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72.道中の街に立ち寄る(5月21日)
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翌朝は早朝から昨日到達した森の入口まで戻り、改めてイリョラ村へ向かう。
ノレステの森の家から繋げた俺の自宅で風呂に入り洗濯も済ませた娘達は、朝から元気いっぱいだ。
「いやあ、やっぱりお風呂に入ると生き返るよねえ!」
「お湯に浸かるということが、こんなにも活力を生み出すとは思いもしませんでした」
「昨日一日中歩いていた疲れも残ってないしね!」
とまあこんな感じで、森の中でも相変わらず姦しいことこの上ないが、これが無くなれば逆に寂しすぎるのだろう。
「この森を道沿いに抜けると、アルカンダラからほぼ真北に位置するリナレスの街に出ます。イリョラ村はその東方に位置しているはずですから、リナレスで話を聞いてみましょう」
「リナレスかあ。去年の夏も来たよね!」
「そうそう。あの時は街にネズミが住み着いたからって、駆除の応援要請が来たんだっけ」
「結局私達は奴らをねぐらから追い出す役目だったけどな」
3人は次の街を訪れたことがあるらしい。
「ネズミって、あのネズミか?ネズミぐらいどこにでもいるだろう?」
まあ世の中にはネズミやゴキブリといった害獣や害虫を専門に駆除する仕事があるのだから、馬鹿にしたものでもないのだが。
「いやいや、お兄ちゃんが言っているのはこれぐらいのラトンのことでしょ?そんな可愛いものじゃないんだって。こう、犬ぐらいの大きさでね、体重は私よりも重いんじゃないかって奴もいるんだよ!そんなのがうじゃうじゃと……」
「イザベルちゃんそれはさすがに盛りすぎ!自分がどんだけ軽いって言ってるのよ。去年リナレスに出たネズミは、太った猫ぐらいの大きさでした」
身振り手振りでネズミを説明するイザベルを、アリシアが窘める。
イザベルの表現はさておき、猫ぐらいの大きさのネズミ。俺が知っている最大種の齧歯類はカピバラだが、それに近い種類なのだろうか。
しかしカピバラが動物園でも人気の生き物になったのは、気質が温和なことと、一見するとネズミと同じ齧歯類には見えないユーモラスな顔つきのせいだ。ただのドブネズミが巨大化したとしても、同じように人気が出たとは思えない。
「それで、そのネズミは無事に駆除できたのか?」
「それがさあ!私達みたいな学生の応援部隊に出た指令が、“屋根裏とか床下とか溝に潜んだネズミを追い出してこい”ってやつでさ!」
「あと、箱罠を仕掛けて回収してこいってのもあったよね」
「それで集めてきたネズミを石造りの地下室に放り込んで、魔法師が火魔法を放って焼き尽くしたんだ。それが臭いのなんのって……まったく酷い任務だった」
「まあ街の人たちには感謝されたからいいんだけどね!」
ネズミ駆除は、さほど危険が無い勤労奉仕のような扱いだったのだろう。
そんな話を聞きながら歩いているうちに森を抜け、石造りの壁に囲まれた街が見えた。
街の背後には切り立った岩山が迫っている。
「リナレスの街に到着!って、あれ?入口の所、人が集まってない?」
「本当だ。カズヤさん!行ってみましょう!」
イザベルとアリシアが指し示す先には、確かに門の所に10名ほどの人が集まって東の方角を見ていた。
◇◇◇
「あら。あなた達どうしたの?」
そうアイダに話しかけてきたのは、エプロン姿のちょっとお姉さんな女性だ。
「お久しぶりですアダリラさん。覚えていてくださって光栄です」
「おばちゃん!ネズミは増えてない?」
「お・ね・え・さ・ん!何度言わせるのイザベル!それにアイダにアリシア。忘れるわけないじゃない。ぶうぶう文句を言いながらもきっちり仕事をこなしていたお嬢ちゃん達の事、みんな覚えているわよ」
やっぱりそんな感じだったらしい。
アダリラと呼ばれたお姉さんの隣にいた、こっちは歴然とした中年男性が話に乗っかってきた。
「今でも語り草だからなあ。俺のことは覚えてるかい?」
「もちろんです。連絡所のベルナベさんですよね。皆さんお集りのようですけど、何かあったんですか?」
「いやな、イリョラからの定期便が2日ばかし遅れてるってんで、街の有志で様子を見に行こうかとしていたところなんだが……そっちの兄ちゃんは?去年はいなかったよな?」
「はい。ご紹介します。アルカンダラ狩人養成所の魔導師教官、イトー カズヤさんです。こちらはリナレスの連絡所長、ベルナベさんとアダリラ夫人です」
「ほう……その若さで教官たあ、立派なもんだ。俺は5年前に現役を引退した身だが、兄ちゃんぐらいの歳じゃ小鬼を狩るのが精一杯だった。よろしくな!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。それで、イリョラ村からの定期便が遅れているのですか?」
「そうなんだよ。一昨日の昼には到着することになっていたんだがなあ。向こうまでは歩いても半日ってところだから、馬車なら3時間もあれば辿り着く。道中で何かあったか、あるいは村で何かあったか……」
「それで昨日の朝早くにパーティードが一組向かったんだけどね。道案内に付いた若いのが乗っていた馬だけが今朝がた戻ってきちゃったんだよ」
「そのパーティードってのが、ほら、あんた達アルカンダラから来たのなら耳にしているだろう?ダミアン一家なんだよ。態度は悪いが腕は確かだ。それなのに案内人の身に何かが起きたとすりゃあ……」
「それで、俺達だけで何かできるかって考えていたところだったのさ」
集まっていた街の人々の言葉から推測するに、イリョラ村で何かが起きたのは間違いないようだ。
「あの、この辺りでグサーノが出るって噂を耳にしましたが、リナレスの街は大丈夫なのですか?それに森の向こうでモスカスを見ましたが」
アイダの質問にベルナベさんが胸を張って答える。
「この街は石畳が敷かれているからな。グサーノの歯も通さんよ。モスカスは図体がでかいから、街の中には入ってこれない。平地で出くわしたら物陰で震えて耐えるか、一目散に森か家屋に逃げ込むけどな」
「相変わらず逃げることを一番に考えるよねえあんたは」
ベルナベさんの言葉に真っ先に反応したのはアダリラ夫人だった。
「当たり前だ。命あっての物種だからな。まずは身の安全を第一に考えるのは当然だ」
ベルナベさんの人生観はさておき、その発言には重要なヒントが含まれていた。
石畳が敷いてある範囲にはグサーノが出没しないらしい。
どうやって地中を移動しているかは不明だが、厚さ数センチの石で行動を阻害できるとすれば防ぎようもある。アリシアがノレステの森の家で見せてくれた硬化魔法を応用すれば、土の上を歩くリスクを低減できるかもしれない。
「俺達は今からイリョラ村へ向かうので、どなたか道案内をお願いできませんか?」
そうベルナベさんにお願いしてみる。
たぶん方角からいけば、リナレスの街からまっすぐ東に向かえばいいのだろうが、街道は途中で森を突っ切るようだし、道案内は必須だろう。
「おうさ!ちょうどその話をしていたところだからな。おいお前ら!この子達と一緒にイリョラ村まで様子を見に行ける奴はいねえか!」
ベルナベさんの呼び掛けに、1人の若い男が手を挙げた。
「俺が行くぜ!あの村には世話になってるからな!」
「鼻垂れティオか。お前さんで大丈夫か?」
「おいおい。いつの名前で呼んでんだよ。女の子の前なのに、いい加減やめてくれよう」
顔を真っ赤にした若い男が進み出てきた。
青年というには少し早いだろうか。アリシア達よりは少し年上のように見える。
「俺の名前はティオ。鼻垂れなんて言われるけど、小さい男の子なんてみんなそうだろう?気にしないでくれ。今は石工をやっている」
「主に荷運びだけどな!」
「まあ頑張れ!馬車使うか?貸してやるぞ!」
「ったくお前らなあ!ヤジはいらねえっつうの!」
そんなやり取りを街の人としている若者は、悪い奴ではなさそうだ。
「私はアリシア。こっちがアイダとイザベル、それにカズヤさん。よろしくお願いします」
「ああ。よろしく。馬車貸してくれるって言うから、ちょっと待っててくれ!」
ティオが1人の男を捕まえて、何やら交渉を始める。
「みんなの前で言ったんだから、今更無しはねえだろ」
「しかしなあ。馬車って高いんだぞ。万が一壊れでもしたら……」
そんなティオのやり取りをベルナベさんとアダリラさんが苦笑いしながら見ている。
「あいつも使いっ走りから始めて、だいぶ逞しくなったなあ」
「そうですね。道案内ぐらいは任せても大丈夫でしょう。カズヤさん、よろしくお願いしますね」
「わかりました。あちらに着いたら、誰か訪ねたりしたほうがいい人はいますか?」
「そうねえ。村長のホアキンと、運び屋のナタリオね。村の事にも詳しいはずよ」
「イリョラ村って名産品とかあるの?おねえさん!」
「ちょっとわざとらしいかなイザベル~。名産品ねえ……蜂蜜入りのお菓子とかかしら。去年も食べたでしょう?」
「あれってイリョラ村で作ってたんだ」
「そうよ。森の中を飛び回る蜂が集めた蜜を使うから、森の中の村の特権よね」
そんな話をしているうちに、ティオが一頭立ての馬車を引いて戻ってきた。
「待たせたな!土壇場でグダグダ言いやがってよ。ほら乗った乗った!」
「は~い!お邪魔します!」
アリシアを先頭に、馬車の荷台に乗り込む。
馬車といっても幌など付いていない、縦3メートル×横幅2メートルほどの長方形の荷台だ。ちょっと大きな軽トラみたいだな。
「よし!行ってくるぜ!」
「姉ちゃん達!鼻垂れティオをよろしくな!」
「馬車だけは無事に返してくれよ!明日から仕事できなくなっちまう!」
そんな声に見送られながら、リナレスの街からイリョラ村へと向かう街道を進み始めた。
ノレステの森の家から繋げた俺の自宅で風呂に入り洗濯も済ませた娘達は、朝から元気いっぱいだ。
「いやあ、やっぱりお風呂に入ると生き返るよねえ!」
「お湯に浸かるということが、こんなにも活力を生み出すとは思いもしませんでした」
「昨日一日中歩いていた疲れも残ってないしね!」
とまあこんな感じで、森の中でも相変わらず姦しいことこの上ないが、これが無くなれば逆に寂しすぎるのだろう。
「この森を道沿いに抜けると、アルカンダラからほぼ真北に位置するリナレスの街に出ます。イリョラ村はその東方に位置しているはずですから、リナレスで話を聞いてみましょう」
「リナレスかあ。去年の夏も来たよね!」
「そうそう。あの時は街にネズミが住み着いたからって、駆除の応援要請が来たんだっけ」
「結局私達は奴らをねぐらから追い出す役目だったけどな」
3人は次の街を訪れたことがあるらしい。
「ネズミって、あのネズミか?ネズミぐらいどこにでもいるだろう?」
まあ世の中にはネズミやゴキブリといった害獣や害虫を専門に駆除する仕事があるのだから、馬鹿にしたものでもないのだが。
「いやいや、お兄ちゃんが言っているのはこれぐらいのラトンのことでしょ?そんな可愛いものじゃないんだって。こう、犬ぐらいの大きさでね、体重は私よりも重いんじゃないかって奴もいるんだよ!そんなのがうじゃうじゃと……」
「イザベルちゃんそれはさすがに盛りすぎ!自分がどんだけ軽いって言ってるのよ。去年リナレスに出たネズミは、太った猫ぐらいの大きさでした」
身振り手振りでネズミを説明するイザベルを、アリシアが窘める。
イザベルの表現はさておき、猫ぐらいの大きさのネズミ。俺が知っている最大種の齧歯類はカピバラだが、それに近い種類なのだろうか。
しかしカピバラが動物園でも人気の生き物になったのは、気質が温和なことと、一見するとネズミと同じ齧歯類には見えないユーモラスな顔つきのせいだ。ただのドブネズミが巨大化したとしても、同じように人気が出たとは思えない。
「それで、そのネズミは無事に駆除できたのか?」
「それがさあ!私達みたいな学生の応援部隊に出た指令が、“屋根裏とか床下とか溝に潜んだネズミを追い出してこい”ってやつでさ!」
「あと、箱罠を仕掛けて回収してこいってのもあったよね」
「それで集めてきたネズミを石造りの地下室に放り込んで、魔法師が火魔法を放って焼き尽くしたんだ。それが臭いのなんのって……まったく酷い任務だった」
「まあ街の人たちには感謝されたからいいんだけどね!」
ネズミ駆除は、さほど危険が無い勤労奉仕のような扱いだったのだろう。
そんな話を聞きながら歩いているうちに森を抜け、石造りの壁に囲まれた街が見えた。
街の背後には切り立った岩山が迫っている。
「リナレスの街に到着!って、あれ?入口の所、人が集まってない?」
「本当だ。カズヤさん!行ってみましょう!」
イザベルとアリシアが指し示す先には、確かに門の所に10名ほどの人が集まって東の方角を見ていた。
◇◇◇
「あら。あなた達どうしたの?」
そうアイダに話しかけてきたのは、エプロン姿のちょっとお姉さんな女性だ。
「お久しぶりですアダリラさん。覚えていてくださって光栄です」
「おばちゃん!ネズミは増えてない?」
「お・ね・え・さ・ん!何度言わせるのイザベル!それにアイダにアリシア。忘れるわけないじゃない。ぶうぶう文句を言いながらもきっちり仕事をこなしていたお嬢ちゃん達の事、みんな覚えているわよ」
やっぱりそんな感じだったらしい。
アダリラと呼ばれたお姉さんの隣にいた、こっちは歴然とした中年男性が話に乗っかってきた。
「今でも語り草だからなあ。俺のことは覚えてるかい?」
「もちろんです。連絡所のベルナベさんですよね。皆さんお集りのようですけど、何かあったんですか?」
「いやな、イリョラからの定期便が2日ばかし遅れてるってんで、街の有志で様子を見に行こうかとしていたところなんだが……そっちの兄ちゃんは?去年はいなかったよな?」
「はい。ご紹介します。アルカンダラ狩人養成所の魔導師教官、イトー カズヤさんです。こちらはリナレスの連絡所長、ベルナベさんとアダリラ夫人です」
「ほう……その若さで教官たあ、立派なもんだ。俺は5年前に現役を引退した身だが、兄ちゃんぐらいの歳じゃ小鬼を狩るのが精一杯だった。よろしくな!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。それで、イリョラ村からの定期便が遅れているのですか?」
「そうなんだよ。一昨日の昼には到着することになっていたんだがなあ。向こうまでは歩いても半日ってところだから、馬車なら3時間もあれば辿り着く。道中で何かあったか、あるいは村で何かあったか……」
「それで昨日の朝早くにパーティードが一組向かったんだけどね。道案内に付いた若いのが乗っていた馬だけが今朝がた戻ってきちゃったんだよ」
「そのパーティードってのが、ほら、あんた達アルカンダラから来たのなら耳にしているだろう?ダミアン一家なんだよ。態度は悪いが腕は確かだ。それなのに案内人の身に何かが起きたとすりゃあ……」
「それで、俺達だけで何かできるかって考えていたところだったのさ」
集まっていた街の人々の言葉から推測するに、イリョラ村で何かが起きたのは間違いないようだ。
「あの、この辺りでグサーノが出るって噂を耳にしましたが、リナレスの街は大丈夫なのですか?それに森の向こうでモスカスを見ましたが」
アイダの質問にベルナベさんが胸を張って答える。
「この街は石畳が敷かれているからな。グサーノの歯も通さんよ。モスカスは図体がでかいから、街の中には入ってこれない。平地で出くわしたら物陰で震えて耐えるか、一目散に森か家屋に逃げ込むけどな」
「相変わらず逃げることを一番に考えるよねえあんたは」
ベルナベさんの言葉に真っ先に反応したのはアダリラ夫人だった。
「当たり前だ。命あっての物種だからな。まずは身の安全を第一に考えるのは当然だ」
ベルナベさんの人生観はさておき、その発言には重要なヒントが含まれていた。
石畳が敷いてある範囲にはグサーノが出没しないらしい。
どうやって地中を移動しているかは不明だが、厚さ数センチの石で行動を阻害できるとすれば防ぎようもある。アリシアがノレステの森の家で見せてくれた硬化魔法を応用すれば、土の上を歩くリスクを低減できるかもしれない。
「俺達は今からイリョラ村へ向かうので、どなたか道案内をお願いできませんか?」
そうベルナベさんにお願いしてみる。
たぶん方角からいけば、リナレスの街からまっすぐ東に向かえばいいのだろうが、街道は途中で森を突っ切るようだし、道案内は必須だろう。
「おうさ!ちょうどその話をしていたところだからな。おいお前ら!この子達と一緒にイリョラ村まで様子を見に行ける奴はいねえか!」
ベルナベさんの呼び掛けに、1人の若い男が手を挙げた。
「俺が行くぜ!あの村には世話になってるからな!」
「鼻垂れティオか。お前さんで大丈夫か?」
「おいおい。いつの名前で呼んでんだよ。女の子の前なのに、いい加減やめてくれよう」
顔を真っ赤にした若い男が進み出てきた。
青年というには少し早いだろうか。アリシア達よりは少し年上のように見える。
「俺の名前はティオ。鼻垂れなんて言われるけど、小さい男の子なんてみんなそうだろう?気にしないでくれ。今は石工をやっている」
「主に荷運びだけどな!」
「まあ頑張れ!馬車使うか?貸してやるぞ!」
「ったくお前らなあ!ヤジはいらねえっつうの!」
そんなやり取りを街の人としている若者は、悪い奴ではなさそうだ。
「私はアリシア。こっちがアイダとイザベル、それにカズヤさん。よろしくお願いします」
「ああ。よろしく。馬車貸してくれるって言うから、ちょっと待っててくれ!」
ティオが1人の男を捕まえて、何やら交渉を始める。
「みんなの前で言ったんだから、今更無しはねえだろ」
「しかしなあ。馬車って高いんだぞ。万が一壊れでもしたら……」
そんなティオのやり取りをベルナベさんとアダリラさんが苦笑いしながら見ている。
「あいつも使いっ走りから始めて、だいぶ逞しくなったなあ」
「そうですね。道案内ぐらいは任せても大丈夫でしょう。カズヤさん、よろしくお願いしますね」
「わかりました。あちらに着いたら、誰か訪ねたりしたほうがいい人はいますか?」
「そうねえ。村長のホアキンと、運び屋のナタリオね。村の事にも詳しいはずよ」
「イリョラ村って名産品とかあるの?おねえさん!」
「ちょっとわざとらしいかなイザベル~。名産品ねえ……蜂蜜入りのお菓子とかかしら。去年も食べたでしょう?」
「あれってイリョラ村で作ってたんだ」
「そうよ。森の中を飛び回る蜂が集めた蜜を使うから、森の中の村の特権よね」
そんな話をしているうちに、ティオが一頭立ての馬車を引いて戻ってきた。
「待たせたな!土壇場でグダグダ言いやがってよ。ほら乗った乗った!」
「は~い!お邪魔します!」
アリシアを先頭に、馬車の荷台に乗り込む。
馬車といっても幌など付いていない、縦3メートル×横幅2メートルほどの長方形の荷台だ。ちょっと大きな軽トラみたいだな。
「よし!行ってくるぜ!」
「姉ちゃん達!鼻垂れティオをよろしくな!」
「馬車だけは無事に返してくれよ!明日から仕事できなくなっちまう!」
そんな声に見送られながら、リナレスの街からイリョラ村へと向かう街道を進み始めた。
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