこから放たれたのかわからない。
騒然としつつあたりを見渡す者で溢れる観客席。
そしてロドフェルド将軍。
その隙をついてフィンは処刑台に上り、処刑人を蹴り飛ばす。
素早くブレイディ団長の拘束を叩き斬り、団長に回復魔法をかける。
「無事ですね。よかった」
「かっ……まさか」
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よく呑み込んでくれた。
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