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いざ安住の地へ
<フィン> 王族の食事会
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僕はフィン。
フィン・クロード。
この国の王子だ。
……ん?なにかあった?
あぁ家さんと話したことね。
さすがにいきなり王子だとは言えなかったよ。
というか、フィンという名前では気付かれないのかな?
王子の名前くらい……絶賛後継者争い中の王子の名前くらい、誰でも知っているものと思ったけど。
家さんだし、興味なさそうだね。
面白い家だったなぁ。
あんな家を見繕ってくれた商人さんに感謝だね。
……あれ?なんでそもそも内見に行ったんだっけ?
そんなことを考えながら僕はお城に帰る。
今日は食事会があるから時間までに戻れてよかった。
この国、クロード王国はエルゼルド大陸の南部にある人間が治める国だ。
この大陸は獣人が多いが、僕たちはその昔オルハレスト大陸から海を渡ってやってきた人間の子孫だ。
古代神シルヴァリウス様が庇護するエルゼルド大陸には様々な種族が暮らしている。
シルヴァリウス様が生み出した獣人、他の大陸から渡ってきた人、妖精、魔族、さまざまだ。
国が1つしかないオルハレスト大陸と違って、この大陸にはいろんな国があるけど、今は割と平和だ。
長らく戦争は聞かない。
だからこそ内部で争ってしまうんだけどね。
僕の家族も……。
「おや、今日は欠席するのかと思っていました」
僕の方を見ながら感じ悪い薄ら笑いを浮かべているのは第2妃のイザベラ。
こいつ……。
「昼間に街へ出かけておりましたが、ちゃんと戻っておりましたので」
冷静に、冷静に。
「家を買ったそうですね」
「……はい」
どこでそれを?
いや、手先を仕向けてきたんだから知ってるか。
家さんには違うかもと言ったが、そんなことはない。間違いなくこの人たちが僕に暗殺者を仕向けている。
「家を買ったのか?」
「はい、父上。庶民の暮らしぶりをみるために、一般の商人の紹介で購入しました」
「よい心がけだ。して、どうだった?」
ここで襲われました、と言ったら父はどういうだろうか?
危ないと言ってくれるのか、撃退したことを褒めるのか、それとも僕の恐れを咎めるのか?
「平民街だと?良い心がけじゃないか。いや、平民にまで落ちる準備をする必要はないのではないか?あっはっは」
「ダリアン」
思いっきりバカにしてくる弟と一応咎めるイザベラ。
「ダリアンよ。我々は王族だが、国が存在するのは民のおかげなのだ。民なきところに国はない。平民街をバカにするのはよしなさい」
「はい、すみません、父上」
父上に怒られながらも、ものすごい睨んでくるダリアン……。
絶対反省してない。
「フィンよ。せっかく平民街に拠点を作ったのなら定期的に様子を報告するように。生活もするなら市場も含めて気になることがあれば教えてくれ」
「かしこまりました、父上」
なにを報告すればいいんだろう。
あとで誰かと相談しよう。
「それでは食事にしよう。我が国の繁栄を願って"乾杯"」
「「乾杯!」」
今日は王族の食事会だ。
月に1度、王城で開催されるこの会のことが僕は苦手だ。
なにせ第2妃のイザベラや弟ダリアンと顔を合わせないといけない。
兄上は不在で正妃様は無口だし、第3妃も母上も妹たちもあまり会話しない。
父上はどう考えているのだろうか?
顔を合わせることで王族の関係に完全に亀裂が入るのを避けようという目論見なんだと思うんだけど。
食事の味はしない。
食事会が終わると皆すごすごと自室に戻る。
僕は母上について一緒に部屋を出る。
「フィン、平民街はあぶなくないかしら?」
「大丈夫ですよ、母上。詳しくは話せませんが、とても楽しかったです」
家さんのことを話したくなるが、理解してもらえないだろうな。
「フィン、ミカエル様が病気に臥せっているため、あなたは有力な王位継承者の候補の1人です。そのことを忘れぬよう」
「もちろんです、母上。私が平民街に拠点を作ったと聞いて、イザベラ様は訝しんでいるでしょう」
「目的がある、ということですか?」
「もちろんです」
どちらかというと穏便にこの承継を終わらしたいだけなんだけどな。
父上が早くダリアンに継承すると言ってくれれば終わるのに。
「あなたに考えがあるなら止めはしません。あなたは賢い子です。今すべきことをしなさい」
「はい、母上」
そう言って僕は母上と別れて自室に戻る。
それにしても不思議な家さんだったな。
そういえば商人さんが昔はたくさん作られたって言ってたっけ。
あんな家が並んでいたら楽しそう……いや、怖いかな。
昔はあんなに強い家が並んでいたのかな?
どんな世界だったんだろう。
ステータスはすさまじかった。
僕とはえらい違いだ。
でも、楽しかったな。
あんなに気楽にしゃべったのは初めてだ。
また明日……は、予定があるから明後日行こう。
フィン・クロード。
この国の王子だ。
……ん?なにかあった?
あぁ家さんと話したことね。
さすがにいきなり王子だとは言えなかったよ。
というか、フィンという名前では気付かれないのかな?
王子の名前くらい……絶賛後継者争い中の王子の名前くらい、誰でも知っているものと思ったけど。
家さんだし、興味なさそうだね。
面白い家だったなぁ。
あんな家を見繕ってくれた商人さんに感謝だね。
……あれ?なんでそもそも内見に行ったんだっけ?
そんなことを考えながら僕はお城に帰る。
今日は食事会があるから時間までに戻れてよかった。
この国、クロード王国はエルゼルド大陸の南部にある人間が治める国だ。
この大陸は獣人が多いが、僕たちはその昔オルハレスト大陸から海を渡ってやってきた人間の子孫だ。
古代神シルヴァリウス様が庇護するエルゼルド大陸には様々な種族が暮らしている。
シルヴァリウス様が生み出した獣人、他の大陸から渡ってきた人、妖精、魔族、さまざまだ。
国が1つしかないオルハレスト大陸と違って、この大陸にはいろんな国があるけど、今は割と平和だ。
長らく戦争は聞かない。
だからこそ内部で争ってしまうんだけどね。
僕の家族も……。
「おや、今日は欠席するのかと思っていました」
僕の方を見ながら感じ悪い薄ら笑いを浮かべているのは第2妃のイザベラ。
こいつ……。
「昼間に街へ出かけておりましたが、ちゃんと戻っておりましたので」
冷静に、冷静に。
「家を買ったそうですね」
「……はい」
どこでそれを?
いや、手先を仕向けてきたんだから知ってるか。
家さんには違うかもと言ったが、そんなことはない。間違いなくこの人たちが僕に暗殺者を仕向けている。
「家を買ったのか?」
「はい、父上。庶民の暮らしぶりをみるために、一般の商人の紹介で購入しました」
「よい心がけだ。して、どうだった?」
ここで襲われました、と言ったら父はどういうだろうか?
危ないと言ってくれるのか、撃退したことを褒めるのか、それとも僕の恐れを咎めるのか?
「平民街だと?良い心がけじゃないか。いや、平民にまで落ちる準備をする必要はないのではないか?あっはっは」
「ダリアン」
思いっきりバカにしてくる弟と一応咎めるイザベラ。
「ダリアンよ。我々は王族だが、国が存在するのは民のおかげなのだ。民なきところに国はない。平民街をバカにするのはよしなさい」
「はい、すみません、父上」
父上に怒られながらも、ものすごい睨んでくるダリアン……。
絶対反省してない。
「フィンよ。せっかく平民街に拠点を作ったのなら定期的に様子を報告するように。生活もするなら市場も含めて気になることがあれば教えてくれ」
「かしこまりました、父上」
なにを報告すればいいんだろう。
あとで誰かと相談しよう。
「それでは食事にしよう。我が国の繁栄を願って"乾杯"」
「「乾杯!」」
今日は王族の食事会だ。
月に1度、王城で開催されるこの会のことが僕は苦手だ。
なにせ第2妃のイザベラや弟ダリアンと顔を合わせないといけない。
兄上は不在で正妃様は無口だし、第3妃も母上も妹たちもあまり会話しない。
父上はどう考えているのだろうか?
顔を合わせることで王族の関係に完全に亀裂が入るのを避けようという目論見なんだと思うんだけど。
食事の味はしない。
食事会が終わると皆すごすごと自室に戻る。
僕は母上について一緒に部屋を出る。
「フィン、平民街はあぶなくないかしら?」
「大丈夫ですよ、母上。詳しくは話せませんが、とても楽しかったです」
家さんのことを話したくなるが、理解してもらえないだろうな。
「フィン、ミカエル様が病気に臥せっているため、あなたは有力な王位継承者の候補の1人です。そのことを忘れぬよう」
「もちろんです、母上。私が平民街に拠点を作ったと聞いて、イザベラ様は訝しんでいるでしょう」
「目的がある、ということですか?」
「もちろんです」
どちらかというと穏便にこの承継を終わらしたいだけなんだけどな。
父上が早くダリアンに継承すると言ってくれれば終わるのに。
「あなたに考えがあるなら止めはしません。あなたは賢い子です。今すべきことをしなさい」
「はい、母上」
そう言って僕は母上と別れて自室に戻る。
それにしても不思議な家さんだったな。
そういえば商人さんが昔はたくさん作られたって言ってたっけ。
あんな家が並んでいたら楽しそう……いや、怖いかな。
昔はあんなに強い家が並んでいたのかな?
どんな世界だったんだろう。
ステータスはすさまじかった。
僕とはえらい違いだ。
でも、楽しかったな。
あんなに気楽にしゃべったのは初めてだ。
また明日……は、予定があるから明後日行こう。
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