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いざ安住の地へ

<フィン> 襲撃

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 家さんに泊まった次の日は王城に帰る。
 家さんは笑顔で(?)僕を送り出してくれた。

 昨日あんな口論をしてしまったのに家さんはとても優しかった。
 暖かかった。
 食事は美味しかったし、湯加減もちょうどで、寝室も居心地が良かった。
 どうやってるんだろう。
 ものすごい魔法スキルだったから、それで何とかしてるのかな?

 王城に戻るのが憂鬱だ。
 今日は父上から任されている仕事の打ち合わせがあるから、どうしても戻らないといけないけど。
 打ち合わせの場所は行政区だけど、一度王城に戻って準備してから行くつもりだ。

 僕は王城に戻る道すがら、会議の進め方を考えていた。
 どう考えても警戒していないといけなかったのに。

 そして王位継承争い中なのに気を抜いたバカな僕は当然ながら襲撃を受けた。

 その剣を避けられたのは偶然としか思えなかった。
 ただ、偶然にしても避けた。
 僕は逃げる。

 特徴のない風貌で僕の横をすれ違いながら死角から斬りつけてきた男から。
 相手は追ってくる。
 僕は逃げる。




 おかしい……。
 なぜ捕まらない。
 僕はお世辞にも足は速くないし、体力もない。
 なのに捕まらない。
 わざとか?

 わざと襲撃して何がしたいんだ?

 家さんと王城の間には大規模な商会のお店がならぶ商業区と公共機関や官舎が立ち並ぶ行政区がある。
 それを抜ければ王城だが、僕は今、商業区の中を逃げ回っている。
 お昼過ぎの商業区は人は少ない。
 
 僕は大きな建物の陰に入り、そこで立ち止まる。
 襲撃者が追い付いてくる。
 そこで立ち止まっている僕を見て不思議そうにしている。

「観念したのか?」
「どうして僕を追う?」
 僕は質問に質問で返す。

「そんなわかり切った質問をするために立ち止まったのか?」
「第2妃の手の者……もしくは公爵の手の者か?」
「悪いが答えられん……というか知らない。指図したものなんて辿れなくしているのが当然だ。案外お前の母親かもしれない……」
「貴様!」
 僕は剣を抜き斬りつけるが、簡単に弾かれてしまう。

「未熟……技も精神も」
「くそっ」
 僕は剣を構える。

「そこまでにしておきなさい」
「誰だ!?」
 あらわれた女が僕の前に立つ。
 真黒な衣装だから日陰では見えづらい。

「そこの坊やの護衛ってやつだな。シャドウストライク」
「なに?」
 女は襲撃者に向けて魔法を放つ。
 闇属性の中級魔法だ。
 襲撃者はなんとか避けるがそこに僕が剣を投げる。

「ちっ」
「これで終いです」
「ぐぁ……」
 襲撃者が僕の剣をはじく隙に女が近づき切り伏せる。

「お見事」
「もう、フィン様。お帰りが遅いと思って迎えに来たのにこんなとこに迷い込んで」
「すまない、ローザ。助かったよ」
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