異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫

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120.イビッサ島に向かう③(6月23日)

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「ねえイトー君。あの2人、戻ってくるのが遅くないかい?イトー君には見えてる?」

ノエさんが静かに馬を寄せて話し掛けてきた。
ここはアルカンダラからアルマンソラへと続く森の中の街道。行きは馬車でおよそ1日の道程だったから、そろそろ中間地点といった所だ。
イザベルとアイダはいつもどおり果物の採取に向かった。だがその間も馬車は進み続けている。
確かに2人が息を切らして戻ってくる頃合いはとうに過ぎている。

「さっきまで見えていたのですが……そういえば見当たりませんね。スキャンの圏外に出たのかも。アリシア、馬車を止めてくれ」

1頭立ての馬車は遅いとはいえ、その速度は時速6km程度だ。1分間では100mは移動する。
スキャンの有効範囲は300m程だから、彼女達が3分も同じ場所に留まればあっという間に圏外となってしまう。
慌てて2人が向かった辺りを中心に探知魔法レーダーを放つ。
これはぼんやりしていた俺のミスだ。半人半魔の蜘蛛の魔物、アラーナが出るという噂のある森で、彼女等を見失ってはならなかった。

「大丈夫だと思います。2人とも武装していますし、トローだって倒したんですよ」

御者台から振り返るアリシアの姿を横目で見ながら、レーダー波をずらしながら放ち続ける。
確かに2人とも優秀な狩人だし、アイダはM870ショットガンを、イザベルもM870とへカートⅡ対物狙撃銃を収納魔法の掛かったポーチに収めている。仮にエアガンがなくともアイダとイザベルの剣技は一流といっていいだろう。
だが、そんな事は安心材料にはならない。なにせ2人ともまだ若い。元の世界では高校生になるかならないかといったところだ。判断ミスもするだろうし、何かのトラブルに巻き込まれないとも限らないのだ。

「どう?見つからない?」

痺れを切らしたかのように下馬したノエさんが、今にも駆け出しそうになっている。

「見つけました!後方1時の方向、距離500!」

「1時ってあっち?あの子達が向かったのはこっちじゃなかったっけ?」

反応があったのは2人が消えた辺りから街道を挟んで反対側の森の中だった。

◇◇◇

「迎えに行きます。アリシアはカミラ先生と一緒に馬車を守ってくれ。ビビアナは行けるか?」

ミリタリーリュックからG36Cを取り出し、マガジンを叩き込みながらビビアナに尋ねる。

「はい!」

ビビアナも杖を掴んで馬車の荷台から飛び降りる。

「よし。俺とノエさんで先行する。ビビアナは後方警戒を頼む。ノエさん!行きましょう!」

「あいよ。カミラ先生、手綱をお返しします」

「任されました。みんな気を付けてね!」

カミラ先生の声を背中で聞きながら、俺とノエさんは街道を逆方向に走り出した。

◇◇◇

ハイレディのまま街道を300mほど駆け抜ける。この範囲でなら魔物の気配がないことは確認済みだ。
G36Cは小振りのエアソフトガンではあるが、バッテリーとマガジンを装着した状態での重量は優に3Kg近くはある。長年サバイバルゲームを嗜んでいるとはいえ、ゲーム中に全力疾走できる距離はせいぜい数十メートルだった。それでも300mを全力疾走できたのは、アイダの特訓のおかげだろうか。

「ふう。速いねえ。それで2人の反応は?」

ほぼ同時に立ち止まったノエさんに数秒遅れで、ビビアナも追いついてきた。

「進行方向に向かって2時の方向、距離50。2人ともさっきの位置から動いていないようです。地下?いや、窪地の中にいるようです……反応がもう一つ!小さいですね」

「魔物!?すぐ行かなきゃ!」

魔物と聞いたビビアナが俺が指し示した方向の藪に飛び込もうとして、ノエさんに引き留められる。

「いや、魔物にしても小さい。それに2人との距離が接近しすぎているし、戦っている気配はない。ノエさん、ビビアナの援護は任せます」

「わかった。まさか窪地に落ち込んで出られなくなってるなんてことはないだろうね」

ノエさんが腰の短剣を抜き放ちながら言う。

「まさか。俺やアリシアならともかく、イザベルなら垂直の壁でも登ってくるでしょうけど。行きます!」

俺はG36Cのセーフティーを解除し、ローレディに構えて慎重に藪に分け入った。

◇◇◇

街道沿いの濃い藪を抜けると、森の中は照葉樹林特有の薄暗く湿った匂いがした。足元はふかふかの腐葉土で足音を消してくれる。ただ木の根が盛り上がっていたり蔓が枝から下がっていたりと、決して歩きやすくはない。
アイダとイザベルがいる場所までは50m程度の距離とはいえ、途中には倒木や起伏があるため目視では見つけられない。もっと近寄らなければだめか。
俺とノエさん、ビビアナの3人は足音を立てないギリギリの速度で森を駆ける。
30秒ほどで擂り鉢状の窪地の縁に辿り着いた。
窪地には草木が生えているし、縁の状態を見るに最近陥没した感じではない。
その縁からそっと頭を出して奥を確認する。いた!アイダがしゃがみ込み、イザベルもアイダの肩に手を当てて覗き込むような姿勢を取っている。2人とも怪我をしている様子はない。
だがタンパク質というか髪の毛が焦げるような臭いが漂っている。

「イトー君。あっちに何かあるよ」

ノエさんが木の影を指し示す。
節のある太い灰色の脚。外骨格をもつ生物、甲殻類あるいは昆虫の脚だ。

「まさか……アラーナ!」

身を仰け反るようにしてビビアナが叫ぶ。口を押えてはいるが、抑えきれなかった声が周囲に響く。

「ビビアナ!?いるの!?」

窪地の下でイザベルが振り返った。

◇◇◇

窪地へと降り立った俺達を出迎えたのは、満面の笑顔のイザベルと何故か俺達に背を向けたまま頭だけで振り返って会釈するアイダだった。

「もう!心配したんだからね!いったい何があったの?」

半ば叱るようにビビアナがイザベルに尋ねる。

「いやあ、ニスペロの実を夢中に採ってるうちにさ、子供の悲鳴みたいなのが聞こえたんだよね。お兄ちゃん達の所に一旦戻ろうかとも思ったんだけど、身体が勝手に動いてさあ」

「私は止めたんです。でもイザベルが行っちゃうから単独行動は良くないと思って」

「もう!またアイダちゃんだけいい子ぶって!そいでね。この窪地で奴と出くわしたわけよ」

イザベルが親指を立ててクイッと示す方には、先ほど見た節のある脚がある。

「奴が吐く糸の束に矢も剣も跳ね返されるし、スラッグ弾も効かないしで、結局アイダちゃんの火魔法で焼き払って、ヘカートⅡで止めを刺したってわけ」

事も無げにイザベルは言う。確かに2人とも怪我をした様子はないし、服の汚れも窪地に下りた時に付いたのもののようだ。
相手がアラクネなる蜘蛛の魔物ならば、想定される攻撃は吐き出す糸と毒牙だろうか。それらの攻撃を2人で凌ぎきって倒したのだ。危険であったのは間違いない。

「“わけ”じゃないだろう。でも無事でよかった。それで、2人とも何を隠してるんだ?」

さっきからこの2人の態度はどこかおかしい。アイダはずっと向こうを向いたままだし、イザベルも普段なら褒めろとばかりに飛びついてくるはずだ。だが2人ともその場を動こうとしない。

「え?嫌だなあお兄ちゃん。別に隠し事なんて無いよ!」

「そうですよイトー殿。疑われるのは心外です!」

などと弁解する辺りが更に怪しい。

「まさか……2人はアラーナの変化した姿なんじゃ……だから私達に近寄れないの?」

恐ろしい事をビビアナが呟く。それが本当なら、2人はもう喰われたってことだ。

「その可能性はあるね。アラーナだって単独行動とは限らない。あそこに落ちているのは仲間の死体で、犠牲を出しながらもアイダちゃんとイザベルちゃんを倒し喰らった。そこへボク達が現れた。とすれば辻褄は合う」

ゆっくりと短剣を構え直しながら、ノエさんが続ける。

「イトー君。火魔法は使えるよね。お願い出来るかな?」

まさか……本当にそうなのか?
もし目に前にいるのがアイダとイザベルに化けた魔物で、こいつらが2人を喰らったのだとしたら、許すことはできない。
ヒップホルスターからUSPハンドガンを引き抜き、セーフティーを解除する。
ノーマルマガジンには予めAT弾が30発詰まっている。その1発ずつに火魔法を付与しながら銃口を2人に向ける。

「お兄ちゃん?私の事わかるよね?信じていいんだよね!?」

「イトー殿!お願いだ!信じてくれ!」

2人の悲痛な叫びが心に突き刺さる。

「俺だって信じたい。だが2人とも様子がおかしいのは事実だ。一体何を隠している?」

「それは……」

「アイダ。こっちを向け。そして両手を上げろ。さもなくば撃つ」
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