異世界恋愛作品集 バカばっかり

蒼井星空

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結婚を断罪される公爵令嬢は、もう放っておいてほしい

逃げられない運命と言う名のシナリオ

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「どうして……どうしてエイラなのよぉ!!!?」
「どっ、どうされたのですか、エイラ様!?」
「あっ、なんでもない。なんでもないわ」
改めて人生の悲哀を感じていたら、ついつい口から声が漏れていたようだ。
隣の部屋にいるはずのメイドがやってきてしまったので、慌てて誤魔化した。

しかし、どうしよう。

まさか転生したのがこのゲームの中で最も嫌われ、最も惨たらしい目に会う、見た目だけは美しい女・エイラだったなんて……。
天使様のバカ~!! あの時感じた暖かさは何だったのよぉ……。ぐすん。

酷い……酷いよ。
私が何をしたって言うのよ。

前世も病弱でずっとベッドの上だったし、今生は嫌われ女で略奪愛を成功させて敵であるロレイヌ様を追放するまではいいけど、そこからは理想的な転落人生。
最後はボロボロにされた状態で魔法の火に燃やされながら串刺しにされるなんて、嫌よ~~~~~~。

もう少し大きくなった。
私はもう10年も悲嘆に暮れていたが、そろそろ現実を見なければならない。

あと5年したら王立学院に入る。
そこで王子様であるレオン様と出会ってしまい、ロレイヌ様から彼を奪ってしまう。
ロレイヌ様は婚約破棄され、国外追放になる。

レオン様と私は素晴らしい結婚式を挙げたあと、贅沢な暮らしをし、圧政、腐敗、増税のトリプルコンボを決めた頃に事態は大きく変わる。
世界には魔王が現れ、人々を恐怖に陥れる。

そんな時、隣国が勇者として持ち上げるのがロレイヌ様だ。
そう。彼女は神に認められし聖なる戦士だったの。

そんなロレイヌ様を追放した私たちはあっという間に貴族と民衆にクーデターを起こされて万事休す。
レオン様はサクッと処刑され、私は牢獄に閉じ込められてしまう。

そして魔王討伐の旅の中で我が国を訪れたロレイヌ様一行への余興として火にあぶられ、処刑されるの。
酷すぎない?
パーティーの余興でいかに恨みがあるとはいえ、美女を処刑って……。
さすがにロレイヌ様のお気には召さず、以降、ロレイヌ様はこの王国に寄り付かなくなるんだけど、当たり前じゃない!


ちなみに、このゲームではプレイヤーが乗り移ったロレイヌ様が様々な選択肢を選びながらストーリーを進めていきます。
信じられないくらいの時間をこのゲームに費やした私は、普通ならやらないようなプレイもたくさんしました。
あっ、エッチなやつじゃないわよ? わかってるわよね?

そう、例えばレオン王子がエイラに気付く前に既成事実を作るとか、エイラがわざとらしくレオン王子の馬車の前で転んだのを魔法で吹っ飛ばすとか、エイラに魔法を叩きつけて気絶させてイベントをスキップする、なんてこともできるの。
開発した人たちは頭がおかしいんじゃないかしら。

でも、なにをしても運命は変わらない。
どんなルートを選んだとしても、しれっとレオン王子はエイラを見つけ、ロレイヌ様に婚約破棄と国外追放を言い渡し、エイラを娶り、死ぬ。何百回とクリアした私が言うんだから間違いない。
逃げ道は存在しない。
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