132 / 243
131.オンダロアで足止めされる(6月30日~7月5日)
しおりを挟む「お父様。急に帰って来いなんて、どうしたの? もしかして、ゲラーシー様と婚約できるの?!」
「婚約だと? お前、侯爵家の養子となった令嬢に迷惑をかけているそうだな?」
「迷惑なんてかけていないわ! あの女が、ゲラーシー様のことを誑かしていたのを認めさせようとしているだけよ!」
ナタリアの言葉に眉を顰めていた。
「誑かす? 隣国で、散々なことをして来たことは耳にしている。彼は、留年するそうだ」
「りゅ、留年?! そんな、留学生にまでなったのに何かの間違いよ!」
ナタリアは、そんなわけないと言っていたが、父親は冷めた目をしていた。
「留学してはいたが、その間に殆ど授業に出ていなかったそうだ。最低限の授業のみで、あとは街で遊び回っていた」
「そんなはずないわ。お父様、何かの間違いよ」
ナタリアは、ゲラーシーが勘違いされていると思って、誤解を解こうとしていた。
「これは、王弟殿下も認めた。あちらの学園で、失礼な態度を取って、身分を偽り、つり合わないからと親切に交流しようとした生徒たちや先生方まで遠ざけていたこともない。その令嬢は、お世話係を先生から任されて話しかけていたそうだ。たった数回の親切で、感謝するのはわかる。だが、その令嬢の母親の葬儀に喪服をあつらえてまで出席までしたそうではないか」
父親の言葉にナタリアは、目をパチクリさせた。
「あつらえた……? でも、学生は、制服で出席するものでしょう?」
「そうだ。その令嬢も、他の姉妹も、学園生たちはみんな制服だったのに彼一人があつらえた喪服で出席して、そのせいで姉妹の婚約していない末の妹の婚約者ではないかと憶測まで飛び交ったそうだ」
「っ、」
ナタリアは、ゲラーシーがそんなことをしたとは信じられない顔をしていたが、そんな格好をして出席したら、どうなるかなんて簡単に予想できたことだろう。
「その上、あちらで試験も受けずに戻って来て、何をしようとしていたと思う? その令嬢の婚約を解消させて、自分が婚約するのにどうしたらよいかと画策するために戻って来ていたそうではないか。それをその令嬢に好き勝手していたのを暴露されたからと今度は、あることないことを広めて、お前だけが学園で信じているそうではないか」
「それは、だって、ゲラーシー様がそんなことをしているとは思わなくて……」
「これまでずっと散々していただろうが。全く、そんなのと婚約したいと言い張って、どれだけ迷惑していると思っているんだ? 今回のことで、お前を誰かと婚約させるのは諦めた。学園を卒業したら、修道院に入れ」
「っ、そんな! お父様、あんまりです!」
「あんまりだと?! 学園の卒業まで待ってやるんだ。本来なら、すぐにでも勘当したいが、侯爵家の当主は、お前がきちんとその令嬢に謝罪して、今後一切関わらなければ許すとまで言ってくれているんだ。さっさと戻って、その令嬢に詫びろ!」
「っ、」
「その後の態度で、他に貰い手が現れれば修道院には行かせはしなくて済むんだがな。散々なことをしているのを学園で見られているようだから、期待なんてしない方がいいだろう」
ナタリアは、悔しくて仕方がなかった。それでも、婚約さえできれば、修道院に行かずに済むと思っていた。
34
お気に入りに追加
1,729
あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
転生チートは家族のために ユニークスキル『複合』で、快適な異世界生活を送りたい!
りーさん
ファンタジー
ある日、異世界に転生したルイ。
前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。
そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。
「家族といたいからほっといてよ!」
※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる