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婚約破棄された元聖女、実は魔王の娘で世界最強!? 新しい恋と復讐(?)が始まって、気付いたら終わってた
邪竜との出会い
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「おい!何してるんだ?処刑しろと言われただろ?」
「……」
私はあまりの衝撃で周囲の話は聞いていなかった。
これから処刑される。
昨日までは聖女として華やかな場所にいた。
辛いことも、悲しいこともあったけど、同時にやりがいもあって、楽しさもあった。
でも、神官たちは皆知っていたのよね?私が寿命を使っていたことに。
知っていて……知っているのにあんなに力を使わせてきた……。毎日毎日。
「おい!どういうことだ?なぜ外に出す!?命令を……」
「黙れ。お前だって聖女さまに癒してもらっただろう。何も感じないのかよ!?」
「そう言う役目だろ?モンスターや暗殺者から王族を守るのが俺の役目。当然傷つくこともある。それを治してもらっただけだ。お互いの職務だろ」
「しかし聖女様は命を削っていたことなど知らないのだぞ?」
「ただ無知な道具なだけだろ?関係ねぇよ……ぐあぁ」
なぜか騎士たちが揉めていた。
そして私を殺すよう主張していた騎士を、もう1人が殴り倒した。
えっ?
「すみません。俺の力ではあなたを助けることはできない。ご存じの通りこの道は森に通じている。それ以外の場所はすぐに追手がかかるでしょう。ここしかない……でも、まだ生きてるんだ。どうか……」
私はもう答えない。
この先は魔物もいる森。そこへ逃げ込むしか手はない。でも、そこを超える力もない。なにせ聖女の力を失ったのだから。
それでもこの目の前の騎士は私に生きる可能性をくれたんだろう。
今の私にはそれしかない。
私は無言で森に入って行った。
私は暗い気分で森に入った。
もうどうにでもなればいい。
私が逃げたことを知ったらヘンリー王子は追っ手を差し向けるかもしれない。
逃がしてくれた騎士のような人は少ないだろう。王家の、それも第一王子の命令は絶対だ。
それにこの森はやすやすと抜けられる場所ではない。
昔からある深い森。
これを天然の要塞とするために、王城はこの森を背後にする形で作られていた。
モンスターが多く、普通の人は入らない。
王城と森の境にも多くの結界がはられている。
魔物の侵入を防ぐための結界だ。
それを私は超える。
もうなるようにしかならない。ただ足掻いて、逃げる。
行けるところまで。
私は歩きながら考える。
なぜ聖女の力が消えたのか。
そしてこれまでの聖女であれば命が尽きるまで力を使い、そのまま死んでいたらしいということ。
神殿で伝え聞いた限り短命な聖女は多くはない。
それがなぜ?
ヘンリー王子には私の命がいつぐらいまで保つかわかっていた?
じゃないと自分が望む相手との結婚を裏で準備しているなんてことはできないはず。
どうやって?
いや、もうどうでもいい。
既に裏切られ、捨てられた。いや、殺されるところだった。
私は捨て子だったと言っていた。なんの愛着もない両親だった。なぜ自分がそんな風に両親に対して愛情を持てないのか悩んだこともあったのに、捨て子なら仕方ない。
むしろ当然だ。
優しくされたことはない。いつも命令されるばかりだった。
失敗すれば叱られる。
1歳下の妹が望むものは全て与えられるのに、私が望むものは全て無視された。
『グルルルルル……』
なに?
森を歩いていると、獰猛な唸り声が聞こえて来た。
まずい……。もうモンスターと出会ってしまうの?
聖女の力を失った私には抗う術はないというのに。
というより、なにか惹かれるような感覚がある。
モンスターに?
もう私には心のよりどころがない。
信じていた神殿は私をただ道具として使っていただけで、愛していたヘンリー王子には最初から捨てられていた。
ただただ騙されていた。私はただの消費されるアイテムのような存在だった。
それなのになぜ?
『驚いた。まさかこんなところで出会うとはな』
私も驚いた。なにせ唸り声をあげていたのは大きな体に翼、角、爪、そして牙。
全身は真黒で爬虫類のような肌にうろこがついている。
これは知っている。
ドラゴンだ。
しかも黒ということは……邪竜。
神殿では神の敵として語られる凶悪なモンスターだ。
かつて魔王とともに世界を荒らし回ったという。
口からは邪悪なブレスを吐き、その爪や牙で敵を切り裂き、大きな翼で自在に空を飛び回る。
肌は固く刃は通らず、強大な魔力を持ち、攻撃だけではなく防御や回復までしてくる人間にとっての悪夢。
私を食べに来たのかしら?
もうどうでもよくなってきた。
こんな相手に抗うことは不可能だ。
なにせもう私はただのか弱い娘。
これがきっと運命なんだろう。
聖女としての死ではなく、モンスターに食べられて死ぬ。
聖女としてであればただ感謝される死。実際には消費しきられただけの人形。
食べられるなら私の身体はモンスターの血肉になる。
どっちでも私が消えるのは変わらない。
だったらこの凶悪なモンスターに食べられるのも、別に構わない。
痛くしないで欲しいとは思うが。それくらいだ。
「あなたは私を食べに来たの?」
『……?なにを言っているのだ?』
「……」
私はあまりの衝撃で周囲の話は聞いていなかった。
これから処刑される。
昨日までは聖女として華やかな場所にいた。
辛いことも、悲しいこともあったけど、同時にやりがいもあって、楽しさもあった。
でも、神官たちは皆知っていたのよね?私が寿命を使っていたことに。
知っていて……知っているのにあんなに力を使わせてきた……。毎日毎日。
「おい!どういうことだ?なぜ外に出す!?命令を……」
「黙れ。お前だって聖女さまに癒してもらっただろう。何も感じないのかよ!?」
「そう言う役目だろ?モンスターや暗殺者から王族を守るのが俺の役目。当然傷つくこともある。それを治してもらっただけだ。お互いの職務だろ」
「しかし聖女様は命を削っていたことなど知らないのだぞ?」
「ただ無知な道具なだけだろ?関係ねぇよ……ぐあぁ」
なぜか騎士たちが揉めていた。
そして私を殺すよう主張していた騎士を、もう1人が殴り倒した。
えっ?
「すみません。俺の力ではあなたを助けることはできない。ご存じの通りこの道は森に通じている。それ以外の場所はすぐに追手がかかるでしょう。ここしかない……でも、まだ生きてるんだ。どうか……」
私はもう答えない。
この先は魔物もいる森。そこへ逃げ込むしか手はない。でも、そこを超える力もない。なにせ聖女の力を失ったのだから。
それでもこの目の前の騎士は私に生きる可能性をくれたんだろう。
今の私にはそれしかない。
私は無言で森に入って行った。
私は暗い気分で森に入った。
もうどうにでもなればいい。
私が逃げたことを知ったらヘンリー王子は追っ手を差し向けるかもしれない。
逃がしてくれた騎士のような人は少ないだろう。王家の、それも第一王子の命令は絶対だ。
それにこの森はやすやすと抜けられる場所ではない。
昔からある深い森。
これを天然の要塞とするために、王城はこの森を背後にする形で作られていた。
モンスターが多く、普通の人は入らない。
王城と森の境にも多くの結界がはられている。
魔物の侵入を防ぐための結界だ。
それを私は超える。
もうなるようにしかならない。ただ足掻いて、逃げる。
行けるところまで。
私は歩きながら考える。
なぜ聖女の力が消えたのか。
そしてこれまでの聖女であれば命が尽きるまで力を使い、そのまま死んでいたらしいということ。
神殿で伝え聞いた限り短命な聖女は多くはない。
それがなぜ?
ヘンリー王子には私の命がいつぐらいまで保つかわかっていた?
じゃないと自分が望む相手との結婚を裏で準備しているなんてことはできないはず。
どうやって?
いや、もうどうでもいい。
既に裏切られ、捨てられた。いや、殺されるところだった。
私は捨て子だったと言っていた。なんの愛着もない両親だった。なぜ自分がそんな風に両親に対して愛情を持てないのか悩んだこともあったのに、捨て子なら仕方ない。
むしろ当然だ。
優しくされたことはない。いつも命令されるばかりだった。
失敗すれば叱られる。
1歳下の妹が望むものは全て与えられるのに、私が望むものは全て無視された。
『グルルルルル……』
なに?
森を歩いていると、獰猛な唸り声が聞こえて来た。
まずい……。もうモンスターと出会ってしまうの?
聖女の力を失った私には抗う術はないというのに。
というより、なにか惹かれるような感覚がある。
モンスターに?
もう私には心のよりどころがない。
信じていた神殿は私をただ道具として使っていただけで、愛していたヘンリー王子には最初から捨てられていた。
ただただ騙されていた。私はただの消費されるアイテムのような存在だった。
それなのになぜ?
『驚いた。まさかこんなところで出会うとはな』
私も驚いた。なにせ唸り声をあげていたのは大きな体に翼、角、爪、そして牙。
全身は真黒で爬虫類のような肌にうろこがついている。
これは知っている。
ドラゴンだ。
しかも黒ということは……邪竜。
神殿では神の敵として語られる凶悪なモンスターだ。
かつて魔王とともに世界を荒らし回ったという。
口からは邪悪なブレスを吐き、その爪や牙で敵を切り裂き、大きな翼で自在に空を飛び回る。
肌は固く刃は通らず、強大な魔力を持ち、攻撃だけではなく防御や回復までしてくる人間にとっての悪夢。
私を食べに来たのかしら?
もうどうでもよくなってきた。
こんな相手に抗うことは不可能だ。
なにせもう私はただのか弱い娘。
これがきっと運命なんだろう。
聖女としての死ではなく、モンスターに食べられて死ぬ。
聖女としてであればただ感謝される死。実際には消費しきられただけの人形。
食べられるなら私の身体はモンスターの血肉になる。
どっちでも私が消えるのは変わらない。
だったらこの凶悪なモンスターに食べられるのも、別に構わない。
痛くしないで欲しいとは思うが。それくらいだ。
「あなたは私を食べに来たの?」
『……?なにを言っているのだ?』
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