上 下
24 / 28
婚約破棄された元聖女、実は魔王の娘で世界最強!? 新しい恋と復讐(?)が始まって、気付いたら終わってた

邪竜さんに魔王にされた件~邪竜さんカッコいいし、みんな優しいしまぁいっか……

しおりを挟む
「では行くぞ」
「はい……って、えぇ???」
なぜお姫様抱っこなの?
これならさっきのドラゴンさんの姿で背中に乗せてくれた方がよくない?主に私の心的に!?
近い。近いよドラゴンさん!

カッコよすぎて私の心、もう死にそうだよ?
到着まで保たないよ?


そう思ったのも束の間、気付けばなにかお城みたいな場所の広間にいたの。
えっ?転移?
ここどこ?

「ここは我の城だ。君が人間のようだったからいずれ迎えに行くときのために作らせたんだ。人間はこういうのが好きなんだろう?」
「えっと、ありがとう」
敷き詰められた大理石。
ふかふかな絨毯。
趣のある柱に、天井の絵画。

中央にはまさに玉座と言うべき豪華な椅子。
各所に施された飾りや意匠はとても美しく、夢のような場所に仕上がっていて、『えっ?誰が作ったの?』という驚きでいっぱいだった。

「今はまだ少ないが、君が戻ったんだ。すぐに魔物で埋め尽くされるようになるだろう」
「はっ?……はぁ……」
そもそも私、なんで人間世界にいたの?
いや、人間みたいだったからって言ってたわね。
あと私の中で"魔"の力が成長したとも。

もう十分になったから来てくれたの?
あの森でどうやって探すつもりだったの?
普通あんなところに私みたいにか弱い女の子は入らないよ?

って、なに?……

「君が可愛らしく育ってくれて良かった」
なにキスしてるの!!!?
私、ヘンリー王子からは平凡顔ってずっと言われてたんだけど!?
って、なにキスしてるのよ!!!?
あなた育ての親とか、親の親友とかそう言う立ち位置なんじゃないの?

「戸惑う顔も可愛いな。まぁ、君はここでゆっくりしてくれればいい」
「はぁ……」
これって囲われたってこと?
そういえばドラゴンには光るものとかを集める癖があるって聞いたことが……。

「もちろん、何かしたいならしてもいい。君がいた国を亡ぼすとか」
「いや、いらないです。しなくていいです」
「しかし君は酷い扱いを受けた。邪悪な聖属性を埋め込むなどと。許せん」
なにか私とは感覚が違うんだと思うけど、ドラゴンさんは怒っているようだった。
それでも滅ぼしてほしいとは思わない。
それをやってしまうと、今まで助けてきたことすら全て無駄になるから。

「その……王族や神殿に思うところはあるけど、一般の人たちのために働いていたし、感謝もされていたから」
「ふむ……。では、その二つを……」
「いいからね?そんなことしなくて」
「わかった。ではなにかやってみたいことがあるか?」
「えっと……」

そんなに近寄らないで欲しい。心が乱されて考えられなくなるから。
自然に抱き寄せるとか、このドラゴンさん、どういうつもりで?

「来たばっかりでまだ考えられないなら、時間はあるのだしゆっくりすればいい」
「はい。そうさせてもらえると嬉しいです」
「そうか。では、部屋に案内させよう。おい!」
「お呼びでしょうか、クラウヴェルク様」
「魔王の娘、エリーナ様だ。丁重におもてなしせよ」
「わかりました。不肖アゼル、誠心誠意お仕えいたします。おぉ神よ。この身にまた魔王様にお仕えする栄誉を賜るとは」
「うむ」

そうして案内された部屋でくつろがせてもらった。
人間の王城のようにお付きの人たち……いや、モンスターなのかな?あまり外見が変わらないからよくわからないけど。

「君のために人や人と見た目が近いものたちを用意している」
えっと、モンスターはわかるけど、人はどうやって採用したの?怖くて聞けない。

「あと、君の力を感じているのか、続々と集まってきている。楽しみだな」
なにが?ねぇ、なにが楽しみなの?
あれだよね。人間世界に対して宣戦布告だ!ってやらないよね?
それに私は魔王の子であって、魔王じゃないよね?あんまりたいした力ないよね?

なのになんでこの城の人たち、みんな私に魔王様って呼びかけてくるの?
怖いんですけど!ねぇ!?


そんな風に戸惑いながらも、実際は居心地がよかった。
あぁ、私って本当に魔王の子供なんだなと実感した。
魔王じゃないよ!?そこを曲げるつもりはないけど。むしろドラゴンさんこそ、魔王と言っていいんじゃないかな?


そしてドラゴンさんが私の部屋に入ってくる。
……それは別にいいんだけど、入ってくるなり抱きしめてキスして体のいろんなところを障るのはちょっとやめてほしい。
顔を近づけてくるのも……。
私の平穏を乱して楽しいわけ?

「報告だが、すでにかつての勢力を超えたようだ」
「はっ?」
「君の力が素晴らしいからだな。ここにいてくれるだけで慕われているし、モンスターの力が増しているようだ」
「はっ?」
「あと、君がいた国だけど、聖女の力を操っていたということで王家が打倒され、神殿も解体したらしいぞ?まぁ、噂を流したのは我だが」
「はっ?」
「君が人間世界を滅ぼそうと思っていないことは知っているからそれをやるつもりはない。でも、ここは君の居場所だし、君を慕うやつはたくさんいる。ここで一緒に暮らそう」
「はい……」


こうして私は超かっこいいドラゴンさんと一緒に末永く暮らしました。
めでたしめでたし
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

【完結】それぞれの贖罪

夢見 歩
恋愛
タグにネタバレがありますが、 作品への先入観を無くすために あらすじは書きません。 頭を空っぽにしてから 読んで頂けると嬉しいです。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

あなたの嫉妬なんて知らない

abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」 「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」 「は……終わりだなんて、」 「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ…… "今日の主役が二人も抜けては"」 婚約パーティーの夜だった。 愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。 長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。 「はー、もういいわ」 皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。 彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。 「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。 だから私は悪女になった。 「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」 洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。 「貴女は、俺の婚約者だろう!」 「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」 「ダリア!いい加減に……」 嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

旦那様、離婚しましょう

榎夜
恋愛
私と旦那は、いわゆる『白い結婚』というやつだ。 手を繋いだどころか、夜を共にしたこともありません。 ですが、とある時に浮気相手が懐妊した、との報告がありました。 なので邪魔者は消えさせてもらいますね *『旦那様、離婚しましょう~私は冒険者になるのでお構いなく!~』と登場人物は同じ 本当はこんな感じにしたかったのに主が詰め込みすぎて......

処理中です...