73 / 243
72.道中の街に立ち寄る(5月21日)
しおりを挟む
翌朝は早朝から昨日到達した森の入口まで戻り、改めてイリョラ村へ向かう。
ノレステの森の家から繋げた俺の自宅で風呂に入り洗濯も済ませた娘達は、朝から元気いっぱいだ。
「いやあ、やっぱりお風呂に入ると生き返るよねえ!」
「お湯に浸かるということが、こんなにも活力を生み出すとは思いもしませんでした」
「昨日一日中歩いていた疲れも残ってないしね!」
とまあこんな感じで、森の中でも相変わらず姦しいことこの上ないが、これが無くなれば逆に寂しすぎるのだろう。
「この森を道沿いに抜けると、アルカンダラからほぼ真北に位置するリナレスの街に出ます。イリョラ村はその東方に位置しているはずですから、リナレスで話を聞いてみましょう」
「リナレスかあ。去年の夏も来たよね!」
「そうそう。あの時は街にネズミが住み着いたからって、駆除の応援要請が来たんだっけ」
「結局私達は奴らをねぐらから追い出す役目だったけどな」
3人は次の街を訪れたことがあるらしい。
「ネズミって、あのネズミか?ネズミぐらいどこにでもいるだろう?」
まあ世の中にはネズミやゴキブリといった害獣や害虫を専門に駆除する仕事があるのだから、馬鹿にしたものでもないのだが。
「いやいや、お兄ちゃんが言っているのはこれぐらいのラトンのことでしょ?そんな可愛いものじゃないんだって。こう、犬ぐらいの大きさでね、体重は私よりも重いんじゃないかって奴もいるんだよ!そんなのがうじゃうじゃと……」
「イザベルちゃんそれはさすがに盛りすぎ!自分がどんだけ軽いって言ってるのよ。去年リナレスに出たネズミは、太った猫ぐらいの大きさでした」
身振り手振りでネズミを説明するイザベルを、アリシアが窘める。
イザベルの表現はさておき、猫ぐらいの大きさのネズミ。俺が知っている最大種の齧歯類はカピバラだが、それに近い種類なのだろうか。
しかしカピバラが動物園でも人気の生き物になったのは、気質が温和なことと、一見するとネズミと同じ齧歯類には見えないユーモラスな顔つきのせいだ。ただのドブネズミが巨大化したとしても、同じように人気が出たとは思えない。
「それで、そのネズミは無事に駆除できたのか?」
「それがさあ!私達みたいな学生の応援部隊に出た指令が、“屋根裏とか床下とか溝に潜んだネズミを追い出してこい”ってやつでさ!」
「あと、箱罠を仕掛けて回収してこいってのもあったよね」
「それで集めてきたネズミを石造りの地下室に放り込んで、魔法師が火魔法を放って焼き尽くしたんだ。それが臭いのなんのって……まったく酷い任務だった」
「まあ街の人たちには感謝されたからいいんだけどね!」
ネズミ駆除は、さほど危険が無い勤労奉仕のような扱いだったのだろう。
そんな話を聞きながら歩いているうちに森を抜け、石造りの壁に囲まれた街が見えた。
街の背後には切り立った岩山が迫っている。
「リナレスの街に到着!って、あれ?入口の所、人が集まってない?」
「本当だ。カズヤさん!行ってみましょう!」
イザベルとアリシアが指し示す先には、確かに門の所に10名ほどの人が集まって東の方角を見ていた。
◇◇◇
「あら。あなた達どうしたの?」
そうアイダに話しかけてきたのは、エプロン姿のちょっとお姉さんな女性だ。
「お久しぶりですアダリラさん。覚えていてくださって光栄です」
「おばちゃん!ネズミは増えてない?」
「お・ね・え・さ・ん!何度言わせるのイザベル!それにアイダにアリシア。忘れるわけないじゃない。ぶうぶう文句を言いながらもきっちり仕事をこなしていたお嬢ちゃん達の事、みんな覚えているわよ」
やっぱりそんな感じだったらしい。
アダリラと呼ばれたお姉さんの隣にいた、こっちは歴然とした中年男性が話に乗っかってきた。
「今でも語り草だからなあ。俺のことは覚えてるかい?」
「もちろんです。連絡所のベルナベさんですよね。皆さんお集りのようですけど、何かあったんですか?」
「いやな、イリョラからの定期便が2日ばかし遅れてるってんで、街の有志で様子を見に行こうかとしていたところなんだが……そっちの兄ちゃんは?去年はいなかったよな?」
「はい。ご紹介します。アルカンダラ狩人養成所の魔導師教官、イトー カズヤさんです。こちらはリナレスの連絡所長、ベルナベさんとアダリラ夫人です」
「ほう……その若さで教官たあ、立派なもんだ。俺は5年前に現役を引退した身だが、兄ちゃんぐらいの歳じゃ小鬼を狩るのが精一杯だった。よろしくな!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。それで、イリョラ村からの定期便が遅れているのですか?」
「そうなんだよ。一昨日の昼には到着することになっていたんだがなあ。向こうまでは歩いても半日ってところだから、馬車なら3時間もあれば辿り着く。道中で何かあったか、あるいは村で何かあったか……」
「それで昨日の朝早くにパーティードが一組向かったんだけどね。道案内に付いた若いのが乗っていた馬だけが今朝がた戻ってきちゃったんだよ」
「そのパーティードってのが、ほら、あんた達アルカンダラから来たのなら耳にしているだろう?ダミアン一家なんだよ。態度は悪いが腕は確かだ。それなのに案内人の身に何かが起きたとすりゃあ……」
「それで、俺達だけで何かできるかって考えていたところだったのさ」
集まっていた街の人々の言葉から推測するに、イリョラ村で何かが起きたのは間違いないようだ。
「あの、この辺りでグサーノが出るって噂を耳にしましたが、リナレスの街は大丈夫なのですか?それに森の向こうでモスカスを見ましたが」
アイダの質問にベルナベさんが胸を張って答える。
「この街は石畳が敷かれているからな。グサーノの歯も通さんよ。モスカスは図体がでかいから、街の中には入ってこれない。平地で出くわしたら物陰で震えて耐えるか、一目散に森か家屋に逃げ込むけどな」
「相変わらず逃げることを一番に考えるよねえあんたは」
ベルナベさんの言葉に真っ先に反応したのはアダリラ夫人だった。
「当たり前だ。命あっての物種だからな。まずは身の安全を第一に考えるのは当然だ」
ベルナベさんの人生観はさておき、その発言には重要なヒントが含まれていた。
石畳が敷いてある範囲にはグサーノが出没しないらしい。
どうやって地中を移動しているかは不明だが、厚さ数センチの石で行動を阻害できるとすれば防ぎようもある。アリシアがノレステの森の家で見せてくれた硬化魔法を応用すれば、土の上を歩くリスクを低減できるかもしれない。
「俺達は今からイリョラ村へ向かうので、どなたか道案内をお願いできませんか?」
そうベルナベさんにお願いしてみる。
たぶん方角からいけば、リナレスの街からまっすぐ東に向かえばいいのだろうが、街道は途中で森を突っ切るようだし、道案内は必須だろう。
「おうさ!ちょうどその話をしていたところだからな。おいお前ら!この子達と一緒にイリョラ村まで様子を見に行ける奴はいねえか!」
ベルナベさんの呼び掛けに、1人の若い男が手を挙げた。
「俺が行くぜ!あの村には世話になってるからな!」
「鼻垂れティオか。お前さんで大丈夫か?」
「おいおい。いつの名前で呼んでんだよ。女の子の前なのに、いい加減やめてくれよう」
顔を真っ赤にした若い男が進み出てきた。
青年というには少し早いだろうか。アリシア達よりは少し年上のように見える。
「俺の名前はティオ。鼻垂れなんて言われるけど、小さい男の子なんてみんなそうだろう?気にしないでくれ。今は石工をやっている」
「主に荷運びだけどな!」
「まあ頑張れ!馬車使うか?貸してやるぞ!」
「ったくお前らなあ!ヤジはいらねえっつうの!」
そんなやり取りを街の人としている若者は、悪い奴ではなさそうだ。
「私はアリシア。こっちがアイダとイザベル、それにカズヤさん。よろしくお願いします」
「ああ。よろしく。馬車貸してくれるって言うから、ちょっと待っててくれ!」
ティオが1人の男を捕まえて、何やら交渉を始める。
「みんなの前で言ったんだから、今更無しはねえだろ」
「しかしなあ。馬車って高いんだぞ。万が一壊れでもしたら……」
そんなティオのやり取りをベルナベさんとアダリラさんが苦笑いしながら見ている。
「あいつも使いっ走りから始めて、だいぶ逞しくなったなあ」
「そうですね。道案内ぐらいは任せても大丈夫でしょう。カズヤさん、よろしくお願いしますね」
「わかりました。あちらに着いたら、誰か訪ねたりしたほうがいい人はいますか?」
「そうねえ。村長のホアキンと、運び屋のナタリオね。村の事にも詳しいはずよ」
「イリョラ村って名産品とかあるの?おねえさん!」
「ちょっとわざとらしいかなイザベル~。名産品ねえ……蜂蜜入りのお菓子とかかしら。去年も食べたでしょう?」
「あれってイリョラ村で作ってたんだ」
「そうよ。森の中を飛び回る蜂が集めた蜜を使うから、森の中の村の特権よね」
そんな話をしているうちに、ティオが一頭立ての馬車を引いて戻ってきた。
「待たせたな!土壇場でグダグダ言いやがってよ。ほら乗った乗った!」
「は~い!お邪魔します!」
アリシアを先頭に、馬車の荷台に乗り込む。
馬車といっても幌など付いていない、縦3メートル×横幅2メートルほどの長方形の荷台だ。ちょっと大きな軽トラみたいだな。
「よし!行ってくるぜ!」
「姉ちゃん達!鼻垂れティオをよろしくな!」
「馬車だけは無事に返してくれよ!明日から仕事できなくなっちまう!」
そんな声に見送られながら、リナレスの街からイリョラ村へと向かう街道を進み始めた。
ノレステの森の家から繋げた俺の自宅で風呂に入り洗濯も済ませた娘達は、朝から元気いっぱいだ。
「いやあ、やっぱりお風呂に入ると生き返るよねえ!」
「お湯に浸かるということが、こんなにも活力を生み出すとは思いもしませんでした」
「昨日一日中歩いていた疲れも残ってないしね!」
とまあこんな感じで、森の中でも相変わらず姦しいことこの上ないが、これが無くなれば逆に寂しすぎるのだろう。
「この森を道沿いに抜けると、アルカンダラからほぼ真北に位置するリナレスの街に出ます。イリョラ村はその東方に位置しているはずですから、リナレスで話を聞いてみましょう」
「リナレスかあ。去年の夏も来たよね!」
「そうそう。あの時は街にネズミが住み着いたからって、駆除の応援要請が来たんだっけ」
「結局私達は奴らをねぐらから追い出す役目だったけどな」
3人は次の街を訪れたことがあるらしい。
「ネズミって、あのネズミか?ネズミぐらいどこにでもいるだろう?」
まあ世の中にはネズミやゴキブリといった害獣や害虫を専門に駆除する仕事があるのだから、馬鹿にしたものでもないのだが。
「いやいや、お兄ちゃんが言っているのはこれぐらいのラトンのことでしょ?そんな可愛いものじゃないんだって。こう、犬ぐらいの大きさでね、体重は私よりも重いんじゃないかって奴もいるんだよ!そんなのがうじゃうじゃと……」
「イザベルちゃんそれはさすがに盛りすぎ!自分がどんだけ軽いって言ってるのよ。去年リナレスに出たネズミは、太った猫ぐらいの大きさでした」
身振り手振りでネズミを説明するイザベルを、アリシアが窘める。
イザベルの表現はさておき、猫ぐらいの大きさのネズミ。俺が知っている最大種の齧歯類はカピバラだが、それに近い種類なのだろうか。
しかしカピバラが動物園でも人気の生き物になったのは、気質が温和なことと、一見するとネズミと同じ齧歯類には見えないユーモラスな顔つきのせいだ。ただのドブネズミが巨大化したとしても、同じように人気が出たとは思えない。
「それで、そのネズミは無事に駆除できたのか?」
「それがさあ!私達みたいな学生の応援部隊に出た指令が、“屋根裏とか床下とか溝に潜んだネズミを追い出してこい”ってやつでさ!」
「あと、箱罠を仕掛けて回収してこいってのもあったよね」
「それで集めてきたネズミを石造りの地下室に放り込んで、魔法師が火魔法を放って焼き尽くしたんだ。それが臭いのなんのって……まったく酷い任務だった」
「まあ街の人たちには感謝されたからいいんだけどね!」
ネズミ駆除は、さほど危険が無い勤労奉仕のような扱いだったのだろう。
そんな話を聞きながら歩いているうちに森を抜け、石造りの壁に囲まれた街が見えた。
街の背後には切り立った岩山が迫っている。
「リナレスの街に到着!って、あれ?入口の所、人が集まってない?」
「本当だ。カズヤさん!行ってみましょう!」
イザベルとアリシアが指し示す先には、確かに門の所に10名ほどの人が集まって東の方角を見ていた。
◇◇◇
「あら。あなた達どうしたの?」
そうアイダに話しかけてきたのは、エプロン姿のちょっとお姉さんな女性だ。
「お久しぶりですアダリラさん。覚えていてくださって光栄です」
「おばちゃん!ネズミは増えてない?」
「お・ね・え・さ・ん!何度言わせるのイザベル!それにアイダにアリシア。忘れるわけないじゃない。ぶうぶう文句を言いながらもきっちり仕事をこなしていたお嬢ちゃん達の事、みんな覚えているわよ」
やっぱりそんな感じだったらしい。
アダリラと呼ばれたお姉さんの隣にいた、こっちは歴然とした中年男性が話に乗っかってきた。
「今でも語り草だからなあ。俺のことは覚えてるかい?」
「もちろんです。連絡所のベルナベさんですよね。皆さんお集りのようですけど、何かあったんですか?」
「いやな、イリョラからの定期便が2日ばかし遅れてるってんで、街の有志で様子を見に行こうかとしていたところなんだが……そっちの兄ちゃんは?去年はいなかったよな?」
「はい。ご紹介します。アルカンダラ狩人養成所の魔導師教官、イトー カズヤさんです。こちらはリナレスの連絡所長、ベルナベさんとアダリラ夫人です」
「ほう……その若さで教官たあ、立派なもんだ。俺は5年前に現役を引退した身だが、兄ちゃんぐらいの歳じゃ小鬼を狩るのが精一杯だった。よろしくな!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。それで、イリョラ村からの定期便が遅れているのですか?」
「そうなんだよ。一昨日の昼には到着することになっていたんだがなあ。向こうまでは歩いても半日ってところだから、馬車なら3時間もあれば辿り着く。道中で何かあったか、あるいは村で何かあったか……」
「それで昨日の朝早くにパーティードが一組向かったんだけどね。道案内に付いた若いのが乗っていた馬だけが今朝がた戻ってきちゃったんだよ」
「そのパーティードってのが、ほら、あんた達アルカンダラから来たのなら耳にしているだろう?ダミアン一家なんだよ。態度は悪いが腕は確かだ。それなのに案内人の身に何かが起きたとすりゃあ……」
「それで、俺達だけで何かできるかって考えていたところだったのさ」
集まっていた街の人々の言葉から推測するに、イリョラ村で何かが起きたのは間違いないようだ。
「あの、この辺りでグサーノが出るって噂を耳にしましたが、リナレスの街は大丈夫なのですか?それに森の向こうでモスカスを見ましたが」
アイダの質問にベルナベさんが胸を張って答える。
「この街は石畳が敷かれているからな。グサーノの歯も通さんよ。モスカスは図体がでかいから、街の中には入ってこれない。平地で出くわしたら物陰で震えて耐えるか、一目散に森か家屋に逃げ込むけどな」
「相変わらず逃げることを一番に考えるよねえあんたは」
ベルナベさんの言葉に真っ先に反応したのはアダリラ夫人だった。
「当たり前だ。命あっての物種だからな。まずは身の安全を第一に考えるのは当然だ」
ベルナベさんの人生観はさておき、その発言には重要なヒントが含まれていた。
石畳が敷いてある範囲にはグサーノが出没しないらしい。
どうやって地中を移動しているかは不明だが、厚さ数センチの石で行動を阻害できるとすれば防ぎようもある。アリシアがノレステの森の家で見せてくれた硬化魔法を応用すれば、土の上を歩くリスクを低減できるかもしれない。
「俺達は今からイリョラ村へ向かうので、どなたか道案内をお願いできませんか?」
そうベルナベさんにお願いしてみる。
たぶん方角からいけば、リナレスの街からまっすぐ東に向かえばいいのだろうが、街道は途中で森を突っ切るようだし、道案内は必須だろう。
「おうさ!ちょうどその話をしていたところだからな。おいお前ら!この子達と一緒にイリョラ村まで様子を見に行ける奴はいねえか!」
ベルナベさんの呼び掛けに、1人の若い男が手を挙げた。
「俺が行くぜ!あの村には世話になってるからな!」
「鼻垂れティオか。お前さんで大丈夫か?」
「おいおい。いつの名前で呼んでんだよ。女の子の前なのに、いい加減やめてくれよう」
顔を真っ赤にした若い男が進み出てきた。
青年というには少し早いだろうか。アリシア達よりは少し年上のように見える。
「俺の名前はティオ。鼻垂れなんて言われるけど、小さい男の子なんてみんなそうだろう?気にしないでくれ。今は石工をやっている」
「主に荷運びだけどな!」
「まあ頑張れ!馬車使うか?貸してやるぞ!」
「ったくお前らなあ!ヤジはいらねえっつうの!」
そんなやり取りを街の人としている若者は、悪い奴ではなさそうだ。
「私はアリシア。こっちがアイダとイザベル、それにカズヤさん。よろしくお願いします」
「ああ。よろしく。馬車貸してくれるって言うから、ちょっと待っててくれ!」
ティオが1人の男を捕まえて、何やら交渉を始める。
「みんなの前で言ったんだから、今更無しはねえだろ」
「しかしなあ。馬車って高いんだぞ。万が一壊れでもしたら……」
そんなティオのやり取りをベルナベさんとアダリラさんが苦笑いしながら見ている。
「あいつも使いっ走りから始めて、だいぶ逞しくなったなあ」
「そうですね。道案内ぐらいは任せても大丈夫でしょう。カズヤさん、よろしくお願いしますね」
「わかりました。あちらに着いたら、誰か訪ねたりしたほうがいい人はいますか?」
「そうねえ。村長のホアキンと、運び屋のナタリオね。村の事にも詳しいはずよ」
「イリョラ村って名産品とかあるの?おねえさん!」
「ちょっとわざとらしいかなイザベル~。名産品ねえ……蜂蜜入りのお菓子とかかしら。去年も食べたでしょう?」
「あれってイリョラ村で作ってたんだ」
「そうよ。森の中を飛び回る蜂が集めた蜜を使うから、森の中の村の特権よね」
そんな話をしているうちに、ティオが一頭立ての馬車を引いて戻ってきた。
「待たせたな!土壇場でグダグダ言いやがってよ。ほら乗った乗った!」
「は~い!お邪魔します!」
アリシアを先頭に、馬車の荷台に乗り込む。
馬車といっても幌など付いていない、縦3メートル×横幅2メートルほどの長方形の荷台だ。ちょっと大きな軽トラみたいだな。
「よし!行ってくるぜ!」
「姉ちゃん達!鼻垂れティオをよろしくな!」
「馬車だけは無事に返してくれよ!明日から仕事できなくなっちまう!」
そんな声に見送られながら、リナレスの街からイリョラ村へと向かう街道を進み始めた。
44
お気に入りに追加
1,728
あなたにおすすめの小説
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる