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いざ安住の地へ

<フィン> 宣戦布告

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「戦だ!」

 とつぜん集められた僕らの前で父上が宣言する。
 突然のことに皆大混乱だ。
 僕も……眩暈がしそうだ。

「歴史と掟に従い、将軍を任命する」

 ようやく見えた光明。
 それがすべて消えていった。
 
「フィン、頼むぞ!」

「はい、陛下。謹んで拝命いたします」

 僕は将軍となった。
 この国の掟では、侵略戦争を受けた場合、その旗頭である将軍には国王かその長子が就任することになっている。
 さらに、その両名ともが参戦できない場合には年齢順で参戦可能な王子が将軍となる。

 今現在国王は選定会議の真っただ中。
 これは将軍就任を妨げる理由となる。
 さらに兄上は魔力病で病床に臥せっている。
 当然、将軍にはならない。

 この事態は当然考えられることだが、平和に目が眩んだ外務部の仕事は不十分だったのだろう。
 交渉等も特になく宣戦布告を受けたらしい。
 外務部トップだった伯爵ラザフェルド卿は解任された。
 痛いのは彼は中立派だったことだ。
 次の外務卿はべオルバッハ卿……。
 第2妃イザベラの兄だ。

「べオルバッハ外務卿は周辺国との交渉を急げ。決して他国に介入させるな」
「陛下。この状況ではウディメルトへの援護要請は必要かと」
 ウディメルト公国はクロード王国の同盟国で、今回攻めてきたラザクリフ王国を挟んで反対側にある国だ。

「任せる」
「はっ。まずはこの時期を狙ったラザクリフへの非難声明を出します。加えて交渉を行いますが、あまり弱みを見せると厳しい。フィン王子にはぜひとも初戦勝利をお願いしたい」
「はい」
 負ければ僕が外交の失敗を被ることになる。
 負けられなくなった。

「ラザクリフは既に国境を越え、リシャルデに迫っておる。魔導騎士団には準備を始めさせておるゆえ、フィンは彼らを率いて出陣せよ。王国軍は現在編成中で完了次第応援に向かう。騎馬を先行させ、物資と共に本隊が向かう。総勢2万だ。リシャルデには防御を整えさせておるが、総員急げ。なんとしても抑えよ」
「はっ!」
 やるしかない。
 魔導騎士団が言うことを聞かない気しかしないのが憂鬱だが……。

 まずは準備だ。

 そして、この場は解散となる。
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