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いざ安住の地へ
<フィン> 救出作戦
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「しかし、どうされるおつもりで?」
メロード中隊長が行った後、ガウェル中隊長が訪ねてくる。
作戦会議だな。
「数人の魔導騎士をお借りしたい」
「数人だけですか?」
「あぁ。僕は忍び込む」
少人数で忍び込んでくる。
狙うのは……。
「それは戦時協定に……いや、向こうがそもそも守っていないということですね」
「そうです。そもそも開戦も公開処刑も昔の戦時協定には反します。しかし今とは時代も違うのです。相手も守っていないのです。こちらが破っても誰も非難しないでしょう」
もう戦時協定など気にしない。
もし今回上手く勝利して和睦の協定でも結ぶのであれば、改めて戦時協定を議題にあげればいい。
そうしてガウェル中隊長は7名の騎士団員を選んでくれた。
彼らにはまずは僕から作戦の流れを説明する。
「狙うのはまずはブレイディ団長の救出だ。おそらく敵はブレイディ団長を最初に処刑しようとするだろう。もしこちら側が出ていって戦闘になった場合でも、最初の処刑だけは執行させておきたいと考えているはずだ」
魔法なしでも普通の騎士より強いブレイディ団長は相手にとって脅威のはずだ。
「そこには僕1人で行く」
「それはなりません」
ナンバー2を助けに行くナンバー1。
あまり聞かない構図だし、僕は将軍であっても戦闘能力は低い。
当然ガウェル中隊長がそこにひっかかる。
しかしだからこそ意表を突けるはずだ。
僕は説明を続ける。
「敵は処刑の場において魔道具を展開したりはしないだろう。さすがにそれは面子に関わるはずだ。だから僕が行って、魔法で驚かせつつ団長を救う。そうすれば団長も戦力になるはずだ。そして、その間に僕についてきてくれるものたちで他に捕まっている騎士団員を助け出してほしい。それが上手くいけば少なくとも処刑場の中では戦える兵数になるはずだ。そして相手が混乱している間に魔法障壁の魔道具を叩きたい」
そこからは相談……いや軍議だ。
細部を詰めていってくれる騎士団員たち。
その後僕らは軽い食事を採って明日に備えて仮眠に入る。
明日……この戦いの命運を定めるかもしれない戦いが始まる。
いや、違うな。
すでに色々なことがあった。
魔道具をもっと早く認めてもらえていれば。
選定会議に備えて周辺国をけん制できていれば。
魔導騎士団の突撃を防げていれば。
もっと早く兄を治せていれば。
今考えてもしょうがないことが次々に頭に浮かんでくる。
僕は、弱いな。
どう考えても。
父上、母上。
僕は国王には向いてないと思うんだ。
勢いがあれば問題ないが、こうして考え始めてしまうと、死ぬのだって怖い。
もう会えないのかな。
家さんにも……。
『呼んだか?』
えっ……。
『すまん、フィン。呼ばれたような気がしてな』
いや、呼んだないよ。
『そうか。フィン。大丈夫か?』
大丈夫。大丈夫だよ、家さん。
『あの後どうなった?なんで呼ばれてたんだ?』
いや、なんでもないよ。
『防衛線の準備は整ったのか?』
う……うん。
『ん?』
ごめん、家さん。
今から仮眠をとるところなんだ。
寝ないと。
『そうか』
うん。
『おやすみ、フィン』
おやすみ、家さん。
ガタン
眠りに落ちる僕はなにか重たいものが動くような音を聞いた気がした……。
メロード中隊長が行った後、ガウェル中隊長が訪ねてくる。
作戦会議だな。
「数人の魔導騎士をお借りしたい」
「数人だけですか?」
「あぁ。僕は忍び込む」
少人数で忍び込んでくる。
狙うのは……。
「それは戦時協定に……いや、向こうがそもそも守っていないということですね」
「そうです。そもそも開戦も公開処刑も昔の戦時協定には反します。しかし今とは時代も違うのです。相手も守っていないのです。こちらが破っても誰も非難しないでしょう」
もう戦時協定など気にしない。
もし今回上手く勝利して和睦の協定でも結ぶのであれば、改めて戦時協定を議題にあげればいい。
そうしてガウェル中隊長は7名の騎士団員を選んでくれた。
彼らにはまずは僕から作戦の流れを説明する。
「狙うのはまずはブレイディ団長の救出だ。おそらく敵はブレイディ団長を最初に処刑しようとするだろう。もしこちら側が出ていって戦闘になった場合でも、最初の処刑だけは執行させておきたいと考えているはずだ」
魔法なしでも普通の騎士より強いブレイディ団長は相手にとって脅威のはずだ。
「そこには僕1人で行く」
「それはなりません」
ナンバー2を助けに行くナンバー1。
あまり聞かない構図だし、僕は将軍であっても戦闘能力は低い。
当然ガウェル中隊長がそこにひっかかる。
しかしだからこそ意表を突けるはずだ。
僕は説明を続ける。
「敵は処刑の場において魔道具を展開したりはしないだろう。さすがにそれは面子に関わるはずだ。だから僕が行って、魔法で驚かせつつ団長を救う。そうすれば団長も戦力になるはずだ。そして、その間に僕についてきてくれるものたちで他に捕まっている騎士団員を助け出してほしい。それが上手くいけば少なくとも処刑場の中では戦える兵数になるはずだ。そして相手が混乱している間に魔法障壁の魔道具を叩きたい」
そこからは相談……いや軍議だ。
細部を詰めていってくれる騎士団員たち。
その後僕らは軽い食事を採って明日に備えて仮眠に入る。
明日……この戦いの命運を定めるかもしれない戦いが始まる。
いや、違うな。
すでに色々なことがあった。
魔道具をもっと早く認めてもらえていれば。
選定会議に備えて周辺国をけん制できていれば。
魔導騎士団の突撃を防げていれば。
もっと早く兄を治せていれば。
今考えてもしょうがないことが次々に頭に浮かんでくる。
僕は、弱いな。
どう考えても。
父上、母上。
僕は国王には向いてないと思うんだ。
勢いがあれば問題ないが、こうして考え始めてしまうと、死ぬのだって怖い。
もう会えないのかな。
家さんにも……。
『呼んだか?』
えっ……。
『すまん、フィン。呼ばれたような気がしてな』
いや、呼んだないよ。
『そうか。フィン。大丈夫か?』
大丈夫。大丈夫だよ、家さん。
『あの後どうなった?なんで呼ばれてたんだ?』
いや、なんでもないよ。
『防衛線の準備は整ったのか?』
う……うん。
『ん?』
ごめん、家さん。
今から仮眠をとるところなんだ。
寝ないと。
『そうか』
うん。
『おやすみ、フィン』
おやすみ、家さん。
ガタン
眠りに落ちる僕はなにか重たいものが動くような音を聞いた気がした……。
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